夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

2024年10月に読んだ本

2024年11月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2024年10月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:1543ページ
ナイス数:907ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/10

■しでむし
先月、大阪・十三の映画館で『うんこと死体の復権』を観て舘野鴻さんのことを知りました。とても有名な絵本作家でいらっしゃるのに、今まで存じ上げずすみません。映画のメインはどちらかといえば野糞をするために山を買ったという「糞土師」の伊沢正名さんですが、舘野さんが絵本作家として食べてゆくことを考えたときに動物の死体につく虫を対象に選んだ話を聞くと、生きるために死にまつわるものを描いているんだなぁとしみじみ思う。死出虫を如何に美しく描くか。舘野さんの言葉どおり美しい。映像で観たばかりの肉だんご、この絵のまんまです。
読了日:10月01日 著者:舘野 鴻
https://bookmeter.com/books/159048

■社員食堂に三つ星を (角川文庫)
何年か前にどハマりして大人買いをした作家です。相変わらず落ち着くし、何よりもこの作家の話には元気を貰えます。管理栄養士の主人公みなほが理不尽に田舎の家具メーカーの社員食堂に飛ばされる。その先には誰も楯突けないお局パート調理員がいて、みなほ以前に着任した栄養士はみんな耐えきれずに退職。だからこそ自分は絶対に辞めたくない。根っから意地悪な人も世の中にはいるでしょうが、よく知ってみればいい人というのが本の中。懐かしのアヒルバスが出てくるのも嬉しい。擬人化されたミゼット2にはちょっと引くけれど。瀬里奈ちゃん推し。
読了日:10月07日 著者:山本 幸久
https://bookmeter.com/books/22115961

■幾世の鈴 あきない世傳 金と銀 特別巻(下) (ハルキ文庫 た 19-32)
ついにホントの最終巻。気になるのはなんと言っても結がその後どうしていたのかということでしょう。いけずな私は、最終巻で結と幸が涙のうちに仲直りなんてことは望んでいませんでした。そんな結末をもしも迎えるのなら白々しくて冷めてまうがなと思っていたら、結が我が娘にできすぎた姉の姿を見るとは。幸はいったい何度結婚して、相手の生死を問わないとしても何度別れるのだろうと最初の頃は唖然としていましたけれど、今となってはどの出会いと別れも必要だったと思えます。『みをつくし料理帖』も『あきない世傳』も忘れ得ぬ話となりました。
読了日:10月09日 著者:髙田 郁
https://bookmeter.com/books/21715990

■すみせごの贄 (角川ホラー文庫)
出たら直ちに読みたいシリーズなのに、半年以上も出版に気づかなかったとは不覚。気持ち悪くないですか、この表紙の絵。粒々ぶつぶつ、それだけで怖さが増すよと思いながら頁を開く。もとはホラーが苦手な私にはちょうど良いおぞましさで、時には切なくもある澤村さんの話が好きです。本作では特に「火曜夕方の客」が悲しくて、ネグレクトを受けていた子どもたちのことを思うと居たたまれず。「たなわれしょうき」を読み終わった直後に「鍾馗」という名前のラーメン屋の前を通り、その偶然にちょっとドキッとしました。そろそろ長編をお願いしたい。
読了日:10月15日 著者:澤村伊智
https://bookmeter.com/books/21813562

■作家ごはん (講談社文庫 ふ 87-3)
てっきりエッセイだと思っていたら、めっちゃ小説でした。“侠飯”シリーズのファンならば誰でも好きになりそう。もう何年も新作を書いていないベテラン作家とその担当となった新米編集者、そして2作目を書けずにいる新人作家。ベテラン作家に焦る様子は皆無で、毎度旨い料理と酒で一杯やることに。確かに食事はいくらでも簡素にできるものだし、読書はしなくたって生きられる。だけど、そういった無駄こそが人生を楽しくするのですよね、竹林先生。本作に登場する商品どれも実際に入手可能なのが嬉しい。全品そろえて作ってみます。いざ、宴会だ♪
読了日:10月21日 著者:福澤 徹三
https://bookmeter.com/books/18807933

■嗤う淑女 二人 (実業之日本社文庫)
ひとりを死に追いやる程度では面白みを感じなくなったとおぼしき彼女。ついには大量殺人の決行ですと。しかも自分ではあくまで手を下さず、彼女の言いなりになって動く人間を見つけるのだからさすがです。七里センセの他作品に登場する面々があちこちに見えて楽しすぎる。御子柴弁護士ってこんなに饒舌だったかしらと思ったりも。美智留はこの先もまだまだ死にそうにないですから、続編があるのでしょうね。そろそろ裏で糸を引くところばかりではなくて、第1弾のように彼女自身の姿ももっと見たいような気もします。見えないから良いのでしょうか。
読了日:10月24日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/21970140

■【単話】ファミレス行こ。 第2話 (ビームコミックス)
今月は映画館で40本観ました。で、映画にばかり時間を注ぎ込んでいたら、ちぃとも本を読む時間がなくなって、冊数稼ぎに走る。これだって映画『カラオケ行こ!』からの流れですが、kindleに慣れていないせいでなんとなく選択を誤った模様。『ファミレス行こ!』の上巻は読んだけど、下巻はまだ出ていませんよね? そして0話からあるのは何ですか。0話と1話を飛ばして2話から入ってしまいました。どこから読んでも違和感がないのが逆に困りもの。遡るべきかどうか迷っている途中です。面白いけど。すぐ読めるけど。どうすりゃええのか。
読了日:10月29日 著者:和山 やま
https://bookmeter.com/books/21764921

■【単話】ファミレス行こ。 第3話 (ビームコミックス)
2話からそのまま3話へ突入したけれど、0話と1話はすっ飛ばしたままで今から遡るかどうか迷ったまんま。聡実が狂児にたまに使うタメ口を聞いてはニタッと笑ってしまいます。読みながらついつい映画『カラオケ行こ!』を思い出し、今は聡実くん役の齋藤潤くんを『室井慎次 敗れざる者』で見られることが嬉しい。彼が演じるタカとギバちゃん演じる室井さんの会話にしばしば目が潤む。って、この本の感想とちゃうやんか。すみません。
読了日:10月29日 著者:和山 やま
https://bookmeter.com/books/21764922

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2024年9月に読んだ本

2024年10月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2024年9月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3413ページ
ナイス数:932ナイス

■境界線 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
これ単独で読んでも理解に困ることはないけれど、『護られなかった者たちへ』を読んだうえで映画も観ていれば「シェアードユニバース」、とまでは言わないか。佐藤健が演じた利根が本作の五代と刑務所仲間だったと思うとニヤリとしてしまいます。いつもの七里さんよりドンデン返し度低めではあるものの、読み応えがある。名簿の売買に手を染めるに至った過去そのものが人生のドンデン返し。しかも悪いほうへの。笘篠(阿部寛)と蓮田(林遣都)のコンビを映像でも観たい。ただし前作の映画版のような「汚名を挽回」という台詞は無しでお願いします。
読了日:09月03日 著者:中山 七里

■愛するよりも愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集1
万葉集の時代の首都は奈良だったのだから、標準語は「奈良の言葉」のはずだ。というところからして、生まれも育ちも関西の私には面白い。意訳も意訳、だけど言いたいことはこうだったのだろうと思わされます。ストーカー並みの人もいれば、とんだナルシストっぷりを発揮している人、この変態め!と言いたくなる人、いろいろ。だけど結局、恋って今も昔も変わらないのねとも思う。「ワンチャン」なんて言葉が出てくる万葉集の訳はほかにない。速攻で読めるという点でもオススメです。大伴家持ってモテたんですねぇ。どんな色男だったのか見てみたい。
読了日:09月04日 著者:佐々木良

■緑の毒 (角川文庫)
著者を知ったのは『OUT』がTVドラマ化されたときだと記憶しています。それはそれは面白くて、主人公たちがノコギリで死体をギコギコぶった切るシーンは、長調なのに哀しげなテーマ曲の旋律と共に今も頭の中に蘇ります。本作はそのイメージのまんますぎる気がして、桐野さんってあれからひとつも歳をお取りではないのかと思うほど。「最低最悪の読み心地」という帯の言葉に、このゲス医者が逃げおおせる嫌ミスの如き結末も覚悟していましたが、桐野作品ではやっぱり女が強い。ひとりではどうにもならなくても皆で天罰を食らわせる。ナメんなよ。
読了日:09月08日 著者:桐野 夏生

■9割の医者が知らない 正しいアトピーの治し方
10年前に脱ステ脱保湿に挑戦し、完治したと言って良いと思います。ところがこのたび手指に湿疹再発。普通の石鹸しか使っていなかったのに、洒落たボディソープに手を出したせいでしょう。思わず何か塗りたくなるところ、当時の自分のブログ記事を読み返して「死んだほうがマシやと思ったぐらい過酷な体験をして乗り越えたんやから」と耐えています。で、ついつい脱軟を推奨する医師の本も読みたくなり。「死んだほうがマシやと思った」と書くたびに、一昨年がんで亡くなった弟に「死んだほうがマシなんてことはないわな」と心の中で謝っています。
読了日:09月11日 著者:藤澤重樹

■サクリファイス (新潮文庫)
読んだ本は、貸出希望者を一周したら譲渡希望者に進呈するのが常です。同著者の『みかんとひよどり』を差し上げた人が「好きだなぁと思ったら“ビストロ・パ・マル”シリーズの作家なんですね。道理で」と言うので、もしやそっちのみの書き手と思っているのではと不安になり(笑)、これを読んでもらおうと買い直したついでに、ほぼ15年ぶりに再読しました。本作をきっかけに自転車競技に興味が湧いたように記憶していたけれど、アニメ映画『ベルヴィル・ランデブー』が先ですね。今回再読して『疑惑のチャンピオン』ももう一度観たくなりました。
読了日:09月15日 著者:近藤 史恵

■くらのかみ (講談社文庫 む 81-10)
単行本の刊行から20年以上経って初の文庫化なのだそうです。「四人ゲーム」は数ヶ月前に観た映画『新・三茶のポルターガイスト』で知りました。モキュメンタリーだと思い込んで観た後にドキュメンタリーだと聞いて、え、マジ!? こんなんホンマにある!?とビビりました。その映像を思い出してしまう本作の冒頭シーン。けれど怖いのはそこだけで、子ども向けのファンタジーホラーらしく安心して読めます。親たちに降りかかりそうな災難の真相を子どもたちが解決しようと奮闘。何巻目かで中断したままの『ゴーストハント』をまた読みたくなった。
読了日:09月16日 著者:小野 不由美

■嗤う淑女 (実業之日本社文庫)
これまでに読んだ中山七里作品の中で最低最悪の読み心地。R-18+指定かと思うようなエロシーンが不愉快で、序盤に投げ出そうかと思ったほど。とはいうものの、途中で止められずにあっちゅうまに読めてしまうところが憎らしい。映像化されていることを知らず、さっきキャストを眺めてみたら、黒田大輔とか絶妙の配置ではないですか。美智留と恭子は死が二人を分かつまで一緒にいるものだと思っていたため、途中でドヒャー。と思ったらそのはるか斜め上を行く展開に。いや~、それはなんぼなんでも無理やと思うけど、次も読んでしまうやん(泣)。
読了日:09月17日 著者:中山 七里

■女神のサラダ (光文社文庫 た 51-2)
「言わなわからん」が信条です。察することは大事だし、言われなくてもわかりたい、わかってほしいとは思うけれど、わかるよわかれよというのは傲慢じゃないかと思ったりもします。ここに登場する人たちはみんな優しい。それがゆえに聞けない。聞かなくても察しているつもりだったけど、ひょっこり聞く機会がやってきたら、とんだ思い違いをしていたことに気づく瞬間がとてもいい。馬鈴薯とレモンの話が特に好きでした。アスパラガスとチーズも好き。『うさぎパン』のときから好きだった著者ですが、久しぶりに読んだらなんだか大人になっていた。
読了日:09月21日 著者:瀧羽麻子

■透明な螺旋 (文春文庫 ひ 13-14)
あいだに6人(6人目だから5人?)挟んだら世界中の人と繋がるという「六次の隔たり」を私は信じています。信じてはいるけれど、こんなに上手く繋がるわけはないと思わなくもない。思わなくもないのに、あるかもしれないと思わされるのが東野圭吾。ただ、無理に繋いだ感も憶えてしまうから、ミステリーとしてはちょっと物足りない。圧巻のリーダビリティを誇る東野圭吾と中山七里、たまたま文庫化新作2冊が同じような傾向でしんみり。ところで、これだけシリーズが続いていると、どうしても福山雅治のイメージを外して読むのは無理。実母役は誰?
読了日:09月23日 著者:東野 圭吾

■ショートケーキ。 (文春文庫 さ 49-5)
家に帰れば売るほど積読本があるのに、出先で読書に割ける時間を読み違えて、持って出た本を読みきってしまうことがあります。慌てて本屋に駆け込んで、帰宅するまでに読めそうな薄い本を探す。で、本書を買ったら、するする読めすぎて危うくこれも読みきってしまうところでした(笑)。ホールケーキへの執着を見せる女子、その女子に恋心を抱くケーキ屋のバイト店員、そしてその先輩店員および姉、さらには姉の後輩社員と、人間模様が楽しい連作短編。帰宅途中、コンビニで思わずまるごとバナナを買ってしまったのでした。だって絶対食べたくなる。
読了日:09月24日 著者:坂木 司

■極限団地: 一九六一 東京ハウス
イヤミスという言葉がいつからあり、誰が最初だったのか知りませんが、私の中ではやっぱり「元祖イヤミスの女王」といえばこの人です。当時みんながこぞって入居したがった団地なのに、トイレットペーパー騒動をはじめとしてなんだかよろしくないイメージもついて回る。阪本順治監督の『団地』(2015)を観たときも、藤山直美岸部一徳を取り巻く環境を少し恐ろしく感じたものでした。どんな暮らしであれ、晒される状況は怖い。そしてなんとか視聴率を取ろうとして煽る偽りのリアリティショーも怖い。この表紙の不気味さそのまんまの中身です。
読了日:09月26日 著者:真梨 幸子

■ふたたび嗤う淑女 (実業之日本社文庫)
第1弾ほどの生々しさはないものの、彼女に縋れば全員陰惨な死を迎えるところが恐ろしい。美しさを表現する言葉が第1弾とは異なっていて、そこまでの美貌を感じさせないゆえ別人だろうと思っていたらやはり。七里作品のダークヒーローは嫌いになれないものだけど、このダークヒロインはまだまだ好きになれず。人をさんざん煽るだけ煽って最後にどん底へ叩き落とす。まぁ彼女の依頼人たちにも同情はできません。そんなにオイシイ話が転がっているわけないっちゅうの。ネトフリで『地面師たち』を全話一気に観た後だったから、より面白く読めました。
読了日:09月30日 著者:中山 七里

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2024年8月に読んだ本まとめ

2024年09月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
たった3冊しか読めませんでした(泣)。
映画を観る本数を減らしてその時間を本に注ぎ込むほうが良いかしら。

2024年8月の読書メーター
読んだ本の数:3冊
読んだページ数:862ページ
ナイス数:523ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/8

■みんなのヒーロー (幻冬舎文庫 ふ 40-1)
人気俳優だったのはほんの一瞬。すっかり落ち目になった主人公が、大麻を吸ってラリったまま運転した車で人を轢いたところを、デブでブスのファンに見られてしまうという不幸。結婚してくれなければ轢き逃げを暴露すると脅されて地獄の日々が始まります。しかしまるで同情に値しないクズ男。脅す女のほうもえげつない。著者は元芸人の藤崎さんだから、登場人物や番組名はパロディのオンパレード。そこの部分は面白いものの、相当嫌な話。みんなのヒーローはいったい誰さ。できれば『お梅は呪いたい』のお梅にこの人たちを呪ってもらいたい。(^^;
読了日:08月11日 著者:藤崎 翔
https://bookmeter.com/books/21919038

■復讐の泥沼 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
ここ最近どころかここ数年に読んだ本の中でいちばん嫌なオチでした(笑)。冒頭からなんだこの女は!と思う。事故現場で自分と一緒に居た相手が死んでしまったからって、居合わせた医者らしき人物を憎むなんて逆恨みもいいところ。以降も主人公である彼女のぶっ飛び言動のせいで好きになれないまま進んだかと思うと、彼女が追う男のほうも驚くべき性質の持ち主。それでも彼の不幸な生い立ちを思えば致し方ない気もして、最後は彼を応援しかけていたのですけれど。えーっ。こんな女がいたら本気で怖い。泥沼に突っ込んで二度と出てこないでください。
読了日:08月13日 著者:くわがきあゆ
https://bookmeter.com/books/22056156

■眠れぬ夜のご褒美 (ポプラ文庫 ん 1-17)
美味しいものが出てくる話には無条件に飛びついてしまうところがあります。それがもしもたいした話じゃないとしても、料理を想像しただけで心が満たされるからいいやって。本作はたいした話じゃないとは言わないけれど、各話のタイトルだけでもう満足。どこか1軒行ってみたいところを挙げるとしたら丑三つ時の寺でしょうか。ウチのダンナは化学調味料アレルギーですが、「正しくないラーメン」のほうが旨いという点には賛同すると思います。面白いと思ったのは「ワケアッテ」。なるほど、「訳あり」じゃなくて「分け合って」。そのほうが断然いい。
読了日:08月26日 著者:標野 凪,冬森 灯,友井 羊,八木沢 里志,大沼 紀子,近藤 史恵
https://bookmeter.com/books/22011622

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2024年7月に読んだ本まとめ

2024年08月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2024年7月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:2288ページ
ナイス数:667ナイス

■成瀬は信じた道をいく
私が使わない言葉のひとつに「親友」があります。双方の思いがきっちり五分ということはまずないと思うし、「私たち親友だよね」なんてお互い確かめ合うような関係も好きじゃない。だけど、友達が誰かに私のことを紹介してくれるときに「私の親友」と言われるとちょっと嬉しかったりする。成瀬は島崎のことを親友とは言わないかもしれないけれど、普通に「私の親友だ」とか言いそうで、そのときの島崎の気持ちを考えるとニヘッと笑ってしまう。お初にお目にかかる人たちもみんないいキャラだなぁ。たとえマンネリ化しようともこのまま続いてほしい。
読了日:07月04日 著者:宮島 未奈

■いちまい酒場 (講談社文庫 い 109-7)
「いちまい」は千円札1枚のこと。味噌ダレが自慢の酒場“いっぱい”では、その1枚で串揚げ4本か味噌おでんの皿にビールか焼酎も付いてくる。店主は強面ながらイケメン。傷痕のせいか“侠飯”シリーズの柳刃とかぶります。穏やかな連作短編を想像していたら、出来事が割と生々しい。この酒場の常連客はそれなりに歳を食っているゆえ、私の苦手な「オッサンあるいはオバハンの妄想」的な話も多くて。そういう私もオバハンだから、現実を見せられているようで余計にキツかったりも。だけど続編があればまた手に取って同じ感想を持つことでしょう。 
読了日:07月09日 著者:池永 陽

■朽ちないサクラ (徳間文庫)
映画版を先に観て黒幕がわかっているものだから、この狸親父め!と言いたくなっていちいち苦笑い。原作にほぼ忠実。異なるのは、亡くなった臨時職員の交際相手と彼女に関する情報の入手経緯ぐらいでしょうか。『帰ってきたあぶない刑事』と同じ原廣利監督だなんて、こんなシリアスな作品もお撮りになるとは驚く。泉役の杉咲花、その上司役の安田顕、捜査一課の刑事を演じた豊原功補、皆すばらしかったです。って、映画の感想になっちゃいました。ただただ、公安って怖いところだなぁと思う。柚月さん、こんなのを書いて公安からマークされませんか。
読了日:07月15日 著者:柚月裕子

■凶眼の魔女 (実業之日本社文庫)
それほど想像力が逞しくなくてもこの幽霊画は怖い。それ以上に「殺されるときの目」をしている肖像画が怖い。性同一性障害を周囲には隠している凄腕の女刑事。借金で首が回らなくなった末にクビになった元刑事の探偵。双方が同じ事件をそれぞれ調べる途中で出会い、お互い信頼できないまま情報を出し合います。こんなに惨い殺し方ができるものだろうかと思うほど凄絶なので、想像しなくて済むように飲酒しながら読んだら、登場人物が多くて関係も入り組んでいるせいで混乱。素面で読むべし。面白い。シリーズ化希望。って、もうとっくにされている。
読了日:07月18日 著者:吉田 恭教

■オカ研はきょうも不謹慎! (PHP文芸文庫)
久しぶりに『侠飯』を読んだら、ほかの福澤さんも読みたくなりました。だけどこの表紙に騙された。夜中に読むと怖いじゃあないか(泣)。大学のオカルト研究会のメンバーが事故物件を訪れたら、以降、怪奇現象に見舞われるメンバーが出てきます。並行して調査をおこなうオカ研。たいして怖くなかろうとナメていたら、インターホン鳴る→開ける→誰もいないのに水でびたびた。って怖すぎるやろ。意を決して最後まで読めば、やっぱり怖いのは人ということでホッ。でも誰ですか、着物の人。個人的には不気味すぎる女刑事がツボ。これも続編ありますか。
読了日:07月24日 著者:福澤 徹三

■緑陰深きところ (小学館文庫 と 12-1)
暗くて重い話なのに微かな光が見えます。想い合っていた女性と無理やり引き離されたうえに、彼女を奪い去った兄によって彼女とその娘が殺されてしまった。その兄から半世紀近く経って届いた葉書を見て、兄を殺しに行く決意をする主人公。そしてなぜだか現地まで同行することになる若者。主人公よりは若いけど、同じく昭和から令和を生きている者として、さらには大阪に馴染みがある者として、こんな話が実際にあるわけはないけれどあるかもしれないと思わされます。これもひとつのハッピーエンド。余談ですが『ボックス!』と舞台がかぶっています。
読了日:07月29日 著者:遠田 潤子

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2024年6月に読んだ本まとめ

2024年07月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2024年6月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1734ページ
ナイス数:607ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/6

■COLD 警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花 (角川ホラー文庫)
そろそろ梅雨入りという時期に雪女の話とは。このシリーズのことなので、最終的には非科学的ではない正体に落ち着きます。健気な桃ちゃんの今後が気になるところ。いずれ大人になって、内藤さんのどのシリーズかに刑事として登場するのではと密かに期待してしまいます。内藤さんには今後そこにたどり着くまでの年月を生きて書き続けていただきたい。余談ですが、の出身が秋田県大仙市、もとの仙北郡刈和野です。その地名を聞くだけで切なくなると言う父。父にこの本を読ませたいような、でも「切ない」じゃなくて悲しくなっちゃうかなとも思う。
読了日:06月05日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/21918259

■人生最後のご馳走 (幻冬舎文庫)
先々月がんで亡くなったは、昔この病院でボランティアをしていました。母に本作を見せたら当時のことが懐かしそうでした。そりゃ美味しそうだけど、いったいいくら要るのかと思いながら私も読んだら、高額の入院費を払った人のためのサービスではないとのこと。素晴らしいことです。ただ、よそに移ったら食欲が失せて体調が悪化したというような話には、がんが進行しているのだからそのせいとも言えないのではと思う。食事は大切、でも食事以外の面でも患者と共に前向きな気持ちになれるようにしたい。というのは私が言うまでもないことですよね。
読了日:06月10日 著者:青山 ゆみこ
https://bookmeter.com/books/14437148

■成瀬は天下を取りにいく
読んでいるときはめちゃくちゃいいと思っていたわけではありません。が、時折ふきだしてしまうほど可笑しい。「ほなミルクボーイやないか」なんてもうツボ。成瀬はいわゆる空気の読めない人なのかもしれない。でも、誰にも迷惑をかけていないし、誰かを傷つけてもいない。人の顔色を窺って嫌われることを恐れないで、こんな生き方をするのはありだよと言われているかのよう。成瀬について話すときに楽しそうな島崎のことも大好きです。残りの頁が少なくなるにつれ、どうかこのまま終わらないでほしいと思いました。ゼゼカラ解散じゃなくてよかった。
読了日:06月16日 著者:宮島 未奈
https://bookmeter.com/books/20716260

■アトムの心臓 「ディア・ファミリー」23年間の記録 (文春文庫 き 49-1)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】良い話なのにこんな感想で恐縮ですが、私は「老けメイク」が何よりも苦手なため、のっけから大泉洋菅野美穂の爺婆メイクにドン引き。ずっとこのメイクを見せられたらどうしようかと思いましたが、最初と最後だけでホッ。淡々としていた原作と比べて、映画らしくというのか、泣きに寄せられている感はあります。そこに乗せられるもんかと言いたいところだけど、やっぱり泣きますね。専門的な話も映像になるとわかりやすい。できる、やるぞという心を持ち続けること。頭の下がる思いです。
読了日:06月16日 著者:清武 英利
https://bookmeter.com/books/21826790

■九十歳。何がめでたい
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】佐藤愛子役の草笛光子の生誕90年記念作品なのだそうで、本当に90歳とは驚きました。とても魅力的なキャストですが、実は私は前田哲監督のことが少し苦手。本作も、町ゆく人の誰もがこの本を手にしてゲラゲラ笑っているシーンなどがヨイショのしすぎじゃなかろうかと思って冷め気味に。記者会見会場ではマスコミの人たちのとってつけたような笑い声が気になって、泣く演技よりも笑う演技のほうがうんと難しいことを感じました。とはいえ、万人受けしそうな作品で、老いも若きも楽しめると思います。
読了日:06月25日 著者:佐藤愛子
https://bookmeter.com/books/11058890

■能面検事の奮迅 (光文社文庫 な 39-4)
御子柴弁護士シリーズは別格の面白さとして、ここ最近読んだ七里作品を思い返すと、どれも無難には面白いけれど期待以上ではない、むしろそれ以下でした。本作は久しぶりにさすがと思えるもの。いつものことながら、実際にあった新旧いくつかの事件を彷彿させる出来事が盛り込まれているから、事件そのものをいろいろと思い出しつつ楽しむことができます。社会派でありながら大いなるエンタメ。残り10頁になってからまだどんでん返しがあるのは、七里ファンにはネタバレでも何でもないですよね(笑)。御子柴弁護士と並んで不破検事に惹かれます。
読了日:06月28日 著者:中山七里
https://bookmeter.com/books/21882182

■君の余命、買い占めました
正直言うと、「サッと読めて感動できる」というキャッチコピーは大嫌いです。本でも映画でも「ほらほらココ、感動的でしょ」みたいなアプローチは冷めまくる。それでも本作を読み始めたのは、「サッと読める」ならばありがたいから。短編12話のうち、最初のほうは「やっぱりね」。だけど、2年前にを、2カ月半前に母を亡くした身だからか、先へ進むほど心に染みる。特に最後の2編。最期に母の目を伝って落ちた涙を思い出すし、母の死によって実家を退去に当たり、父の蔵書約5千冊を片付けたことがすでに懐かしい。感動できたことを認めます。
読了日:06月29日 著者:青井青
https://bookmeter.com/books/21845503

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