夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

野球の映画、ひとつめ。

2006年10月26日 | 映画(番外編:映画とスポーツ)
1992年、新庄がプロ入り初スタメンで出場した日、
甲子園のライトスタンドで生観戦していました。
名前も知らなかったその選手が、初出場のその試合で
華々しくホームランを放つのを目の前で見て以来、
阪神を去ろうとも、新庄は決して憎めない存在でした。
日ハム、優勝おめでとう。新庄、ありがと。

もともと野球の映画が大好きですが、
日本の野球映画はあまり観ていないことに気づきました。
というわけで、新作落ちしたばかりの『ピーナッツ』(2005)。
ハリウッドの野球映画についてはこちらこちらをどうぞ。

本作はウッチャンの監督・主演作品。
スランプに陥ったスポーツライター、秋吉が、
以前、自分がキャプテンを務めた草野球チーム、
藤沢ピーナッツを再結成しようと帰郷します。

10年前、秋吉は地方の軟式野球大会で
ピーナッツを優勝へと導きました。
現在、ピーナッツはかろうじて存続しているものの、
試合はメンバーが足りず、いつも棄権。
そのうえ、再開発計画の対象となっている野球場が
いずれ取り壊されてしまう予定。

執筆のネタ探しという不純な動機で思い立ったことでしたが、
秋吉はいつしか本当に野球がしたいと感じるようになります。
彼の動機を知って去りかけたメンバーもその気持ちを酌み、
再開発計画中止を賭けて、建設会社の強豪チームとの対決することに。

さまぁ~ずの三村、大竹をはじめ、
TIMのゴルゴ松本、レッド吉田、ふかわりょうが
ピーナッツのメンバーとして出演しているほか、
有田哲平、ウド鈴木、原田泰造から竹中直人まで、
多くの芸人(?)が出演しています。

お笑いに走るのかと思いきや、意外と真面目。
特にジワッときたのは、レッド吉田演じる赤岩と
奥貫薫演じるその妻アカネのやりとりです。

乳癌を患うアカネは、昔、チームのマネージャー。
その名残で、結婚後も夫のことを「赤岩君」と呼びます。
ピーナッツ復活を聞くと、アカネは自分のことのように喜び、
「昔みたいにホームランを打って見せて」と言います。

手術の日、試合をあきらめて妻に付き添おうとする夫に、
アカネがかけるのはこんな言葉。
「赤岩君、かっこわるい。私の手術に付き添って試合に行かないなんて。
 全然かっこよくない。私は大丈夫だから。
 ホームラン、打ってきて」。

「ずっとずっとずっと前に
 忘れていた勇気
 いま、取り戻してみたい」。
このキャッチコピーも好き。

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『バーバー吉野』

2006年10月20日 | 映画(は行)
『バーバー吉野』
監督:荻上直子
出演:もたいまさこ,米田良,大川翔太,村松諒,宮尾真之介,石田法嗣他

なんとなく観そびれていた2003年の作品。
映画の掲示板などを覗いてみると
めった切りにしている人もいますが、私は好きです。
っていうのか、ほぼ毎日1本、映画を観ていても
私が「これは勘弁してくれ~」と思う映画って
3年に1本程度なので、私の好き嫌いは当てにならず。

緑に囲まれたのどかな田舎町。
その町の小学生男児は全員、同じ髪型。
彼らは、恐るべき吉野のおばちゃんが経営する床屋、
「バーバー吉野」で散髪することをなかば義務づけられている。
全員がイケてないマッシュルームカット、「吉野刈り」。
前髪は眉から2.5cmに切り揃えるのが鉄則。

吉野刈りの所以は昔からの言い伝えにあるらしい。
男児をさらいに来る天狗が、全員同じ髪型なら戸惑うから。
毎年おこなわれる祭りの日には、山の神様を鎮めるため、
吉野刈りの男児全員で「ハレルヤ」を合唱する。
日本の山の神を奉るのに賛美歌を合唱する変な慣習にも
誰も異議を唱えない平和な町。

ある日、東京から茶髪の転校生、坂上君がやってくる。
どこから見てもかっこいい髪型でイケメンの坂上君にクラス中の女の子がチヤホヤ。
当然おもしろくない男の子たちは、
吉野刈りにするまで仲間に入れてやらないと坂上君に告知。
先生も「この町の伝統だから」と吉野刈りを勧めるが、
坂上君は「髪型の自由は憲法で守られている」と断固拒否。
やがて坂上君の髪型問題が町全体を揺るがせて……。

バーバー吉野の息子である慶太をはじめ、
その遊び仲間の男の子たちがめちゃめちゃ愛らしい。
頻繁に散髪に訪れるハゲ親父の頭を見て
「切るとこ、ねえじゃん」とつぶやいたり、
すぐにお腹をこわしてトイレの個室に立てこもる仲間を
「ウンコしてじゃねえよ!」とからかったり、
小学生の頃、あったよね、こんな会話ってことばかり。

ふざけてばかりの男の子たちにも好きな女の子はいて、
実は内心「かっこよくなりてぇ!」と思っています。
脱・吉野刈りを宣言して、母親を「くそババァ」と呼びつつ、
でも、母を想う気持ちを慶太が精一杯表すシーンは思わず涙。
温かさが心地良い作品です。

ちなみに、坂上君が仲間に入るきっかけは
エロ本を何冊も所有していたから。
最近、うちの職場にやってきた好感度大のフランス人青年に
「僕はエロ大王です」って日本語教えたの、いったい誰よ。

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『八月のクリスマス』と 『8月のクリスマス』

2006年10月16日 | 映画(は行)
韓流ブームの到来前、「いちばん好きな映画は?」と聞かれたら、
私は迷わず『八月のクリスマス』(1998)と答えていました。
流行りものに背を向けたくなる性分なので、
『冬ソナ』以降、そう答えることは避けていますが、好きなものはやはり好き。
同じ映画を何度も観るほうではない私も、この映画だけは別。
日本で公開された1999年、大阪・九条の小さな映画館に
ひとりで足を運んで以来、何度となくDVDで観ています。

山崎まさよし主演でリメイクされたのが『8月のクリスマス』(2005)。
昨年の秋に公開され、今年の春先にはDVD化されましたが、
オリジナルがあまりに好きなもので、
リメイク版に手を出せないまま半年。やっと観ました。

ストーリーはおおむねオリジナルに忠実です。
とある町で小さな写真館を営む30代の寿俊。
一見、健康で明るく穏やかな彼は病魔に冒され、余命わずか。
自分の運命を受け入れ、それを知っているのは家族のみ。
静かに最期を迎えることだけを願い、
もう二度と恋はしないと誓っていた彼の前に現れたのは
小学校に臨時教員としてやってきた20代前半の由紀子でした。
写真館の店主と客として過ごすうち、お互いに恋心を抱くようになります。

ある日、寿俊は倒れて入院しますが、由紀子はそのことを知りません。
ずっと休業中の写真館の扉の隙間から手紙を入れる由紀子。
しかし、寿俊から返事が来ることはなく、
由紀子は別の町へ異動することを決めてしまいます。

オリジナルとリメイク版が決定的に異なるのはこの後。
どちらも、退院した主人公が手紙の返事をしたためます。
オリジナルではこの返事が投函されることはありません。
リメイクでは寿俊の死後、由紀子のもとに届きます。
オリジナルのほうが圧倒的に好きですが、
リメイクのほうが明らかにわかりやすく、
また、オリジナルのラストシーン、タリムの笑顔の意味も、
リメイクを見ればわかるでしょう。

突然会えなくなった大好きな人。
その理由がその人の死であることを
知ったほうがいいのか、知らないほうがいいのか。
オリジナルとリメイクを両方観ることで考えさせられます。

「僕は君のことが、本当に、本当に好きでした。
 君に逢いたい。君を抱きしめたい。一緒に生きていたい。
 君は神様がくれた、最高のプレゼントです」。

遺されたのがこの言葉なら、やっぱり知りたい。
でも、死ぬ前に伝えたい、伝えてほしいと思いませんか。

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『ヒストリー・オブ・バイオレンス』

2006年10月13日 | 映画(は行)
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(原題:A History of Violence)
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ヴィゴ・モーテンセン,マリア・ベロ,エド・ハリス,
   ウィリアム・ハート,アシュトン・ホームズ他

タイトルの「ヒストリー・オブ・バイオレンス」とは
「犯罪の前歴」、つまり前科のことです。
目の前にいる穏和な夫が、実は凄腕の殺し屋だったと知ったら?
“ロード・オブ・ザ・リング”シリーズのアラゴルン役、
ヴィゴ・モーテンセンが、そんな夫を演じています。

インディアナ州の田舎町、ミルブルック。
トムは小さな食堂の経営者。
店はそこそこ繁盛し、妻のエディ、高校生の息子ジャック、まだ幼い娘のサラに囲まれ、
愛情に溢れた幸せな日々を送っている。

ある晩、店に見慣れない男が2人やってくる。
閉店後だというのにコーヒーを注文すると、
ウェイトレスをいきなり捕まえ、銃を向ける。
すると、トムはカウンターをすばやくまたいで
男たちの銃を取り上げ、逆に撃ち殺す。

もちろん正当防衛とみなされ、またたく間に町のヒーローとなったトム。
マスコミに追いかけまわされるようになるが、寡黙なヒーローは大人気。
店にはひっきりなしに客が訪れる。

数日後、全国的に有名になったトムのもとへ
片目の潰れたマフィア、フォガティとその部下が
フィラデルフィアから乗り込んでくる。
トムはフォガティと面識がないはずだが、
フォガティはトムのことをジョーイと呼び続ける。
トムの本名はジョーイで、マフィアのリッチーの兄弟であり、
その昔、諍いからフォガティの目を潰したのだと。
ほかの仲間を殺して出て行ったジョーイのことを
リッチーやフォガティはずっと捜していたらしい。

トムはまったく何のことかわからないと言い切るが、
その日以来、フォガティらにつけ狙われて……。

ネタバレ御免。最初はどう見ても善人のトムなので、
とても気の毒な人違いだと思わされます。
ところが意外にあっけなく、フォガティの言うことが真実だとわかり、
トム自らそれを認めてからは状況は急展開。

学校でいじめられっぱなしだった息子のジャックは、
今まで彼の奥底に潜んでいたかのような暴力性を見せ、
相手に仕返しして停学を喰らいます。
トムに「暴力で解決しようとするな」と叱られ、
ジャックは「銃でならいいのか」と反論。
言葉に詰まるトムの表情は何とも言えず、辛い。

最後のシーンのあとに続く台詞は?
私なら「おかえり」って言いたいけれど、甘いかな。

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『好きだ、』

2006年10月09日 | 映画(さ行)
『好きだ、』
監督:石川寛
出演:宮崎あおい,西島秀俊,永作博美,瑛太,小山田さゆり他

「言いたいのに言えなかった、
 そんな想い、覚えていますか」。

私よりふたつ年上の石川寛監督は、30代のある時期、
どうしようもなく好きだった人にそれを伝えることができなかったそうです。
同じことが10代の頃の自分にもあったことを思い出し、
今、このことと向き合わないと、先に進めないような気がして、
本作を撮ることにしたそうです。

17歳のユウは、同級生で元野球部のヨースケに密かな想いを寄せている。
ヨースケは野球部を引退してから急に音楽に目覚め、
放課後の河原で、自作の曲の出だしの部分ばかりを
ヘタクソなギターでつま弾いている。
ヨースケもユウのことが好きなのに、言えない。
ただ、横に並んで座っているだけのふたり。

ユウの姉は半年前に大切な人を亡くした。
話のきっかけとしてユウの姉を気遣うヨースケに、
ユウは「お姉ちゃんを元気づけるために会ってあげて」と頼む。
それからたびたび会うようになるユウの姉とヨースケ。

ある日、ユウの姉が事故に遭い、昏睡状態に陥る。
ヨースケとの待ち合わせ場所に向かう途中だった。
以来、ユウとヨースケは会わなくなってしまう。

17年後、34歳になったヨースケは
CFディレクターとして音楽業界で身を立てていた。
素人っぽい音を出せるギターの弾き手を探していたところ、
偶然やってきたのはユウだった。
ヨースケがあの河原で弾いていた曲がユウのギターから奏でられる。

台本なしで撮影されたと聞き、この間(ま)に納得しました。
この間にドキドキできるかどうかで
本作を好きになれるかどうか、分かれると思います。
河原でふたり並んで、手をつないでほしいと思っているユウ。
たぶん、それをわかっているのに、ポケットに手を突っ込むヨースケ。
「そこは手をつかむとこなんだよ!」と思わず言いたくなります。
向かい合っても何もできないヨースケにユウがキスをすれば、
逃げるように帰ってしまうヨースケ。
どうしてあのとき、何もできなかったんだろうという思いが
ずっとずっとヨースケの心に残っていることが伝わってきます。

17年の間、想い続けていたわけではないのに、
お互いに頭の中から離れることはなかったふたり。
「好きだ」、たったこれだけの言葉なのに、
伝えるときのあの気持ち、伝えられなかったときのあの気持ち。
後悔しないように伝えたいな。

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