夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『室井慎次 生き続ける者』【先行上映】、2回観る。

2024年11月18日 | 映画(ま行)
『室井慎次 生き続ける』
監督:本広克行
出演:柳葉敏郎,福本莉子,齋藤潤,前山くうが,前山こうが,松下洸平,矢本悠馬,丹生明里,松本岳,西村直人,
   真矢ミキ,筧利夫,飯島直子,小沢仁志,木場勝己,加藤浩次,小泉今日子,稲森いずみ,いしだあゆみ他
 
先行上映初日だった11月8日はイオンシネマ茨木で、2日目だった9日はシアタス心斎橋で鑑賞しました。
何も早々と2回観んでもええやんと思ったけれど、心斎橋まで車で行ったら、
1,500円の駐車料金を払って映画1本だけで帰るのはもったいなくて。
ほかにハシゴできる作品がないか調べても何もなくて、結局2回目のこれを観るしかないのでした。
 
『室井慎次 敗れざる者』は納屋が燃えるシーンで終わりました。
たぶん杏(福本莉子)が火を点けたんだよねぇ。
 
「レインボーブリッジを封鎖し損ねた事件」では試験的に使用されていた監視カメラが
いまや至る所に設置されていて、犯罪捜査に用いられている時代ですから、それを調べりゃ犯人はすぐわかる。
地元の交番勤務のおちゃらけ新米警察官・乃木(矢本悠馬)は「被害届を出してください」と言うし、
小沢仁志木場勝己演じる近隣住民も「とっとと調べて犯人を捕まえろ」と言う。
なのに「被害届は出さない」と室井は言います。なんでだよぉとみんな不思議がったり怒ったり。
 
立ち位置的には青島の後継者ということになる刑事・桜(松下洸平)の隣で捜査会議に出席していた室井は、
桜から火事当日の監視カメラ映像を見せられて、杏が納屋に出入りしていたことを知ります。
そのとき、桜から知らされたことがもうひとつ。
今回の死体遺棄事件の犯人とおぼしきグループのメンバーが、杏の母親・真奈美(小泉今日子)の信者だということ。
 
後日、ふたたびの捜査会議中に犯人からかかってきた電話の声を聴いた室井は、
その声の主が18年前の事件の犯人と同じ、つまりすみれ(深津絵里)を撃った奴であることを確信し、桜に伝えます。
 
事件がもっと大きく扱われるのかと思っていたら、意外とショボい。
それよりも母親の言うとおりにするしかなかった杏や、リクと出所してきた父親(加藤浩次)の話が焦点。
タカ(齋藤潤)が「人をむやみに疑っちゃいけないって室井さんが言うんだ。自分がどう生きるかが大事なんじゃないかな」と言うところや、
リクが父親のもとへ帰ったときに「こんなことは二度と嫌だから」と勉強しまくる姿などにジーン。
母が亡くなった折に父の蔵書5千冊を片付けた私としては、「そんな本、売ったところで参考書買えるほどの額にはならんよ」と思うけど(笑)。
 
考えさせられたのは児童相談所の判断。
虐待を受けてきた子どもを今後育てるのは、里親よりやっぱり実の親がふさわしいというのは、本当にそうでしょうか。
「自分のほうが適正だと思っていませんか、父親としての」と問われたときの室井の顔を見れば、確かに彼には驕りがあったかもしれない。
でも、いままで子どもを酷く虐げてきた人間が、いくら口では心を入れ替えたと言っても手を出さずにいられるとは思えない。
「子どもがいたら生活保護はいくらもらえますか」なんてぬけぬけと実父が聞いてきた時点で考え直してほしかった。
 
さて、まだご覧になっていない方、本作の結末を知らずにいたい方はこの先を読まないでください。
 
室井さん、死んじゃうのか〜。
生き続けるのは彼の遺志。子どもたち3人が引き継いで生きてゆくのですね。
で、本シリーズで青島を見ることはもうできないのかと思っていたら、エンドロール後に登場。うひょー!
シリーズはまだ続くと書いてあるじゃあないか。今度はギバちゃん抜きで織田裕二なのね。
ふたり一緒のところを見られないとはなんか寂しいけれど、待ってます!
 
追記:ネットニュースを観ていたら、16日の『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』放送後に
   「すみれさんは死んじゃったのか?」という疑問が噴出しているそうな。
   本作で室井さんがへらへら笑う犯人に向かってすみれさんのことを語るシーンがあります。
   警察を辞めて今も苦しんでいるすみれさんだけど、死んでませんから!

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『まる』

2024年10月30日 | 映画(ま行)
『まる』
監督:荻上直子
出演:堂本剛,綾野剛,吉岡里帆,森崎ウィン,戸塚純貴,おいでやす小田,
   濱田マリ,柄本明,早乙女太一,片桐はいり,吉田鋼太郎,小林聡美他
 
109シネマズ大阪エキスポシティに行ったら客は私ひとりでした。
えーっ、堂本剛主演なのに? 綾野剛も出演しているのに? 荻上直子監督作品なのに?
わりと広めのシアターが割り当てられていたのに、今年9度目の“おひとりさま”
 
美大を卒業して画家になる日を待ちつつもまだ身を立てることは叶わない沢田(堂本剛)。
人気現代美術家である秋元(吉田鋼太郎)のアシスタントで生活費を稼いで4年。
同じくアシスタントの田中(戸塚純貴)は2日目にしてもう辞めたいとぼやいているし、
矢島(吉岡里帆)は秋元にアイデアをパクられ続けても文句ひとつ言わない沢田にモヤモヤしている。
 
ある日の仕事帰り、空を眺めながら自転車を漕いでいた沢田は転倒。
利き腕を骨折して秋元から解雇を言い渡される。
ぼろアパートの自室で1匹の蟻が這うのを目で追いかけ、ふと蟻を囲むように左手で「○(まる)」を描く。
金に困ると毎度立ち寄る古道具屋にその絵も持ち込むと、店主(片桐はいり)が怪訝な顔。
 
すると数日後、土屋(早乙女太一)という男が訪ねてきて、まるの絵を1枚100万円で買い取りたいと言う。
ただし、まるなら何でも良いわけではなく、土屋が認めたまるにだけ100万円払うと。
 
訳がわからず古道具屋を再訪すると、沢田のまるの絵を買って行った奴がいると言う。土屋だ。
さらには通りすがりの画廊にあのまるの絵が飾られているではないか。
画廊オーナーの若草(小林聡美)に自分が作者だと名乗ると、「さわだの○」がとんでもないことになっていると言われ……。
 
荻上監督の作品は基本的ほんわかゆるり。
そんな中でも白い荻上さんと若干黒い荻上さんがいらっしゃるように思います。
『かもめ食堂』(2005)や『レンタネコ』(2011)は白いけど、『波紋』(2022)は黒い。
この『まる』も黒いほうに感じます。
 
住んでいるアパートは傾いていて、それが脳波に影響を及ぼすのか眠れない。
隣室の横山(綾野剛)は明らかに精神に異常を来している様子で、ついには壁に蹴りを入れてぶち抜きます。
人の役に立つ人間になりたいのになれないんだとぼやく横山が「働かない2割の蟻」の話に対して、
沢田が2割の蟻も必要だと答えるのが印象的。
また、叶わない夢ならあきらめちゃいけないのかと話すのも印象に残っています。
 
骨折した沢田が繋ぎのつもりで始めたコンビニのバイト。
森崎ウィン演じるミャンマー出身のバイト青年の境遇もつらい。
それでも怒らず焦らず、何でも丸くと微笑む彼の姿が切ないです。
 
偉そうだったのに、沢田が売れ出すと急に態度を変える人々。
大家(濱田マリ)とか元同級生(おいでやす小田)とか。人間の「欲」って、なんと醜い。
一方、欲とは無縁に思える謎の先生(柄本明)の存在が面白い。
 
いろいろと考えさせられて結構面白かったけれど、人には薦めづらい作品です。
相当好き嫌いがありましょうし、なんと言っても客は私ひとりだったのですから。

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2回目の『室井慎次 敗れざる者』

2024年10月29日 | 映画(ま行)
シアタス心斎橋で前述の『破墓/パミュ』を観終わったのが20:40頃。
シュッと車に乗って帰れば21:10から箕面で上映の映画に間に合うかなと思ったけれど、ちょっとしんどそう。
じゃあもう帰るかとも思うけど、ミナミで駐車場に入庫しているのに最大料金を払って映画1本だけというのはもったいないやん。
というわけでこれしか選択肢なく、2回目の『室井慎次 敗れざる者』を観る。
どっちみちもう1回は観るつもりだったからいいのです。
 
以前にも書いたことがあるかもしれませんが、“踊る大捜査線”シリーズの大ファンでした。
死ぬときに「いちばん思い入れのあるドラマは何か」と聞かれたら、これと答える可能性もあります。
まだDVDがさほど普及していなかった時代、発売されたVHSビデオを全巻購入。
当時の私としてはものすごく高価な買い物だったと思いますが、どうしてもほしくて。
今それがどうなったかというと、家を片付けた折に処分しちゃいました。
だってどうせもうビロビロに伸びているし、そもそもビデオデッキもぶっ壊れたし。
 
室井さんとタカが、タカの母親を殺した犯人に面会に行くシーンが良いですよね。
アンタみたいな大人を知ってるよ。だけどそうじゃない大人も僕は知ってる。
その言葉を聴いているギバちゃんの表情に涙が出そうになります。
 
昔のシーンがこんなに登場しなければ、2回観ようとは思わなかったかもしれないけれど、
織田裕二深津絵里もいかりや長介も、そしてやっぱりに似ていると思うユースケ・サンタマリアも出てくるから、
3回目も観てしまうかもしれないよ。
 
“踊る大捜査線”シリーズを一挙劇場公開して応援上映も、なんて企画はないかなぁ。

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『室井慎次 敗れざる者』

2024年10月22日 | 映画(ま行)
『室井慎次 敗れざる者』
監督:本広克行
出演:柳葉敏郎,福本莉子,齋藤潤,前山くうが,前山こうが,松下洸平,矢本悠馬,生駒里奈,丹生明里,佐々木希,
   筧利夫,甲本雅裕,遠山俊也,升毅,真矢ミキ,飯島直子,小沢仁志,木場勝己,稲森いずみ,いしだあゆみ他
 
“踊る大捜査線”シリーズが大好きでした。
ドラマ終了時に全巻買ったビデオはびろびろに伸びたのでもう処分してしまったけれど、
サントラのCDは今もちゃんと残っていて、聴けば泣きそうになる曲もあります。
 
最後の劇場版から10年以上が経ってからこうして続編が制作されるなどとは夢にも思わず。
監督はずっとおんなじ本広克行、脚本もずっとおんなじ君塚良一、プロデュースもずーっと亀山千広
なのに主役だった織田裕二がこの場にいないのはやっぱり寂しいけれど、
いろいろと大人の事情がありそうだから仕方のないことなのかなぁ。
そんな織田裕二不在の続編ではありますが、スピンオフとしてじゅうぶん以上の楽しさです。
 
警察を辞めて故郷の秋田へと戻った室井慎次(柳葉敏郎)は、池の端に建つ古民家を購入。
タカこと森貴仁(齋藤潤)とリクこと柳町凜久(前山くうがと前山こうがの2人1役)を施設から引き取り、一緒に暮している。
タカは3年前に母親(佐々木希)を殺された過去があり、リクは服役中の男の息子。
つまりふたりは事件の被害者と加害者の子どもという立場で、室井は進んで里親となった。
 
心穏やかに過ごしていたある日、池の向こうから死体が見つかる。
身元を調べてみると、かつて室井が関わった特殊詐欺事件の犯人グループのひとりで、数年前に出所していたことがわかる。
秋田だけの事件ではないと、警視庁からも人がやってきて対策本部が設置されたうえに、室井も協力を求められて困惑。
 
同時期、室井家の周囲をうろついていたらしい少女が倒れているのをリクが見つけ、室井たちが介抱する。
彼女は日向杏(福本莉子)、なんと史上最悪の猟奇殺人犯と呼ばれた日向真奈美(小泉今日子)の娘だった。
室井に代わって料理をつくったり、リクとタカにゲームを貸したりと、馴染んでいる様子を見せる杏だったが、
何が目的なのか、室井について信じがたい嘘をリクたちに吹聴しはじめる。
それを鵜呑みにしてリクが憤る一方、タカは彼女の怪しさに気づいて慎重になるのだが……。
 
甲本雅裕遠山俊也筧利夫といった懐かしい顔ぶれとのやりとりにはグッと来て、それだけでいいと思えます。
その一方で、なんだか雑だなぁと思う場面もいくつか。
たとえば、杏が室井から暴力を受けているとか、里親をしているのは金目当てだからどうせそのうち子どもを捨てるとか、
あることないことじゃなくてないことないことをタカとリクに話すのですが、
室井のことを信じられなくなったリクが反抗的な態度を見せるようになります。
その後、何事もなかったようにリクが室井と普通に話すようになっているのは何故なんだ。
また、「ここから追い出す気はないが、人に迷惑をかけるな」と言われてふてくされた杏も普通に居るのがなんだかなぁ。
室井の「車を置かさせてください」という「さ入れ」の台詞も気になります。
という雑な点は置いておくとして、莉子ちゃんの演技がめちゃめちゃ怖い。もうやめて(笑)。
 
昔のシーンもいっぱい登場しますから、懐かしさに浸れます。
みんな歳を取ったのも嬉しいね。
 
来月公開の後編を楽しみにしています。

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『シネマ歌舞伎 め組の喧嘩』

2024年10月22日 | 映画(ま行)
『シネマ歌舞伎 め組の喧嘩』
出演:中村勘三郎,中村扇雀,中村橋之助,中村錦之助,中村勘九郎,中村萬太郎,坂東新悟,
   中村虎之介,中村歌女之丞,市川男女蔵,片岡亀蔵,市村萬次郎,坂東彦三郎,中村梅玉他
 
クライマックスシリーズ第1戦観戦のため甲子園に向かう前、
映画を1本くらいは観る時間があるんじゃないのと109シネマズ箕面へ。
 
久しぶりのシネマ歌舞伎鑑賞、いつぶりかと思ったら4年ぶり。
歌舞伎の舞台公演を高性能カメラで撮影してスクリーン上映するというこれ、
第1弾の上映は2005年だったそうで、私が観たのは2015年。
毎年数本新たに公開されて、現在第39弾まで公開中。
たびたびリピート上映もおこなわれていて、今回観たのは第29弾らしい。
 
“め組の喧嘩”は1805(文化2)年に実際に起きた鳶職力士の乱闘事件で、講談や芝居の題材にされてきました。
歌舞伎では通称『め組の喧嘩』、正式な演目名は『神明恵和取組』。初演は1890(明治23)年だとか。
本作は2017(平成24)年5月に平成中村座でおこなわれた公演です。
 
品川の由緒正しき料亭で、力士・四ツ車大八(中村橋之助=のちの八代目中村芝翫)と
町火消「め組」の若い鳶たち(中村勘九郎ら)が小競り合いを起こす。
め組の鳶頭・辰五郎(中村勘三郎)が仲裁に入ってその場を収めたものの、
四ツ車を贔屓にする武士たちが鳶を見下す発言にははらわたが煮えくり返る思い。ひそかに仕返しを決意します。
 
舞台公演がそのままスクリーンに映し出されるから、その場に居るつもりで観られます。
「中村屋!」の大向こう(=掛け声)は初めて聴くと驚きますよね。
今はもう慣れましたし、いつ大向こうが登場するのかと思うと楽しみでワクワク。
から教えてもらって何度も聴いては大笑いしたグループ魂の『中村屋』も懐かしく。
 
本物もそのうち観たいとは思うけれど、なかなか機会がないなぁ。

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