夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『メッセンジャー』

2013年03月30日 | 映画(ま行)
『メッセンジャー』(原題:The Messenger)
監督:オーレン・ムーヴァーマン
出演:ベン・フォスター,ウディ・ハレルソン,サマンサ・モートン,ジェナ・マローン,
   スティーヴ・ブシェミ,イーモン・ウォーカー,ヤヤ・ダコスタ他

『ゼロ・ダーク・サーティ』の公開に合わせたのか、2009年の作品を今ごろ上映中。
テアトル梅田にて鑑賞しました。

監督はイスラエル出身の脚本家で、
著名な監督にメガホンを撮ってもらう話が次々とボツになり、
自ら監督することになったのだそうです。

イラク戦争で負傷したため、帰国した米軍兵士のウィル・モンゴメリー軍曹。
英雄と崇められた彼の新たな任務は、兵士の訃報を親族に伝える仕事、つまりメッセンジャー。

共に行動する上官のトニー・ストーン大尉から教えられたさまざまなルール。
ポケベルは常に携帯し、何時であろうと応答せよ。
遺体の身元確認後24時間以内、できれば4時間以内に最近親者のもとへ。
なぜなら最近親者が報道によって死亡を知ることがあってはならないから。マスコミより早く。
まず最近親者に伝えること。最近親者以外が在宅していても伝えてはならない。
最近親者が心臓発作などを起こしたとかではないかぎり、
決して相手の身体に触れてはならない。ややこしいことになるかもしれないから。などなど。

遺族の態度や表情はまちまちで、怒りをウィルらにぶつける人もいる。
そんななか、夫の訃報を告知された女性オリヴィアは、
気丈にふるまうどころか、メッセンジャーの自分たちを気遣う言葉さえ口にする。
彼女のことを放っておけなくなったウィルは、
遺族に深入りするなというトニーの忠告を無視して、
彼女のもとを訪れるようになるのだが……。

遺族宅を訪問するさいにはチャイムは鳴らしません。
チャイムは朗報を期待させるからだそうです。
目の前で崩れ落ちそうになっている遺族を見ても、肩を抱いたりしてはいけません。
何年か前までは電報だったのが、こうして人を使って伝えることになり、
告知される側にとってそのほうがいいことなのかどうか。

ウィルに惹かれつつも思いとどまるオリヴィアを演じたサマンサ・モートン、
息子の死を知らされて憤る父親を演じたスティーヴ・ブシェミが○。
ウィルとはちがって事務的に仕事をこなしているように見えるトニーも、
本当は心が折れそうになっています。
ウディ・ハレルソン演じる彼がむせび泣くシーンは辛すぎました。

アメリカ人が監督だったならば、またちがう印象になっていたのかもしれませんね。
一風変わったアプローチの反戦映画でした。

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『コドモ警察』

2013年03月29日 | 映画(か行)
『コドモ警察』
監督:福田雄一
出演:鈴木福,勝地涼,マリウス葉,本田望結,吉瀬美智子,鏑木海智,
   青木勁都,秋元黎,相澤侑我,竜跳,北乃きい,小野寺昭他

まったく観るつもりはなかったのですが、
帰り道に簡単に立ち寄れる劇場でまだ観ていない作品はこれぐらい。
TOHOシネマズ伊丹にて、貯まったポイントで観ることにしました。
TVドラマ版も未見ですから、予備知識皆無です。

神奈川県警大黒署の特殊捜査課の辣腕ベテラン刑事たちは、
犯罪組織“レッドヴィーナス”から浴びせられた特殊なガスにより、
こどもの姿に変えられてしまう。

おとなの姿に戻るには、レッドヴィーナスを仕留めてガスを入手するしかない。
デカ長(鈴木福)、マイコ(本田望結)、ナベさん(鏑木海智)、イノさん(青木勁都)、
スマート(秋元黎)、エナメル(相澤侑我)、ブル(竜跳)は、
しばらくの間、こどもの姿のまま活動を続けることに。
見かけはコドモでも能力は元のままの彼らは、存分に力を発揮する。

ある日、来日するカゾキスタン大統領の暗殺予告がレッドヴィーナスから届く。
本庁勤務のエリート刑事である間聖四郎(マリウス葉)は、
特殊捜査課の力が絶対に必要だと上司に進言するが、
SP担当者はコドモもなんかに頼っていられるかと拒否する。
デカ長は何やら考えがあるのか、いとも簡単に手を引き、
その態度に納得できないコドモ刑事たちはバラバラに。

ところがその後、大統領が誘拐されたという連絡が。
デカ長のもとにコドモ刑事たちが戻り、結束を固めるなか、
元カノの絵里子(北乃きい)と街で偶然再会したエナメルは有頂天。
捜査に加わることもなく、絵里子とデートを重ねる。
おとなの姿に戻れたら再び交際を考えてもいいと言われたところへ、
エナメルをつけてきた男から、ある取り引きを持ちかけられる。

一方、単身で捜査に着手したブルは、レッドヴィーナスに捕らえられる。
デカ長は自らとブルを交換せよとレッドヴィーナスに乗り込むのだが……。

コドモ刑事たちは、カムフラージュのためにさまざまな家庭に預けられています。
そのうちのスマートの偽両親を務める夫婦がかなり鬱陶しい。
母親役の上地春奈はもう見たくないほどですが(すんません(^^;)
それ以外はまぁまぁ笑えるし、こんなもんかと。

大のおとなである人気俳優らがマジメに演技しているのが可笑しく、
特にコドモ刑事から「新人」とコケにされる刑事、国光信役の勝地涼が傑作。
鞄持ちのごとくデカ長たちの捜査に同行し、
だんだんこどもに戻っていく上司たちを時になだめます。
捜査中に山へ入れば、サワガニ捕りに夢中になるわ、カブトムシを探しはじめるわ、
そんな上司をおとなの仕事に連れ戻す、責任重大な部下なのでした。
また、小学校で同級生からデートに誘われたマイコが、
「私を誘うなんて20年早いわよ」と言いつつ、当日の服を必死で選ぶシーンも笑えます。

で、まだおとなに戻っていませんから、当然続編があるのでしょうね。

こどもの「一生懸命」に真面目につきあうおとなにニッコリしました。

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『プラチナデータ』

2013年03月27日 | 映画(は行)
『プラチナデータ』
監督:大友啓史
出演:二宮和也,豊川悦司,鈴木保奈美,生瀬勝久,杏,
   水原希子,遠藤要,和田聰宏,中村育二,萩原聖人他

『クラウド アトラス』を観たのは、本作の公開前日でした。
大人気らしく、前日の時点で初回満席のお知らせが。
その後の日曜祝日も上映館は満席続きだったようで、恐るべし、二宮くん。

で、私は109シネマズデー、帰り道に観ることに。
1,000円といえども平日の僻地、余裕のがらがら状態です。
それでもさすがに二宮くん、貸切状態ではありません。

言わずもがなの原作は東野圭吾。
『るろうに剣心』(2012)がなかなかに面白かった大友啓史監督ということで、
はりきって観に行きました。

近未来、2017年の日本。
政府は全国民のDNAデータをひそかに収集、登録。
警察庁の科学捜査機関、特殊解析研究所に勤務する神楽龍平は、
DNAデータを解析してあらゆる事件の犯人を断定する画期的なシステムを開発。
このシステムにより、検挙率100%、冤罪率0%の社会が実現できると、
いまは極秘裏にデータを収集している政府も近いうちに法案化するつもりだ。

そんな折り、殺された被害者が肋骨を1本抜き取られるという殺人事件が起きる。
解析システムに掛けるも、犯人は“NF(Not Found)13”。
これは、犯人に該当する者のデータなし、つまりDNAデータ未登録者であることを示す。
同様の手口で数名の被害者が出たあと、
今度は自閉症で天才数学者の蓼科早樹とその兄が殺害される。

捜査を仕切ることになったのは警視庁捜査第一課の警部補、浅間玲司。
彼を指名したのは神楽で、浅間の経歴はもちろんのこと、DNDを解析すれば、
この事件の捜査にうってつけの人格を持つことがわかったと言う。

解析システムが優れたものであることは認めざるを得ないが、
DNAこそが人間を形成するすべてだという神楽の話は全肯定しづらい。
浅間がそう思っている頃、神楽は蓼科兄妹殺害の犯人を特定すべく、
現場に残されていたものの解析を開始。
ところが、システムが犯人として挙げたのは「神楽龍平」だった。

突っ込みどころが結構あります。
しょうもないことではありますが、たとえば、神楽の逃亡に手を貸す白鳥里紗。
捜査の手が及んでいることを神楽に知らせるのですが、
なんでボイスチェンジャーで声を変える必要がありまっか。
しかもその後すぐに地声に切り替えているのは意味不明。
ほかにも、コイツはいつこれを知ったのか納得できない部分なども。

東野圭吾の著書の中では本作の原作はイマイチでしたから、
イマイチなものの映画版をめっちゃ面白く感じることはないっちゅうことでしょうか。
でも、「茶番だ~」と叫んだ『夜明けの街で』(2011)よりはずっと○。
原作が面白かった6月末公開の『真夏の方程式』に期待します。

ま、二宮くんはカワイイし、
ヨレヨレのトヨエツも見られたので良しということで。

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今期観ていたドラマ

2013年03月26日 | 映画(番外編:映画とドラマ)
今期は珍しくドラマを2本観ました。

1本はTBSの『とんび』。
重松清の著作は大好きですから、これは外せず。
初回の2時間スペシャルで観る前から挫けそうになりましたが
(だって2時間あったら映画1本観られるやん) 、
観はじめたら毎回号泣させられて、最終回まできっちり。

冬の海辺でお父さんに抱っこしてもらっても背中が寒い。
背中から温めてくれるはずのお母さんはいない。
親が片方しかいないというのはそういうこと。
けれども背中から温めてくれる人はほかにいっぱいいる。
おまえは寂しい奴なんかじゃない。
そう旭に話す和尚には、原作でもドラマでも泣かされました。

そしてもう1本は同じくTBSの深夜枠で放送中の『終電バイバイ』。
濱田岳演じる主人公が終電を逃し、始発までどうやって時間をつぶすのか。
1話完結型で、毎回役柄と駅が異なります。

第1夜は立川駅で終電を逃した物流会社に勤める主人公が、
駅前の彫像に戦いを挑んでいた男と知り合い、その男と一緒に、
何人もの若者が参加していたケイドロ(鬼ごっこ)に乱入する話でした。
これがビミョーで、録画するのは止めようかと思ったのですが、
まぁ次も観てみるかと思ったら、かなり面白い回もあり。

私的に気に入ったのは 第4夜。
PC修理会社社員で潔癖症の主人公が蒲田駅で終電を逃します。
商店街の定食屋の前で泥酔しているアイドルを見かけ、
なりゆきで彼女のマンションまで送ることに。
部屋に入ると、彼には耐えがたいほど片づいていない部屋。
相手は一応アイドル、あわよくば寝たい、でも潔癖症。さぁ、どうする。

第6夜も笑いました。
商社に勤める主人公は、モテモテの先輩社員と六本木へ飲みに。
ところが先輩は一向に帰る気配なく、終電を逃します。
先輩に連れて行かれたのはマンションの一室で、
「セクリ森本のセックス教室」なる怪しげな看板が。
なんと先輩は童貞で、つきあい始めた彼女に迫られて困っているらしい。
一人でそんな教室に行くのは恥ずかしくて後輩を道連れに。

そのほか、フランス人旅行者に朝までつきあったり、
ホームレスとダンサーを目指す若者たちの縄張り争いをとりなしたり。

深夜2時もまわってからの放送なので、ちょっとエロネタも入っていますが、
何しろ主役が濱田岳ですからね、ネタふりだけで、
“特命係長・只野仁”シリーズのようなハダカすら出てきません。

ある夜には元カノにメールを送ったけれど、
返信には冷たく「どちらさまですか」とあって凹んだり、
別の夜には元カノと再会して彼女の気持ちを推し量ってドキドキしたり、
そんなときの濱田岳演じる主人公の心の声が可笑しいです。

「大事なものは何なのか、ちゃんと考えよう」だとか、
「くだらないと言って手を出さないのは簡単、やってみなきゃ」だとか、
「自分のことをわかってもらえないと嘆いている人は、
相手のことをわかろうと努力していなかったりする」だとか、
そんなメッセージが感じられるのもよかったです。

こちらは今日が最終夜。さて如何に。

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『ひまわりと子犬の7日間』

2013年03月25日 | 映画(は行)
『ひまわりと子犬の7日間』
監督:平松恵美子
出演:堺雅人,中谷美紀,でんでん,若林正恭,吉行和子,夏八木勲,
   檀れい,小林稔侍,左時枝,草村礼子,近藤里沙,藤本哉汰他

近頃の迷惑メールは、タイトルも差出人名もなかなか凝っていて、
朝から大笑いすることがよくあります。
この間は、タイトルではなく差出人名が「奥さん少しならエエやろ」というものがあり、
すんごいセンスだとウケました。

先週の金曜日、「わたくしのスイートハートが、」というタイトルのメールが来て、
また迷惑メールだと思ったら、差出人は大学時代の友人。
「結婚してしまうなんて」という本文でした。バカウケ。

はい、そんなわけで、友人のスイートハート、堺雅人の主演作。
貯まったポイントを利用して、109シネマズ箕面にて。

本作の監督は、山田洋次監督の数々の作品で脚本を執筆、
助監督も務めてきた人だそうで、『東京家族』も同じく。
これが記念すべき監督デビュー作とのこと、今後が楽しみです。

かつては動物園の飼育係、現在は保健所に勤務する神崎彰司。
動物園勤務時の同僚だった妻を交通事故で亡くし、
母親の琴江の手を借りながら、娘の里美と息子の冬樹を育てている。

捨て犬のほか、さまざまな事情で飼い主を失った犬が
保健所には次々と運び込まれてくる。
保健所で犬を収容できるのはたった7日間。
その間に引き取り手が見つからなければ、犬は殺処分されてしまう。
(殺処分については『犬と猫と人間と』(2009)をご参考までに。)

彰司から犬の里親探しを毎日のように頼まれる里美は
殺処分の事実を知らずにいたが、
あるとき同級生の母親からそれとなく聞かされ、愕然とする。
自分の父親が犬を殺しているなんて。
彰司は懸命に説明しようとするが、里美の心は怒りと悲しみでいっぱい。

そんな折り、農家に紛れ込んでいた母犬と子犬が保護される。
母犬は人間に対して敵意をむき出しにし、凶暴性を発揮する。
子犬だけならともかく、母犬を含めた引き取り手を見つけるのは無理だと彰司は判断。
しかし、母犬と子犬を引き離さないでほしいと里美から懇願される。
子犬を懸命に守ろうとする母犬の姿に心を打たれた彰司は、
なんとか母犬と信頼関係を築こうと考えはじめ……。

冒頭、この犬が生まれてから飼い主と離ればなれになってしまうまでが
無声映画のイメージで映し出されます。
犬好きだけでなく、動物好きであればこれでもう参ってしまうでしょうね。
けれどもわりと控えめにつくられていて、お涙頂戴っぽくはありません。

動物にも、それまで生きてきた歴史と物語がある。
亡き妻の言葉を思い出した彰司は、保健所に泊まり込むと、
母犬に話しかけ、母犬がこうなるに至った所以に想像を巡らせます。
元の飼い主がいない今、それは想像にしかすぎないわけですが、
そうして相手の身になって考えなきゃいけないのは、
相手が人間であっても動物であっても同じこと。
わかるかわからないかではなく、考えてみることが大事なのかなって。

彰司が差し出す魚肉ソーセージ、彰司の頬を伝う涙。
母犬がそういったさまざまなものに元の飼い主を思い出すシーンは、
そりゃもう涙なしでは観られませんけれども、ハッピーエンドです。
安心して観に行きましょう。

目の前の一匹の犬を救えない奴が世界を救えるか。
そんな伊坂幸太郎の『砂漠』の台詞をまた思い出しました。

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