夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『461個のおべんとう』

2020年11月30日 | 映画(や行)
『461個のおべんとう』
監督:兼重淳
出演:井ノ原快彦,道枝駿佑,森七菜,若林時英,工藤遥,阿部純子,野間口徹,
   映美くらら,KREVA,やついいちろう,坂井真紀,倍賞千恵子他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
 
“TOKYO No.1 SOUL SET”と聞いても私は知らないのです。すみません。
1990年代初めに結成されたヒップホップバンドだそうで、
ヒップホップをあまり聞かないから縁がなかったのかなぁ。
そのバンドでギター、ヴォーカル、サウンドプロダクションを担当するのが渡辺俊美。
3度結婚されているとのことで、2度目の妻がタレントのちはる。
ちはるとの間に生まれた息子のためにつくり続けたお弁当の話の実話に基づく。
 
人気ヒップホップバンドのメンバー、鈴本一樹(井ノ原快彦)は、
仲睦まじかったはずの妻・周子(映美くらら)と離婚。
一人息子・虹輝(道枝駿佑)とふたりの生活が始まる。
 
虹輝は高校受験に失敗、高校には行かないことも考えるが、浪人して翌年の受験に合格。
高校で中学の後輩と同級生になり、なんとなく気まずい思い。
しかし、虹輝が高校に休まずに行くならば、
一樹は3年間毎日弁当をつくると約束をして……。
 
弁当なんてつくったこともない人がそんな無謀な約束をするのかと思ったら、
一樹の料理は手慣れたもの。そうですよねぇ、そうじゃなきゃ無理でしょう(笑)。
弁当箱を複数用意、百均でグッズもいろいろ用意して弁当づくりに臨みます。
包丁さばきもお見事、冷凍庫も見事に整頓され、苦労は感じません。
しかし3年間、弁当が必要な日は1日も休まずとなると、
仕事もあるし、仕事のあとの飲み会もあるし、買い物にも行かにゃならんし、そら大変。
 
年上の虹輝に妙に気を遣っていた同級生らですが、
あるとき、ずっと弁当に興味を惹かれていた章雄(若林時英)が声をかけてきます。
つまみ食いさせてもらいたかっただけなのか、
ひとりぼっちの虹輝に声をかける機会を探っていたのかはわかりませんが、
こいつがめちゃくちゃいい奴で。
章雄とバカを言い合っているヒロミ(森七菜)も便乗。
3人で虹輝の弁当を突っつく光景がめっちゃ楽しそう。
 
どんなことがあってもちゃんと食べていればたいていのことは上手く行く。
「簡単なことだからね、言っておくわ」という一樹の母親(倍賞千恵子)が
出番は少なくても圧倒的な存在感。
 
食を通じて家族も友だちも繋がる。素敵なことです。
 
あ、卵焼きって、やっぱり美味しいですよね。(^O^)

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『とんかつDJアゲ太郎』

2020年11月29日 | 映画(た行)
『とんかつDJアゲ太郎』
監督:二宮健
出演:北村匠海,山本舞香,伊藤健太郎,加藤諒,栗原類,前原滉,
   浅香航大,池間夏海,片岡礼子,ブラザートム,伊勢谷友介他
 
いま誰がいちばん気の毒かって、北村匠海くんですよね。
主演作の共演者が次から次へと捕まって。
あ、ついつい北村くん可哀想にと思っちゃうけど、
二宮健監督だってツイてないと凹んでいるにちがいない。
めげるな、まけるな、応援します。TOHOシネマズ西宮にて。
 
渋谷のソウルフードとまでいわれる繁盛店のとんかつ屋“しぶかつ”。
二代目の父親・揚作(ブラザートム)、母親・かつ代(片岡礼子)、
息子・揚太郎(北村匠海)、娘・ころも(池間夏海)の家族経営。
揚太郎は三代目になるはずなのに、任されるのはキャベツを切るだけ。
揚作はとんかつの揚げ方を教えてくれるどころか、
肉に触れることさえ揚太郎に許さない。
 
別に家を継ぎたいわけじゃない。ほかにしたいことが見つからないだけ。
同じように円山町で旅館や薬屋などを経営する家庭に育った仲間4人と
愚痴を言い合いながら冴えない毎日を送っている。
 
そんなある日、とんかつ弁当を配達した先はクラブ。
しぶかつのとんかつをわざわざ指定してきたのは売れっ子DJオイリー(伊勢谷友介)。
配達のついでにクラブを覗いた揚太郎は、フロアの盛り上がりに衝撃を受け、
これこそ自分がなりたいものだ、俺はDJになると決める。
 
オイリーに弟子入りを志願するも、DJは独学が基本だと言われる。
意中の女性・服部苑子(山本舞香)の気を惹くためにも、
仲間の協力を得て見よう見まねでDJをやってみる揚太郎だったが……。
 
売れっ子DJとして出演しているのが伊勢谷友介と伊藤健太郎で、
特に後者の不祥事が露わになったのは公開直前だったから、
画面に映ると「あぁ〜」と思ってしまいますよねぇ。
以前から好青年っぽくて演技も結構気に入っていたから本当に残念。
 
そんな人たちに囲まれて北村くんが奮闘しているように感じて、
バカな揚太郎を応援したくなります。
仲間の加藤諒栗原類前原滉浅香航大も真面目にバカをやっていて○。
 
ブラザートム演じる二代目もすごく良い。
キャベツしか切らせてくれないという奴はそれまで。
キャベツを切りつつ頭も使わないと。
とんかつを揚げながら音を聴いて、油から引き上げるタイミングをはかる。
ボーッとしとったらあかんのやなと思いました。
 
最後にかかるのはベリンダ・カーライルの“Heaven on Earth”。
80年代が蘇っていいでしょ。
 
子どもさん連れで行っても楽しめる作品ですから、どうぞ!

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『異端の鳥』

2020年11月28日 | 映画(あ行)
『異端の鳥』(英題:The Painted Bird)
監督:ヴァーツラフ・マルホウル
出演:ペトル・コトラール,ウド・キア,レフ・ディブリク,イトゥカ・ツヴァンツァロヴァー,
   ステラン・スカルスガルド,ハーヴェイ・カイテル,ジュリアン・サンズ,バリー・ペッパー他
 
TOHOシネマズ西宮にて。
169分という長さと、地面から頭だけ出た少年とそれを見つめるカラスの構図が恐ろしくて、
気になっていたものの観に行くのを躊躇っていました。
ご覧になった人が「今年いちばんの洋画」とおっしゃっているのを聞いて、
上映終了間際、滑り込みで間に合って鑑賞。
 
チェコ/ウクライナ/スロヴァキア作品。
原作は1965年に発表されたイェジー・コシンスキの同名小説。
ウィキペディアを見ると、この作家の人生がもう凄絶。
本作は両親と別れてホロコーストを逃れた実体験から生まれたのでしょうか。
 
ホロコーストから逃れるため、田舎で一人暮らしの叔母のもとへ預けられた少年。
その叔母が急死したうえに、家が焼けてしまう。
致し方なくさまよい歩きはじめた少年は、行く先々でさまざまな形の虐待を受ける。
 
少年が出会った人びとの名前による章立て。
旅する少年を思えばロードムービーと言えなくもないのでしょうが、温かさなんて皆無。
呪術師に売り飛ばされて助手をさせられているのなんてまだマシなほうで、
その壮絶さが増して行くと共に、少年も生きる術を覚えます。
やがて人を殺すことも厭わなくなる。
 
3時間近い作品の中にあって、少年が発する台詞はほんの数言。
私が覚えているのは、怪我を負った馬に向かって語りかける言葉だけです。
少年役のペトル・コトラールは新人なのだそうですが、凄すぎる。
表情だけで彼の心の裡がじわじわと伝わってきて、苦しくなります。
羽をペンキで塗られた小鳥が空中で他の鳥たちの総攻撃に遭って落下する様子は、
少年がカラスに頭を突かれて血だらけになっていたときと同じ。
 
どこの国のことなんだろうと思っていたら、
舞台となる国や場所を特定されないよう、
インタースラーヴィクという人工言語が使われているとのこと。道理で。
 
ラストシーンがとても好きでした。
一度も名前の出てこなかった少年の、名前。

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『スタートアップ!』

2020年11月27日 | 映画(さ行)
『スタートアップ!』(英題:Start-up)
監督:チェ・ジョンヨル
出演:マ・ドンソク,パク・ジョンミン,チョン・ヘイン,ヨム・ジョンア,チェ・ソンウン,
   キム・ジョンス,ユン・キョンホ,コ・ドゥシム,キム・キョントク他
 
終業後にしんどい思いをしながらもシネマート心斎橋まで行ったのは、
前述の『レディ・マクベス』ではなく本作が観たかったからです。
 
男前の韓流スターを見るのももちろん楽しいけれど、
私はマ・ドンソクが出演していると聞くと外せない。
もう名前を聞くだけでウキウキしちゃって、どうしても観たくなるのです。
あんないかつくて目つき悪くて、でも絶対いい人でしょ!?(笑)
 
母子家庭に育つテギルは、母親に相談することなく高校を辞め、
悪友のサンピルとつるんでだらだらと遊んでばかり。
学費を単車につぎ込んだことが母親にバレてビンタを喰らい、
行くあてもないのに家を飛び出してしまう。
 
飯を食いにたまたま入った中国料理店に住み込みの店員募集の張り紙が。
優しいオーナーがすぐに採用を決めてくれるが、
一緒に住み込んでいるのは怪しすぎる男ふたり。
特に巨体におかっぱ頭の料理長コソクは大いに謎。
 
今まで働いたこともなければ、口の利き方さえ知らないテギルは、
コソクのもと、社会のルールを学ぶことになるのだが……。
 
笑いました。
笑いましたけれども、今までのマ・ドンソク作品と比べると少し弱い。
コソクが元は何をしていたのか、何故にこの店で働くに至ったのか、
オーナーの身にも何があったのか。
なんとなくは匂わせられますが、あくまでもなんとなく。
もうちょっとお節介な説明があってもいいのに。
知っている人がぼそっと教えてくれる、みたいなのがほしかったな〜。
 
初めてお給料をもらったときのテギルの顔がいいですね。
母親と息子、お互いのことが心配なのに、素直にそれを言えない。
お金がなくても親子一緒に笑って暮らせたらそれでいい。
 
最後ももっと派手に終わらせてくれてもよかったのになぁ。
物足りなさは残るけど、やっぱり面白いマ・ドンソク。

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『レディ・マクベス』

2020年11月26日 | 映画(ら行)
『レディ・マクベス』(原題:Lady Macbeth)
監督:ウィリアム・オルドロイド
出演:フローレンス・ピュー,コズモ・ジャーヴィス,ナオミ・アッキー,クリストファー・フェアバンク他
 
これをUPするのがいったいいつのことになるやらわかりませんが、
書いているのは11月3日、文化の日です。
前日、平日単身赴任中のダンナが帰ってくるはずだったのに、帰れなくなったとのこと。
ほなら私また映画に行っとく?
 
最近、平日の終業後に西宮や大阪市内まで出向くのはしんどく感じていますけれど、
翌日が休みなら平気だわ。ということでシネマート心斎橋へ。
 
出演作目白押しのフローレンス・ピューが2016年に映画初主演を務めた文芸ドラマ。
原作は19世紀のロシアの作家ニコライ・レスコフの小説『ムツェンスク郡のマクベス夫人』で、
ソビエト連邦時代の作曲家ドミートリイ・ショスタコーヴィチによりオペラ化もされた作品です。
 
19世紀後半のイギリス。
裕福な商家に嫁いだ17歳のキャサリンの務めは、早く世継ぎを産むこと。
しかし年の離れた夫は彼女と体の関係を持とうとしない。
そうとは知らない義父は、キャサリンが夫より早く眠ることを許さず、
一切の外出も禁じて、彼女の行動をメイドに見張らせる。
 
人里離れた屋敷で何もすることがない退屈な毎日を過ごしていたが、
義父と夫が留守にしていたある日、キャサリンは若い使用人セバスチャンに誘惑される。
欲望を抑えきれずに受け入れた後は、ずぶずぶの不倫関係に陥って……。
 
最初はずいぶんと可哀想です。酷い扱いを受けている。
夫はキャサリンが若いから手を出さないとかいうことではない様子。
彼女に服を脱ぐように命じて壁に向かって立たせ、
その後ろ姿を見てひとりでしているんだから、変態ですよね。
 
そんな酷い扱いを受けているキャサリンが途中から凄い女に(笑)。
義父さえいなければ。夫さえいなければ。この子さえいなければ。
セバスチャンに捻れた愛情を持ち、絶対に関係を終わらそうとしません。
手に入らないのならいっそ殺してしまうわよと。怖い。
 
フローレンス・ピューって不思議な女優です。
美人とも思えないけれど、ある角度から見るととても美人だったりする。
スタイルも良いとは思えず、いかつい体つきだなぁと思う。
そりゃそうですね、女子プロレスの選手役をするような人なのだから。
声もハスキーボイスでわりといかつい。
この人が絶世の美女役だったりしたら違和感を抱きそうですが、
そうじゃないからなんだか惹かれて見てしまいます。
コロナのせいで公開が延期されている『ブラック・ウィドウ』では
スカヨハの妹役。これはいかついガタイにきっとピッタリ。来春が楽しみです。
 
“のむコレ”上映作品はやはり侮りがたし。いずれも面白い。

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