夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

続・『マッハ!!!!!!!!』

2005年02月24日 | 映画(ま行)
書ききれなかったので、続けて『マッハ!!!!!!!!』
見どころいろいろ。

ティンの逃げっぷりの凄さは特筆もの。
そして、ほかにも「映画からその国がわかる楽しさ」満載です。
以前、やはりタイ映画の『6IXTYNIN9 シックスティナイン』(1999)で、
リストラされる人をクジで決めるのを見て衝撃を受けましたが、
何気ない光景に新鮮さを感じることがアジアの映画ではよくあります。
近所の国の意外な事実を知った気持ちになるのでしょうか。

冒頭、密輸団の手先であるドンがノンプラドゥ村にやってきて、
ある老人からお守りを買い取ろうとします。
老人が「売るつもりはない」と答えると、
「せっかくバンコクから来たのに。もし気が変わったら連絡をくれ」 とドン。
それに対して老人は「忘れてくれ。うちには電話がない」。

サラっと言ってのける老人の表情に、見ている私は思わず笑いました。
電話がないのは言い訳に使えますね。
そういうわが家は夫婦揃っていまだに携帯を持ってません。
いったん持つと、携帯のない生活は考えられないかもしれないけど、
うちは持ったことがないので、まったく困りません。
携帯を持ってる人をバンコクに例えるなら、うちはさしずめノンプラドゥ村。

さて、そのバンコクに行けば、名前も都会風になるのが笑えます。
「ハム・レイ」のはずが「ジョージ」と呼ばれていて、
ジョ、ジョージって。
しかも顔がジョージっぽくないので、私のツボに。

もうひとつ、ぜひご覧いただきたいのがカーアクション。
でも普通の車じゃないんです。
タイの三輪タクシー、TUKTUK(トゥクトゥク)が数十台、
バンコクの街を爆走するのが痛快。
これは『ブルース・ブラザーズ』(1980)と並んで好きな
カーチェイスシーンになりそうです。

主演のトニー・ジャーは象使いの家の生まれだそうな。
家で象を飼ってるなんて、さすがタイ。
ハリウッドのアクション映画『モータル・コンバット2』(1997)で
謎の武術家を演じたロビン・ショウのスタントをこなし、注目されるようになりました。
スタントだなんてもったいない。
彼自身がこうして主役を張った『マッハ!!!!!!!!』は
「燃焼系♪燃焼系♪アミノ式」の上を行くぐらい、すごいアクションだと思います。

そら、象も操れるやろ。

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『マッハ!!!!!!!!』

2005年02月22日 | 映画(ま行)
『マッハ!!!!!!!!』(英題:Ong Bak: Muay Thai Warrior)
監督:ブラッチャヤー・ビンゲーオ
出演:トニー・ジャー,ペットターイ・ウォンカムラオ,プマワーリー・ヨートガモン他

タイの国技で、最強の立ち技格闘技とも言われるムエタイ。
そのムエタイ・アクション超大作なのであります。
レンタル開始になってからすでに3ヵ月ほど経ちますが、
まだ観ていない友人から「痛そう」とのメールが届いたので、これはぜひお薦めしたく。

タイのド田舎、ノンプラドゥ村。
大木のてっぺんに飾られた旗を目指して、枝から枝へと渡っていく若者たち。
毎年村でおこなわれるこの競技で、
最初に旗を取って帰ってきた者を最速の男として称える。
今年も勝者はティン。

村の寺院には人びとを見守りつづける仏像、オンバクが祀られている。
ある晩、オンバクの首が何者かに切り取られ、盗まれてしまう。
犯人は村の出身者のドンだと判明。
ドンはバンコクで密輸団の手先として働いているらしい。
オンバクがいなければ、村は災いに見舞われると怯える村人たちは、
ティンに「オンバクの首奪還」を託す。

貧しく慎ましやかに暮らす村人たちだったが、
ティンの旅費の足しになればとお金や宝飾品を出し合い、ティンを力強く送りだす。

バンコクの街に着いたティンは、まずは同郷のハム・レイを訪ねるが、
どう見てもハム・レイのその男はジョージと名乗り、人違いだと言う。
ドン探しにもまったく協力してくれようとしない。
しかし、ティンがお金を持っていると知るや態度を一変。
家に招き入れる。

ティンが浴室に入ったすきにジョージは金を盗み、
博打がおこなわれている格闘技場へ。
すぐに気づいたティンはジョージを追うが、
ジョージはすでにティンの金を賭けたあと。
金を取り戻すためにティンが出場することになり……。

めちゃめちゃオモロイ。
まず、ストーリーが単純。テンポもいい。
「20分ルール」なんて何のその。
ティンが村を出るまでがわずか10分ちょい。さくさく進みます。

ジャッキー・チェンに憧れて俳優を志したという
主演のトニー・ジャーのアクションには圧倒されっぱなし。
CGなし、ワイヤーなし、スタントマンなし、早回しなし。
闘うシーンももちろんいいけど、それ以上にスゴイのは逃げ方。こりゃ必見。
エンドロールにはメイキングシーンなども盛り込まれていて、これがまた笑えます。

キアヌ・リーヴスよりトニー・ジャー!

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『LOVERS』

2005年02月18日 | 映画(ら行)
『LOVERS』(原題:十面埋伏)
監督:チャン・イーモウ
出演:金城武,チャン・ツィイー,アンディ・ラウ,ソン・タンタン他

去年の夏、高校時代の友人や先輩と会ったとき、
最近ええなと思う女優は誰かという話になりました。
男性陣から圧倒的な支持を受けたのが仲間由紀恵。
彼女は男性から見るとめちゃめちゃかわいいそうです。
現在『ごくせん』が大ヒット中なのも納得。

そして、仲間由紀恵ともうひとり、
男性陣が口を揃えて「好きや」と言ったのが
シャンプーのCMでおなじみのアジアン・ビューティー、チャン・ツィイーでした。

私が彼女を最初に観たのは『初恋のきた道』(1999)ですが、
あのスクリーンにドアップで映し出された、
思い焦がれる人の帰りをひたすら待つ彼女の顔を見て
泣かない人がいるんだろうかと思ったぐらいです。

『LOVERS』も同監督の作品。
舞台は唐代の中国。
楊貴妃を迎えた玄宗皇帝のもとで、
朝廷を守ろうとする者と滅ぼそうとする者が対立し、混乱の一途を極めていた。

そんななか、勢力を強めてきたのが、飛刀門と呼ばれる反乱軍。
朝廷側は、官吏のジンとリウに、飛刀門のリーダーを捕らえるように命ずる。

ある日、遊郭に出かけたジンとリウは、
盲目の売れっ子芸者、シャオメイを女将から紹介される。
素晴らしい踊りを披露するシャオメイ。
しかし、リウにいきなり斬りかかり、投獄される。

どうやらシャオメイは飛刀門のリーダーの娘らしい。
それならばと、ジンとリウは罠を仕掛けることにする。
ジンが朝廷に愛想をつかしたように見せかけて、シャオメイを逃がしてやるのだ。
そして彼女を守るふりをしてついてゆけば、飛刀門のリーダーの居所を知り、
捕らえることができるにちがいない。

予定どおり、ジンはシャオメイを助けるふりをし、
リウはこっそりとふたりの跡をつけてゆくが……。

中国の時代物で同監督作品となると、
ジェット・リーに男気を感じた『HERO』(2002)のほうが好き。
どちらも男女3人の策略の応酬だし、かぶるところ多し。
でも、やっぱりアジアのビッグスター3人。
なんだかんだ言うても見応え十分。
何より、ワダエミの衣装とあの色彩は『HERO』と同じく、それだけで観る価値ありです。

金城武と言えばビリヤードを思い出します。
以前「スマスマ」でSMAPと対決するのを見て仰天。
金城武と並んだら、キムタクがアホに見えました。
めちゃ知的。あのビリヤードの腕前はスゴイ。

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『デビルズ・バックボーン』

2005年02月14日 | 映画(た行)
『デビルズ・バックボーン』(原題:El Espinazo del Diablo)
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:フェルナンド・ティエルブ,マリサ・パレデス,フェデリコ・ルッピ,
   エドゥアルド・ノリエガ他

公開時のキャッチコピーは「お願い、ぼくの恨みをはらして」。
PG-12にも指定された怨霊ホラー!

ホラー苦手な私が、ホラーと言えどもどうしても観たくて、
過去に映画館まで足を運んだ作品は、
『サンタ・サングレ 聖なる血』(1989)と『アザーズ』(2001)。
いずれもメキシコやスペインが舞台だったり製作だったりで、
本作はと言えばメキシコ人監督によるスペインの作品。
どうも私はスペイン語圏のホラーに興味を惹かれるようです。

内戦下のスペイン。
人里から遠く離れた荒地に建つサンタ・ルシア孤児院。
父を亡くした少年カルロスが連れてこられる。

義足の女院長カルメンと老いた教師カザレスが、カルロスを院内へと招き入れる。
外の明るい日射しとは対照的に薄暗く、
カザレスの部屋には奇形児を漬けたラム酒の瓶が並んでいる。

カルロスに与えられたのは12番のベッド。
それは、謎の死を遂げたとされる少年サンティが以前使用していたものだった。

その夜、どこからともなくカルロスを呼ぶ声が。
人影を感じてカーテンを引くが、そこには誰もいない。
突然水差しが倒れ、ほかの孤児たちも目を覚ます。
「新入りが水をこぼした」と罵られ、
カルロスは番長格のハイメとともに、外の倉庫まで水を汲みに行くことに。

とっとと水を汲んで倉庫を後にするハイメ。
カルロスが手間取っていると、倉庫の地下にある貯水池からまた声がする。
そして、腐りかけた少年の姿をした幽霊が。
それはサンティだった。一目散に逃げ出すカルロス。

それ以降、カルロスの前にはたびたびサンティが現れるようになる。
恐怖に怯えながらも、サンティが何かを訴えたいような気がして、
カルロスはサンティの死の秘密を探りはじめる。

心臓バクバクの恐怖を味わいたい人にはまったく不向きな、
真面目に戦争の悲劇を描いた秀作だと思います。
なかなかお互いを受け入れられない孤児たちが信頼を築いていく過程や、
彼らが事件の真相を知って復讐を誓う姿に共感。

公開予定時期が池田附属小事件と重なって延期。
去年の公開決定後には、横浜の胎児廃棄事件を思い起こさせるということで
ポスターが撤去されたといういわくつき。
でも実際は映像美溢れる切ない良品です。
ホラーにハマリそう。

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『オアシス』

2005年02月08日 | 映画(あ行)
『オアシス』(英題:Oasis)
監督:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング,ムン・ソリ他

前科者の男性と脳性麻痺の女性とのラブ・ストーリー、
しかも韓国の作品と聞けば健気な物語を想像するところですが、
観るとぶっ飛びます。きっと。

清掃員をひき逃げした罪で服役していたジョンドゥが、刑期を終えて町に出る。
真冬だというのに、半袖のシャツ姿。
身内が暮らすはずの家へ帰るが、そこには別人が住んでいた。
連絡先もわからず、金もないジョンドゥは無銭飲食。
警察にしょっ引かれる。

やがて弟が身柄を引き取りにやって来る。
弟に連れられて、母と兄夫婦の住む家に帰るが、
ジョンドゥの帰宅を喜ぶ者は誰もいない。

ある日、ジョンドゥは事故の謝罪をするつもりで
清掃員の遺族の住む古アパートを訪れる。
ところが、清掃員の息子夫婦は、
重度の脳性麻痺の妹コンジュをアパートにひとり残し、
新しいマンションへの引っ越し作業中だった。

コンジュが身をこわばらせ、顔を歪める様子を見て、
興味を持ったジョンドゥは、翌日再び花束を持ってコンジュを訪ねる。
しかし、強姦未遂の逮捕歴もあるジョンドゥは、あろうことか、コンジュを見て欲情。
恐怖のあまりコンジュは失神、ジョンドゥは逃げるようにその場を去る。

酷い目に遭わされたコンジュだったが、花を贈られたことが忘れられず、
ジョンドゥに電話を入れる。
コンジュになんとか許してもらおうと、純粋な気持ちで接するジョンドゥ。
ふたりで会う日を重ねるうち、互いに信頼をおくようになる。

世間はふたりの絆に無理解で、ジョンドゥのことは変態扱い(最初は確かに変態)。
飲食店では、大勢客がいるのに、ふたりが入店すると「閉店です」。
家族の誕生会にコンジュを連れていけば、早く追い返せと嫌な顔。
一見善人の清掃員の息子夫婦も、実はコンジュを利用して、
障害者本人名義でしか入居できない綺麗なマンションの権利を手に入れています。

絵空事のような優しさはなく、
タブーとここまで正面から向き合って描き切った作品は他にないでしょう。
救われない話だけれど、なぜか後味は決して悪くないのです。
人の幸せは人には計れない気がして、
人としての強さを分けてもらったような気がします。
コンジュが見上げる空や、鏡の破片に陽を反射させてキラキラ光る蝶、
壁に映る木の影が本当に美しい。

体力のあるときに、ぜひお薦めしたい一作。

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