夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『エスター』の夫婦、妻のほう。

2010年08月31日 | 映画(番外編:映画とこの人)
今年の春に観た『エスター』(2009)。
もの凄く面白かったけれど、もの凄く怖くて、
半年経った今でも寝る前に思い出してビビります。

先週末は、その『エスター』で夫婦役だった2人の出演作を観て、
どちらもかなり良かったのでご紹介。レンタル新作です。

まずは、エスターと死闘を繰り広げた夫婦の妻役、
ヴェラ・ファーミガが出演する『マイレージ、マイライフ』(2009)。

1年のうち322日間は出張という、ジョージ・クルーニー演じるライアン。
彼の勤務先は、リストラ宣告を専門にする会社。
つまり、部下に直接リストラを言い渡せない上司に替わり、
各地へ赴いて解雇を通告するのが彼の仕事です。

バックパックに入らないような人生の荷物は背負わないことが彼の信条で、
結婚願望もいっさいなし、家族とも距離を置いて過ごしてきました。
彼の楽しみといえば、マイルやポイントを貯めること。
マイルやポイントが付かない買い物は絶対にしません。

そして、そんな彼の夢は、マイレージを1000万マイル貯めること。
過去にわずか7人しか達成していない1000万マイル飛行を目標に、
来る日も来る日もアメリカン航空に搭乗。

ある日、出張先で出会ったのが、ヴェラ・ファーミガ演じるアレックス。
彼女もポイントカードを何枚も携えて各地を飛び回っています。
ふたりは意気投合し、以降、出張先でたびたび落ち合うように。

エスターに追い込まれて疲労感漂う妻とは大違い。
ライアンを妹の結婚式に出席させようと背中を押すアレックスが素敵でした。

本作にもうひとり登場する大事な女性が、
アナ・ケンドリック演じるナタリー。
大学を優秀な成績で出て、ライアンの勤める会社に就職したナタリーは、
社員のほとんどが出張ばかりでは非効率的、
出張なんかせずにネット上で解雇通告をすべしと言い出します。
そんな簡単なものじゃないと憤るライアンに、社長はナタリーの教育係を命じ、
ライアンは仕方なくナタリーを連れて出張へ。

人と人との絆の大切さが伝わってくる場面がたくさんありました。
また、突然解雇を通告された人とライアンとの会話も興味深く、
しんみりとさせられます。

アカデミー賞では5部門にノミネートされながら受賞には至らず。
こんな地味な作品がノミネートされていたことも驚きですが、
ジョージ・クルーニーは相変わらずお茶目で色っぽいし、
他賞で主演男優賞や脚本賞を受賞していたことに納得です。

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『月に囚われた男』

2010年08月27日 | 映画(た行)
『月に囚われた男』(原題:Moon)
監督:ダンカン・ジョーンズ
出演:サム・ロックウェル,ドミニク・マケリゴット,カヤ・スコデラーリオ他
声の出演:ケヴィン・スペイシー

デヴィッド・ボウイの息子の監督デビュー作。
低予算で、CGに頼ることなく、セットとミニチュアにこだわっています。
静かだけれど、凄い力量を感じさせられる佳作でした。

人類が地球のエネルギー源を地球外に求めるようになった近未来。
世界最大の燃料生産会社であるルナ産業は、
エネルギー源採掘のため、宇宙飛行士のサムと3年契約を結ぶ。
サムはたったひとりで月へと派遣され、
エネルギー源を採掘しては地球へ送るという仕事を任されている。

サムの相棒は人工知能を搭載したロボット、ガーティ。
ガーティはサムのすべて、身の回りの世話から心のケアまで、
細やかに対応してくれるが、やはり生身の人間とは異なり、
サムは孤独感と葛藤しつづけている。

契約期間の満了まであと2週間となり、
地球に帰れる喜びでいっぱいのサムだったが、
その日の作業中に事故を起こして意識不明となる。
月面車内で動けなくなったはずが、目覚めると基地内の診療室。
やがてサムは、自分とうり二つの男がうろうろしていることを知る。

どこからどう話してもネタバレになってしまうので、
観ようかなとお思いの方はご注意を。

月面基地に単身赴任する男とやたら賢いロボット。
過去にもいくつかの映画で観たような光景ですが、
始まってみれば、過去の映画にオマージュを捧げていることはあっても、
まったくのオリジナル作品であることがわかります。原案は監督本人。

自分のそっくりさんと遭遇したサムは、
クローンが作られていることを知ります。
3年で地球に帰還できるなんて大ウソで、
3年経てばポイ、新しいクローンが着任。

本来、2体のクローンが会うはずはなかったのですが、
手違いから出会ってしまいます。
ロボットのガーティは、クローンの御目付役でありながら、
優しさを兼ね備えていて、これがなかなか泣かせます。

クローンは、自分がクローンであることを知らず、
生命と心を与えられています。
すべてのクローンがサムの想い出を共有し、
そのときの気持ちだって甦るのに、
いったい自分は何者なのだと悩む様子が悲痛。

くせ者俳優のサム・ロックウェルが、複数のサム役を怪演。
また、ガーティ役のケヴィン・スペイシーの声が絶品。

ラストはわずかな希望を感じさせて。オススメ。

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『ちちり』

2010年08月24日 | 映画(た行)
『ちちり』
監督:細野辰興,いまおかしんじ,五十嵐匠,サトウトシキ,窪田将治
出演:安亜希子,土方くるみ,斉木里絵,伊勢みはと,井川祐輔他

『あんにょん由美香』(2009)にも出演していた、
良質のピンク映画を撮るいまおかしんじ監督の名前に釣られてレンタル。

内容はまったく知らず、映像が流れはじめて数秒後には、
あまりの素人くさい演技に、レンタルしたことを後悔したのですが、
なかなかおもしろい試みであることがわかりました。

演技のワークショップ「Workshop@FAITH」なるものがあり、
そこで講師を務めるのが第一線で活躍する個性派映画監督たち。
彼らが、ワークショップに参加した俳優(つまりはほぼ素人)を起用して、
予算や時間などの条件、また、ベースとなる脚本も同じにして、
それぞれがショートムービーを制作。それが本作でした。

だから、5本ともあらすじにすれば同じ。
小説家志望の好子は、あちこちの文学賞に応募し続けているが、
入選には至らず、凹んでいる。
学生時代に一緒に同人誌を出していた勇磨は、
とっくに小説家になる夢などあきらめ、今はサラリーマン。
勇磨からプロポーズされた好子は、結婚を決意。
それを祝福しようと、仲間たちがカフェに集まる。

カフェのみで撮影がおこなわれています。
ベースが同じ脚本でも、監督が替われば全然ちがう話に。
どうやらこのワークショップの参加者はさほど多くはなく、
しかもほとんどがリピーターのようで、
1本目で好子役だった人が、2本目ではその友人役だったり、
1本目と2本目とで同じ役柄の人がいたりします。

こう言っちゃなんですが、やはり素人ですから、見た目は垢抜けません。
さらにはクサすぎる演技の役者さんが多くて(走り出すシーンにはドン引き)、
それゆえ学芸会を観ているような気分にさせられます。
そんななか、いまおかしんじ監督の作品では女性が可愛らしくて、
ピンク映画出身だからなのかなぁと妙に感心。

いろいろな細かい設定は作品によって異なるのに、
必ず登場するのが漫才コンビ。
それと、好子の原稿を勇磨が裏紙に使うというくだり。
この必須条件にこだわった理由を考えるのも楽しいですし、
それを各監督がどう見せるのかも興味深いところでした。

ちなみに、「ちちり」とは「まつぼっくり」のことだそうです。
イタリアでは、まつぼっくりは幸福を運んでくるアイテムだとか。

良い試みだと思います。

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『50歳の恋愛白書』

2010年08月19日 | 映画(か行)
『50歳の恋愛白書』(原題:The Private Lives of Pippa Lee)
監督:レベッカ・ミラー
出演:ロビン・ライト・ペン,アラン・アーキン,マリア・ベロ,モニカ・ベルッチ,
   ブレイク・ライヴリー,キアヌ・リーヴス,ウィノナ・ライダー他

監督は、大劇作家ーと写真家の間に生まれた娘。
多才な両親を持つと多才になるのかどうかはわかりませんが、
女優であり、脚本家であり、作家でもある彼女が、
その処女小説をみずから映画化。

原題は“The Private Lives of Pippa Lee”。
邦題が本作の中身を表しているとは言い難く、
アラ45~アラ50の女性を呼び込むためのものなのでしょう。
私はまんまと嵌ったわけで、劇場には行きませんでしたが、
レンタル開始とともに借りてしまいました。

50歳になる専業主婦ピッパ・リー。
夫は30歳上のベストセラー作家ハーブ。息子は弁護士、娘は報道カメラマン。
家事を完璧にこなし、かつ、美しくあり続ける、理想的な女性。
最近、周囲が老人ばかりのコミュニティに引っ越してきたが、
彼女はみんなのよき相談者として、誰からも愛され、称賛を受けている。

彼女には、ハーブしか知らない過去がある。
荒んだ毎日を送っていた10代のころ、
彼女に手を差し伸べたのがハーブだった。
当時は既婚者だったハーブと交際するようになり、
ある出来事を乗り越えて掴み取った幸せ。

それから30年近くが経ち、今、彼女は強い孤独を感じている。
何もかも投げ出してしまいたい。そう思っていたある日、
彼女の目の前に15歳下の青年クリスが現れる。

クリスは、日頃から行き来のある家の息子で、
浮気した妻と別れて実家に戻ってきたらしい。
無愛想な彼になんとなく惹かれるピッパだったが……。

ピッパとクリスの話はちょっとしたオマケ。
また、公開当時は、10代のピッパを演じるブレイク・ライヴリーが
オールヌードになったということを大々的に宣伝していたようですが、
確かに脱いではいるものの、どこも何も見えません。
この宣伝に食いついた人にはご愁傷様。

で、更年期の女性の生き様が痛いぐらいに描かれています。
夫がボケたのかと思いきや、
自分のほうが危うくなっていることを知って愕然するシーンでは、
同年代の女性なら他人事とは捉えられず。

ピッパ役のロビン・ライト・ペン、実年齢44歳。
クリス役のキアヌ・リーヴス、実年齢46歳。
これでちゃんと、役のとおりの歳に見えてしまうところが、
女性にとってはさらにキツかったりして。

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『パーフェクト・ゲッタウェイ』

2010年08月16日 | 映画(は行)
『パーフェクト・ゲッタウェイ』(原題:A Perfect Getaway)
監督:デヴィッド・トゥーヒー
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ,ティモシー・オリファント,キエレ・サンチェス,
   スティーヴ・ザーン,マーリー・シェルトン,クリス・ヘムズワース他

先月レンタル開始になりました。
キャッチコピーは、「容疑者6人 犯人2人」。

新婚旅行で地上の楽園ハワイを訪れたクリフとシドニー。
車を走らせていると、ヒッチハイカーのカップルを見かける。
クリフはそのカップル、ケイルとクレオを乗せようとするが、
新婚旅行を邪魔されたくないシドニーは嫌な顔。
クレオと話すうちにシドニーは乗車を歓迎する気持ちになるが、
クリフとシドニーの態度を不快に思ったケイルは、
クレオを車から降ろして立ち去る。

さて、カウアイ島の秘境を越えた先にあるビーチを目指すため、
駐車場に車を入れたクリフとシドニーは、トレッキングを開始。
ところが、オアフ島で起きたカップル惨殺事件の犯人(これもカップル)が、
カウアイ島に上陸したらしいというニュースを聞く。
途中ですれちがった女性グループは、家族が心配するので引き返すと言い、
進めば進むほど薄れる人の気配に不安になる。

それでも、あのビーチへは行ってみたい。
先へと進んだところ、今度は別のカップル、ニックとジーナに出会う。
サバイバルワークに長けているらしいこのカップルと
しばらく行動を共にすることを決意するクリフとシドニーだったが……。

公開当時の予告編では、「《警告》この映画の結末は誰にも喋らないでください」。
「観る者すべてを罠にハメる“衝撃のラスト30分”」という触れ込みで、
オープニングロールからあることに違和感を覚え、どんでん返しは必至。

で、ここから先はかなりのネタバレ。
主要な登場人物が3組6名、しかもそのうちの1組は早々に姿を消すため、
どちらかのカップルが犯人。それがどちらのカップルであっても驚かないでしょう。
このカップルが犯人だったことに驚いたというよりは、
犯人だったにもかかわらず、それまでのあの態度は、あの台詞はどうよという驚き。
観客を裏切ることを目的に、そこまでやらんでもというズルさは感じます。

それでも、おもしろかったです。
伏線回収も楽しく、最後はハラハラどきどき。
犯人じゃないほうのカップルを全身全霊で応援しました。男前だし(笑)。
観光用の宣伝映像かと思うほど景色が美しくて、劇場で観なかったことを後悔。

ハワイならば許される。

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