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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『白頭山大噴火』

2021年08月31日 | 映画(は行)
『白頭山大噴火』(英題:Ashfall)
監督:イ・ヘジュン,キム・ビョンソ
出演:イ・ビョンホン,ハ・ジョンウ,マ・ドンソク,チョン・ヘジン,ペ・スジ他
 
観た順序を昨日入れ替えてUPしたついでに、これも先にUPします。
 
金曜日は少なくとも数本が新たに公開になる日。
先週も観たい作品が何本か封切られ、どれを最優先にするかしばし悩む。
しかし悩んだのはあくまで「しばし」の間。
イ・ビョンホンハ・ジョンウマ・ドンソクが共演する映画を後回しにできるわけがない。
イオンシネマ茨木へ行くべし行くべし。
 
輝かしい軍歴を持つチョ・インチャン(ハ・ジョンウ)は除隊の日を迎えてウキウキ。
臨月の妻ジヨンを心配させてばかりだったから、今日でこの仕事とおさらば、
明日からは愛する妻と生まれてくる子どもと共に穏やかに暮らすことができるはず。
 
ところが帰宅途中、激しい地震に見舞われる。
白頭山が噴火し、遠く離れたソウル高層ビルまで倒壊するなど、甚大な被害が発生。
 
地震直後、韓国を脱出してアメリカに向かう準備をしていたカン・ボンネ(マ・ドンソク)。
火山の専門家である彼は、何年も前から白頭山噴火の可能性を指摘し、
それを回避する方法を検討すべきだという論文を発表してきた。
しかし誰も耳を傾けなかったばかりか、彼のことを単なる目立ちたがり屋だと非難。
 
今になって政府から助言を求められて呆れるボンネだったが、
これまでの彼の調査によれば、噴火は75時間以内にあと3度起きるはず。
4度目となる最後の噴火では、韓国も北朝鮮も間違いなく壊滅する。
 
政府から半ば脅される格好で韓国にとどまったボンネは、
4度の噴火による国家殲滅を阻止するための方法を提示。
白頭山近くの地下マグマ溜りで核爆発を意図的に起こし、
エネルギーを解放するしかないと断言する。
 
韓国に核爆弾はないから、北朝鮮から盗むよりほかない。
爆発物の処理に長けるインチャンが呼び寄せられ、北朝鮮行きを命じられる。
その任務は、北朝鮮の工作員リ・ジュンピョン(イ・ビョンホン)の身柄を拘束し、
ジュンピョンから核爆弾の隠し場所を聞き出して盗むことで……。
 
実際にもしも国家が壊滅するほどの噴火が起きるとしたら、
こんな方法で回避することは可能なのか、それとも荒唐無稽な話なのか知りません。
でもこの3人の共演というだけでもうあとはなんでもよくなる(笑)。
 
筋肉を駆使したスポーツの選手という場合もあるし、
『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)のような正義感あふれるオッサンの場合もある。
でも体型を徹底的に無視したこんなインテリ役は初めてで、キャスティングがもう可笑しい。
 
ちょっとヒールな役のイ・ビョンホンはやっぱりイ・ビョンホンだから、
悪い人のままでは終わらない。ある意味、いちばんオイシイ役。
『アルマゲドン』(1998)のブルース・ウィリスの役目と言えるでしょうか。
そんな彼とハ・ジョンウのやりとりはコミカルで、切羽詰まった場面でも楽しい。
 
まもなく父親となるインチャン。
父親だったのに、父親になることから一旦逃げたジュンピョン。
予想できる展開ではありますが、間違いがない。
 
劇場で見る醍醐味があると思います。
最優先にしてよかった。

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『ある家族』

2021年08月30日 | 映画(あ行)
『ある家族』
監督:ながせきいさむ
出演:川崎麻世,野村真美,寺田もか,木本武宏,阿部祐二,秋吉久美子,木村祐一他
 
シネ・リーブル梅田にて、3本ハシゴの1本目。
 
高校の同期生の息子くんが子役で出演していると聞き。
その同期生とは同じクラスになったことがなく、私の親しい友だちの同級生でした。
だから、顔は知っているけれど、言葉を交わしたことはほとんどなし。
それがSNSで繋がるのですから、懐かしく嬉しいご縁です。
前述の『子供はわかってあげない』と本作の間に観た映画が8本ありますが、
そんな事情もあってこれを先にUPします。
 
ファミリーホームと呼ばれる児童養護施設があることをそもそも知りませんでした。
さまざまな事情で親と暮らせなくなった子どもを5人から7人、
施設というよりは普通の一軒家で預かって生活する、児童養護の形なのだそうです。
本作の一ノ瀬ホームの「お父さん」は、元児童相談所の職員で、
負傷して体の自由が利かなくなったのをきっかけに退職、ホームを運営しているという設定。
 
一ノ瀬夫妻(川崎麻世&野村真美)には実子のアカネ(寺田もか)のほか、
ユリ、タケル、カリン、レン、ショウタ、アイ、チハルという子どもがいる。
子どもたちは実の親に捨てられたり虐待されたりして居場所を失い、
児童相談所を通じて一ノ瀬ホームへやってきた。
 
一定の年齢に達すれば退所しなければならないから、
就職も住むところも決まった最年長のユリは皆に別れを告げて笑顔で出て行くが、
後日スナックで客の見送りをしている彼女を見かけたタケルは驚く。
 
また、虐待を受けて入所していたカリンを母親が迎えにくるが、
また戻ってくるのではないかとの心配が一ノ瀬夫妻やタケルの頭をよぎる。
かくして心配どおりのことが起きる。
 
そんなこんなの折、「お母さん」が倒れ、進行した癌であると判明。
体に支障のある「お父さん」だけでホームを運営していくのは無理だと、
子どもたちそれぞれの里親を探すことになるのだが……。
 
公式サイトを見ても役名が書かれていないので、俳優の名前と役名が一致しづらいのが残念。
子役のみんながそれぞれなんという名前なのかをちゃんと知りたいところ。
役名は暗記して帰宅、忘れないうちにこれを書いています(笑)。
 
高校の同期生の息子は山川大遥(たいよう)くん。先に聞いていたおかげでわかりました。
彼はショウタ役で、子どもたちの中でただひとり台詞なし。
というのもショウタは聴覚障害者なのです。だから、会話はすべて手話で。
なんと難しい役どころなのでしょう。
言葉としての台詞はなくても、台詞は台詞で覚えて、手話も覚えて、
自分の心情を観ている者に姿や表情で伝えなければいけない。
次々と里親が決まっていく中、自分には声がかからない。
親にさえ捨てられた自分のことをほしいと言ってくれる人などいるわけがない。
そう訴えて涙する彼を見たら、こっちも泣かずにはいられません。
美少年というわけじゃないけれど(ごめんやで)、ええ役者になりそうでものすごく楽しみです。
 
就職先で上手く行かなくて水商売に入ったユリに「あんな仕事なんか」と皆が言うのは、
水商売に対して失礼ではないかと思いますし、
ホステスたちを意地悪に描いているのも必要あったかどうか疑問です。
川崎麻世の演技が少し過剰に感じられる部分はあったりもするものの、
本作で児童養護施設の実情を知ることができたのはよかった。
『かば』を観たときにも思ったように、こうして伝えていかねばならぬこと。
 
児童相談所が不要になる世の中になればいいのにという台詞がありました。
本当にそう思います。
日々起きている虐待やネグレクト。心が痛みます。
心を痛めているだけじゃなくて、なんとかしなくちゃいけない。

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『子供はわかってあげない』

2021年08月29日 | 映画(か行)
『子供はわかってあげない』
監督:沖田修一
出演:上白石萌歌,細田佳央太,千葉雄大,古舘寛治,斉藤由貴,豊川悦司他
 
ほっんとに歳を取ったなぁと感じる今日この頃。いろいろと面倒くさい(笑)。
平日の終業後は、映画は観たくても遠くまで行くのは嫌。
109シネマズ箕面かエキスポシティにしか寄りたくないと思う。
一昨年頃までは仕事帰りに頻繁に足を伸ばしていた西宮はしんどすぎて無理。
伊丹ならまだマシだけど、それでもちょっと遠く感じる。
箕面とエキスポシティの次に近いのはイオンシネマ茨木かなぁ。
 
そんな茨木ですが、沖田修一監督の作品でなければ先延ばしにしたかも。
原作は田島列島の同名漫画なのだそうです。
沖田監督といえばまず思い出すのは『南極料理人』(2009)。
これは言わずもがなの南極観測隊のお話。
『滝を見にいく』(2014)は滝を見にいくツアーのおばちゃんたち。
『モリのいる場所』(2017)は老画家が主人公でした。
沖田作品でこんなにもバリバリ高校生が主人公の話は初めて観るかも。
 
最初、スクリーンを間違えたかと思いました。
だって上映開始から流れる映像は延々アニメのシーン。
退出して確認しようかと思い始めたとき、画面が切り替わってホッ。
 
高校2年生の朔田美波(上白石萌歌)はアニメオタクで、
特にお気に入りなのは“魔法左官少女バッファローKOTEKO”。
 
水泳部に所属する美波は、プールサイドから見上げた屋上に人影を発見。
その人影が手にしていたものが気になって駆け上がったところ、
そこにいたのは書道部の門司くん(細田佳央太)。
思いがけず門司くんも相当のKOTEKOファンだと判明して意気投合。
 
ある日、美波はKOTEKO関連の映像を見せてもらいに門司くん宅へ。
代々書道家だという門司くんの家の座敷に束で置かれていたお札(ふだ)は、
美波の実父が彼女の誕生日に突然送ってきたものと同じだった。何故だ。
 
そこで自分の家庭の事情を門司くんに明かすことになった美波。
母親(斉藤由貴)は美波の実父とずっと前に離婚して、
今の父親(古舘寛治)と再婚したこと。小学生の弟がいること。
絵に描いたような幸せな家族で、何の不満もないこと。
それだけに実父の話はなんとなく家族の前ではできないこと。
 
しかしやはり実父に会ってみたい気持ちはある。
門司くんは探偵だという彼の兄(千葉雄大)を紹介してくれて、
お札を頼りにさっそく捜査を開始したところ、
実父は藁谷友充(豊川悦司)、怪しげな新興宗教の教祖だと判明するのだが……。
 
うん、とってもよかったです。
もう本当に絵に描いたような幸せな家庭なんです。
だから、美波の両親が再婚だと知ったときは「えっ」。
美波を見ていると、まさか継父だとは思わなかったから。
 
再婚ならばどこかぎこちなさがあるとか思い込んでしまっているけれど、
そうではなくてむしろ幸せだからこそ言い出せないことがある。
表には出ない美波の葛藤に気づいた母親がそんな話をするシーンがとてもよかった。
 
両親が別れた理由は明らかにされません。
でも憎み合って別れたのではないこともわかる。
豊川悦司演じる実父は、自分の立場をちゃんと弁えています。
今の美波の幸せがいちばん。でも会いに来てくれて嬉しい。
口に出して言わずとも、そのトヨエツの表情になんとも可愛げがある。
 
門司くんの祖父役で出演している品川徹がサイコー。
確か台詞は「門司くんですけど?」だけ。爆笑です。
 
最後の屋上のシーンはちょっと笑いすぎだなぁと私は思うのですが、
そこまでは完璧に好み。
シュールな会話にクスッと笑う。夏の間に観たい作品。
人生、オーケー牧場。

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『フリー・ガイ』

2021年08月28日 | 映画(は行)
『フリー・ガイ』(原題:Free Guy)
監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ,ジョディ・カマー,ジョー・キーリー,リル・レル・ハウリー,
   ウトカルシュ・アンブドゥカル,タイカ・ワイティティ,チャニング・テイタム他
 
109シネマズ箕面にて。もちろん字幕版を鑑賞しました。
 
ショーン・レヴィ監督、大好きです。
皆さんご存じであろう作品としては“ナイトミュージアム”シリーズ。
『リアル・スティール』(2011)なんかも知名度高いか。
劇場未公開だったけどめちゃくちゃ面白かったのが『インターンシップ』(2013)。
どれもこれもワクワクさせてくれて、ちょっぴり切なくもある作品ばかり。
 
ついついそっちを優先して観てしまったのですが、こっちに軍配。
スカヨハの元ダンナでブレイク・ライブリーの現ダンナ、ライアン・レイノルズ、絶好調です。
 
毎日同じ時間に起きて、金魚に「おはよう」の挨拶。
シャツとチノパンに着替え、出勤途中のカフェで「いつもの」コーヒーを買う。
巡査に声をかけたら勤務先の銀行へ向かい、窓口業務に就く。
そのうち銀行強盗がやってきて、犯人から言われたとおりに床に伏せたまま、
別に不安も感じずに、警備員で親友のバディと世間話をする。
そんな日々を繰り返している好青年ガイ。
 
実は彼は大人気オンラインゲーム“フリー・シティ”の中のモブキャラ(=背景キャラクター)。
バディもカフェの店員も巡査も、みんなモブキャラ。
モブキャラにはプレイヤーはいないし、いつも同じように行動し、同じ台詞を言うだけ。
なのにある日、ガイはふとカフェで口走る。「いつものじゃなくてカプチーノにしてみようかな」。
これに周囲のモブキャラが大慌てしたのを見て、「冗談冗談」と言うガイ。
 
プレイヤーのいるアバターは皆、サングラスを装着している。
ガイたちモブキャラとは住む世界が違う、カッコイイ人たち。
ところがガイは、サングラス族の中に理想の女性を見つけてしまう。
 
彼女はモロトフ・ガール、プレイヤーはミリーという女性。
ミリーは男友達のキーズとあるゲームを開発したが、
それを最大手ゲーム会社“スミナ”の社長アントワンに奪われた。
自分たちのコードが盗まれたことを証明しようと、ゲームの中で証拠を探すミリー。
そこへ現れたガイがプログラムにないはずの行動を取るものだから、ミリーは驚き……。
 
自分がモブキャラだとは知らずに生きてきたガイ。
理想の女性を探し、それがモロトフ・ガールだと知り、猛然とアタックする。
純粋無垢な感情しか持っていないので、めちゃくちゃ素直。
“フリー・シティ”は殴ったり殺したりすることでレベルが上がるゲームですが、
モロトフ・ガールから「レベルが上がったらつきあってあげる」みたいに言われて、
ならばとアバターが銃を撃てないようにすることでレベルを上げる。
異例の行動でがんがんレベルを上げて行くガイはたちまち人気者になります。
 
ミリーとキーズが開発したゲームは、バイオレンスではない。
もっと平和なゲームを開発したはずなのに、コードを盗用されて、
こんな「美しくない」ゲームができ上がってしまった。
そして、ふたりが目指していたのは、ゲームの中で成長するAI(人工知能)
 
アントワン役で出演しているのはタイカ・ワイティティ
この人、『ジョジョ・ラビット』(2019)の監督さんですよ。絶対変だ(笑)。
監督しても出演しても面白すぎます。
 
AIが出てくる映画って、開発者の意図に反してAIが感情を持ち
悪いほうに話が進むことが多い。
でも本作では、AIにも性善説が適用されるかのようで、すごくよかった。
AIの予期せぬ暴走はあるかもしれないけれど、
開発者がこんな心を持っていれば、悪いほうには進まない。
 
「僕は君へのラブレター」。ちょっと泣いちゃいました。
この台詞を聴くために、もう1回観たくなっています。

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『かば』

2021年08月27日 | 映画(か行)
『かば』
監督:川本貴弘
出演:山中アラタ,折目真穂,近藤里奈,木村知貴,高見こころ,牛丸亮,石川雄也,浅雛拓,
   秋吉麻希,辻笙,さくら若菜,松山歩夢,冨士田伸明,大橋逸生,八松海志,四方堂亘他
 
『サンマデモクラシー』の後、同じくナナゲイにて。
 
休日平日問わず、連日チケット完売しています。
私が観たのも平日晩の回でしたが、満席。
 
これが劇場デビューとなる川本貴弘監督。
本作がこれほどまでに客を呼び込んでいる理由を私は知らないため、
とてもニュートラルな気持ちで贔屓目抜きに鑑賞しました。
 
舞台となっているのは1985(昭和60)年の大阪・西成
そう、この年は阪神タイガースが優勝した年です。
それも絡めながら描かれているのは、虎ファンとしてまず心を鷲掴みにされます(笑)。
実在した教師・蒲益男さんがモデルですが、残念なことに58歳の若さでお亡くなりになったそう。
蒲先生の葬儀には何百人もの人が参列したそうです。
 
……とこれを知った時点でニュートラルな気持ちではなくなりますが、
知ったのは映画鑑賞後のこと。ちょっと胸に迫るものがありますね。
 
1985年の夏。加藤(折目真穂)は西成区の中学校の臨時教員として採用される。
前途洋々たる思いで着任日を迎えるが、想像していなかった世界に唖然。
 
そこは、生徒自身が「ここには、沖縄、朝鮮しかおらん」と言い切る場所。
先生はどれやと尋ねられた愛は、咄嗟に「どれも違う。普通」と答え、
「普通ってなんやねん」と生徒たちから詰め寄られる。
 
初日ですっかり自信をなくした加藤だったが、先輩教師の蒲(山中アラタ)から、
野球部の顧問を引き受けてほしいと言われてビックリ。
実は加藤はかつてソフトボールの強豪校で4番打者を務めていたのだが、
女のコーチなど認めないという生徒の繁(松山歩夢)と対決を強いられる。
 
タイトルが『かば』というぐらいだから、蒲先生メインかと思いきや、
主役はこの人と言い切れないぐらい、みんなが主役。
そんなみんなを見守る役目を果たしているのが蒲先生です。
 
この学校には女の先生が少ないからやめんといてなと、
最初から加藤に懐く生徒の裕子(さくら若菜)はいつも明るいけれど、
家に帰れば幼い妹とアル中の父親(浅雛拓)がいる。
晩に出かけては客と飲み歩いている母親(皷美佳)と父親は顔を合わせば喧嘩ばかり。
裕子は誰にも相談することができず、悲しみの淵にいます。
 
また、蒲先生の教え子だった由貴(近藤里奈)は、いい感じの相手がいるが、
自分が西成の出身だということをどうしても言えません。
中学生当時、優等生だった彼女は、先生にかまってもらえる問題児たちを羨ましくさえ思っていました。
 
まさに今のその問題児で転校生の良太(辻笙)が転校初日に繁たちから絡まれ、
「朝鮮やろ」と聞かれて「韓国じゃ!」というところは凄み方に笑いつつ、
常に一括りにしてしまっている自分に気づきます。
 
この映画の中に悪い人はいない。
アル中の父親ですら、娘に暴力を振るったりはしないし、
食事をつくって体のことを気にかけてくれる娘に感謝している。
そして、離婚したとしたら、在日の自分について来るよりも、
日本人の母親について行くほうが娘のためではないかと悩んでいる。
 
すごく好きだったシーンは、良太が家の門を開けて出て行く姿を後ろから捉えたところと、
「お父ちゃん、私の肉じゃが、いっぺんも美味しい言うてくれんかった」と裕子がつぶやいた後の
母親の動きと、そのあと肉じゃがの味見をした裕子の表情を捉えたところ。
あぁ、みんなが観たがるのがわかる、贔屓目だけじゃないと思いました。
 
次々と台詞を思い出したりもしています。
「関西人がみんな阪神ファンやと思うなよ。ジャイアンツファンじゃ」と繁がつぶやくところでは
瀬尾まいこの『戸村飯店 青春100連発』を思い出したり、
同じく繁の「野球を嫌いな奴なんかおらん」というひと言にうなずいたり。
いや、野球を嫌いな人は結構多いと思いますけどね(笑)。
夕日はどこで見ても綺麗なんやな、なんてことも思ったり。
 
公式サイトを見たらまた感激。
ここまでキャストがつぶさに紹介されているのは初めて見たかも。
登場人物をひとり残らず紹介したい思いが伝わってきます。
 
あ、パギやんを見られたのも嬉しかったのを余談ですが(笑)付け加えておきます。

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