夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

日本語が正しくない。〈『グランド・イリュージョン』追記〉

2013年10月30日 | 映画(番外編:映画と邦題・字幕・台詞)
前述の『グランド・イリュージョン』の字幕翻訳者は林完治さんでした。
この人の翻訳なら安心して映画に集中できると思っていたのですけれども。

原文も前後の文もまったく覚えていませんが、
目に飛び込んできた字幕、「押しも押されぬ」。

え~っ、「押しも押されもせぬ」だってば!と心の中で叫びました。

しばしその字面に囚われてしまったのが、まだ上映開始からまもない頃。
いかんいかん、こんなことで映画に集中できなくなったらもったいないと、忘れ去ることに。

昨日、浅田次郎の『プリズンホテル 2 秋』を読んでいたら、
ヤクザが経営するホテルに不手際から警察官の団体が宿泊、
マル暴(暴力団対策課)の係長がホテルオーナーのことを
「才気縦横の策士、押しも押されもせぬ大貫目だ」と評する場面がありました。

そこで忘れ去ったことを思い出したわけです。

「ら抜き」はもはや溢れすぎて、気にしていると映画は観ていられないというのか、生きて行けないような。(^^;
でも、こういう正しくない日本語は、映画では使ってほしくないなぁと思うのでした。
ツッコミどころ満載のB級C級映画ならそれも笑えますが、
一流だと思っていた翻訳者の字幕でこんな誤りを見ると激しくガッカリ。

日本語の話といえば、同じく字幕翻訳者の太田直子さんのコメントが引用されている、
野口恵子著『バカ丁寧化する日本語』(光文社新書)がとてもおもしろいです。

本題と外れますが、『プリズンホテル』、おもしろすぎる!

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「ら抜き」が気になる。

2011年03月11日 | 映画(番外編:映画と邦題・字幕・台詞)
以前、低予算映画にのみ出現するものとして、「ら抜き」を挙げました。

あれからほぼ3年、世間ではさらに「ら抜き」が一般化し、
いまやそんなことを気にするのは
器の小さい人間なんじゃないかと思ってしまうほど。(^^;

邦画を観ていれば、もはや「ら抜き」のほうが普通ですし、
何十年か前の洋画がDVD化されると、その字幕にも「ら抜き」多発。
「見れる」「食べれる」「寝れる」などなど、
もう「ら抜き」がどうたらとは言いづらい状況です。

周りの人が「ら抜き」で話していたり、メールをくれたりしても、
それについてどうこうとはまったく思いません。
それでも、私自身が「ら抜き」は使わないでいようと思うのは、
もともと正しかったはずの日本語がどれなのかを忘れずにしていたい、
使うときに考えたいと思うからかなぁ。

いま読んでいるのは天童荒太の著作なのですが、
この人はまた気持ちいいぐらい、「ら抜き」なし。
気持ちが「ら抜き」に引っかかることがないので、さくさく読めます。
けれども「ら抜き」が不自然な場合ももちろんあり、
たとえば、「ら抜き」を使う人と使わない人の会話を
小説の中で使い分けているとみられる著者に当たると、
「おおっ!」とニヤリとしてしまいます。

思いっきりイマドキの人の映画なのに「ら抜き」じゃなくて驚いたのは、
『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』(2009)でした。
2ちゃんねるで話題になったスレッドの実写映画化でしたね。

小池徹平演じる、元ひきこもりの青年が、小さなIT企業に就職。
サービス残業で徹夜もあたりまえのブラック会社で……というお話でした。
そんな会社で、小池くんが唯一信頼していたのが田辺誠一演じる社員。
ふたりが屋上で会話するシーンで
「これまで生きて来られたのも」という台詞が二度も登場し、
「ら抜き」とちゃうやん!と思わず巻き戻してチェックした次第です。

ところで、大阪弁に「ら入れ」があると気づいたときは愕然としました。
「走れない」が正しいですから、「走れへん」と言うべきなのに、
「走られへん」と言っちゃいます。あかんやん、私。
関西弁でも、京都弁ならば、ちゃんと「走れへん」。
大阪弁の場合、「走れへん」と言うと、
「走る気がないから走らない」というニュアンスになることがあって、
そのニュアンスを伝えたいときは、「走らへん」だったり。

日本語ってむずかしい。おもしろい。

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俺たち、ほにゃらら。

2009年03月31日 | 映画(番外編:映画と邦題・字幕・台詞)
邦題を考える人の長期に渡るブームなのか、
頻出しているのが『俺たち○○』というタイトル。
ほぼまちがいなく、超B級。

今週観たのはレンタル新作『俺たちダンクシューター』(2008)。
バスケットボールの独立リーグABAがNBAに吸収されることに。
ABA傘下チームのうち、NBAに昇格できるのは上位4チームのみで、あとは解散。
1曲だけ大ヒットした過去を持つ歌手ジャッキーが
オーナー兼監督兼選手を務める“フリント・トロピックス”は、
すちゃらかチームの名を返上し、NBA昇格を目指す。
……という、一応、スポ根ではありますが、
NBAで優勝経験のある選手を獲得するため、
トレードに出したのは自チームの洗濯機。

主演のウィル・フェレルは、序盤はその暑苦しさだけが目立ち、
これなら同じウィル・フェレルでも、
『俺たちフィギュアスケーター』(2007)のほうが涼しい競技の分、
マシだったかもと思っていました。
だけど、最後はきっちりホロリ。
こんな映画で涙ぐんでる自分がアホみたいですが。

もういっちょ、『俺たちステップ・ブラザース 義兄弟』(2008)。
やはり主演はウィル・フェレルで、日本では未公開。
39歳のブレナンと40歳のデイルは、
どちらも独身、親のスネをかじり続けて無職。
母親と父親が電撃結婚したせいで、彼らは義理の兄弟に。
これもヒドイんですけど、絶対嫌いにはなれません。
スーパーハッピーエンディングが待ってます。

『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(2007)は、
バカバカしくも意外ときっちり仕上げられたアクションもの。
優秀すぎるがゆえに反感を買い、田舎町に左遷された巡査ニコラスが、
町ぐるみの陰謀に気づいて孤軍奮闘。
やる気のなかった同僚たちもやがてニコラスに刺激を受け……。
ニコラス役は『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)のサイモン・ペッグ。
真面目な顔をすればするほど可笑しい。

そのほか、『俺たちニュースキャスター』(2004)。
去年から借りるに至れない『俺たちプロボウラー』(2007)。
最近予告編で観た、デニス・ロッドマン主演の『俺たち庶民派シューター』(2008)。
このタイトルではどうしても観る勇気が出ない、
『俺たちブラボー・ブラザース ホラ吹いて行こう!』(1996)。
とどめに『俺たちラップが子守歌』(1993)って、どうよ、これ。
寝られへんっちゅうの。

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『16ブロック』〈追記〉

2008年05月08日 | 映画(番外編:映画と邦題・字幕・台詞)
昨日の『16ブロック』に出てきた性格診断について。

冒頭、喋りっぱなしのエディに問いかけられたとき、
ジャックはこの質問に答えません。
考えているふうでもなく、やかましいエディをまったく無視します。
答えたのはラスト近くになってから。
このシーンがまた実に良くて(ラストシーンの次に好き)、ホロリと来ます。

ジャックの答えは、こうでした。

「車は親友に預けて、ばあさんを病院へ送らせる。
 自分は理想の女性とバス停に残れば、万事めでたし」。

やられました。ブラボー。

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「脳みそが便秘なんじゃないの?」

2008年04月04日 | 映画(番外編:映画と邦題・字幕・台詞)
前述の『タロットカード殺人事件』
気になる日本語字幕がありました。

サンドラは、当初、真犯人はピーターにちがいないと確信しています。
しかし、ハンサムでスマートでリッチな彼に好意を寄せられて、
その疑念を払拭したくなります。

どんどんピーターに入れ込んでゆくサンドラの目を覚まさせようと、
シドニーはひとりで証拠集めに駆けずり回ります。
ピーター真犯人説に熱弁を振るうシドニーに対して、
サンドラのひと言がこうでした。
「脳みそが便秘なんじゃないの?」。

「脳みそが便秘」って、スゲェ訳。
聞き慣れない単語が耳をかすったので、
これはもしや戸田奈津子さんばりの超訳なのではと思い
(戸田さんのワラける誤訳or超訳についてはこちらこちらをご覧ください)、
巻き戻して英語字幕を見てみたら、
“What are you putting in your Metamucil?”。

直訳すると「Metamucilに何を入れていますか」なんですけど、
“Metamucil”って、なぁに?
ネットの英和辞書ではヒットせず、
普通に検索してみたら、“メタムシル”という便秘薬でした。
天然オオバコ繊維から成る、お通じ促進剤とあります。
わかってスッキリ。

アメリカではおそらく誰もが知っている商品等の固有名詞が
映画に登場する例としては、
“PROZAC(プロザック)”という抗うつ剤があります。
『私は「うつ依存症」の女』(2001)では原題がまさにそのものでした。

ハリウッド映画では、“Google”は今や「検索する」という動詞同然。
日本語でも「ググれ」という言葉が存在するぐらいですもんね。
ほかにも同様の単語があるのかなと興味を引かれます。

“メタムシル”の話のついでに。
職場にバオバブの種を持ってきた人がいます。
しがむと繊維が出てきて、それが便秘に効くんだとか。
どこかに植えようという話にまでなったので、思わず言いました。
「え、バオバブって育てるの、めっちゃ大変なのでは。
『星の王子さま』では、バオバブの根を引っこ抜かなかったばかりに、
王子さまの星が割れちゃいましたよ」。
自分でそう言ったものの、うろ覚えなので、
近々『星の王子さま』の本か映画で確認してみることにします。

さらに話のついでに。
「しがむ」って標準語じゃないんですね。
「噛む」や「吸う」や「舐める」とはちがう、
「しがむ」は「しがむ」でしか表せないと思いませんか。

話がそれ過ぎ。失礼しました。

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