夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』

2014年04月29日 | 映画(わ行)
『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(原題:The World's End)
監督:エドガー・ライト
出演:サイモン・ペッグ,ニック・フロスト,パディ・コンシダイン,
   マーティン・フリーマン,エディ・マーサン,ロザムンド・パイク他

シネ・リーブル梅田でハシゴの3本目。

エドガー・ライト監督とサイモン・ペッグ&ニック・フロストのトリオによる作品。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)、『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(2007)、
そして本作と合わせて3部作、これが完結編という位置づけなのだそうな。
どう考えたら3部作なのかよくわかりませんが、
まわりからちょっと鬱陶しがられているダメ主人公が世の中を救う3部作?

アホほど酒を飲んだ若かりし時代が懐かしくてたまらないゲイリーは、
当時は果たせなかった“パブ・クロール(=パブのハシゴ)”を完遂しようと、
しばらく会っていないあの頃の悪友たちに声をかける。

突然呼び出されたアンディ、スティーヴン、オリヴァー、ピーター。
みんなゲイリーとはちがって、そこそこ真面目に働き、結婚して子どもがいる者もいる。
ゲイリーのバカにはつきあえないと思いつつ、待ち合わせ場所に足が向いてしまう。

20年ぶりにやってきた故郷の町はイギリス郊外のニュートン・ヘイヴン。
ここでパブ12軒をハシゴ、5人で60パイントのビールを飲む。
ゲイリーはこれを何が何でもやり遂げるのだと主張する。
(ちなみにパイントは英と米で異なるそうで、英では1パイント= 0.56826125リットル、
60パイントならば約34リットルということか。)

こうしてアラフォー男たちはパブに足を踏み入れるが、
なんだか町全体を異様な雰囲気が覆っているような気がしてきて……。

一応SFアクションコメディですからね、途中からあり得ない方向へと話が進みます。
同トリオ作品をご覧になっている人なら想定内でしょうけれども。
しかし、想定外に持って行きたかったのか、終盤はかなりグダグダの感。
これ以上書くとネタバレですし、本作に関してはネタバレしてはつまらないので、
変な映画だなぁと思いながら観ることをオススメします。

“ホビット”シリーズのビルボ役、マーティン・フリーマンをこんな作品で観られるのは楽しいし、
彼の妹役を演じるロザムンド・パイク、私はかな~り好きです。

こんなヘンテコな映画を撮る監督なのに、
彼が挙げる2013年度のベストテンはわりと普通で余計に可笑しい。
興味のある方はウィキペディアに掲載されていますのでどうぞ。
監督の恋人、アナ・ケンドリックも面白い女優さんですよね。

グダグダだなぁと思いながら観ていたのですが、
ものすごく笑う女性客がいて、この人にかなり釣られました。
そのおかげで評価3割増しぐらいかも。
こういう楽しい雰囲気の中で観られるのも劇場の良さ。

なお、本作の公開記念として心斎橋の飲み屋12軒をハシゴするスタンプラリー開催中。
発売中の『映画秘宝』には町山智浩氏による『ワールズ・エンド』元ネタ大事典も。

どこもかしこも同じ店なんてつまらない。
なんでもスタバにされてたまるか。

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『世界の果ての通学路』

2014年04月27日 | 映画(さ行)
『世界の果ての通学路』(原題:Sur le Chemin de l'Ecole)
監督:パスカル・プリッソン

シネ・リーブル梅田で3本ハシゴの2本目。

“アンパンマン”の上映中でもないかぎり、
シネ・リーブルではあまり見かけない親子連れが多く、なんでかなと思ったら、
子どもに大人気の番組で取り上げられたそうで。

2012年のフランス作品。
英語タイトルは“On the Way to School”で、仏語タイトルと同じ意味。
タイトルロールに表示されていたのは英語のほうでした。
そのタイトルどおりのドキュメンタリー。
“学校に通える幸せに気づいてほしい”、そんな一文ではじまります。

登場するのは4組の少年少女。

ケニアのサムブル族の少年ジャクソンは、妹サロメとともにサバンナを抜けて学校へ。
野生動物が出没するこの地区では、学校に行くのは命がけ。
象に襲われて犠牲となる子どもが毎年何人かいて、「命がけ」とは決して大げさではありません。
象に会いませんようにと念じるよりほかなく、
不運にも遭遇してしまったら、目を合わさずに息を凝らし、通り過ぎるのを待ちます。

アンデス山脈の牧場に暮らす少年カルロスは、妹ミカイラと一緒に馬に乗って学校へ。
この馬がいつも冷静沈着。どんな荒れた道も落ち着いて走ります。
しばしばミカイラは「前に乗りたい」とカルロスにお願い。
「お母さんに怒られるから」と断るカルロスもたまに根負け、嬉しそうなミカイラ。

モロッコのベルベル人の少女ザヒラは、友だち2人と毎週月曜日に全寮制の学校へ。
金曜日の夕方になると、同じ道を通って帰宅します。
1人が足を傷めて歩けなくなった日、ヒッチハイクを試みるも立て続けに失敗。
ようやく乗せてくれる車を見つけたはいいけれど、
今にも学校に遅れそうだというのに、運転手が祈祷タイムに入ってしまい。

インドの漁村に生まれたサミュエルは、足に障害があります。
そのため、弟2人がサミュエルの乗った車椅子を押して学校へ。
川に突っ込んでなかなか進めなかったり、タイヤが壊れそうになったり。
兄弟喧嘩をしながら(喧嘩している場合じゃないのに)進む多難な道のり。

距離にちがいはありますが、いずれの道も平坦ではありません。
これを1時間半から2時間かけて。

教育を受けることが義務であり権利であることが当たり前ではない国で、
こうして学校に通いながら将来の夢を語る子どもたちの顔がキラキラ輝いています。
お金持ちであっても学校を辞めさせられる家庭もあるのに、
貧乏にもかかわらず学校へ通わせてくれる親に感謝し、
医者や獣医になって、自分の住む地域の人たちを助けたいという子どもたち。
パイロットになって世界中の空を飛びたいんだという子どもも。

サミュエルの弟がタイヤ修理できるようになったというテロップには笑いました。
タイヤ修理のみにとどまらず、あれもこれも直せるようになってね。

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『レイルウェイ 運命の旅路』

2014年04月25日 | 映画(ら行)
『レイルウェイ 運命の旅路』(原題:The Railway Man)
監督:ジョナサン・テプリツキー
出演:コリン・ファース,ニコール・キッドマン,ジェレミー・アーヴァイン,
   ステラン・スカルスガルド,サム・リード,石田淡朗,真田広之他

前日の映画と甲子園のハシゴでなんとなく腰が痛い。
座っていられるかどうか不安になりながらも、
シネ・リーブル梅田にて3本ハシゴの1本目。

オーストラリア/イギリス作品。
原作はエリック・ローマクスの自叙伝『泰緬鉄道 癒される時を求めて』。
第二次世界大戦中、タイビルマ(現・ミャンマー)を結ぶ泰緬鉄道の建設に
日本の捕虜として従事させられた連合軍兵士が語る実話です。

かつて英国軍の中尉だったエリックは、終戦から何十年経とうとも心の傷が癒えないまま。
軍人仲間が集まる場に顔を出しても何を話すでもなく、
昔から大の鉄道オタクの彼は、ただひとり、時刻表を眺めている。

そんな彼がある日、列車の中で向かいの席に座った女性パトリシアに恋をする。
軍人仲間らに珍しく口をきいたと思ったら一目惚れした彼女の話で、皆びっくり。
パトリシアにただちに想いを告げに走るエリック、その想いに応えるパトリシア。
ふたりはほどなくして結婚する。

しかし、一緒に暮らしはじめてから、時折エリックが見せる苦悶の表情。
幻影におびかされるかのような行動に、パトリシアは戸惑う。
彼が第二次世界大戦のトラウマに苦しみつづけていると知ったパトリシアは、
なんとかその苦しみから解放されるよう力になりたいと思うのだが……。

列車関連のことならばいくらでも楽しそうに話してくれるエリック。
けれども泰緬鉄道の建設の話に至ると、そこからは何も話さなくなってしまいます。

日本の勝利を信じ込まされ、連合軍兵士に対して拷問をくり返した日本軍。
太平洋戦争終結直後にブラジルで起きていた事件を描いた『汚れた心』(2011)を思い出し、
さまざまな国での情報操作に、戦争が本当に憎くなります。

自分に拷問を働いた日本人通訳・永瀬がまだ生きている。
旧友のフィンレイからそれを聞いてしまったエリックがどんな行動を取るか。
役者が替われば、もしかしたら偽善的になってしまうかもしれないシーンを
コリン・ファース真田広之はしっかり重く見せてくれます。

「実話だから感動する」という流れはあまり好きではありませんが、
拷問された側が書く実話だと思うと、やはり心が揺さぶられます。
『あなたを抱きしめる日まで』を観たときにも考えさせられた「赦す」ということ、
ただただ凄いことだと思わずにはいられません。

若き日の永瀬役を演じた石田淡朗、由緒正しい俳優さんらしいのですが、
彼の表情からは良心の痛みのようなものは私にはまったく感じ取れなくて、
いくばくかでも良心はあったのかと疑問ではありました。
それとも良心そのものさえ失わせてしまうのが戦争なのか。

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『8月の家族たち』

2014年04月23日 | 映画(は行)
『8月の家族たち』(原題:August: Osage County)
監督:ジョン・ウェルズ
出演:メリル・ストリープ,ジュリア・ロバーツ,ユアン・マクレガー,クリス・クーパー,
   アビゲイル・ブレスリン,ジュリエット・ルイス,ジュリアンヌ・ニコルソン他

この日も甲子園へデーゲームを観にいく予定。その前に1本。
TOHOシネマズの呪縛(?)から逃れ、どこの劇場で観るのもアリだとなると、
何を観ればいいのか迷ってしまうものですねぇ。
迷いながら、金券ショップが開店するのを待って前売り券をゲット、大阪ステーションシティシネマへ。
メンバー料金1,600円、前売り券1,500円であまりお得感はないけれど。

デビュー作の『カンパニー・メン』(2010)が高い評価を受けたジョン・ウェルズ監督。
そのデビュー作はオトコくさい豪華キャストでしたが、
今回はオンナが凄い豪華キャストながら、間にいる男どもがまたシブイ。

原題は“August: Osage County”で、
舞台となっている米国オクラホマ州の北部に位置する「オーセージ郡の8月」です。
オーセージ郡はネイティブアメリカンの居留地の中にあるそうな。
オクラホマ州出身の劇作家トレイシー・レッツによる同名戯曲が原作。

8月のある暑い日、父親ベバリー(サム・シェパード)が失踪したとの知らせ。
動揺する母親バイオレット(メリル・ストリープ)の様子を見に、
娘たちとバイオレットの妹夫婦(クリス・クーパー&マーゴ・マーティンデイル)が集まる。

娘のうち、唯一オーセージ郡に残る次女アイビー(ジュリアンヌ・ニコルソン)がいち早く駆けつけるが、
バイオレットが頼りにしているのは長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)だけのよう。
そのバーバラは、夫ビル(ユアン・マクレガー)と娘ジーン(アビゲイル・ブレスリン)とともにやってくる。

数日後、ベバリーの遺体が自殺とおぼしき形で発見され、葬儀が執りおこなわれる。
三女カレン(ジュリエット・ルイス)はド派手な車に大音量の音楽でけたたましく登場。
車の持ち主は彼女の婚約者だという怪しげな中年男スティーブ(ダーモット・マローニー)。

葬儀の後、皆そろって実家で食事をすることに。
寝坊して葬儀に欠席した妹夫婦の息子リトル・チャールズ(ベネディクト・カンバーバッチ)も顔を見せる。

癌を患って闘病中ながら、あいかわらずの毒舌ぶりを発揮するバイオレット。
いちいち嫌みな母親の物言いに、ついにバーバラがキレる。
悲しみに暮れるも穏やかなはずの晩餐の席に気まずい空気が流れはじめ……。

戯曲が原作と聞いて納得、飛び交う台詞の妙を楽しむ作品です。
楽しむと言っても、登場人物は人生うまく行っていない人ばかり。
爽快なわけもなく、ただただ演技の上手さに感心します。

ちょうど読んだばかりの伊坂幸太郎の『SOSの猿』では、
子どものことは何でもわかっていると断言する親は実はわかっていないことばかり、
なんてシーンがあったのですが、
本作のバイオレットは、身内の状況を非常によくわかっています。
あの夫婦は上手く行っていないとか、あの子と誰それがデキているとか。
それをいま言うか?てなときに言い放つものですから、家族は大変。

そんななか、クリス・クーパー演じる妹夫婦の夫がとてもいい。
罵倒されてばかりの息子リトル・チャールズに向かって、
「おまえにがっかりさせられたことなんて一度もない」というシーン、
そして彼が何もかも知っていたとわかるシーンでは器の大きさを感じます。
リトル・チャールズ役のこんな駄目駄目カンバーバッチも面白い。

『SOSの猿』には、「子どものことがわからない、でもわかりたい」、
そんなスタンスでいいのではという一文がありました。
バイオレットの場合は、「わかりたくない、でもわかってしまう」。
そんな彼女の気持ちを考えると、なんとも言えず。

脱ぐことなくスターダムにのぼりつめた数少ない女優、
メリル・ストリープとジュリア・ロバーツの演技を観るだけでも価値のある1本。

ブラピと噂されていたころの彼女は何処へ、
ジュリエット・ルイスのおでこの皺が映るたび、
自分の年齢もまざまざと見せつけられるようでツラかったけれども、
甲子園へ行けば5点差をひっくり返しての逆転勝利。
デコの皺も忘れたのでした。

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面白きことは良きことなり。

2014年04月22日 | 映画(番外編:映画と読み物)
先月は、TOHOシネマズの1ヶ月フリーパスで映画を観たほか、
普通にお金を払って観た映画やTSUTAYA DISCASでレンタルしたDVDなど、
合計45本の映画を観ました。

その分、本は読めないと思っていましたが、なんだかんだで14冊読了。
映画の公開に間に合わせて読んだ『偉大なる、しゅららぼん』とか『白ゆき姫殺人事件』とか。
映画とまったく関係のないところでは楡周平の『骨の記憶』が
桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』のように「昭和」な感じで面白く、
池井戸潤の『ルーズヴェルト・ゲーム』では野球シーズン到来モードに。

こんなふうに映画を観て本を読んで、こうして日記にUPして、
ダンナの出張中は食事の支度はすっ飛ばせるといえども、
洗濯と掃除機をかけるぐらいはしなくちゃなりません。
そうなると睡眠時間を削るしかなく、連日へろっへろの状態。

そんな状態でもDVDの到着が楽しみでたまらなかったのが、
森見登美彦原作の『有頂天家族』のアニメ。
森見さんの文体は独特で、さくさくと読み進めることはできません。
それでも森見作品にはイマジネーションを膨らませる力があって、
『有頂天家族』を読んだときもめちゃめちゃ幸せでした。

TVアニメはまったく観ないし、DVD化されたさいに観てみる気になっても、
たいていの場合が1巻目であきてしまい、2巻目以降には手が伸びず。
だけどこの『有頂天家族』は『四畳半神話体系』のときと同様、
いや、それ以上に続きが楽しみで、レンタル開始初日に観てきました。
先月ついに最終巻が出て、今月からないと思うと寂しくて寂しくて。

古来から、人間に化けて京都に住む狸。
狸の名門、下鴨家と夷川家は、長年ライバル関係にある。
下鴨家の父・総一郎の実弟・早雲が夷川家に婿入りし、早雲は夷川家の頭領に。

狸界のトップに君臨したい早雲は、数年前に総一郎を騙す。
「金曜倶楽部」という、毎年狸鍋を食すことを恒例としている美食の会へ総一郎を差し出したのだ。

狸鍋にされてしまった総一郎の跡を継ぎ、今は長男の矢一郎が下鴨家を仕切っている。
二男の矢二郎は総一郎の亡き後、アマガエルに化けて井戸の奥底に籠もったきり。
気ままに暮らす三男の矢三郎は、普段は男子大学生に化けているが、
頭抜けた化け力を携えており、女子高生から達磨まで、自在に化けることができる。
四男の矢四郎は普段はかわいい少年の姿。しかし、怯えるとすぐにしっぽが出てしまう。
宝塚歌劇に心酔する母は、美青年に化けてビリヤード通い。

こんな面々に加えて、夷川家の四字熟語好きな双子の息子・金閣と銀閣や、
夷川家で唯一良心を持つ娘の海星、
天狗の赤玉先生に、赤玉先生から天狗の術を教え込まれた美女・弁天、
それに金曜倶楽部のメンバーなど、みんながみんな個性的。

阿呆の血のしからしむところ、次々と起こる阿呆な出来事。
わくわくしたシーンは数知れずありますが、
狸が化けたニセ叡山電鉄がニセ寺町通りを疾走したり、
赤玉ポートワインを燃料とする「空飛ぶ茶室」が五山の送り火の日に飛んだり、
これがウキウキせずにおられましょうか。

面白きことは良きことなり。
まだバラでしかDVDが発売されていないのですが、
コンプリートBOXとか発売されたら買ってしまいそう。

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