夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

偏見を覆すモノ。

2010年02月26日 | 映画(番外編:映画とスポーツ)
格闘技は苦手です。
ボクシングはまだしも、プロレスは痛々しくて見ちゃいられません。
しかも、あれは「やらせ」の要素が強いと思っていたので、
芝居なのにどうしてあそこまでするのかと疑問でした。

そんなわけで、プロレスの映画は遠ざけてしまいます。
それでも、気楽に観られそうな作品は観てきました。
『いかレスラー』(2004)、『お父さんのバックドロップ』(2004)、
『ホネツギマン』(1998)、『ガチ☆ボーイ』(2007)など。
どれも楽しめましたが、プロレスへの印象は変わることなく。

ところが、『レスラー』(2008)を観て、
私のプロレスに対する認識が根底から覆されました。

ミッキー・ロークが扮するランディ・ロビンソンは、
1980年代に大活躍したプロレスラー。
いまは地方興行に出場し、手にするのはわずかなギャラのみ。
トレーラーハウスに一人で住み、
昼間は近所のスーパーマーケットで働いています。

ある日の興業後、長年使用していたステロイドのせいで、
心臓発作を起こしてバイパス手術を受けます。
医師からプロレスを続けるのは無理だと宣告され、
不安に駆られたランディは、馴染みのストリッパーに安らぎを求めます。

彼女の助言に従い、疎遠になっていた娘に連絡を取りますが、
娘はそう簡単には父親を許してくれそうにありません。

こんなランディの半生が静かに描かれます。

興業前に対戦相手たちと交わされる会話は、
お互いへの敬意に充ち満ちたもの。
やらせであっても、自らを切り付け、ガラスをぶち抜き、
肉体にホッチキスを打ち込み、観客を沸かせる。
善玉も悪玉も一緒になって健闘をたたえ合う。
俺にレスラーを辞めろという権利があるのはファンだけ。

ミッキー・ローク自身の姿と重なったことが
より評価を高めたと言われていますが、最近観た作品の中では、
『3時10分、決断のとき』(2007)と本作がまさに男泣きの2本なのではないかと思います。

偏見が覆されると言えば、カステラと水羊羹。
どちらもたいしたことないと思っていたお菓子ですが、
福砂屋の五三焼と甘泉堂の水羊羹を初めて食べたとき、
ホントに目からウロコでした。

それと、昔は偏見から聴かなかったヘヴィメタも、
本作では多数登場します。
ガンズ・アンド・ローゼズ、シンデレラ、アクセプトなど。

エンディングはブルース・スプリングスティーンに泣いてください。

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『男と女の不都合な真実』と、カクテルと。

2010年02月23日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
映画に登場するいろんな飲み物。
お料理が出てくるシーンももちろん楽しいですが、
番外編で挙げた「飲み物いろいろ」「まずそうだけど、こんなお酒。」などなど、
飲み物だけでもワクワクします。

レンタル新作の『男と女の不都合な真実』(2009)は、
『ラスベガスをぶっつぶせ』(2008)のロバート・ルケティック監督による作品です。

アメリカのローカルTV局の女性プロデューサー、アビーは、
頭が切れる超美人なのに、男運にはとことん見放されています。
というのも、彼女には自分の結婚相手に求める、譲れない10項目があり、
それをすべてクリアする男性なんて、まぁ存在しないから。

このところマンネリ化している彼女の担当番組に、
視聴率アップを狙う上司が呼び寄せたのが、恋愛カウンセラーのマイク。
下品なマイクのことをアビーは毛嫌いしますが、
下ネタ満載となった番組に視聴率はうなぎのぼり。

そんなとき、彼女の向かいの家にイケメン医師のコリンが引っ越してきます。
10項目を余裕でクリアするとおぼしき彼に、アビーはぞっこん。
このチャンスを逃すものかと必死になりますが、
コリンの心をつかむすべがアビーにはわかりません。
そこで、マイクから恋愛指南を受けることにするのですが……。

とっても楽しい作品です。
キャサリン・ハイグルは、アビーがハマリ役。
マイクを演じるジェラルド・バトラーも、
『P.S.アイラヴユー』(2007)の真面目な二枚目より、
こんなちょっと三枚目な役のほうがずーっと好感が持てます。

映画のなりゆきはお察しのとおり。
マイクからあれこれアドバイスを受けるうち、
アビーはマイクのことが頭から離れなくなり、
一方のマイクも幸せそうなアビーを見て切ない気持ちになります。

そして、本作に登場するカクテルが“モヒート”。
アビーとマイクが出かけた店で、アビーが飲んでいたカクテルです。
先週末、おじゃました尼崎・武庫之荘のお店で作っていただきました。
ラムベースのロングカクテルで、ミントが効いていてスッキリ。
その後、ラムそのものが飲みたくなり、ハバナクラブもグイッと。
ごちそうさまでした!

映像としてはごく一部を除いて過激なシーンはありませんが、
台詞にはあまりに下ネタが多いため、R-15指定。
だけど、笑って泣いて安心できる、良質のロマンチックコメディです。

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「非女子」なるもの。

2010年02月18日 | 映画(は行)
『非女子図鑑』(2009)を観ました。

映画学校「ニューシネマワークショップ」が、
映画プロデューサーコースの実習作品として企画したオムニバス作品。
コース修了者は実習作品の配給や宣伝等に関わって、
映画ビジネスを体験できるそうです。

著名な監督にこのような短編を撮らせて、
学生がプロデュースに関わるというのは面白いですね。
本作もその過程を経て昨年公開されました。

オープニングは、禁断の実をむさぼるイブ(鳥居みゆき)。
彼女が「ひたすら自らの欲望に正直に突っ走る非女子」の元です。

第1話『占いタマエ!』。
高校生のタマエ(足立梨花)は、
神社の境内に設置されたガチャガチャ占いを毎朝するのが日課。
占いの結果がどんなにへんてこなものであろうと、彼女は忠実。
というのも、彼女は占いを作っている神主に恋していて……。

第2話『魁!! みっちゃん』。
肉体の鍛錬に余念のない光子(山崎真実)は、
焼きそばの無料試食がおこなわれている公園を訪れる。
1人1食限定なのに、何度も列に並ぶ光子に、焼きそば屋の親父が激昂。
従業員のタクに光子を追い返すように指示するのだが……。

第3話『B[ビー]』。
遺跡発掘現場の責任者を務める美帆(月船さらら)。
ブラジャー嫌いの彼女は、発掘作業中の圭吾の背中に目が釘付けに。
汗で透けて見えたその背中にはブラジャーのホックが。
それがみんなに知れ渡って、圭吾は現場を去ることになり……。

第4話『男の証明』。
ヤクザ映画の主役オーディション会場。
適材が見つからず、苦笑するしかない監督とプロデューサー。
最後に現れたのが、見事な男っぷりの女優(片桐はいり)で……。

第5話『混浴 heaven』。
海に臨む温泉旅館へ、ひとりでやって来た千晶(江口のりこ)。
鞄の中の七輪を見た仲居は自殺志願者だと勘違いして大慌て。
そんな仲居を尻目に、千晶は混浴の露天風呂へ。
七輪で魚を焼き、居合わせた男性客と酒を酌み交わしていると……。

第6話『死ねない女』。
自殺を決意したOL、涼子(仲里依紗)。
いざ手首を切ろうとすると、自分の死後が脳裏をかすめる。
散らかり放題の部屋に、刑事は驚いて笑うだろう。
そこでまず掃除機を買いに走るが、次々と気がかりなことが。
ダサいカーテン、冷蔵庫の中身、錆びた包丁、ジャージ姿にすっぴん……。

レンタルしたら、予想を上回る楽しさ。
大和撫子は何処へ。
けれど、こんな可愛い非女子のみなさん、憎めません。

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『のんちゃんのり弁』

2010年02月15日 | 映画(な行)
『のんちゃんのり弁』
監督:緒方明
出演:小西真奈美,岡田義徳,村上淳,佐々木りお,
   山口紗弥加,岸部一徳,倍賞美津子他

週刊漫画雑誌『モーニング』に1990年代後半に連載された、
入江喜和による同名漫画の映画化。
連載中にはテレビドラマ化もされました。

東京の下町育ちの主婦、小巻は、
自称小説家のぼんくら亭主、範朋に愛想を尽かし、
一人娘ののんちゃんを連れて実家に帰る。

慰謝料も養育費も不要だと言って飛び出してきたが、
小巻は通帳を開いてその残高におののく。
のんちゃんの幼稚園転園に伴って、想定外の出費もあるのに。

就活を始めたものの、31歳、キャリアも資格もなし、
幼稚園のお迎えがあるので勤務は13:00までと言う小巻は
どこへ行っても冷たくあしらわれる。

中学の同級生で、偶然にものんちゃんの転園先で保母を務める麗華は、
自らもバツイチで修羅場をくぐり抜けた経験から、
綺麗事は駄目、水商売でも何でもしろと忠告する。
腹を括った小巻は、麗華の紹介で小料理屋を訪れるが、
男性客に抱きつかれて張り倒してしまう。

凹む小巻は、やはり中学の同級生で、写真館を営む建夫と再会。
写真の配達につきあって立ち寄ったのが、酒とめしの店“ととや”。
主人から出されたサバの味噌煮に小巻は仰天。
あまりの美味しさに弟子入りを志願するのだが……。

「のり弁」は、のんちゃんの大好きな、小巻が作るお弁当。
上から見ると、白ごはんに海苔をのせただけのお弁当ですが、
お箸を入れると、あら、ニッコリの素敵な断面。
これでのんちゃんも人気者に。

岸部一徳演じる“ととや”の主人は、
映画のオイシイところを見事に全部持って行きます。
熱すぎない台詞の言い回しがさすが。

こんな小西真奈美は初めて見ましたが、とっても○。
彼女は、最近コメディ映画に多数出演している成海璃子よりも、
ずーっとコメディエンヌが似合うかもしれません。

ストーカーまがいの行動に走る範朋に岡田義徳、
嫁日照りだと嘆く人の良さげな建夫に村上淳。
口の悪い母親に倍賞美津子と、飽きさせない出演陣。
さらに、弾けた麗華先生を演じる山口紗弥加がサイコー。

ちょっと昭和の香りのする作品です。
名作『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001)に、
「懐かしいって、そんなにいいことなのかなぁ」という、
風間くんの印象深い台詞がありましたが、
やっぱり、懐かしいっていいことだと思うのでした。

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『ウェディング・ベルを鳴らせ!』

2010年02月12日 | 映画(あ行)
『ウェディング・ベルを鳴らせ!』(英題:Promise Me This)
監督:エミール・クストリッツァ
出演:ウロシュ・ミロヴァノヴィッチ,マリヤ・ペトロニイェヴィッチ,
   リリャナ・ブラゴイェヴィッチ,ミキ・マノイロヴィッチ他

セルビア/フランスの作品。
監督はユーゴスラビアのサラエヴォ(現ボスニア・ヘルツェゴビナ領)出身。
ユーゴスラビア人の映画監督は、私はこの人しか知りません。
『黒猫・白猫』(1998)を観たとき、独特の笑いのセンスに最初は引き気味、
次第にのみ込まれて、いまや大好きな監督です。
本作はレンタルにて。現在、同監督作の『マラドーナ』が公開中。

セルビアの山奥ののどかな村。
12歳の少年ツァーネは、お茶目な祖父と2人で暮らしている。
ある日、自らの死期が近いと悟った祖父は、
自分がいなくなっても孫がしっかり生きていけるようにと、
次の3つの約束を果たすまで村へ帰ってきてはならないと言って、
ツァーネを町へ送り出す。

祖父が課した3つの約束事とは、
ひとつ、聖ニコラスのイコン(聖画)を買う。
ふたつ、ツァーネ自身への土産を買う。
みっつ、お嫁さんを見つける。

12歳にして婚活を強いられたツァーネは、
乳牛を連れて町へと向かうのだが……。

ハチャメチャです。
町へ出ると、村ではありえないヘソ出しルックのお姉ちゃんがごろごろ。
嫁なんて早すぎると思っていたツァーネも目が釘付け。
そして、とびきりの美人女子大生、ヤスナに一目惚れしてしまいます。
およそ恋愛の対象になるとも思えないツァーネが、
食べ物や仮病を使ってヤスナの気を引こうとする様子が可愛い。

セルビアに世界貿易センタービルを建設して儲けたい新興マフィアは、
風俗店の接待で役人を落とすため、ヤスナを風俗嬢にしようと企みますが、
このマフィアのボスがまたマヌケでワラかしてくれます。
おつきのチンピラたちも個性豊か。

そのほか、とにかく登場人物が魅力的。
頼る相手のいないツァーネを助けるマッチョ系男子。
ツァーネの祖父に長らく想いを寄せている巨乳の熟女教師。
ヤスナにアタックするツァーネに駄目出しする向かいのおばちゃんまで。
いたずら好きの祖父と彼の血をばっちり受け継ぐツァーネが
あれこれ考える仕掛けにも大笑い。

音楽も愉快で、この監督の作品は必ず踊りたくなります。
ウルトラ級ハッピーエンドで、み~んな幸せ。
民族紛争が絶え間ない国で、こんな作品が生まれる不思議。

それにしても、出演俳優が見事に「なんとかヴィッチ」さん。

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