『ビリーブ 未来への大逆転』(原題:On the Basis of Sex)
監督:ミミ・レダー
出演:フェリシティ・ジョーンズ,アーミー・ハマー,ジャスティン・セロー,ジャック・レイナー,
ケイリー・スピーニー,クリス・マルケイ,サム・ウォーターストン,キャシー・ベイツ他
風邪をひいてへろへろの金曜日にTOHOシネマズなんば別館で2本ハシゴの2本目。
前述の『ブラック・クランズマン』の次に観ました。
これもやはり実話が基。
アメリカ合衆国最高裁判所の女性判事ルース・ベイダー・ギンズバーグが、
史上初の男女平等裁判に挑んだ弁護士時代の話。
彼女がいなければ、あらゆる点で今よりも男女差別が多かったはず。
ミミ・レダー監督は、ナタリー・ポートマンを主演に起用したかったそうですが、
これはフェリシティ・ジョーンズで正解だったのでは。
夫役のアーミー・ハマーもめちゃくちゃよかった。
ルースはハーバード大ロースクールの1回生。
2年上の先輩マーティンとすでに結婚しており、生まれて間もない娘もいる。
夫婦で家事と育児を分担しつつ授業も受けてきたが、夫が精巣癌で倒れる。
生存率5%と言われる手術に賭け、看病しながら夫の授業にまで出る。
マーティンは奇跡的に回復してニューヨークの法律事務所に就職。
ルースは家族のそばを離れたくないとコロンビア大へ転籍する。
同大を首席で卒業したものの、「女性弁護士を雇うと、家族が嫉妬する」などという理不尽な理由で、
10以上の法律事務所から断られる。
致し方なく法律事務所への就職をあきらめ、ラトガース大学で教鞭を執ることに。
彼女が教えるのは法律と性差別について。
法廷に立つことなく、学生たちに講義する弁護士のルース。
成長した娘ジェーンはそんな母親に不満を持っているらしく、反抗的な態度を取る。
ジェーンから痛いところを突かれて、ルースも不機嫌。
それを察したマーティンが、あるときルースに「君が興味を示しそうだ」と言って持ち込んだ案件とは。
ある中年のサラリーマンが、母親を介護するために介護士を雇おうと考えた。
彼は独身で、自分に代わって母親を看るものがいないから。
ところが、未婚男性は介護士を雇ってもその分の所得控除が受けられない。
法律の条文を読んだルースは、これが男性に対する性差別であると気づく。
法律における女性に対する性差別を是正するには、
男性に対する性差別について訴えることが一助となるのでは。
なぜなら裁判官は男性ばかりだから、男性に対する性差別であれば共感するはずだとルースは考える。
ルースとマーティンはこの件について訴訟を起こすことに決めるが、
女性弁護士が吠えたところで世間は冷たい。
アメリカ自由人権協会(ACLU)が共に声をあげてくれればと、
ACLUの旧知の友人メル・ウルフに助けを依頼するが駄目。
そこでルースは女性弁護士で公民権運動家のドロシー・ケニヨンに会いに行く。
ドロシーの口添えにより、メルも協力を申し出る。
なんとか訴訟の提起にこぎつけたものの、
法廷に立った経験のないルースはメルらを招いた口頭弁論の模擬でしどろもどろになってしまい……。
黒人が、とか、女性が、とか、何かと差別に関する映画が多い今日この頃です。
本作では、ルースがなんとか教職を得たのも「辞めた黒人の代わりに女性を雇ってもいい」と言われた末で、
なんともあちこちに差別が溢れています。
ハーバードのロースクールの学部長とその奥さんまでが
女が弁護士になるなんてなどと露骨に嫌な態度を示していたなんて、がっかりです。
差別が描かれるどんな映画を観ても思うのは、差別意識をまったく持たない人もいるということ。
ルースの夫マーティンなんて、この時代の人とは思えない。
「マーティンのような男と結婚できてよかったね」と彼の上司から言われて
「女を下に見ている」と憤るルースは、ちょっと何にでもナーバスになりすぎではと思うけど、
仕事もバリバリにできて、料理も妻よりはるかに上手で、子どもの面倒も実によくみる。
こんな男性が増えたら、世の男性たちは言い訳ができなくて困るはず(笑)。
最後の法廷のシーンに胸を打たれます。
こんな女性がいたということ(今もご健在ですが)、知っておきたい。
余計なことですが、ルースが娘のジェーンに「おまえ」と言う字幕には違和感。
ここは「あなた」でよかったんじゃないかなと思います。