夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

日本語が正しくない。〈『グランド・イリュージョン』追記〉

2013年10月30日 | 映画(番外編:映画と邦題・字幕・台詞)
前述の『グランド・イリュージョン』の字幕翻訳者は林完治さんでした。
この人の翻訳なら安心して映画に集中できると思っていたのですけれども。

原文も前後の文もまったく覚えていませんが、
目に飛び込んできた字幕、「押しも押されぬ」。

え~っ、「押しも押されもせぬ」だってば!と心の中で叫びました。

しばしその字面に囚われてしまったのが、まだ上映開始からまもない頃。
いかんいかん、こんなことで映画に集中できなくなったらもったいないと、忘れ去ることに。

昨日、浅田次郎の『プリズンホテル 2 秋』を読んでいたら、
ヤクザが経営するホテルに不手際から警察官の団体が宿泊、
マル暴(暴力団対策課)の係長がホテルオーナーのことを
「才気縦横の策士、押しも押されもせぬ大貫目だ」と評する場面がありました。

そこで忘れ去ったことを思い出したわけです。

「ら抜き」はもはや溢れすぎて、気にしていると映画は観ていられないというのか、生きて行けないような。(^^;
でも、こういう正しくない日本語は、映画では使ってほしくないなぁと思うのでした。
ツッコミどころ満載のB級C級映画ならそれも笑えますが、
一流だと思っていた翻訳者の字幕でこんな誤りを見ると激しくガッカリ。

日本語の話といえば、同じく字幕翻訳者の太田直子さんのコメントが引用されている、
野口恵子著『バカ丁寧化する日本語』(光文社新書)がとてもおもしろいです。

本題と外れますが、『プリズンホテル』、おもしろすぎる!

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『グランド・イリュージョン』

2013年10月29日 | 映画(か行)
『グランド・イリュージョン』(原題:Now You See Me)
監督:ルイ・ルテリエ
出演:ジェシー・アイゼンバーグ,マーク・ラファロ,ウディ・ハレルソン,メラニー・ロラン,
   アイラ・フィッシャー,デイヴ・フランコ,マイケル・ケイン,モーガン・フリーマン他

前週中に発券済み、封切り日に大阪ステーションシティシネマにて。

ジェイソン・ステイサムの“トランスポーター”シリーズや、
ジェット・リーの『ダニー・ザ・ドッグ』(2005)、
また、パンツが伸びる『インクレディブル・ハルク』(2008)など、
バリバリのハリウッド映画を手がけてきたフランス人監督。

奇術師の話といえば、『幻影師アイゼンハイム』(2006)、『プレステージ』(2006)、
『奇術師フーディーニ 妖しき幻想』(2007)、『イリュージョニスト』(2010)などなどがありましたが、
マジックの世界はやはり大画面で観たいものです。

それぞれ異なるタイプのマジックで人びとを魅了するマジシャン4人、
ダニエル(♂)、メリット(♂)、ヘンリー(♀)、ジャック(♂)。
活動場所も異にしてきた4人は、ある日、謎の人物から呼び出しを受ける。
その人物の素性は誰も知らないが、マジックに関わる者が「神」と崇める人物。
神に認められたのだと喜ぶ4人は呼び出しに応じる。

認められたのは自分だけでなく計4人だとわかって、少々ガックリ。
気を取り直して指定された部屋へと入るが、神の姿はない。
4人で凝った仕掛けをクリアすると、部屋に現れたのは度肝を抜く計画の図面。

後日、4人は“フォー・ホースメン”としてイリュージョニスト・チームを結成。
神の計画を遂行すべく、ラスベガスでショーを開く。
大観衆が見守るなか、4人は遠く離れたパリの銀行から320万ユーロを奪うという、
前代未聞のマジックを成功させ、一夜にして全米中にその名を轟かせる。

結果的には実行犯となってしまったショー会場の客も取り押さえられるが、
これはマジックだと信じきっている客は興奮して話がハチャメチャ。
FBIとインターポール(国際刑事警察機構)の合同捜査チームは4人を拘束。
FBI特別捜査官のディランとインターポールの女性捜査官アルマは、
強盗容疑のかかる4人を取り調べるが、トリックを暴くことができない。

証拠不十分で釈放される4人を歯噛みして見つめるディランだったが、
当日会場に観客として居合わせたやはりマジシャンのサディアスが、トリックを解明できると言う。
サディアスは現在は有名マジシャンのトリックをTV等で暴いて収入を得ているらしく、
そんな輩の手を借りるのは不本意だと思いつつも、ディランは協力を要請。
やがて、フォー・ホースメンが次の計画を立てていることを知り……。

マジシャンたちが崇める「神」とは何なのか、
それを利用している黒幕はいったい誰なのか。

ま、ちょっと苦笑い、それはないやろと思わないこともありませんが、
のっけからジェシー・アイゼンバーグ演じるダニエルのマジックで引き込まれ、
これは劇場に観に来てよかったと思わされます。
続いて披露される、神に呼び出されるきっかけとなるそれぞれのマジックも魅力的。
特にメリット役のウディ・ハレルソン、彼もイケてるハゲですね。

数々のトリックについてはサディアス役のモーガン・フリーマンが懇切丁寧に説明してくれて、
ありゃわからんとストレスが溜まることもありません。
暑苦しいマーク・ラファロと知的でかわいすぎるメラニー・ロラン
恋愛要素は別に要らないと思うのですが、最後まで観ればやっぱり要るか。

ウダウダ言わずに観るにかぎります。

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『キミはヒマラヤ下着の凄すぎる実力を知っているか』

2013年10月27日 | 映画(番外編:映画と読み物)
以前、『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』という、
長~いタイトルの本を取り上げたことがありますが、
これも長めのタイトルとそのインパクトに惹かれて買った本です。
『キミはヒマラヤ下着の凄すぎる実力を知っているか』は今年の2月に朝日文庫より刊行されました。

著者の北尾トロ氏は、1958年生まれのフリーライター。
日々の生活のなかで、気になって仕方がないけれども、やるにはちょっと勇気がいる。
そんなことにチャレンジしてみようじゃないかという企画で、
同企画の第1弾は『キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか』(幻冬舎文庫2006年刊)でした。
これはデラックス版(何がデラックスなのか不明)が朝日文庫から2011年に刊行されているようです。

さて、読み終わってみると全部が全部おもしろかったわけではありません。
ふ~んてな調子で終わってしまう話も多かったのですが、
いくつかはプッとふきだしたりニヤリとしたりしてしまう話がありました。

表題の「ヒマラヤ下着」、ご存じでしたか。
その名のとおり、ヒマラヤの寒さにも耐えられるという触れ込みの下着なのだそうです。
値段は堂々の15000円、しかも品質によほど自信があるのか、色は白のみ。
さすがにエベレストまでは行けないから、北尾氏は相当寒い信州、駒ヶ岳の標高2612m地点へ。
絶景ポイントゆえ、撮影に訪れているカメラマン多数。

そんななか、意を決して服を脱ぎ、白のシャツとパッチ姿に。
隣には商品の性能を比較すべく、ヒートテックを着た同行者。
結果はヒマラヤ下着の圧勝で、ヒートテック着用者は寒さに耐えきれずに降参。
街なかでは「寒いどころじゃなかった。気分が悪くなるほどの暖かさ」のヒマラヤ下着、
そうそう必要になることもないでしょうが、体験談はおもしろおかしく。

そのほか、北尾氏がチャレンジしたのは、
サラリーマンの平均小遣い45000円で1カ月を乗り切る、高齢者用のオムツを着けてみる、
路上ライブや詩集売り、足の立たない沖のブイまで泳いでみる、などなど。
オムツ着用体験は、着けているからと言ってそこで放尿はなかなかできないもの。
人間たることの何かをあきらめた老人の気持ちがじんわりわかって、ちょっと悲しい。

気持ちがめちゃわかる!と笑ったのは、「居酒屋で説教オヤジに意見する」。
いえ、何も私は意見したいわけではありません。
他人同士の会話を耳にして、喉まで出かかっていることってありますよね。
たとえば最近なら、劇場トイレの順番待ちで、おばちゃん3人が交わす会話に、
「名前の表記を変えた人、なんていう人だっけ。以前はローマ字だったんだけど」。
井浦新やで」と口を挟みたくなりました。

同じくこんなこともありました。
ラジオを聴いていたら、ラグビーの大八木淳史が「大森さんのお父さんで、
ほら、どうしよう、あれ~、名前が出てこない、坊主頭の」。
その時点では大森さん=大森南朋であることも周囲の人はわからないから、
父親の名前なんて出てきそうにもない。
私はラジオのこちら側で「麿赤兒やってば~」と叫んでいました。

北尾氏が自分で企画を考えるひまがなかったときに、
編集者から提案されたのがマラソンかバンジージャンプかの二択。
二択と言っても、こんな二択ではバンジージャンプしかない。
よみうりランドで22mの高さまで上がって悪態をつく様子は笑えます。
「なんちゅうか本人は決して望んでいないのに飛ばねばならないこともあるわけよ」などと、
往生際悪く係員に絡むのですから、係員、失笑。

係員によれば、カップルで来ても騒ぎつつちゃんと飛ぶのは女性のほう、
男性はかなりの確率でリタイアするんだとか。
私も一度やってみたいと思いつつ、今まで来てしまいました。
こりゃやっぱり一度飛んでみるか!?

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『101回目のプロポーズ SAY YES』

2013年10月25日 | 映画(は行)
『101回目のプロポーズ SAY YES』(原題:101次求婚)
監督:レスト・チェン
出演:リン・チーリン,ホアン・ボー,チン・ハイルー,カオ・イーシャン,武田鉄矢他

休日にJR大阪駅の旧砂時計広場にて、職場の広報活動。
仕事の内容はビラ(というのか達磨のシール)配りで、
正午から開始の予定だったため、その前に映画を1本観られるやん!と。

出勤場所にいちばん近いのは大阪ステーションシティシネマ。
11時半までに終わる本作ならば、時間的に余裕あり。
涙でウサギの目になることだけが懸念の種でしたが、行ってみました。

説明するまでもなく、オリジナルは1991年の大ヒットドラマ。
私はと言えば、ドラマをちゃんと観ていたわけではないので、
名場面についての知識程度しかありませんでしたが、
ストーリーから想像するに、わりとオリジナルに忠実ではないかと思います。

2003年に中国と韓国の合作でリメイク、2006年には韓国単独でリメイク。
それぞれ連続TVドラマとして放映されたそうです。
今回は『月の恋人 Moon Lovers』でキムタクの恋人役だったリン・チーリンをヒロインに、
武田鉄矢が特別出演している以外はすべて中国系キャストの作品です。

上海で内装業を営むホアン・ダーは、この日が99回目のお見合い。
待ち合わせ場所に美人チェリスト、イエ・シュンがやって来る。
お互いに見合い相手だと思ったのは勘違いだとわかり、すぐに別れるが、
偶然にも本当の見合い相手と入った店で再び遭遇。

ホアン・ダーは今日も相手から断られることが濃厚。
一方のイエ・シュンは、友人のタオズの仲介で会った相手だったが、
なんと既婚のケチな女たらしであることが判明。
しかも、ホアン・ダーはこの相手から工事費を踏み倒されかけていた。

イエ・シュンの機転で窮地から救われたホアン・ダーは、
月とスッポンだと思いつつもイエ・シュンのことを好きになってしまう。
想いを募らせるホアン・ダーを見かねた従業員らが好き勝手に協力、
ホアン・ダーとイエ・シュンはたびたびデートもどきをするようになるのだが……。

オリジナル同様、彼女には3年前に予定されていた結婚式当日、
交通事故に遭ったまま行方不明になっている婚約者がいて、今も彼のことを忘れられません。
イエ・シュンの心がホアン・ダーに向きかけたかと思うころ、
その婚約者シュー・ジュオが記憶喪失が治ったとかで生還。

この展開は『砂漠でサーモン・フィッシング』(2012)を観ているようで、
絶妙最悪のタイミングで現れる元恋人が超イケメンなのが可笑しい。
事の経緯を聞いた従業員らが「韓流かよ!」と突っ込むシーンに大笑い。

『砂漠で~』はイケメンにも対抗可能なユアン・マクレガーだったからいいですが、
こちらはおよそ太刀打ちできそうにない、チビで冴えないホアン・ボー。
シュー・ジュオ役のカオ・イーシャンはルイ・ヴィトン初の中国系モデルだそうですから。

さらには『砂漠で~』と同じく、現れたそのイケメンがちょい性格悪し。
なんでヒロインはそんな男に惚れ抜いていたのよと不思議になるくらい。
見た目にだけゾッコンだったのかと、ツッコミどころ十分。
ま、そらこの見た目ならそうなるでしょと納得してしまうのですが。

コメディ要素もたっぷりで、イエ・シュンの親友タオズや、
ホアン・ダーを親方と慕う従業員たちがとても可笑しくて温かい。
こんなベタな展開で泣くもんかと思いつつ、気がつけばやはり涙。
男はやはり中身が肝心だということで。

ちなみに、話中、武田鉄矢が見せる「妻」の写真は浅野温子。
浅野温子がリー・チンリンのチェロの師匠という設定です。

本当に好きな相手なら、勇気を持ってアタック。

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『トランス』

2013年10月23日 | 映画(た行)
『トランス』(原題:Trance)
監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・マカヴォイ,ヴァンサン・カッセル,ロザリオ・ドーソン,
   ダニー・スパーニ,タペンス・ミドルトン,サイモン・クンツ,マット・クロス他

十三で2本観たあと、TOHOシネマズ梅田にて。
たまには献血しようかと思ったら、映画の上映にちょっと間に合いそうにない。
献血は次の機会にします。ごめんなさい。

基本的にダニー・ボイル監督の作品は好きです。
『あまちゃん』でプロデューサー役だった古田新太の腕を組むポーズが、
実は同監督の『トレインスポッティング』(1996)の真似だったって。
古田新太からユアン・マクレガーを連想しろと言われても無理が。(^^;

ジェームズ・マカヴォイ演じる主人公サイモンが、
盗難に遭った名画がどれほどあるかについて語りながら進む冒頭シーンが面白い。
そしてオークション会場でもしもそのような盗難が遭った場合、
英雄になろうとしてはいけない、人命より高価な美術品はないのだということを
心に留めて対処すべきだと続けます。

オークション会社に競売人として勤務するサイモン。
その日の目玉であるゴヤの傑作『魔女たちの飛翔』が2750万ドルで落札される。
直後に数名の男たちが会場に押し入り、
サイモンはマニュアル通りに『魔女たちの飛翔』を取り外し、安全な場所へ運び出そうとする。

ところが、「英雄になろうとするな」というルールを破り、
待ち受けていた主犯のフランクをスタンガンで攻撃したところ、殴り返される。
頭部に痛烈な一打を浴びて、目覚めるとそこは病院で……。

HPでもその先まで明かしています。何も知らずに観に行くのが絶対オススメ。

サイモンは『魔女たちの飛翔』をどこかに隠すのですが、
フランクに殴られた衝撃でそれを思い出すことができません。
隠し場所を思い出すため、催眠療法士のエリザベスのもとへ通います。

どこから話してもネタバレになるため書きづらい1本。
悪趣味なシーンも数カ所ありますが、
全体的にはやはりスタイリッシュ、溢れる音楽とともにグイグイ見せます。

ものすごい爬虫類顔なのにフランスでは人気俳優なんだなぁと
見るたびに不思議なヴァンサン・カッセル。
だけど脱ぐとやっぱり色っぽくて、悪役なのに可愛げもあり。
ラストの表情や仕草なんて可愛すぎて惚れそうになりました。
決して爽やかな話ではないはずなのに、なぜか胸がキュン。

忘れたくても忘れられないものを、やはり無理に忘れさせちゃあかんのやなぁと。

脱ぎっぷりに驚かされたエリザベス役のロザリオ・ドーソン、
現在ダニー・ボイル監督と交際中だそうで。

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