夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『幻影師アイゼンハイム』

2008年11月30日 | 映画(か行)
『幻影師アイゼンハイム』(原題:The Illusionist)
監督:ニール・バーガー
出演:エドワード・ノートン,ポール・ジアマッティ,
   ジェシカ・ビール,ルーファス・シーウェル他

ハリウッド俳優を並べた作品なのに、
舞台がヨーロッパであること以上に
しっかりヨーロッパの匂いがするなぁと思っていたら、
アメリカとチェコとの合作なのだそうです。納得。

19世紀末のウィーン。
家具職人の家に生まれた、手品好きの少年が、
家具の納品先であった公爵家の令嬢と恋に落ちる。
人目を忍んで会うふたりだったが、
密会現場を取り押さえられ、仲を引き裂かれる。
傷心の少年は旅に出たまま、行方がわからず。

15年後、少年は幻影師アイゼンハイムとなって町に現れる。
従来の奇術とはまったく異なる、
幻影(=イリュージョン)をウリにした彼のステージは
巷で大評判となり、チケットは連日完売状態。
噂を聞きつけた皇太子が、婚約者のソフィを連れて、
ステージを見に駆けつける。

観客の手伝いを募ったアイゼンハイムは、
手を挙げたソフィを見て驚く。
それはあの初恋の相手、公爵令嬢だったのだ。

その後、舞台上で皇太子に痛烈な皮肉を飛ばしたため、
アイゼンハイムは皇太子に潰しにかかられる。
皇太子の忠実なしもべであるウール警部が、
アイゼンハイムの周囲を嗅ぎまわり、
やがてソフィとの共通点にたどりつく。

アイゼンハイムとソフィは、運命の再会を果たして急接近。
ウール警部から報告を受けた皇太子は、
自分のもとを去ろうとするソフィを追う。
翌朝、ソフィが遺体となって発見され……。

いや~、実に気持ちよく騙されました。
その昔、初代引田天功のショーにワクワクしたことを思い出します。
アイゼンハイムのショーは、舞台を飛び回る類のものではなく、
息を呑んで成りゆきを見守るような、地味にして上品、
しかも半端でない驚きがもたらされるステージなのですけど。

役者がとにかく◎。
アイゼンハイム役のエドワード・ノートンは相変わらず曲者。
ポール・ジアマッティは非情になりきれないウール警部を好演。
2人ともアメリカ人でありながら、ヨーロッパが似合います。
ルーファス・シーウェルは『ダークシティ』(1998)が懐かしくなるほど、
いまはすっかり悪役で、今回も独裁的な皇太子がピッタリ。

ずっとお互いのことが忘れられなかったふたり。
これは、スーパー・ハッピー・エンディング。
なんて言ったら、騙されなくなっちゃいます?

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『題名のない子守唄』

2008年11月25日 | 映画(た行)
『題名のない子守唄』(原題:La Sconosciuta)
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:クセニア・ラパポルト,ミケーレ・プラチド,
   クラウディア・ジェリーニ,ピエラ・デッリ・エスポスティ他

思い違いではないはずなのですが、
学生時代、竹中直人の著書を読んでいたら、
嫌いな映画の1本に『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)を挙げていました。
あの映画を嫌いだと言い切ることは、
なんとなく冷酷無情な人間だと思われそうで、
言い切れる竹中直人ってスゴイなぁと笑ってしまったものです。

その『ニュー・シネマ・パラダイス』の監督の作品。
すでにレンタル旧作となっていますが、
TSUTAYA DISCASでは当初4本の在庫しかなく、
そこに数百人のレンタル希望者が。
待てど暮らせど借りられそうにないので実店舗へ。
早く借りればよかったと大後悔。
これは竹中直人も気に入るんじゃないかと思うんですけど。

北イタリアの町。
ウクライナ出身のイレーナと名乗る女性が部屋を借りる。
彼女は、近くのアパートの管理人を訪ね、
仕事を紹介してほしいと頼む。
このアパートの住人はよそ者を雇いたがらないからと管理人は断るが、
一見不憫なだけの彼女が意外にしたたかであると知り、
給料の何割かを受け取ることにして、彼女をメイドとしてねじ込む。

アパートの最上階に住むのは貴金属商のアダケル夫妻。
イレーナは、アパートのフロアや階段の掃除をこなすうち、
アダケル家で長年メイドを務めているジーナと親しくなる。

と、書き始めましたが、書けませんねぇ、この先。
ネタバレになることが多すぎて。

イレーナがいったい何者なのか、
何のためにこの町にやって来たのか、
まったく明かされないまま淡々と話は進み、
やがて、R-15も納得の衝撃的な映像が
フラッシュバックで挟まれるようになります。
あとはもう、どうにもこうにも目を離すことができません。

冒頭で不動産屋の薦めを無視して部屋を即決したイレーナ。
真っ先に訪れた向かいのアパート。
どうしてもメイドとして潜り込む必要があったアダケル家。
そこにいた幼い娘。
イレーナの過去に触れるにつれて、彼女を理解し、
ぐいぐいと話に引き込まれます。
魂を絞られるような素晴らしいミステリー映画。

ひたすら陰鬱で凄惨なのに、最後にひと筋映る希望の光。
竹中直人もきっと気に入る、だけど、
『ニュー・シネマ・パラダイス』を好きな人もやはり気に入る。
そんな気がします。

切なさは映画に必須。

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『JUNO/ジュノ』

2008年11月20日 | 映画(さ行)
『JUNO/ジュノ』(原題:Juno)
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:エレン・ペイジ,マイケル・セラ,J・K・シモンズ,
   ジェニファー・ガーナー,ジェイソン・ベイトマン他

今のところ、「観れば元気になる度」、今年いちばん。

16歳の女子高生ジュノは、妊娠したらしく、呆然。
相手である同級生のポーリーにとりあえず報告し、
親友のリアに相談する。

中絶を決意して病院へ向かうが、
病院前で「中絶反対」のプラカードを振る知り合いに、
「胎児にはもう爪まで生えている」と言われてギクッ。

ジュノは、父親と継母に妊娠の事実を打ち明け、
出産すること、生まれる子どもは養子に出すこと、
すでにタウン誌で見つけた夫婦に連絡したことを話す。

数日後、ジュノは父親に付き添われて、その夫婦に会いに行く。
誠実そうな夫のマークと、美しい妻のヴァネッサ。
CMソングで一発当てたマークは裕福で、
里親としてこれ以上理想的な夫婦はいない。

以来、赤ん坊の発育状況を報告しがてら、
気軽に夫婦のもとを訪問するようになるジュノだったが……。

高校生の予期せぬ妊娠というと、
なんだか説教臭い展開になりがちですが、
それが微塵もありません。
かと言って、ふざけているわけでもありません。
でも、何度もクスッと笑わされます。

ジュノは特に可愛いい子ではなく、
しかも自他共に認める変わり者。
相手のポーリーはと言えば、
ジュノの父親が「あいつにそんなことできたのか」と思わず苦笑いするような、
脛(スネ)つるっつるの童顔。ここからもう可笑しい。

脚本は元ストリッパーの女性で、そのせいだからかどうなのか、
ジュノが訪れる店や病院での、客vs店側の会話のテンポが絶妙。
そして、そこここに温かさが感じられて心地いいです。
変わり者ならではのジュノの態度は堂々たるものですが、
彼女を取り巻く大人の落ち着きっぷりも壮快。
イヤミな超音波検査士を一喝する継母も超カッコイイ。
誰も投げやりじゃないんです。

コソッといい味を出しているのは、ジュノの父親。
「永遠に一緒にいられるふたりはいないの?」と
ジュノから尋ねられた父親は、「僕は(離婚を経験しているから)
その道では失敗した者だけど」と前置きをして、こう答えます。
「おまえの綺麗なときも醜いときも、機嫌の良いときも悪いときも、
おまえのことを好きでいてくれる人を見つけなさい。
そうすればきっと、上手く行く」。

すごいアドバイスだと思いました。

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『今、愛する人と暮らしていますか?』

2008年11月14日 | 映画(あ行)
『今、愛する人と暮らしていますか?』(英題:Are You Living with a Person You Love?)
監督:チョン・ユンス
出演:イ・ドンゴン,オム・ジョンファ,
   パク・ヨンウ,ハン・チェヨン,チェ・ジェウォン他

苦手なベタベタ系韓流ドラマ風タイトルですが、
なんのなんの、適度にドロッ、適度にカラッとした不倫話。

二組の夫婦が出逢います。

一方は、建築会社の副社長ヨンジュンと照明デザイナーのソヨ。
二枚目だが感じが悪いまでに無愛想なヨンジュンと、
地味な美人でひかえめなソヨは、お見合いセレブ婚カップル。

もう一方は、ホテルマンのミンジェとファッションアドバイザーのユナ。
人当たりの良いミンジェと、顔立ちも化粧も服装も派手なユナは、
長い恋愛の末に結婚したカップル。

共通の友人の紹介で、
ヨンジュンのファッションアドバイザーをユナが務めることになり、
ある晩、この二組の夫婦が顔合わせ。

後日、仕事でヨンジュンのもとを訪れたユナ。
ソヨも仕事で訪問した先で、同じく出張中のミンジェとばったり。
さて、二組の夫婦の行方は如何に。

まったくタイプのちがう相手と出逢い、
最初はなんとなくいいな~だったのが、
どいつもこいつもそのうち本気に。
二組の相手がそれぞれシャッフルされます。

熱くなることもなく結婚したソヨが、ミンジェと一緒に
『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)に出て来そうな町並みを歩いて心がゆらり。
徹底的に愛想が悪かったヨンジュンは、
最初は自分にゾッコンに見えたユナにつれなくされて、
逆に追いかけるようになります。
そんな過程もメロドラマになりそうなすんでのところで留まっていて、
好感が持てる描き方です。

お互いがそんなことになっているとは知らないものだから、
本来の夫婦がシャッフル中にばったり出くわしそうになって
慌てふためくシーンは笑えます。
唯一、嫁の言動を怪しいと察するのが姑で、
ちくりと釘を刺す様子はコワイ。
双方シャッフルされていることを知ってしまった友人は、
どうすることもできなくて、酔っぱらうしかありません。
どちらに義理立てする理由もないのに、右往左往する姿は涙ぐましい。

ラストがまた痛快。
両夫婦がそろった席で修羅場となり、ソヨとユナが海へドボン。
さぁ、どっちがどっちを助けるか。
このオチには私は大納得。

そうそう、絡みのシーンで、
女優二人とも体当たり演技には違いありませんが、
売れっ子のほうが見せずに済んでいるのは、ちとお気の毒。
人気の差なんやろなぁと、しみじみ思ったのでした。

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『ラスベガスをぶっつぶせ』〈追々記〉

2008年11月12日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
10年近く会っていないような気がする友人から
ものすごく久しぶりにメールが届きました。
『ラスベガスをぶっつぶせ』「扉の向こうのヤギと車」の話を読んだとのこと。
私の悩みをスッキリ解決してくれました。ありがと~。

このヤギと車の話は、
「モンティ・ホール・ジレンマ」と呼ばれているのだそうです。

「モンティ・ホール」とは、米国のゲームショーの司会者の名前で、
そのモンティ・ホール氏がゲームの参加者に対し、
まさに扉を選ばせる問いかけをするんだそうな。

「モンティ・ホール・ジレンマ」で検索すると、
わかりやすく説明されたページがヒットします。
説明が長ければ長いほどわかりにくかったりしますが、
同類の問題として、こんなのもありました。
「3人の囚人がいて、誰か1人が恩赦を受けることになっている。
1人の囚人が、看守に『死刑になるのは誰か』と尋ねる。
尋ねた囚人が死刑でない場合、
その囚人が恩赦を受ける確率は変化するかどうか」。

これは囚人が答えを変えられないところが
モンティ・ホール・ジレンマとはちがうという説明ですが、
これはわかったような、わからんような。
とにかく、ボーッと読んでるとついていけません。

映画の本題と異なるところで
観賞後もこれだけ頭を使えるのは楽しいです。
だけど、映画の本題もここにあるのかな。
ときには変えることも肝心だって。

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