夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『結婚しようよ』

2008年08月31日 | 映画(か行)
『結婚しようよ』
監督:佐々部清
出演:三宅裕司,真野響子,藤澤恵麻,AYAKO,金井勇太,松方弘樹他

昭和の香り漂うホームドラマ。
私は吉田拓郎ファンではありませんが、
なぜか1979年のライブ・アルバム『落陽』は持っていました。
当時、家に遊びに来た同級生が「欲しい」と言い張って持ち帰り、
代わりに山崎ハコのアルバムを押しつけられた思い出が。

不動産会社に勤務する卓は、ばりばりの団塊世代。
妻で専業主婦の幸子、大学4年生の詩織、バンドでボーカルを務める歌織の4人家族。
「夕食は家族そろって」というのが、卓の決めたルール。
いまどき珍しいこのルールを、家族は意外にも楽しんでいる。

ある日の帰り道、駅前の路上で、
吉田拓郎の『落陽』を演奏している若者たちを見かける。
思わず立ち止まり、一緒に口ずさむ卓。

そんな卓の姿に興味を持ったのが、
コンビニでバイト中の若者、充。
演奏を聴き終えて家路につく卓の後を追う。

「かなり歌ってましたよね」。
踏切に引っかかった折り、充は唐突に卓に話しかける。
拓郎世代とはかけ離れているが、
『落陽』はいい曲だと言う充に好感を持った卓は、
家族そろっての夕食に充を招き入れる。

そこに広がる一家団欒の図。
両親を失い、蕎麦職人の親戚に引き取られて育った充は、
これまで味わったことのない温もりを感じ、
やがて詩織と恋に落ちる。

詩織は、蕎麦打ちの修行中の充に、毎日、手製の弁当を届ける。
歌織はライブハウスのオーディションに合格し、
夜に家を空けることが多くなる。
守りつづけてきた家族のルールが崩れ、
焦燥感と疎外感にさいなまれる卓は……。

全編に流れる吉田拓郎の曲。
歌織役に中ノ森BANDのボーカル、AYAKO。
ほかのメンバーも中ノ森BANDの面々です。
彼女たちが演奏する曲は、
キャンディーズの『やさしい悪魔』や『アン・ドゥ・トロワ』で、
これも吉田拓郎の曲だったのかとあらためて。
森進一の『襟裳岬』もそうだったんですね。
最後はホンモノの吉田拓郎のつま恋ライブで〆。

詩織役の藤澤恵麻は、『ラブ★コン』(2006)の印象と180度ちがいます。
あんな大阪弁丸出しのネェちゃんが、
こんなしおらしい女子大生を演じられるなんて、アッパレ。

全体的にあまりに「昭和」すぎて(笑)、
観ていると気恥ずかしくなってしまうシーンも多々あるのですが、
たまにはこんな正統派ホームドラマもいいなぁ。

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『グミ・チョコレート・パイン』

2008年08月26日 | 映画(か行)
『グミ・チョコレート・パイン』
監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:石田卓也,黒川芽以,柄本佑,金井勇太,森岡龍,
   高橋ひとみ,山崎一,犬山イヌコ,山西惇,大森南朋他

怪しい名前ですが、監督はれっきとした日本人。
作風は三木聡監督のこれなどに通ずるところがあります。
本作は大槻ケンヂの同名小説の映画化。
3人とも1960年代生まれで、似た年頃の私にとってはタマラナイ。

2007年、東京の郊外。
会社をリストラされ、新潟から実家に戻ってきた38歳、独身の賢三。
母親が賢三に転送することなく家にためていた手紙の中に、
高校の同級生だった美甘子の名前を見つける。

半年前の消印が押されたその手紙には、
「あなたのせいなのだから。」、たったそれだけの文字が。
意味不明の手紙に頭をひねり、賢三は当時の親友である良也に電話する。
良也によれば、その消印のちょうど1週間後、
女優だった美甘子は、病気を苦に自殺したらしい。

21年前の1986年。
高校2年生の賢三は、新しいクラスに馴染めずにいる。
同級生はくだらない話をするアホばかり。
自分はコイツらとはちがう、いつか映画を撮るんだぞ。
そう考えながら、別のクラスの良也や多久夫とつるんでいる。

そんなある日、校庭で美甘子と遭遇。
同じクラスにこんな可愛い子がいたなんて。
一瞬で賢三は恋に落ちる。
自主映画の主役に美甘子を抜擢しようと考えるが、
妄想に終始して、一向に美甘子と話す機会は訪れない。

しかし、映画館で美甘子を見かける。
きっかけをつかんだ賢三は、以来、美甘子と話すように。
美甘子にいいところを見せたくて、
良也、多久夫とともにバンドを組むことを決意するのだが……。

おしるこドリンクやブルマーに懐かしい雑誌、
ギブソンのバッタもんのギターなど、
クスリと笑える小ネタもちりばめられていて、
ついつい1980年代へ想いを馳せてしまいます。
これぞ青春。

タイトルはどういう意味なのかと思っていたら、
大阪で言うところの「グリコ・チョコレート・パイナップル」なのですね。
グリコだけ、あとの2つとは異質だから変だとは思っていましたが。
チョキで勝って、「チョコレート」で前に進みまくる。
昔と全然変わってない人は、自分にまったく追いつけてないんだって。

美甘子が賢三に当てた手紙の意味は、物語途中で暗示されます。

「せい」と「おかげ」はちがうけれど、
「せい」で「おかげ」のときもある。

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『Mr.ウッドコック 史上最悪の体育教師』

2008年08月21日 | 映画(ま行)
『Mr.ウッドコック 史上最悪の体育教師』(原題:Mr.Woodcock)
監督:クレイグ・ギレスピー
出演:ビリー・ボブ・ソーントン,ショーン・ウィリアム・スコット,
   スーザン・サランドン,エイミー・ポーラー他

2007年の未公開映画。
ビリー・ボブ・ソーントンといえば、
現ブラピ夫人であるアンジェリーナ・ジョリーの元夫で、
ジョリーのほうがゾッコンだったという噂。
ブラピに比べたらずっとオッサンだし、ハゲ気味なのに、
なぜか5度も離婚歴あり。彼にイカレる女性は後を絶たず。
彼の出演作を観るといつも、その理由がわかるような気がします。

小デブのジョンをはじめ、その町の学校に通う中学生はみんな、
体育教師ウッドコックに泣かされている。
体育館内を延々と走らされ、気を抜けばバスケットボールが飛んでくる。
喘息持ちの生徒ですら、ゼェゼェ吐く息がうるさいからと走らされる。

それから十数年後。
トラウマを克服し、ダイエットにも見事成功したジョンは、
人生指南の本を出版。大ベストセラー作家となる。

そんな彼のもとへ、故郷の町から名誉市民として迎えたいという申し出が。
忌まわしい思い出のある故郷に帰るべきかどうか迷うが、
トウモロコシしか誇るべきものがないあの町で、
もっとも栄誉ある「コーン・カップの鍵賞」がジョンに贈られると聞き、
帰郷を決意する。

実家の母親はジョンとの再会を本当に喜ぶ。
ところが、母親が現在交際中だという男に会って呆然。
その男とは、あのウッドコックだったのだ。
なんとかふたりの仲を裂こうと、ジョンの奮闘が始まる。

ソーントン演じるウッドコックの鬼ぶりはたいしたもので、
でも、これが虐待かと言われるとスレスレの線。
結局、ウッドコックを恨んでいたジョンのほうが
どうだったのかなという話に落ち着きます。あ、ネタバレ。

奥が深いなぁと思ったのは、
老人ホームで水泳指導をするウッドコックが、
眠っているのか眠ったふりをしているのかわからない老人を
車椅子ごとプールに突き落とすシーン。
ジョンは慌てて助けに飛び込みますが、
老人はスイスイと泳ぎ始め、逆にジョンが溺れる始末。
ウッドコックは「老人はあわれみの対象ではない」と言います。
う~ん、唸りました。

すんごいダジャレながら、笑ってしまった翻訳ひとつ。
「コーン(トウモロコシ)・カップの鍵賞」授賞に際し、
「コーングラチュレーション!」(=Congratulations!)と叫んだときの字幕は
「おめでトウモロコシ!」でした。座布団進呈。

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『燃えよ!ピンポン』

2008年08月14日 | 映画(ま行)
『燃えよ!ピンポン』(原題:Balls of Fury)
監督:ロバート・ベン・ガラント
出演:ダン・フォグラー,クリストファー・ウォーケン,
   ジョージ・ロペス,マギー・Q,ジェームズ・ホン他

超B級。だけど意外にお金がかかってます。
こんな「どアホ」にお金をつぎ込めるってエライ。
大物俳優クリストファー・ウォーケンが
どうして出演してるのかがわからん。

卓球の天才少年として、もてはやされたランディ。
しかし、12歳で出場したオリンピックでぶざまな敗戦を喫し、
負け犬と呼ばれる。

メタボ中年となった今も、あの敗戦の影を引きずり、
それでも卓球しか生きていくすべがない。
大衆食堂の「独り卓球ショー」で日々をしのいでいると、
ある日、FBI捜査官のロドリゲスが訪ねてくる。

彼によれば、大物マフィアのボス、フェンを逮捕したい。
そのために、大の卓球好きであるフェンが主催する卓球大会に
FBIは潜り込もうとしている。
一流中の一流選手を密かに集めておこなわれるその大会に、
ランディなら出場できる、協力してくれと。

ロドリゲスに連れて行かれた先は中華街。
盲目の老中国人で卓球マスターのワンの指導のもと、
その姪である美女マギーから特訓を受けた結果、
思惑どおり、ランディは卓球大会へ招待される。
ところがこれが、負ければ速攻、吹き矢で殺されるデスマッチで……。

たびたび言ってることですが、この手の映画は笑わなきゃ損。
あまりのアホさ加減に怒ったりせずに笑いましょう。

そんなアホさはさておき、
最近ちょいヘヴィメタ好きの私のツボだったのは、
ランディがデフ・レパードの大ファンだということ。
少年時代のランディのラケットの裏側には「デフ・レパード最高」の文字。
メタボ中年になってからも、必ずデフ・レパードのTシャツ着用。
試合前にもデフ・レパードの曲が流れます。

何故にデフ・レパードか。ここからは私の憶測ですが、
バンドのメンバーの入れ替わりが激しい世界で、
デフ・レパードと言えば、結束力が堅い。
ドラマーが事故で片腕を失ったときには、新メンバーを加入させることなく、
片腕のないドラマーの復帰を待ったと言うのですから、聞いてるだけで涙。

ランディが片腕をバキッとやられたシーンで、
だからデフ・レパードなのかと納得したんですけど、
こんなアホな映画で深読みしすぎ?
でも、本作は、ランディが愛するのがデフ・レパードだからこそ、
成り立つと思うのです。案外、奥が深い映画かも!?

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『うつつ UTUTU』

2008年08月08日 | 映画(あ行)
『うつつ UTUTU』
監督:当摩寿史
出演:佐藤浩市,大塚寧々,宮沢りえ,小島聖他

2002年に公開された作品。
壁伝いに流れるどす黒い血のような液体が
無理やりホラーっぽくみせようとしていますが、
全然ホラーじゃありません。
でも、やっぱり背筋はゾクッとするので、
涼しくなりたい夏向きかも。

7回目の結婚記念日を迎えた池島隆一と公美子。
隆一は、公美子は誰よりも(ひょっとすると隆一自身よりも)
自分のことをわかってくれていると思っている。
何ひとつ不満なく、彼女との暮らしに幸せを感じる。

ある日の帰り道、駅に着くと雨。
公美子は泊まりで出かけている。
歩き出しかねている隆一に、着物姿の女性が傘を差し掛ける。
彼女は隆一のことを知っている様子。
訝しがりながらも、彼女の好意に甘えることに。

すると彼女は隆一の住むマンションまでついてくる。
公美子の知り合いかと問いかけると、
彼女が切り出したのは信じがたい話だった。

彼女は小原幾子と名乗り、
自分の夫と公美子が、以前から浮気していると言うのだ。
スナックを経営する夫のもとへ、
公美子が客として訪れたのがきっかけで、
その後、2人は何度も会っているらしい。

公美子に限ってそんなことはないと、
最初は幾子を罵倒する隆一だったが、
幾子が怪しい日を何日か挙げると、
すべてが公美子の浮気を示しているように思えてきて……。

原作は連城三紀彦の短編小説なのだそうです。
未読なので、オチが同じなのかどうか知りませんが、
映画のほうは、ドンデン返しの嵐で、
え~、うそ~、マジ~?となかなか頭を使わされます。
夢オチで片付けないでよ!と思った瞬間にもドンデン返し。

要チェックは、公開時はまだ無名に近かった小西真奈美。
すっとぼけたOL役でいい味を出しています。
暗い話の中、上司役の佐藤浩市との会話が唯一コミカル。
そのうえ、考えさせられる内容の台詞で、絶妙。
「君、恋人いる?恋人って、何?君にとって大事?」と聞く佐藤に対し、
「何って、あたしを映す鏡、かな。
 その人といるときが一番正直になれるし、
 ヤなとこも全部出ちゃうし。だから、大事」とコニタン。
これを聞いた佐藤が「君、案外深いね」と言うシーンは思わずクスッ。
あとは、「バカに限って、あたしをバカにするのよね」なんて台詞も。

後味が悪いですが、自分が同じ境遇に陥ったらと考えてみるには
とっても興味深い作品であることは間違いありません。

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