夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ホワイトバード はじまりのワンダー』

2024年12月20日 | 映画(は行)
『ホワイトバード はじまりのワンダー』(原題:White Bird)
監督:マーク・フォースター
出演:アリエラ・グレイザー,オーランド・シュワート,ブライス・ガイザー,ジリアン・アンダーソン,ヘレン・ミレン他
 
21:40からの上映で終了は23:55。昨日も書きましたが、駐車料金1円もかからないTOHOシネマズ西宮、スバラシイ。
 
『ワンダー 君は太陽』(2017)と原作者が同じというだけで「はじまりのワンダー」なんていう副題を付けなくても。
と思っていましたが、同作でいじめっ子として登場したジュリアンに焦点を当てた物語とのこと。
確かに「もうひとつのワンダー」、「はじまりのワンダー」ですね。失礼しました。
 
過去に観た映画のうち、いちばん好きな邦題は何かと聞かれたとしたら、
すぐに思いつくのはこのマーク・フォースター監督の『君のためなら千回でも』(2007)です。
それを思えばこの邦題は原題そのまんまだけど、とても好きな作品になりました。
 
同級生をいじめたせいで退学処分になり、転校を余儀なくされた男子ジュリアン。
新しい学校ではとにかく目立たないようにするため、人に優しくもしなければ冷たくもしない、深入りしないと決めている。
 
学校から帰ると両親は不在だったが、パリ在住の祖母で高名な画家でもあるサラが来ていた。
自分がいじめっ子だったことを認めたくないジュリアンは、事情を知っているサラにも「退学」という言葉は使わない。
普通でいるように、人には深入りしないように決めていると言うジュリアンに、サラは自分の過去の話を始めて……。
 
ヘレン・ミレン演じるサラは、少女時代を両親と共にナチス占領下のフランスで過ごしていました。
少女時代のサラを演じているのはアリエラ・グレイザー。これがデビュー作のようです。
サラが暮らす村は自由地区だったはずなのに、次第にユダヤ人の取り締まりが強くなり、サラ一家も命の危険にさらされます。
 
ある日、ユダヤ人の児童を探しに来たナチス。心ある兵士が逃がしてくれようとするけれど失敗。
十数名が捉えられますが、サラだけがなんとか逃げて隠れていたところへ、同級生ジュリアンがやってきます。
ジュリアンはポリオに罹ったせいで片足が不自由。
松葉杖を突きながら下水道を通って6km、サラを自宅の納屋へと案内するのでした。
 
親の仕事を揶揄されたり、足のことを笑われたりしていじめられっ子だったジュリアン。けれどとても聡明で心優しい。
彼の両親であるボーミエ夫妻もまた同様で、息子が連れてきた見ず知らずの少女サラを匿います。
隣家の夫婦がナチスと通じているらしいからとサラは納屋から一歩も出られません。
そんな状況ではあるけれど、ボーミエ一家は温かい食事と清潔な衣類を提供し、サラの誕生日にはケーキを焼いて一緒に祝ってくれる。
 
救いのない時代にも良心を持つ人は存在する。
隣家の夫婦のことがわかるシーンは良い意味で衝撃的で、涙がこぼれました。
 
冒頭のジュリアンが自分の名前の由来を持つジュリアンの話を聴けば心に響くものがある。
とても素敵な「もうひとつのワンダー」でした。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『バーン・クルア 凶愛の家』

2024年12月08日 | 映画(は行)
『バーン・クルア 凶愛の家』(英題:Home for Rent)
監督:ソーポン・サクダピシット
出演:ニッター・ジラヤンユン,スコラワット・カナロス,ペンパック・シリクン,ナムフォン・パクディー他
 
数カ月前にチラシを目にしてからめっちゃ気になっていました。イオンシネマ茨木にて。
 
タイで大ヒットしたというホラー作品。
絶対覚えられそうにない名前の監督ソーポン・サクダピシットはホラーを中心に活躍している人だそう。
同じく俳優の名前も絶対おぼえられそうにありません。
主演女優の名前はニッター・ジラヤンユンって、無理無理。日本語にはない綴りは難しい。
眉が若干ボーボーなのが気になるけれど(って私が言うな(^^;)、美人さんです。
 
保険外交員の女性ニンは、夫クウィンと一人娘インとバンコク郊外の一軒家で暮らしている。
ある日、ニンが独身時代に購入して賃貸に出していたマンションの一室について、不動産屋のトムから連絡がある。
トムによれば、借主が賃貸契約満了により部屋を出たが、修復不可能なほど汚して退出したらしい。
ニンが行ってみると、窓ガラスやテレビは叩き割られ、壁紙は切り裂かれて絨毯はびしょびしょ、ゴミも散乱。
借主はすでに海外に渡っており、弁償を求めるのは無理だと言う。
 
トムは、とりあえずこの部屋のほうを住める程度に改修して一軒家のほうを賃貸に出せばどうかと提案。
幸い、素性の確かな女医母娘が一軒家に興味を示しており、貸し出せば定収入が見込めますよと。
クウィンは他人に家を貸すことを嫌がるが、ニンが説き伏せてとりあえずは女医ラトリーとその娘ヌッチに内覧することに。
 
内覧当日、再就職の面接のために出かけていたニンのもとへクウィンから電話があり、
やはりこの家は誰にも貸したくないから断ってほしいと言う。
慌てて家に帰ると、そこにはすでにトムの案内でラトリー母娘が来ていた。
「いつから借りられるか」と問われ、ニンが詫びて断ろうとすると、クウィンが「来月から」と答えるではないか。
どういう気持ちの変化なのかわからないが、クウィンが承諾してくれたのは嬉しい。
マンションに引っ越したことでインの通学も楽になってありがたい。
 
ところが、引っ越してからというものインの寝つきが悪く、クウィンの様子もおかしい。
クウィンはラトリーから貰ったという本をリュックの中にしまい込み、ご丁寧に鍵までかけている。
毎日まだ夜も明けぬ時間にアラームをセットして出かけているようで、
不審に思ったニンがこっそり後をつけてみると、屋上に座り込むクウィンの姿があり……。
 
めちゃめちゃオカルト。怖い。けれど本国で大ヒットするだけあって凄く面白かった。
 
ラトリーは霊感の持ち主で、怪しげなカルト教団の教祖のような存在。
亡くなった人を呼ぶ力を持っています。
クウィンはラトリーに魔術でもかけられて変になっちゃったのかと思ったら、ラトリーを信じてしまう理由がある。
インもまた霊力を持っていて、そのせいである目的を遂行しようとしているラトリーに目をつけられます。
 
マンションの部屋の荒れぶりは何だったのかという疑問もちゃんと回収され、伏線が次々と明らかになっていくのも◯。
しかしカルト教団って怖い。その人もそうだって一見わかりませんもんね。
 
同じくタイの大ヒットホラー『女神の継承』(2023)のようにバッドエンドということもなくて、
子どもを亡くした親、親と離ればなれになった子どもの切なさも感じられる良質ホラーです。
エンディングシーンには胸を鷲掴みにされました。
 
あなたの中で生きている。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ぼくとパパ、約束の週末』

2024年12月03日 | 映画(は行)
『ぼくとパパ、約束の週末』(原題:Wochenendrebellen)
監督:マルク・ローテムント
出演:フロリアン・ダーヴィト・フィッツ,セシリオ・アンドレセン,アイリン・テツェル,
   ヨアヒム・クロール,ペトラ・マリー・カミーン,レスリー・マルトン他
 
『UTADA UNITED 2006』【ライブ音響上映】の後、同じくなんばパークスシネマにて。
 
『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』(2017)のマルク・ローテムント監督によるドイツ作品。
私はこの監督がやっぱり好きだと確信する1本となりました。実話に基づく。
 
ミルコとファティメの間に生まれた息子ジェイソンは、幼いときに自閉症と診断される。
音に敏感、冗談が通じない、他者となじむのは難しいなどなど医師から言われる一方で、
なんらかの分野において特別な能力を発揮することもあるという。
 
独自のルーティンやルールを持つジェイソンは、それが少しでも乱されるとパニックに陥る。
ただ、宇宙への興味は尽きることなく、量子学に際立った才能を見せるが、
いくら惑星について詳しくても同級生たちには理解できないからジェイソンをからかうだけ。
 
あるとき、同級生から好きなサッカーチームを問われたジェイソンは、お気に入りのチームを見つけようと考える。
そのためには、ドイツ国内56チームすべてを現地で観戦しなければならないと言い、
仕事仕事で忙しい父親ミルコに土曜日毎にスタジアムを巡る約束をさせるのだが……。
 
ジェイソンが自閉症と診断されたときに、この子のために全力を尽くすと決めた両親。
しかし実際のところは仕事を辞めたファティメのワンオペに近い状態。
もうひとり子どもが生まれて手がかかるようになっても、ミルコは仕事で家を空けること多数。
息子と家族のために稼がなければならないというのが建前ですが、
ジェイソンの相手をするよりも仕事をしているほうが楽だというのが本音です。
 
ジェイソンとふたりきりで出かけるようになって、初めてわかる妻の苦労。
列車内の食堂に入れば、トマトソースのパスタを頼み、パスタとソースを分けるようにオーダーするジェイソン。
パスタにわずかにソースが付いただけで気も狂わんばかりに怒ります。
それを見たほかの乗客は躾がなっていないとミルコに冷たい目を向ける。
息子のことを愛しているのは間違いない。けれど、自分の手に余ると思いはじめます。
 
スタジアムにはジェイソンの苦手とすることが多数。
触れられるのが嫌いなのに接触は避けられないし、そこらじゅうに雑音が溢れています。
また、ジェイソンの中ではサステナビリティ(持続可能性)の重要性が高い。
トイレだったりエレベーターだったり、どれも試してみないことにはスタジアムを去れません。
無駄なマスコットがいたり、円陣を組んだり、選手の靴下の色が微妙に違って揃っていなかったりするのもアウト。
 
どうであろうが孫は孫だとあたふたしない祖父母、特に祖父が○。
そしてミルコが勤務する全国展開のファストフード会社の女社長がサイコーです。
 
宇宙物理学を究めたいというジェイソン。それが夢ではなくなる日もきっと近い。
モデルとなった本物の一家もエンドロールに登場します。美少年で目が釘付け。
ヨーロッパには全部で21万5千のサッカーチームが存在するそうな。
父子のスタジアム巡りの旅は今も続いているとのことです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『本心』

2024年11月25日 | 映画(は行)
『本心』
監督:石井裕也
出演:池松壮亮,三吉彩花,水上恒司,仲野太賀,田中泯,綾野剛,妻夫木聡,田中裕子他
 
シアタス心斎橋にて6回目の『JUNG KOOK: I AM STILL』の次に、同じシアターの同じ席で。
私しか客おらんやん。今年13度目の“おひとりさま”
北摂の劇場で客が私ひとりというのは珍しくないけれど、市内の劇場では今までなかったこと。
 
原作は平野啓一郎の同名小説。芥川賞作家の本を私がすんなり読めるとは思えなくて未読。
同賞作家の映画化も良し悪しで、『マチネの終わりに』(2019)なんて私は全然駄目でした。
でも石井裕也監督の作品はもともと好き。この人による映画化ならどうでしょう。
 
2025(令和7)年の日本。石川朔也(池松壮亮)は母親の秋子(田中裕子)と2人暮らし。
このところ秋子に不可解な言動が見られて、朔也は少々心配している。
 
その日、仕事中の朔也に大切な話があると言って秋子が電話をかけてくる。
激しい雨のなか帰途についた朔也は、増水した川の前でたたずむ秋子を見かける。
秋子は川に落ちて死亡、助けようと川に飛び込んだ朔也も大怪我を負い、1年間意識不明のまま入院。
 
ようやく意識を取り戻した朔也は、秋子が「自由死」の選択者だったことを刑事から知らされる
自分の母親に限って自ら命を絶つことはあり得ないと反発したところでどうにもならず。
自由死の選択者が亡くなると、国から補助金が出るらしい。
 
退院すると、1年前とは世界がまるで変わっていた。
仕事はすべてAI(人工知能)に取って代わられ、生身の人間は職探しも大変。
子ども時代からの友人・岸谷(水上恒司)からリアルアバターなる仕事を紹介される。
 
秋子の自由死にどうしても納得できない朔也は、その本心を知りたくなる。
300万円を払って野崎(妻夫木聡)にVF(バーチャルフィギュア)制作を依頼。
本人に関する情報が多ければ多いほど本物に近いVFを作れると聞き、
秋子と親しかったらしい歳の離れた友人・三好彩花(三吉彩花)に連絡を取る。
住むところに困っているという彩花はしばらく朔也宅に身を寄せることになり……。
 
原作ではもっと先の未来に舞台が設定されているそうですが、本作の設定は来年。
コロナの流行で仕事を失った人が多く存在し、AIの活躍が取り沙汰される今にぴったり。
 
彩花は少年時代に朔也が好きだった女子に似ています。
その女子が売春をしているという噂があり、彼女を侮蔑した教師の首を絞めた朔也。
成績優秀だったのに、この事件のせいで前科者の烙印を押されて苦しんでいます。
岸谷は良き友人かと思いきや、ことあるごとに過去を持ち出して朔也を嘲笑う。
社会の底辺にいる自分と朔也を見比べ、朔也のほうが先に行くと面白くないわけです。
 
純粋で真面目な朔也にとってこの世は行きづらい。
彩花と同居しても手を出そうともしないから、彩花は安心して暮らせているけれど、
あることをきっかけにカリスマアバターデザイナーのイフィー(仲野太賀)と出会い、
それをきっかけに朔也と彩花の関係に変化が訪れます。
 
救いのない話を想像していましたが、最後に見える光に落涙。
母親が息子に言いたかったことは、きっとAIの言葉ではなくて、本心。
 
あ、三吉彩花が脱いでます。河合優実といい、みんなシャワーシーンで脱ぐのね。(^^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ボルテスV レガシー』〈吹替版〉

2024年11月08日 | 映画(は行)
『ボルテスV レガシー』(原題:Voltes V: Legacy)
監督:マーク・A・レイエス・V
出演:ミゲル・タンフェリックス,ラドソン・フローレス,マット・ロザノ,ラファエル・ランディコ,
   イザベル・オルテガ,アルバート・マルティネス,ガビー・エイゲンマン,カーラ・アベラナ,
   マーティン・デル・ロザリオ,リーゼル・ロペス,カルロ・ゴンザレス,エピ・クウィゾン他
声の出演:小林千晃,金城大和,花倉桔道,小市眞琴,中島愛,山中誠也,相樂真太郎,
     堀江美都子,諏訪部順一,飯田里穂,樋山雄作,越後屋コースケ他
 
もとは日本のロボットアニメだと言われても私は全然知らないし、スルーするつもりでいました。
けれどなんとなく気になっているうちに字幕版の上映は終了し、吹替版だけが残る。
観なくても後悔することはなさそうだけど、こんなのがあるんだということだけは知っておこうかと。
イオンシネマ茨木にて。
 
1977年から1978年の春にかけての1年弱の間に日本で放送されたTVアニメ『超電磁マシーン ボルテスV』。
日本での放送が終了した約ひと月半後にフィリピンで放送開始となりましたが、
当時のフィリピン大統領フェルナンド・マルコスが子どもたちに悪影響を及ぼすとして放送禁止に。
実際は、作品の内容から大統領自身が暗殺されることを想起して恐れたのではないかと言われています。
 
そしてこれがなぜだか2023年になってフィリピンで実写化され、
全90話のTVシリーズ“ボルテスV:レガシー”として放送されたそうです。本作はその劇場版。
こういう作品を何も知らずに観に行くと『劇場版 オーバーロード 聖王国編』のようにまったくついて行けないかもしれないと思い、
少々予習してから行きました。その予習知識と合わせてあらすじをご紹介します。
 
地球から何万光年も離れた恒星系にあるボアザン星。
ボアザン帝国では生まれながらの「角」の有無によって身分が決まる。
いかに良い家柄に生まれようが、角がなければ地に落ちる。
 
ボアザンの皇位継承の資格を持ちながら角がないことがバレたフロスガーは失脚させられるも、
反乱を起こしてボアザンから脱出、地球へとたどり着き、マリアンヌ・アームストロング博士に救われる。
 
やがてマリアンヌと結婚したフロスガーはネッド・アームストロングと名乗り、3人の息子を授かる。
ボアザンの皇位を継承したズ・ザンジバルが地球侵略を図るであろうことを予想して、
ネッドは科学者や防衛軍とタッグを組み、巨大ロボット“ボルテスV”や基地“ビッグ・ファルコン”を建設。
 
スティーヴ、ロバート・“ビッグ・バート”、“リトル・ジョン”のアームストロング3兄弟をはじめとするボルテスチームは、
こうしてボアザンと死闘を繰り広げることになるのだが……。
 
ハリウッドの洗練されたアニメと比べると、懐かしい感じがします。
向こうの映画でいえば『フラッシュ・ゴードン』(1980)に近い雰囲気でしょうか。
とにかくみんな大真面目に一生懸命つくっているのがわかる。
 
予習時に想像していたよりも息子たちが若いことに驚きました。
長男のネッドはそれなりの年齢だけど、図体だけデカい次男のビッグ・バートはまだ子どもだし、
三男のリトル・ジョンに至ってはその名のとおり小さい。母ちゃんが恋しくて仕方ないチビっ子。
その母ちゃんが途中で死んでしまって涙ぼろぼろ流しながら敵と戦います。
 
予習の甲斐はあまりなく、早々について行くのを放棄気味。
フィリピンの特撮のレベルって世界的に見てどの程度なのかななどと考えながら観ていました。
ロボット同士の対決でも、背後から狙うのは反則じゃないかしらと思ったりも(笑)。
 
あ、客は私ひとり、今年10度目の“おひとりさま”でしたけど、
「ボルテスの戦いはまだまだ続く」のだそうです。(^^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする