夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ドッグヴィル』

2004年08月31日 | 映画(た行)
『ドッグヴィル』(原題:Dogville)
監督:ラース・フォン・トリアー
出演:ニコール・キッドマン,ポール・ベタニー,クロエ・セヴィニー,
   ローレン・バコール,パトリシア・クラークソン他

飛行機が嫌いで、デンマークを出たことがない、ラース・フォン・トリアー
アメリカを見たことがない監督が撮ったアメリカの話。

ロッキー山脈の麓に孤立する小さな村ドッグヴィル。
わずか23人が暮らす。

この村に美しい女性グレースが逃げ込んでくる。
ギャングに追われているらしい。
村で唯一まともと思われるトムは、彼女を匿うことを村人たちに提案する。

集会所で相談した村人たちは、
とりあえず2週間、グレースを村に置くことにする。
そして村人全員が彼女を気に入れば受け入れようというのだ。

翌日、グレースは各家庭に手伝いを申し出る。
しかし、閉鎖的な村人たちは
「せっかくだけど、してもらいたいことはない」と断る。
そこで彼女は、「する必要はないけど、してもいいことはないか」と尋ねる。

すると、「しなくてもいいこと」が次から次へと出てくる。
おむつで用が足りている女性のトイレの介助。
見えるふりをしている盲目の老人の話し相手。
荒れた土を耕すことなどなど。

2週間後、村人たちはグレースを匿うことにする。
幸せな日々が続いたある日、警察が彼女の指名手配書を貼りにやってくる。
彼女は強盗事件に関与していると言う。
やがて村人たちは、彼女を匿うことの危険性を口にし、
その代償として彼女にもっと働くことを強要する。
彼女を性の対象として見る者も現れ、
ついに村を去ることを決意するグレースだったが……。

同監督の作品はいつでも不快度が限りなく高い。
だけど、おもしろいからやめられない。
まず、学芸会の舞台を見るようなユニークなセット。
床に白線が引かれ、それだけで各家庭を分けています。
ドアはなく、家に出入りする様子を、役者たちはパントマイムで表現。
犬を表すのは床の‘DOG’という文字。
グースベリーの植わる畑には‘GOOSEBERRY’、
茂みには‘BUSH’と文字だけが。

嫌いな人がいるとして、なんで嫌いなんだろうとよくよく考えてみると、
それが自分にもある部分で、自分の嫌なところを見せつけられているようだったから、
と思うことが私はしばしばあります。
トリアー監督の映画はそんな感じ。

不謹慎ながら、オチには胸がすくのでした。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『アップタウン・ガールズ』

2004年08月27日 | 映画(あ行)
『アップタウン・ガールズ』(原題:Uptown Girls)
監督:ボアズ・イェーキン
出演:ブリタニー・マーフィ,ダコタ・ファニング,ドナルド・フェイソン,
   ジェシー・スペンサー,ヘザー・ロックリア他

モリーは22歳。
伝説のロック歌手だったトミー・ガンの娘で、
幼くして父の遺産を相続した彼女は、
ニューヨークの超高級アパートでひとり暮らし。
好きなだけお金を使う毎日。

誕生日にはクラブを借り切って盛大なパーティー。
その席にモリーの友人ヒューイが、新人ロック歌手のニールを連れてくる。
パーティー会場に居合わせた大物女性プロデューサーのローマに
ニールを売り込む計画だ。

ステージで演奏するニールにモリーはひと目惚れ。
父の遺品のギターを見せるからと自分のアパートに彼を誘う。
歌手で売れるまではと酒・女絶ちをしていたニールだったが、
モリーの強引さに負けてしまう。

数日間を彼女の部屋で過ごしたふたりだったが、
モリーのあまりに浮世離れした生活ぶりに、ニールは逃げ出してしまう。

そんな彼女に追い打ちをかけるような知らせが。
父の遺産の管財人が財産を持ち逃げ、
しかも今後入ってくるはずの印税の前払い金まで着服して姿を消したらしい。

全財産を失った彼女はやむなく就職を決意。
しかし、これまで仕事に無縁だった彼女は
初就職先でもハチャメチャぶりを発揮。即クビに。

見るに見かねたヒューイが紹介してくれたのは、ローマの娘レイの子守り。
だが、レイは生意気きわまりないお嬢だった。
「おとなこども」のモリーと「こどもおとな」のレイは信頼関係を築けるのか。

……という、筋はモロ見え、最後は泣かされる典型のお話。
でも、わかってて泣かされちゃうのもエエもんでしょ。
監督は『タイタンズを忘れない』(2000)の人。
高校のアメフト部に黒人コーチがやってきて、
人種差別を受けながらチームを勝利に導くという、実話に基づいたスポ根もの。
ディズニーのわりに「泣け泣け度」控えめ、爽やかでした。
これもさすがその監督の作品。

レイ役のダコタ・ファニングは
『I am Sam アイ・アム・サム』(2001)や『コール』(2002)の名子役。
インタビューなどのあまりの大人ぶりに
たまに「このクソガキャ~」(失礼!)と言いたくなる。
某誌で「もっとも感動した映画」には自分の出演作品を挙げとった。
「名子役」で終わらないかどうか、今いちばん心配な子なのでした。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『デスレース2000』

2004年08月23日 | 映画(た行)
『デスレース2000』(原題:Death Race 2000)
監督:ポール・バーテル
出演:デヴィッド・キャラダイン,シモーネ・グリフィス,シルベスター・スタローン他

世間はオリンピック一色なのに、
いまだに某球団を見捨てきれない私。
来月はやっぱり最下位やろか。
こういうときはアホな映画に限る。

真面目に観て怒ってはいけません。
『ロッキー』(1976)でブレイクする前のスタローンが
激安ギャラで出演した1975年の作品。

公開当時からすると近未来の2000年。
アメリカでは毎年恒例の全米横断カーレースがおこなわれる。
3日間の死闘を繰り広げるのは次の5名。

過去に何度も生死をさまよう事故に遭いながら見事に復活、
腕も脚も移植しまくりのフランケン・シュタイン。
黒マスクをかぶった彼は昨年の覇者でもあり、一番人気。

そんなフランケンに勝負を挑むのは
スタローン演じるマシンガン・ジョー。
テンガロン・ハットの美女カラミティ。
ナチスのファッションに身を包むマチルダ。
暴君ネロ。
それぞれにナビゲーターが同乗してレースはスタート。

速度は無制限。
途中、人を轢き殺すたびにポイントが加算される。
女性を轢けば、男性を轢いた場合の10点増し。
10代の若者を轢けば40点。
12歳以下の子どもなら70点。
75歳以上の老人なら100点の高得点。
さて、勝利は誰の手に?

司祭であれ、チームの整備士であれ、とにかく轢いたもん勝ち。
レースカーはスーパーカーもどき。
牛やライオンに見立てた車の前部に牙がついていて、
人を串刺しにしちゃったりします。

轢かれたくない住民は家にこもるわけですが、
命知らずの闘牛士や、レースの廃止を企てるゲリラも登場。
それがフランス空軍の仕業だと言われたりして。
病院前では安楽死デーと称して、
早く死にたい老人が車椅子に座って並んでる。

戦争やテロ、犯罪の低年齢化が取り沙汰される現在なら、絶対ありえない映画。
おバカ映画の決定版と言えましょう。

製作のロジャー・コーマンはB級映画を量産する偉大なオッサン。
無意味なエロシーン満載なのもさすが。
なんで休憩時間にドライバーもナビゲーターも
全員並んでハダカでマッサージを受けとんねん。

監督はのちに『フライパン殺人』(1982)というさらにアホな作品も撮っています。
レストラン開業を目指す夫婦が、
広告に釣られて現れる変態客を次々とフライパンで殴り殺す映画。
みつけたら、即借りて観ましょう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ヴァキューミング』

2004年08月19日 | 映画(は行)
『ヴァキューミング』(原題:Vacuuming Completely Nude in Paradise)
監督:ダニー・ボイル
出演:ティモシー・スポール,ミッシェル・ベグリー,ケティ・キャヴァノー他

キムタクが絶賛したこともあり、日本でもヒットした
ヤク中映画の『トレイン・スポッティング』(1996)。
そのダニー・ボイル監督が、レオナルド・ディカプリオ主演の『ザ・ビーチ』(1999)でコケて、
2001年に撮ったのがこの作品。劇場未公開。

掃除機販売に命を懸けるセールスマンたちのブラックコメディ。

音楽業界でミキシングの仕事に就きたいダンだが、夢は叶いそうにもない。
同棲中のシーラは、彼に代わってストリップ電報で稼いでいる。
彼は彼女がストリップ中の音楽をかける役。
彼女が客にちょっかいを出されるのを真横で見る辛さ。

ある日、ストリップ電報に出かけた先が掃除機の訪問販売の会社。
彼はこの会社に就職することを決める。

翌日からベテランのセールスマン、トマスに同行することに。
ちょうど販売強化週間中。
トップの販売台数を記録したセールスマンが
「金の掃除機賞」を授与される予定だ。
掃除機を売るためなら、詐欺師まがいもなんのその。
度肝を抜かれてばかりのダンに、トマスはセールスの鉄則をたたき込む。
はたしてダンは掃除機を売ることができるのか。

ブラックすぎて笑えなかったりするんですが、これって笑う作品じゃない?
営業で外回りをしてる人は思わず共感して涙するところもあるかも。
上司が言うには
「君たちの中には光がある。等身大のライトだ。
 お手上げだと思ったらスイッチを入れろ。
 お客は目がくらんで買ってしまう。
 “No thank you”の後にこそ次の契約が転がっているのだ。
 それをつかみ取れ!」って、熱すぎる。

営業車で聴くのは「売って売ってうりまくれ!」という曲。
いつでもどこでも掃除機を売ることができるように、1,2台は必ず車に積んでおく。
貧民街では情け容赦は禁物。
買うそぶりを見せる客には押しつけて、身の上話が始まればすぐに撤退。

トマス役のティモシー・スポールは
『ラストサムライ』(2003)のサイモン・グレアム役の人。
味のある脇役が多いです。

ところで、ストリップ電報とは、お祝いの場に人間が電報となって届き、
その場でストリップしてくれるというもの。
男女両バージョンあって、欧米の映画にはよく登場します。

熱い上司のセリフ、
毎度9点も10点も取られる某球団に言うたってください。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『スパニッシュ・アパートメント』

2004年08月16日 | 映画(さ行)
『スパニッシュ・アパートメント』(原題:L'Auberge Espagnole)
監督:セドリック・クラピッシュ
出演:ロマン・デュリス,セシル・ドゥ・フランス他

欧州各国でヒットしたフランス=スペイン作品で、
仏語の原題は“L'Auberge Espagnole”。
直訳すると「スペインの宿」。
これは俗語で「ごちゃ混ぜ」の意だそうな。
英国での公開時タイトルは“Euro Pudding”(=ヨーロッパのプディング)。
各国でそれぞれ「ごちゃ混ぜ」を示すタイトルがついてます。

大学卒業を控えたグザヴィエ。
父のコネで就職しようとするが、
まずスペイン語とスペイン経済を勉強するように言われる。

エラスムスという欧州交換留学生制度を知った彼は、
バルセロナの大学へ留学することを決意。
泣きじゃくる恋人をなだめて、1年のスペイン留学へ。

バルセロナでは母の知人宅に身を寄せるはずだったが、
いざ訪ねてみると話がちがう。
仕方なく、空港で出会った神経科医宅にしばらく居候させてもらうことに。

慣れない町で部屋探しを始めたグザヴィエが苦労しながら見つけたのは、
欧州各国の5人が共同で生活するアパートだった。

イタリア、ドイツ、イギリス、デンマーク、スペインのお国柄を見るようで、素直に楽しい。
アパートの同居人を募る面接の席で、
イタリア人は「フランス人には難しいかも」と言う。
ドイツ人は「5年後の人生はどうなっていると思うか」と尋ね、
みんなから「そんなややこしい質問を」ととがめられると、
「いたって普通の質問だ」と憤る。

イギリス人の部屋がいちばんキレイだからと、ハッパを吸うときはみんなでその部屋へ。
冷蔵庫内の置き場所をめぐってモメたり、
フランス人がポテトグラタンを作れば
「玉子なしのトルティーヤなんて」と文句が。
誰宛の電話にも応対できるように、電話横には各国語の「彼or彼女は留守です」の貼紙も。

こんなふうにちがっても、女性絡みで落ち込んだときの反応はみんな一緒。
何もする気が起こらずに、ソファに並んで呆然とテレビを眺めるさまは笑える。

みんなバラバラ、
でも誰かに困ったことが起これば一斉に駆けつける。
ええよなぁ、青春って、と思ってしまう、そんな作品。

バルセロナの大学で使われるのは
標準語のカスティーリャ語ではなく、カタロニア語。
カタロニア語が自由の象徴であるという、
そんな背景も知ってから観ると、さらにおもしろいかも。

オチは甘々だけど、いいや。
青春映画はこうでなきゃ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする