夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『白雪姫と鏡の女王』

2012年09月29日 | 映画(さ行)
『白雪姫と鏡の女王』(原題:Mirror, Mirror)
監督:ターセム・シン・ダンドワール
出演:ジュリア・ロバーツ,リリー・コリンズ,アーミー・ハマー,
   ネイサン・レイン,メア・ウィニンガム,ショーン・ビーン他

TOHOシネマズ西宮でハシゴ、さらに遡って1本目に観たのがこれ。

まずは世界的なデザイナーで、同監督作品の『ザ・セル』(2006)や『落下の王国』(2006)、
本作の衣装デザインも担当された故石岡瑛子さんのご冥福をお祈りします。

みんながよく知るグリム童話『白雪姫』。
こんなふうに料理しちゃうのもありですね。

母親を亡くし、国王である父親に溺愛されて育った白雪姫。
年頃になった白雪姫には新しい母親が必要だと思ったか、国王は再婚する。
しかし、怪物が住むと言われる森に出かけた国王が行方不明に。
継母の女王は白雪姫を城のてっぺんに幽閉、好き勝手しはじめる。

国王がいた頃は栄えていた町。人びとは幸せに暮らしていた。
女王の散在のせいで今や町は見る影もなく衰退。
働けども働けども収入はすべて女王に吸い取られ、
女王は贅沢三昧、人びとの生活は貧困を極めている。

けれどももう搾り取るものすらなくなり、王国の財政は破綻寸前。
そこで女王は金持ちの王子を見つけて結婚することを思いつく。
ちょうどその折り、森で盗賊に身ぐるみ剥がれ、
女王のもとへ助けを求めて駆け込んできたのが隣国の若いイケメン王子。
女王は自分の年齢もかえりみず、さっそく王子を落とす作戦に出る。

一方、こっそり部屋を抜け出した白雪姫は、町の状態を見て悲嘆に暮れる。
かつて国王が築きあげた温かい国を取り戻したい。
そう考えた白雪姫は、森の盗賊=7人の小人に師事し、
女王に立ち向かう決意を固めるのだが……。

白雪姫を演じるリリー・コリンズの凜々しい眉毛と
王子を演じるアーミー・ハマーの野太い声が、
なんとも言えずこの古典童話に合っています。
『J・エドガー』(2011)でアーミー・ハマーを見たときには、
こんなコメディもバッチリこなせる人だとは想像もしませんでした。

女王役のジュリア・ロバーツは今までのイメージを一新。
よくもこんな役を引き受けたもんだなと思いますが、
意外に楽しかったのか快演。
アメリカでは美人の代名詞のような彼女の顔は、本作に限ってはコワイ。
全開のデコ、眉と目の間の深い彫り、高い頬骨、大きな口、
どこをとっても意地悪な魔女にしか見えません。

「鏡よ鏡」と唱えれば、鏡の向こうの世界に入るというのも新しいアイデア。
いつも色鮮やかな世界が美しい監督、
鏡の向こうの世界の描き方も不気味ながら美しい。
また、インド出身の監督だけあって、エンディングの踊りが愉快&唖然。
まさか白雪姫にマハラジャ風を持ってくるとは。

ハシゴした3本のうち、「DVDでも良かったかしらん度」はいちばん強いです。
でも、ま、楽しかったけど。
『スノーホワイト』(2012)では小人が8人いたかもとの噂だったので、
本作では思わずいちいち数えちまいましたよ。

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『天地明察』

2012年09月27日 | 映画(た行)
『天地明察』
監督:滝田洋二郎
出演:岡田准一,宮崎あおい,佐藤隆太,市川猿之助,笹野高史,岸部一徳,
   渡辺大,横山裕,きたろう,尾藤イサオ,中井貴一,松本幸四郎他

久々のTOHOシネマズ西宮では3本ハシゴしました。
期待度の高い作品を〆として3本目に観ることにして、
それが前述の『ロック・オブ・エイジズ』でした。
その次に期待度が高かったのが本作です。つまり、2本目に観た作品。

実在の人物、安井算哲。その後、改名・改姓して渋川春海に。
彼の人生に基づいたフィクションで、原作は冲方丁の同名時代小説。
フィクションだということはエンドロールで知ったのですけれど。
「そんなに上手いこと行くかい!」と訝しんでいたらそういうわけで。

将軍に囲碁を教える名家に生まれた安井算哲。
優れた碁打ちでありながら、星の観測と算術も大好き。
神社の境内に掛けられた絵馬に算術問題を見つけると、
時が経つのも忘れて解くのに夢中になるほど。

ある日も問題解きに没頭し、上覧碁に遅刻する。
上覧碁は普通は事前に手が細かく決められているものだが、
対局する同志の本因坊道策から真剣勝負をしたいと言われ、
徳川家綱を前に、決められた手を無視した勝負を始める。

勝手なことをしてお目玉を喰らいかけたものの、
若き将軍家綱はその真剣勝負に大喜び。
また、家綱の後見人である会津藩主、保科正之は算哲に興味を示す。

ちょうどこの頃、800年に渡って用いられてきた暦にズレが見られ、
中国古来の暦を見直すべきではないかと幕府は考えていたところ。
保科は正しく新しい暦をつくるため、星や太陽の観測に赴くチーム結成を計画。
その一人として算哲が命を受ける。

よく比較されるであろう『劔岳 点の記』(2008)をやはり挙げたくなります。
どちらもどこまでが真実でどこからが作り話か知りませんが、
地図や暦をつくりあげた彼らが存在したことは事実。
交通手段も今とはまるでちがう時代に、
自分の足と目と頭を使って、コツコツとこんな作業を続け、
みごと偉業を成し遂げたことにただただ感服します。

滝田洋二郎監督や成島出監督が撮るのは、
とてもわかりやすくて万人に受け入れられそうな作品。
いつも安心して観ていられるし、人にも薦められます。
これを好きだと言えば、変人扱いされることはまずないでしょうから(笑)。

「どうか私より先に死なないと約束してください」。
同様の台詞は『僕等がいた 前篇』(2011)にもありましたが(後篇はパスしたいぐらい(^^;)、
いつどんな作品中で聞こうとも、必ずウルウルしてしまう私です。

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『ロック・オブ・エイジズ』

2012年09月25日 | 映画(ら行)
『ロック・オブ・エイジズ』(原題:Rock of Ages)
監督:アダム・シャンクマン
出演:ジュリアン・ハフ,ディエゴ・ボネータ,ラッセル・ブランド,ポール・ジアマッティ,
   キャサリン・ゼタ=ジョーンズ,アレック・ボールドウィン,トム・クルーズ他

先週末公開の作品でいちばん楽しみにしていたのはコレ。
TOHOシネマズ西宮にて観ました。

大人気のブロードウェイ・ミュージカルの映画化と言われても、
そのミュージカルを観たことがないし、
たぶんミュージカルのほうが先だったのでしょうけれど、
まるで『バーレスク』(2010)のまんまの出だし。
しかも主演のジュリアン・ハフはその『バーレスク』にも端役で出演しているし、
パクリのようだけどパクリじゃないの?という不信感が。

けれども、そんな不安も束の間。
ちょっとモッチャリした流れの前半は置いといて、終わってみればめちゃ楽し。
『愛と誠』並みにノリまくりました。
あ~、これももう1回観たい~。

1987年のハリウッド・サンセット通り。
歌手になることを夢見てオクラホマ州の田舎町から出てきた女性シェリーは、
バスを降りてすぐにひったくりに遭い、困り果てる。
大切にしていた数々のレコードもすべて盗られて意気消沈。

通りの向かい側からこの様子を目撃したのが青年ドリュー。
彼はライブハウス“バーボン・ルーム”でバーテンダーとして働きながら、
いつか歌手デビューしようと心に誓っていた。

文無しとなったシェリーを雇ってくれるよう、
ドリューはバーボン・ルームのオーナー、デニスに頼み込む。
デニスは良い顔はしなかったが、ちょうど空きが出たばかり。
シェリーは憧れのライブハウスで職を得て大喜び。

さて、近々バーボン・ルームでライブをおこなう予定のバンド“アーセナル”。
ボーカルのステイシー・ジャックスは、シェリーやドリューが敬愛するカリスマ的ロックスター。
ステイシーがソロ活動することになり、これはバンドの解散ライブ。
多くのファンが押し寄せることは必至で、とんでもなく儲かるはず。
このところ、ロックは有害だと言いつのる反対派の動きが活発で、
苦戦を強いられていたデニスは、ようやく税金も払えると安堵するのだが……。

むずかしい話はいっさい無し。
バカみたいだけど、そんなバカを一生懸命にやる俳優陣の素晴らしさ。
トム・クルーズにはもう脱帽です。
50歳になってこんなことをすれば、ちょっと痛々しいのが普通。
けれども、いまだにトップスターでありつづける彼が演じるとイタくない。

LAメタル好きな人ならさらに楽しいでしょうけれど、
1980年代に『ベストヒットUSA』を見ていた人なら誰でも楽しめること請け合い。
笑ってしまったのは、ロック賛成派と反対派による歌のバトル。
前者はスターシップの“We Built This City”、
後者はトゥイステッド・シスターの“We're Not Gonna Take It”。
1980年代半ば、ゴア元副大統領夫人がPMRC(父母音楽情報源センター)なるものを立ち上げて、
ロックは有害であると叫んだとき、
特に糾弾されたのはトゥイステッド・シスターのボーカル、ディー・スナイダーでした。
この曲を本作で市長夫人を演じるキャサリン・ゼタ=ジョーンズ(彼女の壊れっぷりも傑作)に歌わせるなんて、
最高に皮肉が効いているんじゃないでしょか。
大好きなこの曲にテンション上がりまくり。(^o^)

ちなみにこの2曲、同時に歌われます。
学生時代、カラオケでTUBEの“BEACH TIME”をかけて
松田聖子の“青い珊瑚礁”を歌った子がいましたが、それを思い出しましたねぇ。
ちがう曲をこないして歌えるねや!って。

下火になりつつあろうとも生涯懸けてロック、
そんなステイシーとデニスの台詞と表情が切なくて。
あんなロックの時代、もいっぺん来い!

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『夢売るふたり』

2012年09月24日 | 映画(や行)
『夢売るふたり』
監督:西川美和
出演:松たか子,阿部サダヲ,田中麗奈,鈴木砂羽,安藤玉恵,
   江原由夏,木村多江,伊勢谷友介,香川照之,笑福亭鶴瓶他

急に晩ごはん支度をしなくてよくなった日に、
このチャンスを逃してなるものかと、帰り道にシネコンへ。

非常におもしろい作品でしたが、好きかと言われるとビミョーです。
どう捉えればいいのかも難しいし、感情移入のしどころにも迷います。
何にせよ、心にグサグサ突き刺さる。

小さいながらもよく繁盛している料理屋“いちざわ”を営む夫婦、貫也と里子。
開店5周年を迎えたその夜も、店内は大勢の客でにぎわっていた。
しかし、厨房から失火し、瞬く間に店は火の手に包まれる。
どうすることもできずにただ焼け落ちてゆくのを見るふたり。

またやり直せば済むことだと、近所のラーメン店に働きに出る里子。
一方の貫也はすっかり投げやり、雇われた先でも他の従業員と大喧嘩。
そんな折り、たまたま同じようにやけを起こしていた女と出会う。
彼女は“いちざわ”の常連客だった玲子で、
不倫相手の上司が事故に遭い、面会に行ったところ、
上司の弟から手切れ金を突きつけられたらしい。
貫也と玲子が一夜を共にしたあと、玲子はその金を貫也に贈る。

この金を元手にまた店を始められると喜んで帰る貫也だったが、
浮気したことを里子に見抜かれ、針のむしろ状態に。
しばし考えているふうな里子は、貫也を使って結婚詐欺をしようと思いつく。
ターゲットを里子が選び、綿密な計画を練ると、貫也が実行。
こうしてふたりは結婚詐欺をくり返し、店を再開するための資金を貯めるのだが……。

冒頭のシーンは、東京の町並みを映しだしているだけで、
不穏な要素など何もないはずなのに、なんだかザワザワ。
『ゆれる』(2006)といい、こういうザワザワ感を出すのが西川監督は本当に上手い。
ザワザワしたなか、別々に生きる登場人物たちが、ひとりずつ貫也と出会います。

貫也と里子、ふたり。いつもふたり。
ふたりで店を開く希望を叶えたのに、あっけなく火事でそれを失い、
失ってからもふたりは離れません。
玲子とどういう流れで一夜を過ごしたのかを聞いた里子が、
詐欺師となる男が完璧である必要はないと思い至るところが面白い。
貫也は里子が何を考えているのかちっともわからず、
だけど浮気をした負い目もあって、里子の言うがままに詐欺を働きます。

ふたり一緒にいるために、二人三脚で詐欺を働いているのに、
心はどんどん遠くなり、里子はひとり取り残される。
身体的にひとりでいるときの里子が生々しくて見ていられないほど。
松たか子にこんなことまでさせちゃうなんて、
監督エグッと思うけれども、本作でのこんなことならありでしょう。
『イン・ザ・カット』(2003)で同様のシーンがあったメグ・ライアンは痛いだけだったもの。

読み終えたばかりの樋口勇介の『11月そして12月』に、こんな台詞がありました。
「女というのは生物学的に、死ぬまで疲れんようにできている」。
そうかもしれないと、先に観ていた本作のことが頭をよぎりました。

それにしても、あんなにカワイイ松たか子をつかまえて、
「別に美人じゃないけど」っちゅう台詞はどうよ。(--;

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『コッホ先生と僕らの革命』

2012年09月22日 | 映画(か行)
『コッホ先生と僕らの革命』(原題:Der ganz große Traum)
監督:セバスチャン・グロブラー
出演:ダニエル・ブリュール,ブルクハルト・クラウスナー,ユストゥス・フォン・ドーナニー,
   テオ・トレブス,アドリアン・ムーア,キャスリン・フォン・シュタインバーグ他

テアトル梅田にて公開中のドイツ作品。

主演のダニエル・ブリュールは、『ベルリン、僕らの革命』(2004)など、「革命」に縁あり。
本作はドイツにおける「サッカーの父」を描いた作品ということで、
サッカー少年も何人か観に来ていました。
小学生がこれを観てどう感じるのかは聞いてみたいところ。

1870年代、普仏戦争でフランスに勝利したドイツ。
国民の関心が次第にイギリスとの覇権争いに向かい、反英感情が高まるなか、
イギリス留学を終えた青年コンラート・コッホがドイツに帰国。
ブラウンシュヴァイクにある名門校「カタリネウム校」に、
ドイツ初の英語教師として実験的に採用される。

コッホの母校でもあるこの学校の校長グスタフは、
コッホの成功を祈って激励、穏やかに迎え入れるが、
イギリスを敵対視するほかの教師や保護者たちは失敗を祈るばかり。

生徒たちはイギリスについて偏見に満ちた教育を受けており、
英語の授業など受けても意味がないと言い放つ。
また、資本者階級がほとんどを占めるこの学校では、
労働者階級の生徒がいじめに遭っているようだ。
授業を開始したコッホは、生徒たちの歪んだ意識に唖然とする。

イギリスでともに過ごした友人イアンから貰ったサッカーボール。
ある日、コッホはそのボールを携えて学校へ。
教室でやる気を見せない生徒たちを体育館へ集めると、
イギリス発祥のサッカーについて話しはじめる。
フェアプレーの精神とチームワークをサッカーを通じて学ばせよう、そう考えたコッホ。
最初は戸惑いを見せ、反抗的だった生徒たちは、
やがてサッカーに魅入られ、サッカー用語から英語を覚える。

しかし、それを好ましく思わない地元の有力者らが圧力をかけてきて……。

政治とは無縁のところにあってほしいスポーツ。
けれども、何もかもが国同士の力関係に置き換えて考えられていた時代、
サッカーを持ち込むことにこんな試練があったとは思いもしませんでした。
「サッカーには貧富は関係ない」というコッホの言葉。
現在のいろんな国のサッカーを見ればそれは本当なんだと思えます。

ロンドンオリンピックのさい、某新聞の余録にあった一文。
イギリス国民に「一番目と二番目に好きなスポーツは?」と尋ねれば、
「一番目はサッカー、二番目はサッカー以外のスポーツ」と答える。
「一番目と二番目に応援するチームは?」と尋ねれば、
「一番目はグレートブリテン、二番目はグレートブリテンと対戦するチーム」と答える。
みんながこんな意識を持てたらいいのになぁ。

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