夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ラブ&ポップ』

2008年01月31日 | 映画(ら行)
『ラブ&ポップ』
監督:庵野秀明
出演:三輪明日美,希良梨,工藤浩乃,仲間由紀恵,
   平田満,吹越満,モロ師岡,手塚とおる,渡辺いっけい,浅野忠信他

今からちょうど10年前、1998年の作品なのですが、
先日、突然思い立ってDVDを買いました。

公開当時、さまざまな要素を持つおかげで、
かなり話題になりました。
援助交際をテーマにした村上龍の小説の映画化であること。
アニメの大ヒット作『新世紀エヴァンゲリオン』の監督初の実写版映画であり、
しかもデジカメを使って撮影された作品であること。

テーマがテーマだけに、R指定です。
1997年7月19日の東京・渋谷。
このわずか1日の女子高生4人の動きを
ドキュメンタリー風に追います。

同じ高校に通う裕美、知佐、奈緒、千恵子。
ハチ公前で見知らぬオッサンから携帯電話を預かった奈緒は、
夕方までにできるだけ多くのソソる内容のメッセージを
伝言ダイヤルに残してほしいと言われる。
それ以外は携帯を好きなように使っていいらしい。
おもしろ半分にメッセージを入れる4人。

渋谷をぶらぶらしているうちに、裕美はある指輪に目を奪われる。
どうしてもその指輪が欲しくなるが、値段は128,000円。
がっくり肩を落とす裕美に、
今から指輪代を稼ごうと千恵子が言い出す。
こうして、閉店時間の21時まで、資金集めに走る裕美たち。

やりたいことは今、やらなきゃ。
欲しいものは今、手に入れなきゃ。
その手段が援交と言われるとそれは問題ですけれど、
女子高生の心の動きを巧みに描いています。

援交の相手を演じるのが曲者ばかりで良し。
彼女たちの噛んだマスカットを瓶に詰める背広姿の男。
自宅に呼んで手料理をふるまう男。
レンタルビデオ屋に同行させる病的な男。
ぬいぐるみに話しかけながら、ホテルで説教する男。

「ドキュメンタリー風」が好きな私は、
10年前にロードショーで観ておけばよかったと思いましたが、
購入したDVDにはマニアなら喜ぶ豪華な特典が。
ドキュメント班として撮影に関わった、
知る人ぞ知る、AV監督のカンパニー松尾とバクシーシ山下の映像が、
撮影現場を追ったホントのドキュメントとして見られます。
さらに、このドキュメントのナレーションは鳥肌実。
彼は作品中の街頭演説シーンにもちらりと登場しています。

今なら、いちばんの見どころは、
当時まだ新人だった仲間由紀恵ちゃんのビキニ姿でしょうけれど。
やはりこのときから可愛いです。

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『不撓不屈』

2008年01月23日 | 映画(は行)
『不撓不屈』
監督:森川時久
出演:滝田栄,松坂慶子,三田村邦彦,田山涼成,
   中村梅雀,北村和夫,夏八木勲他

昨年公開され、DVDは明々後日に発売なのですが、
先週末にスカパーで既に放映されていました。
高杉良の同名経済小説の映画化です。
こんな税理士が実在したのだということを初めて知りました。

栃木県鹿沼市と東京に会計事務所を構える税理士、飯塚毅。
「一円の取りすぎた税金もなく、
一円の取り足らざる税金も無からしむべし」を信条とする飯塚は、
顧客の大半を占める中小企業の経営者を支え、
合法的な節税法を教授している。

ところで、別件で飯塚が国税局相手に起こしていた訴訟があり、
敗訴が濃厚であった国税局は、
自分たちの面目が丸つぶれになることを懸念し、
なんとか飯塚の税理士資格を剥奪しようと画策していた。
そこで、彼の教授する「別段賞与」が脱税行為だとして、
事務所と自宅、顧客の会社の強制捜査に踏み切る。

動揺を隠せない所員や家族たちに、
飯塚は「調べられて困ることは何もないのだから」と言い、
毅然とした態度で臨むよう求めるが、
じきに終了すると思われていたこの捜査は、
その後7年(1963~1970年)にも及ぶことになる、
飯塚と国税局との闘いの幕開けにすぎなかった。

「別段賞与」とは、決算時に社員への業績分配の賞与を
未払金として計上し、すぐには支払わないで、
その資金を借り受ける形にすることだそうです。
こうすれば、未払金を会社の運転資金として利用でき、
なおかつ節税もおこなえるという方法。
現在は規制されているものの、当時は立派な合法的節税でした。

叩けばホコリの出ない人間はいないと、徹底的に飯塚を調べる国税局と、
不屈の精神を持つ飯塚のやりとりは見応え十分。
嫌みたっぷりな国税局の職員、脅されて涙する蕎麦屋のおばあちゃん、
飯塚を助けようと奔走する社会党の代議士、
飯塚の家族、恩師、寺の住職など、
事件の関係者たちもかなり丁寧に描かれています。

何しろ最近、「ボソボソ喋っている邦画」が多いなか、
みんな滑舌がいいんです。
古き良き邦画とでも言いましょうか、
これは字幕の必要なし。

印象に残ったのは住職の言葉。
飯塚の息子が「お母さんは呑気ですから」とぼやくのに対し、
「こんなときに呑気でいられるのはたいしたものです」。
そうありたいなと思いました。

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『サイドカーに犬』

2008年01月18日 | 映画(さ行)
『サイドカーに犬』
監督:根岸吉太郎
出演:竹内結子,古田新太,松本花奈,谷山毅,ミムラ,
   鈴木砂羽,トミーズ雅,山本浩司,椎名桔平他

長嶋有の同名小説の映画化。

不動産会社に勤める薫は、
久しぶりに再会した弟の透から、結婚式の招待状を受け取る。
離婚した両親にも出席するよう促したと透に聞き、
小学生だった20年前の夏休みのことを思い出す。

その夏休みは、母の家出で幕を開けた。
わけのわからない商売に手を出した父に母は愛想をつかし、
念入りに部屋を掃除した翌日、突然、家を出た。

父は母を捜すでもなく、ヨーコさんという若い女性を家に呼ぶ。
ママチャリとは大違いの自転車に乗って颯爽と現れたヨーコさんは、
警戒心を示す薫に、「怖がらなくていい」と笑う。
「食事を作りに来ただけだから。買い物に行こう」と誘われて、
薫はおそるおそるヨーコさんについていく。

神経質な母とは対照的に、ヨーコさんは何事につけても大ざっぱ。
仕草も言葉遣いも男っぽくて、ざっくばらん。
買い物はカートにいっぱい、細かい勘定はせずに投げ入れる。
先生が体に良くないと言った自販機のコーラも「飲んでみな」。
おやつに買ってくれた麦チョコは、餌のごとく、カレー皿に山盛りに。
母ならば、カレー皿に麦チョコを盛ることなんて許さない。

怪しげな中古車販売を始めた父が
仲間と麻雀に明け暮れる横で、宿題をする薫と透。
台所には椅子に座って膝を立て、
タバコを吸いながら本を読むヨーコさん。
ヨーコさんと過ごした、衝撃的で忘れられない夏休みの回想。

薫と透のいわば子守りに来ているヨーコですが、
面倒くさそうな素振りはいっさいありません。
薫と透が別のことをしている間は、タバコと読書。
子どもたちが暇を持て余しているように見えれば
さりげなく散歩やキャッチボールに誘う。
真面目で内気な薫は、ヨーコとの距離をあるところから進められずにいますが、
ヨーコはそこにズカズカ踏み込んで来ることもありません。
ヨーコを演じる竹内結子が実に自然体で、
これは彼女の最高傑作なのではと思います。

監督は日活ロマンポルノも多数撮っている人。
こんな人のポルノなら、是が非でも観てみたい気になります。
忌野清志郎の歌も絶妙のポイントで使われ、
エンディングのYUIの曲もぴったり。

その昔、海辺で拾ったカメノテも懐かしく。

嫌いなものを好きになるより、
好きなものを嫌いになるほうがむずかしい。

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『主人公は僕だった』

2008年01月14日 | 映画(さ行)
『主人公は僕だった』(原題:Stranger Than Fiction)
監督:マーク・フォースター
出演:ウィル・フェレル,エマ・トンプソン,ダスティン・ホフマン,
   クイーン・ラティファ,マギー・ギレンホール他

アメリカでは大人気なのに、
日本では知名度すらイマイチなコメディ俳優といえば
ベン・スティラーとウィル・フェレルだと思います。
私はやっぱり好きだなぁ。

国税庁の会計検査官ハロルド・クリックは
時間と数字にこだわる、規則正しい男。
毎日同じ時間に起床するのは当然のこと、
歯ブラシを上下に動かす回数も決まっていれば、
ネクタイは時間の節約のためにダブルノットではなくシングルノットで。
バス停までの歩数も毎日きっかり同じ。
平々凡々な独身生活を送っている。

ところが、ある日の朝から突然、
彼の行動を逐一説明する女性ナレーションの声が
彼の耳に聞こえるようになる。
小説を読むかのように、彼の行動を的確に表現するその声が
「彼は自分の死を知る由もなかった」と言ったことから、
自分の運命を知ってしまった彼は、
なんとかそれを回避しようと、某大学の文学教授を訪ねるのだが……。

架空の人物ではない男が、
実は著名な作家の小説の主人公であったという突拍子もない設定で、
これを理解するのは無理なことです。

けれども、本作の肝(キモ)は、
単調きわまりない生活を送っていた男が
自分の行動を解説されることによって生き方に疑問を持ち、
さらには自分が事故死する運命であることを知って、
生き方を変えて行くところにあります。
この突拍子もない設定が、至極必要な設定に思えます。

女性作家を演じるエマ・トンプソン、
文学教授を演じるダスティン・ホフマンもさすが名優。
ハロルドから相談を受けた文学教授が「ナレーションの声」に興味を抱き、
喜劇か悲劇か見極めるために挙げる要素が可笑しい。

小説の結末を変更してもらうべく作家に会いに行ったハロルドが、
自らの死に至る過程を読んで、「文学はまったくわからないけれど、
この小説の最後は自分の死しかあり得ない」と語るシーンには感動すら覚えました。

本作は『ステイ』(2005)と同監督の作品。
『ステイ』は不思議なスリラーで、笑いとは無縁でしたから、
その監督が本作のようなコメディも撮るのは意外ですが、
切なさという共通項に納得。
だけど、『ステイ』と違って、こちらはハッピーなエンディング。
恋の行く末に思わずニッコリ。

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『歌謡曲だよ、人生は』

2008年01月08日 | 映画(か行)
『歌謡曲だよ、人生は』
監督:磯村一路,七字幸久,タナカ・T,片岡英子,三原光尋,水谷俊之,
   蛭子能収,宮島竜治,矢口史靖,おさだたつや,山口晃二
出演:青木崇高,松尾諭,大杉漣,正名僕蔵,宮史郎,余貴美子,
   武田真治,マモル・マヌー,妻夫木聡,高橋惠子,瀬戸朝香他

新年はこてこての邦画から。
「これぞ昭和」という歌謡曲を選りすぐり、
11人の監督がそれぞれに撮った、一貫性まるでなし、
てんでんばらばらのオムニバス作品。

オープニングは『ダンシング・セブンティーン』。
以降、第1話から第11話まで、使用される曲は下記のとおり。
『僕は泣いちっち』、『これが青春だ』、『小指の想い出』、
『ラブユー東京』、『女のみち』、『ざんげの値打ちもない』、
『いとしのマックス』、『乙女のワルツ』、『逢いたくて逢いたくて』、
『みんな夢の中』、『東京ラプソディ』。

字数の都合で全話のあらすじを書くのは無理なので、印象に残ったものを。

第5話『女のみち』。
銭湯のサウナで友人と我慢比べする少年、正治。
熱さにめげた友人と入れ替わりで登場したのは
ド派手な入れ墨のオッサン。
退散しようとする正治に、オッサンは「おい、この歌詞の続きは何や?」。
思い出すまで出られなくなった正治。
しょうもな~と思いつつ、演歌に似合わぬ爽やかなオチ。
実際にこの曲を歌っていた宮史郎がオッサン役。

第6話『ざんげの値打ちもない』。
海沿いの寂れた町で、部屋を貸す女。
そこへ昔の男が訪ねてくるのだが……。
歌詞を最も忠実に映像化したと思えるのが本作。
北原ミレイの“捨て節”で歌われる「愛というのじゃないけれど~」、
映像になると凄みがパワーアップ。
余貴美子は昭和がめちゃくちゃ似合う。

第9話『逢いたくて逢いたくて』。
アパートに引っ越してきたばかりのまだ若い夫婦。
夫が粗大ゴミ置き場から拾ってきた文机の引き出しには、
届け先不明で返送された手紙が数十通入っていた。
どうやら前の住人が、好きな女性に宛てて書いたものらしい。
ストーカーかと思いきや、
したためていた想いがむくわれる展開に思わずニッコリ。
若夫婦役に妻夫木聡と伊藤歩。

青春もの、恋愛もの、コメディ、サスペンス、何でもあり。
ターゲットは私より上の世代かと思われますが、
誰かと観て、これが好き、それは嫌いと話すのも楽しいかも。
本作鑑賞中は家の中がカラオケスナックと化すこと、必至。

追悼、阿久悠さん。

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