夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『スティック・イット!』

2007年04月25日 | 映画(さ行)
『スティック・イット!』(原題:Stick It)
監督:ジェシカ・ベンディンガー
出演:ジェフ・ブリッジス,ミッシー・ペリグリム,ヴァネッサ・レンジーズ,
   ジョン・グリース,ジア・カリデス,ニッキー・スーフー,マディー・カーレー他

本当はロードショーで観た作品について書きたいんですけど、
先に「ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ提供、スポ根」、その2。
日本で客が入るワケないからと、あっさり未公開が決められてしまった、
可哀想なドイツ/アメリカの作品です。

それでもやっぱりディズニーは、爽やか、安心。
しかも、世の中にスポ根は多くあれど、これは体操ですよ。
体操を取り上げるなんて、おもしろすぎ。

両親が離婚し、父親と暮らす17歳のヘイリー。
金持ち宅の留守を狙って男友だちと忍び込み、
水を抜いたプールでローラースケート。
ガラスに激突したために警報器が鳴り、しょっぴかれる。

裁判所で宣告された彼女への懲罰は、
ヴィッカーマン体操アカデミーに入学すること。
そこには世界の頂点を目指して少女たちが集い、
毎日過酷なレッスンに耐えていた。

実はヘイリーも数年前まではトップ選手だったのだが、
選手権の決勝の演技の直前に逃げ出してしまった過去がある。
彼女の当時を知る選手らは、チームを失格に追い込んだ臆病者として
ヘイリーに冷たく当たる。

唯一、アカデミーの主催者で
伝説の名コーチ、バートだけが厳しく接しつつも
彼女を温かく見守るのだが……。

期待せずに観ると、意外と心を掴まれます。
体操のスポ根なんてあり得ね~と思ってましたから、
床、平均台、跳馬、段違い平行棒の演技に見入ってしまいましたがな。
でも、普通に華麗な演技なら映画にならんわけで、
型破りな演技が飛び交います。見応えあるかも。

選手たちも個性派揃い、ヘイリーの男友だちもいい感じ。
彼女が以前逃げ出した理由も終盤明かされ、そら納得。

審査員に嫌われているコーチにつくと、
難易度の高い技に挑戦してもそれを評価してもらえません。
それどころか、「ブラジャーの紐が出ていたから」と減点される理不尽さ。
選手たちが団結して、自分たちが本当に認める選手に優勝を!と
とある方法を考えついて実行するシーンは
それでええのか?という気もしますが、とりあえず拍手。

同じディズニー提供のスポ根でも、
前述の『インヴィンシブル 栄光へのタッチダウン』とここまで重さがちがうって、凄いですよ、ホント。
だけど、体操人口増加には貢献しそうです。

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『インヴィンシブル 栄光へのタッチダウン』

2007年04月19日 | 映画(あ行)
『インヴィンシブル 栄光へのタッチダウン』(原題:Invincible)
監督:エリクソン・コア
出演:マーク・ウォールバーグ,グレッグ・キニア,エリザベス・バンクス他

今週観た、「ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ提供、スポ根」、その1。
ディズニー提供となれば、安心度大。
ここは泣くところですよ!というところは音楽で盛り上げ、
そこまでご親切に言うてくれんでもと思う作品も多いのですが、
本作はいたって控えめ、しかし、ジワ~ンと胸に沁みる。
なんでこれが日本では未公開なの?と唸った良作。
これまた「実話に基づく」なんですけど。

1976年、不況の波が押し寄せるフィラデルフィア。
明るい話題を見いだせない人びとが夢を託すのは、
NFLの地元チーム、イーグルス。
しかし、イーグルスは勝利に見放されたままシーズンを終える。

ファンが不満の声を募らせるなか、
来シーズンの新監督として就任したディック・ヴァーミールは、
話題づくりの意味もあって、プロチームとしては異例の、
公開オーディションの開催を決める。

さて、失業中のヴィンス・パパーリ、30歳。
貧困生活に嫌気がさした妻にも逃げられ、
近所の店でバーテンダーとしてわずかに稼ぐだけ。
楽しみといえば、店に集まる仲間たちとの草フットボール。

ある日、店のテレビで公開オーディションのニュースが流れる。
「お前は誰よりも走るのが速い。受けてみろよ」と勧める仲間たち。
イーグルスの大ファンであるヴィンスにとっては、
そのイーグルスの選手たちと一緒にプレーするなんて夢のまた夢。
所詮、自分は草チームのメンバー。
父親にも「高望みをするな」と諭され、無謀なことだと思いつつ、
あのスタジアムに立てるチャンスがわずかでもあるならと、
オーディション会場に足を運ぶのだが……。

正真正銘のアメリカン・ドリーム。
本気か冷やかしかわからないような、
信じられないぐらい大勢のオーディション参加者中、
ヴィンスはただひとり、監督の目に留まります。
不屈の精神、ここにあり。

くじけそうになったとき、
自分の背番号のシャツを着たチビっこにグッとくる彼の目。
雨の中、草チームに戻って泥んこになってプレーする彼の姿。
何があろうとも彼を応援し続ける仲間の顔。
たったひとつのスポーツチームが人びとに与える夢と希望。

派手すぎず、感動を強いることもなく、静かに熱い。
スポ根はこうあってほしいと切に願います。

せやけど、今日の阪神、何なのよ。
現在、夢も希望もぶった切り中。(T_T)

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『幸福のスイッチ』

2007年04月16日 | 映画(さ行)
『幸福のスイッチ』
監督:安田真奈
出演:上野樹里,本上まなみ,沢田研二,中村静香他

今が旬の上野樹里ちゃん。
私のイチオシは『亀は意外と速く泳ぐ』(2005)ですが、
『ジョゼと虎と魚たち』(2003)では妻夫木君に想いを寄せる、
かなり陰険な女子大生を巧みに演じていました。
すっとぼけた天然イメージの強い彼女は、意外や意外、
どんな役もこなせるカメレオン女優なのです。

和歌山県田辺市。
家電量販店に顧客を奪われようとも、
頑なに昔ながらのスタイルを守り続ける「イナデン」こと、稲田電器店。
店主である誠一郎のモットーは、お客様第一。
ビデオの録画設定から大型テレビの移動まで、
顧客に頼まれれば何でもタダで引き受ける。

儲かりもしないアフターケアに走り回る父親は
妻の死に目にも会えなかった。
父親のことがまったく理解できない次女の怜は、
東京の美大へ進み、イラストレーターとして就職。
しかし、自己チューな彼女は上司に反発、会社を辞める。

東京の家賃は高い。無職では払えない。
残高わずかな通帳を目の前に沈んでいると、
三女の香から手紙が届く。
店を切り盛りする長女の瞳が倒れたので、
店を手伝いに帰ってきてほしいと。

ところが、帰省してみると瞳はピンピンしている。
実は誠一郎が骨折して入院し、
事実をありのまま伝えようとする瞳の手紙を見た香が、
そんな手紙では怜を呼び戻せるはずがないと
勝手に手紙をすり替えたのだった。

唖然とする怜だが、実家にいれば生活には困らない。
仕事を辞めたことは内緒にして、
恩を着せつつ、しばらく店を手伝うことにするのだが……。

怜の心が人情に触れてほぐれていくのは予想どおりですが、
とても、とても温かい。
町の電器店はまるでご近所さんの集会所で、
毎朝、勝手知ったる住民がミックスジュースを作ったり、
餅つき器で実演をおこなったり。
父親の浮気疑惑を確かめにスナックに乗り込む姉妹は勇ましく、
偏屈なおばあちゃんの終盤の台詞には涙。

関西弁をこれほど全員が違和感なく喋る映画も珍しい。
ジュリーがバリバリ関西弁なのは言わずもがな、
長女役の本上まなみは大阪・茨木市育ち。
次女役の上野樹里は兵庫・加古川市出身で、
三女役の中村静香は京都・宇治市出身だから、当然か。

色っぽいジュリーが懐かしいけれど、
二重アゴのジュリーだからこそ、娘を思う父親がハマります。

頑張れ、町の電器屋さん。

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『フラガール』

2007年04月11日 | 映画(は行)
『フラガール』
監督:李相日
出演:松雪泰子,豊川悦司,蒼井優,山崎静代,岸部一徳,富司純子他

こんな大ヒット作をわざわざここで取りあげることもない?
でも、やっぱり好きなんです。文句なしの娯楽映画。

ご承知のとおり、本作も「実話に基づく」。
今から約40年前、石炭の採掘会社であった常磐興産が、
石油にシェアを奪われつつある石炭に見切りをつけ、炭坑を閉山。
温泉を売りにしたレジャー施設を建設することに。
まさにテーマパークのハシリです。

しかし、当時の住民にとっては想像しづらい世界。
特に、解雇される炭坑夫たちにしてみれば、
「東北にハワイを」なんて、大真面目に言われても、
「何がアロハ~やねん」っちゅう感じだったでしょう。

実際、住民じゃなくても驚きました。
私も度肝を抜かれました。
家族旅行で初めて訪れた福島県の印象は、ハワイにはほど遠し。
けれど、一歩、足を踏み入れれば、そこはホントに常夏の島。
中でも、小学生だった私の目を釘付けにしたのは、
熱帯植物に囲まれた園内に光り輝く黄金風呂。
金ピカの浴槽に何の意味があるねんと思いましたが、
その金ピカ度は衝撃的で、今も忘れることはできません。
それが「常磐ハワイアンセンター」。

昭和40年、福島県いわき市の炭坑町では、
町の存続を賭けたレジャー施設、
「常磐ハワイアンセンター」の建設が計画される。

目玉となるのは、フラダンスショー。
東京から元SKDのダンサー、まどかを講師として招き、
地元の女性たちにダンサーとして募集をかける。

しかし、フラダンスを裸踊りと紙一重だと思っている女性たちが
そんな話に乗るのは無理。残ったのはわずか4名。
プロのダンサーになって町を抜けだしたい早苗、
その早苗に誘われた紀美子、子持ちの初子、
踊り好きだからと父親に連れてこられた小百合。

ワケありで嫌々ここへやってきたまどかと
ズブの素人4名の特訓が始まる。

映画としてのツッコミどころはあります。
ワケありのわりに、どんなワケありなのか
さっぱり書き込まれていない、まどか。
そのまどかにどやされる早苗の親父も、
熱い娯楽映画なら「スマン」ぐらい言ってもいい。

でもそんなことは気にせずに、楽しむのが正解。
紀美子の母親を演じる富司純子はやっぱり凄い。
娘を見つめるその表情は、言葉なんて必要なし。

現在は「スパリゾートハワイアンズ」と今風に改称。
30年ぶりに行ってみたくなりました。

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『地下鉄(メトロ)に乗って』

2007年04月06日 | 映画(ま行)
『地下鉄(メトロ)に乗って』
監督:篠原哲雄
出演:堤真一,岡本綾,常盤貴子,大沢たかお他

レンタル新作。浅田次郎の同名小説の映画化です。

小さな衣料品店の営業社員、長谷部真次は、
弟から父親が倒れたと言う連絡を受ける。

父親の小沼佐吉は大手衣料メーカーの社長。
3人兄弟の次男である真次は、兄が亡くなった事故をきっかけに、
家庭を顧みない父親を嫌って家を飛び出し、籍も抜いていた。
不祥事が明るみに出るたびに都合よく入院する佐吉に、
真次は到底会いに行く気にはなれない。

兄の命日であるその日、地下鉄構内で、
昔の兄にそっくりな後ろ姿を見かける。
思わず後を追った真次が地上へ出ると、
そこは東京オリンピックに湧く昭和39年の自分が育った町。

訳がわからず、途方に暮れるが、
ふと、今なら兄の事故を防げるのではないかと思いつく。
しかし、結局事実を変えることはできず、兄は死んでしまう。

以来、予期せぬ瞬間のタイプスリップが
真次の身に起こるようになるのだが……。

原作が非常に有名ですので、ご存じの方も多いと思います。
タイプスリップした先で、若かりし日の父親と出会い、
嫌悪感しか持てなかった父親のことを知ります。

いろんな掲示板では低い評価も多いですが、
今週私がいちばん泣いた映画はこれ。
もろにネタバレですので、
ネタを知らないまま映画を観たい人は、
ここから先、読まないでください。

何が泣かされたって、原作を未読だった私は
岡本綾演じるみち子の行動をまったく読めず、
それはもう、ウサギみたいに目が赤くなるほど号泣。

彼女は堤真一演じる真次の不倫相手。
彼女もなぜか昭和39年にタイムスリップしてしまい、
実は自分が佐吉の愛人の娘であることを知ります。
つまり、自分と真次は異母兄弟。

昭和39年に自分を身籠っていた母親に会うと、こう尋ねます。
「お母さんの幸せと、私が愛した人の幸せを秤にかけてもいいですか」。

まさか目の前にいるのが成長した自分の娘だと思わない母親は答えます。
「親っていうものはね、自分の幸せを子どもに望んだりしないものだよ」。

それを聞いた瞬間、母親にしっかりと抱きついたみち子は
そのまま石段を落ちてゆきます。

自分の生を無くして、真次の幸せを願った彼女の決断。
この話に愛人なんていらんというコメントも多々見ましたが、
私には彼女こそ、本作の肝。
愛する人を幸せにするには、これほどの覚悟が必要。

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