夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』〈字幕版〉

2016年11月30日 | 映画(は行)
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(原題:Fantastic Beasts and Where to Find Them)
監督:デヴィッド・イェーツ
出演:エディ・レッドメイン,キャサリン・ウォーターストン,ダン・フォグラー,
   アリソン・スドル,エズラ・ミラー,ジョン・ヴォイト,コリン・ファレル他

勤労感謝の日の翌日は、毎年2度の恒例、全館停電の日
どこで何をハシゴするか悩みに悩み、
やはり駐車料金サービスがもっとも優れているTOHOシネマズ西宮へ。
ここで3本ハシゴの1本目。

“ハリー・ポッター”シリーズでハリーたちが教科書に使っていた『幻の動物とその生息地』。
その著者ニュート・スキャマンダーを主人公にしたシリーズとのこと。
ハリポタにさしたる執着なく、一通り観た程度の私でもじゅうぶんに楽しめます。
っちゅうのかむしろこの新シリーズのほうが私は好きかも。

魔法使いで魔法動物学者のニュート・スキャマンダー。
世界中を旅して集めた魔法動物たちに愛情を注いできた彼の不思議なトランクには、
魔法動物たちがいっぱい詰まっている。

ある日、ニュートはニューヨークへやってくる。
ところが、銀行ですれちがった人間ジェイコブ・コワルスキーの持つトランクと
ニュートのトランクとがひょんなことから入れ替わってしまう。
まさかそんなことだとは知らないジェイコブが不用意にトランクを開けたものだから、
魔法動物たちが一斉に人間界へと逃げ出して、ニューヨーク中が大パニックに。

偶然ニュートを見かけた魔法使いのティナは、アメリカ合衆国魔法議会の職員。
議会長官のグレイブスにニュートのことを報告しようとするが、
とりつく島もないばかりか、グレイブスはよからぬことを考えている様子。

仕方なくティナは自宅にニュートを匿う。
なりゆきで一緒に連れて来ざるを得なかったジェイコブも一緒に。
ティナとその妹クイニーも加わって、逃げた魔法動物たちを追うのだが……。

と、簡単にあらすじには書けないほどいろんな人がいて、楽しさが詰まっています。
ニュートたちが動物探しに奔走している間に出現する恐ろしげな黒い雲。
“オブスキュラス”と呼ばれるその雲は、魔法を使うことを禁じられたせいで
自ら魔法を封じてきた魔法使いの力が暴走した結果、生まれたもの。
グレイブスはその力を悪用するために、力の持ち主を突き止めようと躍起に。

ニュート役のエディ・レッドメイン、ティナ役のキャサリン・ウォーターストン
クイニー役のアリソン・スドル、みんな○。
そしてジェイコブ役のダン・フォグラーがとっても笑わせてくれます。
最近は締まった裸体を披露してくれることもないコリン・ファレルは、
かつての悪ガキのイメージは消え失せて、グレイブズ役がピッタリのおじさんに。

子ども向けながら、ちょっぴり怖いシーンもあります。
魔女狩りに必死になる孤児院の院長にサマンサ・モートン
影ある孤児のクリーデンス役はエズラ・ミラー
彼の妹分でやはり孤児のモデスティが歌う姿は不気味です。

特殊メイクをほどこしても誰だかわかるロン・パールマンに笑いました。
それとジョニー・デップ。こんなところに出ているとは。

夢いっぱいのファンタジーアドベンチャー。大人の皆さんもどうぞ。

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『聖の青春』

2016年11月28日 | 映画(さ行)
『聖の青春』
監督:森義隆
出演:松山ケンイチ,東出昌大,染谷将太,安田顕,柄本時生,鶴見辰吾,
   北見敏之,筒井道隆,竹下景子,リリー・フランキー他

前述の『胸騒ぎのシチリア』とハシゴ。
同じく大阪ステーションシティシネマにて。

難病に苦しむ人生のすべてを将棋に捧げ、ひたすら名人を目指したまま、
わずか29歳でこの世を去った異端の天才棋士、村山聖(さとし)。
彼の生涯を綴った大崎善生の同名ノンフィクションを映画化。
監督は大好きな『ひゃくはち』(2008)、『宇宙兄弟』(2012)の森義隆。
主演はこの役のために体重を20キロ増やしたという松山ケンイチ

広島に生まれた村山聖(松山ケンイチ)は、5歳のときにネフローゼ症候群を患う。
入院中、暇を持てあます聖に父・伸一(北見敏之)が買い与えたおもちゃの将棋セット。
それからの聖は明けても暮れても将棋。棋士しかも名人になりたいと言いだす。

身体のこともあり、せめて好きなことをやらせてやりたいと、
伸一と母・トミコ(竹下景子)は師匠探し。
引き受けてくれたのは大阪在住の森信雄(リリー・フランキー)。
弟子入りした聖はすぐに頭角を現し、異例のスピードでプロデビュー。

同世代の天才棋士として常に比較される存在だったのが羽生善治(東出昌大)。
羽生に猛烈なライバル心を抱く聖は、周囲の反対を押し切って上京。
森の依頼を受け、雑誌『将棋世界』等の編集部に所属していた橋口陽二(筒井道隆)が
聖の部屋探しほか、なんやらかやらと面倒をみることに。

大阪から東京へと拠点を移した聖は、打倒羽生と名人獲得という目標を掲げ、
なりふりかまわず突き進むが……。

最初に言うことでもないんですが、初めて東出くんをカッコイイと思いました(笑)。
これまでずっと、失礼ながらそうイケメンとも思えず、声もヘンテコ、
台詞も棒読みで演技力イマイチだと思っていた東出くん。
羽生さん役の彼はほとんどしゃべらず、するとカッコイイ。
すごく知的な印象で、しゃべらないほうがいいじゃんと思いました。すんません。

少女漫画が大好きで、漫画を読みたくて遅刻することしょっちゅう。
変な奴というしかない村山さんですが、こんなに周囲に恵まれたのだから、
やはり変なだけではない。
ひたむきな姿勢で将棋に臨み、勝利への並々ならぬ執念を燃やした。
その姿に心を打たれた人が多かったのだろうと思います。

棋士仲間のなんと魅力的なこと。
師匠の森さんをはじめ、滝誠一郎、先崎学さんをそれぞれモデルにしたという、
橘正一郎(安田顕)、荒崎学(柄本時生)。弟弟子の江川貢(染谷将太)。
編集者の橋口は、原作者の大崎善生氏自身がモデルとなっています。

村山さんと羽生さんの一戦は、まるでスポーツかと思うほど。
将棋でしょ、将棋なのに、なにこの臨場感と驚きました。

どっちみち苦しむのだから、悩むだけ損。
森見登美彦の本の中にも出てきたそんな言葉。いいなぁ。
将棋に興味がないとかわからんとかいう方々にもお薦めしたい1本です。

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『胸騒ぎのシチリア』

2016年11月26日 | 映画(ま行)
『胸騒ぎのシチリア』(原題:A Bigger Splash)
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:レイフ・ファインズ,ダコタ・ジョンソン,マティアス・スーナールツ,
   ティルダ・スウィントン,オーロール・クレマン他

勤労感謝の日は水曜日でレディースデー。
大阪ステーションシティシネマはポイントを貯めてもドリンク等に交換できるだけ。
ほんとは映画鑑賞券に換えられるほうがありがたいから、
なんばパークスシネマまで行こうと思ったのですが、前日飲み過ぎ。←またかよ。(^^;
ちょっとでも近いステーションシティで手を打ちました。

イタリア/フランス作品。
アラン・ドロン主演のフランス映画『太陽が知っている』(1968)のリメイクです。
オリジナルはロミー・シュナイダーやジェーン・バーキン共演という豪華キャスト。
それに比べるとこのリメイクのキャストは控えめに思えるけれど、
その分、俳優たちの演技がすべて。面白かったです。

世界的な人気を誇るロック歌手マリアンは、声帯の手術を受ける。
静養のため、年下の恋人ポールを連れてシチリアのパンテッレリーア島へ。
プールもある別荘でふたり静かに過ごすはずが、
元彼でカリスマ音楽プロデューサーのハリーから突然連絡が入る。
ハリーは最近自分の娘だと判明したというペンを伴い、別荘に押しかけてくる。

とにかく騒々しいハリーに、マリアンとポールはすっかりペースを乱される。
しかしマリアンは陽気な元彼と過ごすことがまんざらでもない様子で、
そんな様子を見てポールはイライラを抑えるばかり。

一方のペンはポールに興味を引かれたらしく、しきりと誘惑を仕掛ける。
ちっともなびかないポールだったが、
ある日、マリアンとハリーが買い物に出かけた折り、別荘にはポールとペンが残され……。

キワモノ的な役が多い女優ティルダ・スウィントンが主人公のマリアン。
ハリーにはいつのまにか悪役が増えたレイフ・ファインズ
どちらかといえば貧乳のダコタ・ジョンソンは脱ぐのに抵抗ないようで、
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2015)の後もペン役でまた脱いでいます。
ベルギー出身のイケメン俳優マティアス・スーナールツがポールに。

この4人が繰り広げる愛憎劇の面白いこと。
それもこれも4人の演技力ゆえ。堪能できます。

最愛の恋人と元彼がいちゃつくのをどうしてポールは許しているのか。
冒頭から不思議で仕方ないその理由は、徐々に明らかになります。
若くて(貧乳だけど)セクシーな女性から言い寄られたら飛びつきそうなものなのに、
徹底して無視するポールに、女ならば喝采を送りたくなることでしょう(笑)。

心のうちを表には出さない4人の腹の探り合い。
しかもそのうちの1人は声帯手術後のマリアンで、声に出そうにも出せません。
そんな彼女が唯一声を張り上げる「叫び」のシーンも秀逸。

シチリアの景色と併せて楽しめます。

……こうして全部書いてから、あらためてダコタ・ジョンソンの画像を見たら、
やっぱり貧乳でもないかしらん。そこそこある!?←どうでもええか。(^^;

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『ブルゴーニュで会いましょう』

2016年11月24日 | 映画(は行)
『ブルゴーニュで会いましょう』(原題:Premiers Crus)
監督:ジェローム・ル・メール
出演:ジェラール・ランヴァン,ジャリル・レスペール,アリス・タグリオーニ,
   ローラ・スメット,ラニック・ゴートリー,フレデリック・ティルモン他

前述の『ガール・オン・ザ・トレイン』を観たあと、テアトル梅田へ。
とっても観たかったフランス作品です。

実に日本的な邦題が付いていますが、原題は“Premiers Crus”。
フランスで“grand cru”といえば特級ブドウ畑
“premiers crus”は一級ブドウ畑のことですね。
ずいぶん前に予告編を観たときから当日本編が始まるまで、
これはドキュメンタリー作品だとばかり思っていました。ちゃうかった。
さすがにこんな経歴の醸造家はおらんか。(^o^;

ブルゴーニュで代々ワインを造りつづけてきたマレシャル家。
縛られる人生が嫌で、20歳になろうかというときに家を飛び出したシャリル。
それでもワインには関わる職業に就きたくて努力を重ねた結果、
パリでワイン評論家として大成功。ガイド本を出版するようになって7年。
今ではシャリルの評価がワインの売れ行きに大きく影響する。

ある日、実家近くでレストランを営む妹マリーから衝撃の事実を聞かされる。
父フランソワとマリーの夫マルコが守るワイナリーは、経営不振で買収寸前。
7日以内にワイナリーを任せられる新責任者をフランソワが提示できなければ、
名乗りをあげている日本企業もしくは隣のワイナリーに買収されると言う。

慌ててフランソワに問いただしに行くが、
老いた父はやる気があるのかないのかさっぱりわからない。
しかしワイナリーを手放す気だけはないらしい。
悩みに悩んだシャルリは、パリでの生活を捨ててブルゴーニュへと舞い戻る。

まずは3年分の在庫を売りさばいて金にしなければ。
評論家時代のコネを使って販売を試みるが、
気取ったバイヤーが来ればフランソワが嫌みを言いに出てきて台無しに。
なんとか父を黙らせ、ちょっと汚い手も使いつつ、在庫一掃には成功。

さていよいよワイン造りに取りかかろうとするが、
なにせテイスティングのプロではあっても、造るほうはド素人。
なのに昔ながらの自然農法で造りたいというシャルリに、
マルコはなかば呆れながらも賛成、協力を惜しまない。

ここ数年、毎年大量の在庫を抱えるマレシャル家に対し、
隣のモービュイッソン家は今も素晴らしいワインを造りつづけている。
女主人エディットの娘ブランシュと言葉を交わすようになったシャルリは、
ブランシュにもアドバイスを求めるのだが……。

葡萄は聖なるもの。ワイン造りは聖職。
頑固親父のフランソワはシャルリにそう言います。
片手間にできるものではないから、
本作のように簡単に美味しいワインができても困ると思うのですけれど。(^^;

ワイン造りの話であると同時に、父と息子、母と娘、家族の物語でもあります。
家を飛び出したのは自分だけれど、なぜ自分を避けるのかと問うシャルリ。
最初は「わからない」と答えたフランソワですが、やがてぽつぽつと。
フランソワの父親(シャルリの祖父)は厳しく、本当は飛び出したかった。
息子シャルリの成功を喜ぶはずが、素直にそうできなかったのはなぜなのか。
それは、俺がやりたくてもできなかったことをおまえがやってのけたからだ。
伝統と父親に背くこと。それをやってのけたおまえのことを、今は誇らしく思うと。

ボルドーワインアメリカのワイン(本作ではオレゴン)への非難丸出しなのも可笑しい。
特にボルドーのことはメッタ斬り(笑)。

ワイン造りの映画はどれも楽しい。
そして必ず飲みたくなります。

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『ガール・オン・ザ・トレイン』

2016年11月23日 | 映画(か行)
『ガール・オン・ザ・トレイン』(原題:The Girl on the Train)
監督:テイト・テイラー
出演:エミリー・ブラント,レベッカ・ファーガソン,ヘイリー・ベネット,
   ジャスティン・セロー,ルーク・エヴァンス,アリソン・ジャネイ他

今月3つめの結婚式に出席した土曜日。
近江八幡での披露宴前に“ヒトミワイナリー”で10種類も試飲させていただき、
披露宴ではもちろんしこたま飲んでいるので、
翌日曜日に早起きするのはやっぱりツライ。
イレギュラーな土曜日でもいつもの土曜日と同じやん。(--;

早起きするのはツライはずなのに、ずっと寝ていられないのも年を取った証拠。
6時すぎには目が覚めて、ヒトミワイナリーで購入したパンを食べウダウダ。
8時すぎに家を出て、TOHOシネマズ梅田へ。

エミリー・ブラントのことがわりと好きなんです。
で、彼女が主演だと知り、原作を先に読みました。
そのとき“ブクログ”にUPしたレビューはこちら

上下巻2冊の原作は、序盤はわりと退屈でした。
これにエミリー・ブラントのイメージを重ねて読んだから耐えられたけど、
もしも映画化されることを知らずに読んだら、読書中に寝たかも。
面白くなるのは上巻も半ば近く、100頁目を過ぎたあたりからでした。

アルコールが手放せないレイチェルは、それが原因で夫トムと離婚。
友人キャシーの家に居候させてもらっている。
離婚後に失業したことまではキャシーに打ち明けられず、
毎日通勤するふりをして同じ時間に家を出て電車に乗る。

車窓から見える景色の中には、かつて自分がトムと暮らした家もある。
トムはレイチェルと別れたのち、アナという女性と結婚。
イーヴィという娘をもうけて、仲睦まじく暮らしている。
私が選んだ家にあの3人が暮らし続けているなんてと、辛くてたまらない。

そのかつての家の数軒先には、理想と思える美男美女の夫婦が住む。
のちにレイチェルが名前を知ることになる夫婦、スコットとメガン。
彼らを見ているときだけは、レイチェルの心が安らぐ。

ところがある日、メガンがベランダで別の男と抱き合っているのを見かける。
居ても立ってもいられず、レイチェルは電車から駆け下りるが、
どこでどれだけ酒を飲んだのか、泥酔してしまって記憶がない。
気づいたときには頭から血を流して自宅に倒れ込んでいた。

数日後、メガンが行方不明になっているとのニュースが流れる。
夫のスコットが疑われているようだ。
別の男の存在を知らせようとレイチェルは警察に走るが、
アル中で問題の多い女の話など、刑事はちゃんと聞こうとしてくれない。
使命感に燃えるレイチェルは、直接スコットを訪ねるのだが……。

原作は面白くも下世話な話だと思わなくもありませんでした。
映画のほうはそれよりもだいぶん品良く感じると思ったら、
監督は『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(2011)のテイト・テイラー。道理で。

原作で退屈したのがなぜだったのか、映画を観てわかりました。
要らないことが原作には多すぎる。
この監督は、原作のそうした部分を綺麗に削ぎ落とし、
テンポのよいサスペンスに仕上げています。

一時的なブラックアウト(記憶喪失)を起こすほど飲んだらあかんやろと思いますが、
そうなってしまった経緯については原作よりも映画版のほうが丁寧。
レイチェルに同情の念を禁じ得ません。

何年か前ならレイチェルの友人役だったかなと思えるリサ・クドローが、
本作ではほんの数分の出演で、謎解きのきっかけとなる存在。
スコット役のルーク・エヴァンスは顔も体も超イケてるけど、
この人を見るたびに「でもカミングアウトしてるし」と思ってしまうのでした。(^^;

女は強し。

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