夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『未来のミライ』

2018年07月31日 | 映画(ま行)
『未来のミライ』
監督:細田守
声の出演:上白石萌歌,黒木華,星野源,麻生久美子,
     吉原光夫,宮崎美子,役所広司,福山雅治他

食べ過ぎ飲み過ぎでへろへろ気味だった土曜日の翌朝も、
いつもとさして変わらない時間に目が覚めてしまいます。
これって、生き急いでいるのか死に急いでいるのか。
睡眠も体力を要するから、若いときのように寝続けることができないんだろうなぁ。

朝8時過ぎには家を出てTOHOシネマズ伊丹で2本ハシゴ、その1本目。

何度観ても熱くなる『サマーウォーズ』(2009)の細田守監督ということで、
期待は否が応でも強くなる。
しかし、その後の作品は『おおかみこどもの雨と雪』(2012)が私は駄目。
『バケモノの子』(2015)は結構好きでしたが、「結構好き」止まり。
『サマーウォーズ』の壁が高すぎて、本作も、「う~ん、まぁまぁ」程度かなぁ。

くんちゃんは4歳の男の子。
お父さんとお母さんの愛情を今まで独占してきたが、妹が生まれる。
妹の名前は「未来」と書いて「ミライ」。

お兄ちゃんなんだから妹に優しく、仲良くしてあげて。
お母さんはそう言うけれど、ミライちゃんが来てからというもの、
お父さんもお母さんもミライちゃんにかかりっきりで、
くんちゃんのことなど二の次どころか、まるで目に入っていない様子。

だだをこねて庭に飛び出したくんちゃん。
するとそこに突然セーラー服の少女が出現し、怒った顔で「お兄ちゃん!」と言う。
彼女はなんと、未来からやってきたミライちゃん。
そしてくんちゃんの家のペット犬、ゆっこまでが男の人の姿で目の前に現れて……。

悪くはないです。酷評の向きもありますが、私は別に嫌いじゃありません。
でも、『おおかみこどもの雨と雪』のときにも思ったように、
どの年齢層をターゲットにしてつくられたものなのかがよくわからない。

子ども向けにしてはタイムスリップのシーンを難しく感じます。
子どもにどういうことが起きているのか説明するのは大人にも難しそう。

産休・育休を取得したのちに仕事に復帰するお母さんたちや、
イクメンのお父さんたちへの応援歌に思えなくもない。
結局のところ、誰も彼もをターゲットにしたから、
誰に向けても中途半端になってしまった印象があります。

それと、細田監督作品には、気になる言葉遣いというのか、
私の嫌いな言いまわしがいくつか。
『おおかみこどもの雨と雪』ではクドイほどの「~してあげる」
本作ではくんちゃんが連発する「好きくない」。
こういうのを耳にすると、日本語にも気を遣っているらしき“ドラえもん”は凄いなぁと。

いちばんおもしろかったのは、くんちゃんの住む家。
お父さんは建築家という設定で、玄関開けたら階段、
階段をまっすぐ上がると突き当たりから右手に伸びる生活空間。
その下に庭が広がり、さらにその下にくんちゃんの遊び部屋。
おばあちゃんが「それにしても住みにくい家だねぇ。
建築家と結婚するとこんな家で暮らすことになるのかねぇ」とぼやくのが可笑しい。
確かにものすごく暮らしにくく、子どもには危険だと思いましたが、おもしろい家です。

ひとりっ子だったボクに弟妹ができて寂しくてという設定なら、
『ボス・ベイビー』のほうがだいぶん楽しめた気が。
映像よりも山下達郎のテーマ曲のほうを後々も思い出してしまう作品。
あとは、星野源麻生久美子の声って、すぐにわかるんだなぁと改めて思ったぐらいで。
上白石萌歌が担当するくんちゃんの声にはどうも違和感があり、
違和感がありそうなのにピッタリな“クレしん”の凄さも感じてしまうのです。
兄妹なら、くんちゃんとミライちゃんより、しんちゃんとひまちゃん。

『サマーウォーズ』を超える細田監督作品、早く出てこい!

それにしても車の後部に荷物積み込み過ぎではないかい?
あれじゃ後ろがまったく見えんって。

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『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』

2018年07月29日 | 映画(か行)
『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』(原題:Liberation Day)
監督:モルテン・トローヴィク,ウギス・オルテ

ナナゲイで3本ハシゴのラストは、またしても北朝鮮の話ですが、
前述の『ワンダーランド北朝鮮』はドイツ/北朝鮮作品、
本作はノルウェー/ラトビア作品です。

2015年8月15日、北朝鮮の祖国解放70周年記念日。
北朝鮮から招待された「初」で「唯一」の海外ミュージシャンは、
スロベニア(旧ユーゴスラビア)のロックバンド“ライバッハ”。

北朝鮮が初めて欧米のロックバンドを招待するということで、
世界中のマスコミが沸き上がったとか。
本作の冒頭でも面白可笑しくニュースを読み上げるキャスターが。

おそらく「初めて呼ばれたオレたち」ということで監督もメンバーも大興奮。
意気揚々と、ちょっぴり(かなり)自慢げなところも見て取れるのですが、
なにせ北朝鮮ですから、勝手なことは何も許されない。
宣伝用写真も選曲もパフォーマンスも背景映像も、すべてチェックされます。
かつ、現地スタッフは照明やマイクなどの舞台装置について知識のない人ばかりで、
ライバッハ側のスタッフは唖然呆然愕然。

それだけ検閲するならなんでこんな過激なバンドを呼んだのか。
ナチスを思わせる見た目に、パフォーマンスだって過激。検閲を通るわけがない。

私が辛かったのは、彼らの音楽そのもの。
日頃好んで聴かない音楽でも、映画を通じて好きになったジャンルが結構あります。
ヘヴィメタをよく聴くきっかけになったのはこれだし、
今でもそんなには聴かないけれど、ヒップホップも悪くないと思ったのも映画の影響。
でも私、ライバッハは無理。
『アイアン・スカイ』(2012)の音楽を担当したのが彼らでしたが、
あれは映画の内容と合っていたから良しとして。
ネオナチ風の見た目についていけないうえに、ボーカルの声が男女とも好きじゃない。
途中で耳をふさぎたくなりました。

『北朝鮮をロックした日』という邦題に、
観客がノリノリで超盛り上がるという話なのかと思ったら、全然。
ごく少数、リズムに合わせて肩を揺らしている人がいるぐらいで、
大半は不思議なものでも見る表情。私のように耳をふさいでいる人もいます。

北朝鮮に呼ばれた初の欧米ロックバンドといっても、
ウリである挑発的パフォーマンスをいっさい見せることができず、
結局、与しやすいバンドと思われて呼ばれたのではと思ったりも。
ロックの殿堂入りを果たしているようなバンド、
たとえばU2とかキッスとかELOとか、
メタリカだったりガンズ・アンド・ローゼズだったりは
呼ばれないというのか呼べないわけで。

聴衆に受け入れられるようにと、北朝鮮の大ヒット曲『行こう白頭山へ』や、
国民的民謡『アリラン』を歌おうとする姿も、迎合しているように思えて、う~ん。
こういうバンドだからこそ、好き勝手やっているところが見たい。
こんなふうに扱われるために行ったわけじゃないでしょうに。
それが北朝鮮という国だから、仕方ないといえば仕方がないか。

それにしても向こうで歌われる曲は、老若男女だれが聴く曲であろうとも、
すべて「元帥様」に捧げる曲。なんなんだ、この歌詞は!

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『ワンダーランド北朝鮮』

2018年07月28日 | 映画(わ行)
『ワンダーランド北朝鮮』(英題:My Brothers and Sisters in the North)
監督:チョ・ソンヒョン

飲み会前に、第七藝術劇場で3本ハシゴの2本目。
『ザ・ビッグハウス』の次は、ドイツ/北朝鮮作品の本作。
もちろん、こんなのを上映しているのは大阪ではナナゲイだけ。

いつまで経っても謎の国、北朝鮮。私はやっぱり怖いです。
『プルガサリ 伝説の大怪獣』(1985)を観たときには、
国家の最高権力者がゴジラファンだというだけで
日本から人を呼び放題、カネ使い放題でこんな映画を撮っちゃうのか、
そんなアホなと笑ったりもしていたものです。
しかし、『将軍様、あなたのために映画を撮ります』(2016)を観たときには
どう表せばいいのかわからない恐怖を感じました。
気に入ったものを撮るためであれば拉致も平気でやっちゃう国。

北朝鮮の人々の日常を撮りたいと考えた本作のチョ・スンヒュン監督は韓国人。
韓国人が北朝鮮へ入国するのは大変なことだから、本作を撮るために韓国籍を放棄。
ドイツのパスポートでなんとか北朝鮮へ入国したそうです。

とはいうものの、北朝鮮ですもの、自由に撮らせてくれるはずがありません。
厳しい監視下、さまざまな制約を受けつつカメラを回したのですから、
これが丸ごと北朝鮮の普通の人々の暮らしぶりかと聞かれたら、
他国の人に見せてもよいと「将軍様」が考える限界ぐらいとしか言えないでしょう。

スンヒョン監督は、いろんな職業に就く「普通の人々」に取材。
誰も仕事への不満など口にせず、品行方正。
本作の公式サイトのトップ画面やチラシに笑顔で映っているのは、縫製工場で働く少女。
服をつくる人になりたいと言うけれど、デザイナーという言葉は知りません。
自由にデザインすることなどこの国ではあり得ないから知らないのか。
縫製工場でしっかり技術を身につけて、立派な女性になるのが夢。
立派な女性って何なのか。いつの時代の女子教育だと驚いてしまいます。

この縫製工場ではノルマがあり、それをクリアできたかどうか、
さらには人を助けるなど善いことができたかどうかが成績に加算されるそう。
だからって、成績の良い人と悪い人でさほど給料に差はないと少女は言います。
給料が貰えるほか、配給券が貰えることを満面の笑みを浮かべて語る様子を見ると、
その国の人が幸せかどうかなんて、よその国の人は決められないと思ったりもする。

キム・ギドク監督の『The NET 網に囚われた男』(2016)を観たときにも思ったこと。
何を以て不幸と考えるのか。彼ら自身が幸せだと思っているなら口出しすべきじゃないのか。

本作を観ても、彼らの本心はわかりません。
映像で語っていることがそのまま本心で、不満なんてかけらもないのですか。

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『ザ・ビッグハウス』

2018年07月27日 | 映画(さ行)
『ザ・ビッグハウス』(原題:The Big House)
監督:想田和弘,マーク・ノーネス,テリー・サリス,ヴェサル・ストークリー,
   ショーン・ムーア,サリカ・チャギ,V・プラサド,ブリッティ・ボニン,
   アレックス・ブレナー,ケイティ・デウィット,ディラン・ハンクック,
   ダニエル・カーン,レイチェル・カー,オードリー・マイヤーズ,
   ハンナ・ノエル,ジェイコブ・リッチ,ケヴィン・トッコ

先週土曜日。夜は30年以上前にバイトしていた単車屋さんの人たちと宴会予定。
それまで映画を3本ぐらい観る時間がありそう。
とにもかくにも暑いから、できるだけ駅から近い劇場へ行きたくて。
土日の映画ハシゴスケジュールを練ったら、この日のTOHOシネマズは無し。
シネ・リーブルまで歩く元気はないけれど、ナナゲイまでなら歩けそう。
というわけで、十三の第七藝術劇場へ。

想田和弘監督は、いくつかの劇映画を撮っているものの、
ジャーナリストとしても活躍する、基本、ドキュメンタリー映画の人。
自身の撮るドキュメンタリー映画を「観察映画」と称しています。
台本を作らず、予断と先入観を排除して対象を観察する。
観察で発見したことを映画にする、それが想田監督のやり方。

想田監督が16人の映像作家とともに観察映画の舞台として今回選んだのは、
全米最大のアメリカンフットボール・スタジアム“ミシガン・スタジアム”。
甲子園の倍以上、10万人を超える収容人数で、通称“ザ・ビッグハウス”。
観客動員数が10万人を切ったことは数十年間ないそうです。

幕開けは、著名なスカイダイバーがスタジアムに降り立つ姿。
これでグッと心を持って行かれます。
そして、試合当日のスタッフミーティング、厨房、報道関係者ブース、
マーチングバンドチアリーダー、観客、警察犬の様子に至るまで、
スタジアムの内外さまざまな場所、さまざまな人びとを撮影。

冒頭でスタジアムに関する説明テロップが流れるほかは、ナレーションも何もなし。
どう考えても普通は寝るでしょ、私。
ちょっとうとっとした数秒間を除けば目がランラン。
ダフ屋(定価で売っていると言っていましたがホンマか!?)や
太鼓を叩いて施しを乞う貧困者、新興宗教の演説者など、
余計な説明を省いた映像に興味を引かれっぱなしでした。

撮影されたのが2016年の秋で、
ちょうどドナルド・ トランプヒラリー・クリントンの大統領選挙戦の真っ只中。
本作は「アメリカ社会の縮図だ」などとも言われていますけれど、
私にはそんなことまでわかりません。
ただ、ひとつのスタジアムとその周囲にはいろんな人がいるということが
淡々とした映像を通じてしみじみジワジワ伝わってきます。
あ、それを縮図というのか。(^^;
面白かった。

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『セラヴィ!』

2018年07月25日 | 映画(さ行)
『セラヴィ!』(原題:Le Sens de la Fete)
監督:エリック・トレダノ,オリヴィエ・ナカシュ
出演:ジャン=ピエール・バクリ,ジル・ルルーシュ,ジャン=ポール・ルーヴ,
   ヴァンサン・マケーニュ,アルバン・イヴァノフ,アイ・アイダラ他

シネ・リーブル梅田で2本ハシゴの2本目。
『ルームロンダリング』の上映終了10分後、同じスクリーンで上映だったので、
オンライン予約した時点でまったく同じ席を確保していました。

監督は『最強のふたり』(2011)や『サンバ』(2014)のコンビ。
どうでもいい話ですが、“セ・ラ・ヴィ”と聞くと、
1980年代のロビー・ネヴィルのヒット曲を思い出します。
この人、その後はディズニー作品や他の歌手に曲を提供しているようですが、
自分で作って自分で歌った曲としてはいわゆる「一発屋」!?

マックスは老年にさしかかったベテランのウェディングプランナー
長年にわたり数々の結婚式をプロデュースしてきたが、そろそろ引退を考えている。

そんなある日、17世紀の古城を式場にした結婚式の依頼が舞い込む。
絢爛豪華な演出を望まれ、マックスは新郎新婦の願いを叶えようと意気揚々。

ところが集まったスタッフたちはポンコツばかりで、開いた口がふさがらない。
マックスの代理を務めるほど腕のあるはずのアデルは、
バンドを率いて音楽の演奏を担当するジェームスと喧嘩ばかり。
そのジェームスは披露宴会場に勝手に自分の宣伝リーフレットを置く。
昔のよしみで仕事を依頼したカメラマンは料理をつまみ食いし放題。
猫の手も借りたくて呼んできた義弟は、新婦が元同僚だと気づき、
スタッフではなく招待客のふりをしはじめる。
もうひとりの助っ人は実はズブの素人で、フルートグラスがなんたるかも知らない。

新郎はといえば、どれだけ金持ちなのだか知らないが、ずいぶんスカした奴。
自分の好きなように演奏を進めたいジェームスはカチンと来ている様子。

ひとつトラブルを解消したと思えばまた別のトラブルが起き、マックスはへとへと。
しかも不倫関係にあるスタッフのジョジアーヌは、
妻になかなか離婚を切り出さないマックスに愛想を尽かしたか、
ほかのスタッフとイチャイチャするものだから、マックスのイライラは募るばかりで……。

パリ同時多発テロが勃発して、沈痛な思いを消せないフランス国民に笑顔になってほしい。
そんな気持ちから監督は本作に着手したそうです。
その願いが通じて、フランス国内で大ヒット、その波は世界に広がりました。

私が観た日もよく客が入っていました。
そこそこ楽しめて、ところどころ大笑いしましたが、不倫話は余計だったかと。
だって、マックス役のジャン=ピエール・バクリは67歳、
本国ではハンサムと思われる顔立ちなのかもしれないけれど、
ただのハゲ親父といえばハゲ親父だし。
相手のジョジアーヌ役のスザンヌ・クレマンは49歳。
なんだかんだで20近くの歳の差でしょ、やっぱりオッサンの妄想よ。

マックスの義弟役のヴァンサン・マケーニュも人気俳優のようですが、私は苦手。
ハッキリ言うと、色の白いハゲ(他は濃そう)で小デブに愛を語られるのは嫌だ。
人の容姿をこんなふうに言っちゃいけないとわかっていながらすみません。
でもきっと、欧米で人気の俳優には、私の苦手なタイプがいっぱいいそう。
あ、向こうからお断り? し、失礼しました〜。(^^;

「妄想」のせいで、世間の人よりは私は楽しめなかったと思われますが、
いくつか心に残る台詞もあります。
目の前で何かものすごく悪いことが起こった時、人生を相対的に考えれば、
その悪いこともほんの一瞬の出来事なんだよって。
そうそう、物事はトータルで見ればいいんですよね。

ラストもよかったし、みんなを幸せな気持ちにする作品です。
しかし私の「妄想嫌い」ってどうなのよ、度を超えているかも。(^^;
いや、だからといって私がまったく妄想しないわけじゃないですから。
この手の、「オッサンオバハンの妄想が、妄想として描かれていないところ」が苦手なんだってば(笑)。

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