『悪い男』(英題:Bad Guy)
監督:キム・ギドク
出演:チョ・ジェヒョン,ソ・ウォン,チェ・ドンムン,キム・ユンテ他
本年度のベルリン、ヴェネツィアの両映画祭で
監督賞を受賞したキム・ギドク。
ヴェネツィアでは宮崎駿監督の『ハウルの動く城』の遙か上を行く評価だったようです。
(『ハウル』は技術貢献賞という、ちと中途半端な賞を受賞。)
これは受賞作とは別ですが、まぁぁぁ、えげつない話。
だけどなんでか見入ってしまう。
売春街を仕切るヤクザ、ハンギ。
昼下がりの繁華街で、ベンチに腰かける女子大生ソナを見かける。
清楚な彼女に一目惚れしたハンギは、彼女の隣に腰を下ろす。
しかし、明らかにカタギとは違うハンギに、ソナは冷たい視線を送る。
やがてソナの恋人が現れ、ふたりはその場を去ろうとする。
突然、ハンギがソナの唇を奪い、街は騒然となる。
群衆の中にいた軍人に取り押さえられたハンギは、
殴る蹴るの暴行を受けたうえ、ソナに唾を吐きかけられる。
屈辱的な気分を味わったハンギは
ある計画を思いつき、子分を動かす。
これを境にソナの人生が狂い始める。
ある日、書店に立ち寄ったソナは財布を拾う。
思わず中身を抜き取るが、財布の持ち主に捕らえられる。
抜き取った中身とは桁違いの金額を返すように言われ、
「そんなに入っていなかった」とつっぱねるが、
高利貸しのところへ連れていかれる。
身体を担保に借金することになったソナは、
ハンギの仕切る売春宿に売り飛ばされる。
ソナが暮らし、身体を売る部屋には、
マジックミラーが備えつけられていた。
彼女の様子を壁越しに見守り続けるハンギ。
そうとは知らないソナは泣き暮らし、やがて娼婦へと変わってゆく。
これは本国の韓国のみならず、
ヨーロッパでも話題になったそうです。
究極の愛か?
それとも性的倒錯か?
ヨーロッパでは精神科医まで呼んで映画を分析したとか。
同様に娼婦を見守る愛を描いたフランス作品、
『歓楽通り』(2002)とはまた別の究極の愛。
自分の手で娼婦に育てあげ、そうすることでしか成就できない愛。
ハンギの台詞は全編通してわずか1行。
でも凄みのある目が口以上にモノを言う。
予想に反して一見爽やかなオチ、
でも実はものすごくヘヴィーなオチで、脳みそがグワ~ン。
「韓国の北野武」と言われるキム・ギドク監督。
私は最近の北野武より好きだなぁ。