夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ヴァージン』

2012年07月31日 | 映画(は行)
『ヴァージン』
監督:今泉力哉,福島拓哉,吉田光希
出演:佐藤睦,田村健太郎,大崎由希,梅田絵理子,園部貴一,正木佐和他

第七藝術劇場で、先週1週間限定上映。
先週で有効期限が切れてしまう招待券を持っていたため、
前述の『それでも、愛してる』と無理やりハシゴ。

さて、40分程度の3本から成るオムニバス作品です。
ピンクまがいでも女ひとりで違和感なく観に行けるナナゲイに感謝。

1本目は『くちばっか』。
2012年3月11日。
高校2年生の女子、中村は、同級生の市川とつきあっている。
市川はちょうど1年前、地震の日に中村の姉に告白して玉砕。
中村は、市川がまだ姉のことを好きかもしれないという懸念が拭えない。
今日は市川の誕生日。中村は市川と初体験しようと決意。
その場所として中村があえて選んだのは、一人暮らしをする姉の部屋。

お互い名字で呼び合うふたりが、ぎこちなくて可愛い。
初めてのセックスを前に不安いっぱいの中村が、
両親に「初めてっていつ?」と聞いたときの返答はサバサバしすぎで、
おいっ、そんなにオープンでええんか!?とツッコミましたが。
「五反田の風俗だよ」と答える父親役は、
『私は猫ストーカー』(2009)の監督、鈴木卓爾です。ウケました。

2本目は『ゴージャス・プリンセス!』。
漫才コンビ“ゴージャス・プリンセス”を組むアズサとリエ。
ブスと美人をウリにそこそこの笑いを取っているが、
それだけでは食べて行けず、アズサはOL、リエはキャバ嬢をしている。
ある日、アズサは同僚男性からまさかの告白を受けて動揺。
そんななか、舞台でリエから処女であることをネタにされて激怒。
大喧嘩となって舞台への出入りを禁じられる。

ブスと言いつつ、眼鏡を外せば可愛いにちがいないと察しがつく顔で、
キワモノを見せられるのではという不安はありません。(^^;
同僚男性は弱い者いじめをするヒドイ男なのかと思いきや、
その理由がわかったときにはなんだか幸せな気分。
ホームレスのおっちゃんの場違いに巧すぎるギターテクも笑えます。

3本目は『ふかくこの性を愛すべし』。
薬剤師の和代は35歳。物静かで信頼の置ける女性。
同僚が終業後にデートに出かけるのが羨ましいが、そんな素振りは見せない。
あるとき、バスに乗り合わせた男子高校生たちにからかわれて傷心。
後日、そのうちの一人を待ち構えて声をかけると、和代は自室へと誘い込む。
しかし、それ以降、バス停で待つも彼が現れることはなく、
狂おしい気持ちに襲われる。

『UNDERWATER LOVE おんなの河童』の正木佐和主演。
これはかなりイタイです。
終盤、数分間に渡って響く彼女のわめき声は凄まじい。
中年女性が男子高校生に溺れる話に、
角田光代の『三面記事小説』の一編を思い出しました。

3つめはちょい苦手でしたが、1つめと2つめは結構好きでした。
お世辞にも上手いとは言いがたい演技がなんだか憎めなくて。
仕事の後、梅田と十三の間を駆けるというこのハシゴは相当きつかったですが、
23:00の終映後の十三はギンギンに明るくて魅力的。

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『それでも、愛してる』

2012年07月29日 | 映画(さ行)
『それでも、愛してる』(原題:The Beaver)
監督:ジョディ・フォスター
出演:メル・ギブソン,ジョディ・フォスター,アントン・イェルチン,
   ライリー・トーマス・スチュワート,ジェニファー・ローレンス他

梅田ガーデンシネマにて。

『少年は残酷な弓を射る』を観に行ったときに、
新梅田シティに怪しげな小屋が建ちかけていましたが、
これは夏限定営業のお化け屋敷“ゆびきりの家”というやつなのだそうで。
なんぼなんでもひとりでお化け屋敷には入れず、おとなしく映画のみ。

2009年の製作で、監督はジョディ・フォスター、主演はメル・ギブソン。
なのに公開が今ごろというのはどういうわけなのか。
観てなんとなく納得、売り方がむずかしかったのだと思われます。

玩具会社の二代目社長ウォルターは、重い鬱病に苦しんでいる。
さまざまな治療も効果が見られず、日がな一日寝てばかり。
そんな父親をとことん嫌う長男ポーターと、
父親に相手にしてもらえなくて悲しむ次男ヘンリー。
妻メレディスにはどうにもできなくなり、別居を決める。

別居初日、ウォルターはしこたま酒を飲んで自殺を図る。
首を吊ろうとして失敗し、飛び降りようとした矢先、
たまたま左手にはめていたビーバーのぬいぐるみが話しかけてくる。

それは幻想でも妄想でもなく、人づきあいが億劫になっていたウォルターが、
ビーバーを手にしていれば別人のようにしゃべれるということ。
みなぎるような自信に、ウォルターはただちに家族のもとへ帰る。

一緒に遊んでくれるようになった父親とビーバーにヘンリーは大喜び。
ポーターは鬱陶しそうに懐疑の眼を向けるが、
治療法のひとつだということで、メレディスもとりあえず受け入れる。

片時もビーバーを手放さなくなったウォルター。
それは異様な光景ではあるが、それにさえ目をつむれば、状況は明るい。
仕事に復帰すると社員の信頼を取り戻し、大ヒット商品を生む。
すべてが順調に回りはじめたかに思えたが……。

しんどい作品で、ものすごく考え込まされました。

ジョディ・フォスターにはどうしても優等生的なにおいを感じますが、
それはこちらの見る目がそうなってしまっているのかも。
彼女自身が演じるメレディスの行為は、「~してあげている」感じで、
「あなたのためを思ってやっている」という押しつけがましさがチラリ。
けれども、それこそが彼女の演技の意図するところなのでしょう。
相手のことを理解しているなんて思うのは傲慢だと見せつけられます。

ウォルターがメレディスから懐かしの写真を無理に見せられて、
「記憶喪失と鬱はちがう。過去のせいでこうなったのに、
どうして思い出させようとするのか」と叫ぶシーンは痛々しい。

ビーバーと決別しようとウォルターが取った手段は凄絶。
『セイジ 陸の魚』と同じようなシーンでありながら、まるでホラーです。
こうしてまでも家族のもとへ帰ることを選び、
その気持ちを心の深いところで汲み取った長男との抱擁は心に染みたけれど……。

どうしたらいいのかわかりません。

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『ローマ法王の休日』

2012年07月27日 | 映画(ら行)
『ローマ法王の休日』(原題:Habemus Papam)
監督:ナンニ・モレッティ
出演:ミシェル・ピッコリ,イエルジー・スチュエル,レナート・スカルパ,
   ナンニ・モレッティ,マルゲリータ・ブイ,フランコ・グラツィオージ他

前述の『おおかみこどもの雨と雪』を観ることをまず決めて、
同劇場でハシゴするものを悩んでなんとなく本作に。

『息子の部屋』(2001)のナンニ・モレッティ監督の作品。
監督・脚本・製作・主演すべて自分でしちゃう人ですが、
本作では主演はほかの人に譲り、ご自分は精神科医役で登場。
なかなか男前のオッサンでありながらワラかしてくれるんですけれど、
ワラかしてくれると言えば、本作の設定自体、禁断のジョーク。

ある日、ローマ法王が逝去。
次期法王を決定する選挙“コンクラーヴェ”がおこなわれることになり、
各国の枢機卿はバチカン宮殿内のシスティーナ礼拝堂へと集結する。

“コンクラーヴェ”は、全枢機卿による匿名投票で進められるが、
誰か一人が規定の投票数を獲得するまで、何度でも投票がくり返される。
そして、投票が続くかぎり、枢機卿たちは礼拝堂から出ることは許されない。
携帯電話も取り上げられて、外界と連絡を取ることは一切禁止。
国民もマスコミも、“コンクラーヴェ”の結果が発表されるのをひたすら待っている。

長らくの時間を経て、ようやく新法王に選出されたのはメルヴィル。
しかし、下馬評には名前すら挙がっていなかったものだから、心の準備が追いつかない。
新法王のスピーチを待つ大群衆を前にして、メルヴィルはすっかり怖じ気づく。

困り果てた報道官たちは、こっそりメルヴィルを外へと連れ出し、
彼が新法王であることを知る由もない精神科医の診療を受けさせるが、
ちょっと目を離したすきに、メルヴィルがどこかへ逃げてしまい……。

下馬評に名前が挙がっていた枢機卿らの顔は新聞などにも出ていますが、
穴馬でもなかったメルヴィルのことは誰も知りません。
町行く人にとってみれば、ちょっと変わっちゃいるけれど普通のじいさん。
特別視されない町を密やかに楽しむメルヴィルと、
その彼が行方不明になったことであたふたする礼拝堂内が可笑しい。

監督本人が演じるのは、最初に礼拝堂に呼ばれる精神科医。
法王には尋ねてはいけないとされる御法度事項があまりに多く、
「こんなのムリだ。法王の素性を知らない医者に診せるべき」と助言します。
で、監督演じる精神科医はお役御免かと思いきや、
その後も枢機卿たちと同じく、礼拝堂から出してもらえません。

神に仕える身である枢機卿たちは、どこか浮き世離れしていますが、
いろいろと心労が大きくて、睡眠薬や精神安定剤を常用。
服用している薬を並べてみれば、その併用はアカンと監督演じる医者から駄目出し。
聖書のことを「どこを読んでも立派な鬱病の症状」と言い放つシーンなど、
不謹慎ながら、ホンマかいなと笑ってしまいました。

誰もが法王になりたいのだと思っていたら、そんなことは無し。
自分には決まりませんようにと願っているくせに、
下馬評は気になって、新聞のオッズは何倍だったのかを精神科医に尋ねたりして、
なんだか可愛らしくもあります。

最初は若干眠気に襲われたものの、後半はクスクス笑えるシーンの連続。
「ムリなもんはムリなのよ」と言わんばかりのオチにも苦笑い。

優勝決定までリーグ戦を開催していたら、
もしかしたら新法王は十分な休みが取れたのかしらん。

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『おおかみこどもの雨と雪』

2012年07月25日 | 映画(あ行)
『おおかみこどもの雨と雪』
監督:細田守
声の出演:宮崎あおい,大沢たかお,黒木華,西井幸人,平岡拓真,菅原文太他

この夏休み話題のアニメ。
『時をかける少女』(2006)、『サマーウォーズ』(2009)と同監督ということで、
この2作品が大好きだった私も封切り日に。
大阪ステーションシティシネマは幅広い層の客で満席でした。

そして、泣く気満々で行ったのに、ひと粒の涙も出なかった私は自己嫌悪。(--;

大学生の花は、ある授業のさいに見かける“彼”に声をかける。
実はここの学生ではないという彼は、花に見咎められたのだと考えるが、
花はどことなく彼に惹かれて気になっていただけ。
教科書を一緒に見たり、話をしたりしているうちに、ふたりは恋に落ちる。

ある日、彼から自分は“おおかみおとこ”であると打ち明けられる。
そう聞いても、花の彼に対する気持ちは変わらない。
満月の夜に変身して人を襲うなんてことはただの迷信。
彼は花以外にはおおかみの顔を見せず、人間として働き、稼ぎ、
ときにおおかみとして動物を狩り、食卓を潤す。

やがてふたりは娘と息子に恵まれる。
雪の日に生まれた長女の“雪”と、雨の日に生まれた長男の“雨”。
ところが、突然、彼が死んでしまう。
人間とおおかみ両方の顔を持つ子どもたちをひとりで育てることになった花は、
緑豊かな山あいの村へと移り住むのだが……。

花はたくましいです。どんなにつらくとも泣き言は言いません。
子どもたちが人前でおおかみにならぬように注意はしますが、
学校に行きたがる雪には学校に行かせるし、
不登校となった雨には学校に行けとは言わずに好きなことをさせる。
雪と雨のあるがままの姿を受け入れて愛情を注ぎつづけます。

映像が美しいのはもちろんのこと、人気俳優たちが声優としての力量も見せつけてくれます。
家族愛に溢れた文句のつけようがない作品、というところなのでしょうけれど。

引っかかったのは、『はさみ hasami』と同じく、「~してあげる」です。
柔らかく聞こえるのかもしれないけれど、やはり私はキライ。
「席を取っておいてあげたよ」、「教えてあげるね」、「何もしてあげてない」。
最初の「あげたよ」は子どもの台詞ですから、「あ、出た」と笑った程度。
そのあとはおとなの台詞。どれもわざわざ「あげる」を入れなくても成立するのに。

たとえばAさんとBさんの間の会話で、「~してあげる相手」がCさんの場合はいいんです。
AさんがBさんに、「Cさんに~してあげて」と言うなんて場合は。
そうではない場合は、この「~してあげる」が出てきた瞬間に、
私の頭の中をシラケ鳥(←死語?)が飛んでゆきます。パタパタと音を立てて。

こうなったらもう元のモードには戻れません。
その稼ぎで貯金ってどんだけあってん、なんぼ古い家で家賃が安いからって、
そんな長期間、働きもせんと暮らすのは無理やろ~とか、
嵐の日に森へ入った息子を気にするのはええけれど、娘は迎えに行かんと置き去りかい!とか、
ツッコミモードになってしまって引き返せず。

前2作のほうがず~っとよかったなぁ。
嗚呼、なんたるアマノジャク。(^o^;

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『ヘルタースケルター』

2012年07月24日 | 映画(は行)
『ヘルタースケルター』
監督:蜷川実花
出演:沢尻エリカ,大森南朋,寺島しのぶ,綾野剛,水原希子,新井浩文,
   鈴木杏,寺島進,哀川翔,窪塚洋介,原田美枝子,桃井かおり他

先週、帰り道にあるシネコンで、『海猿』としばし迷ってこっちに。
後日、まだ顔を合わせたことのない知人が斜め後方の席にいらっしゃったことを知り、ウケました。

なんとも言えぬ客層が可笑しい。
私のような女一人もいれば、おっちゃんの一人客にカップル、おばちゃん三人連れも。
思い返せばこのうちの一人が知人だったわけで。(^o^;

原作は、交通事故に遭って一時は植物状態となった波乱の漫画家、岡崎京子の同名コミック。
ビートルズにも“Helter Skelter”という曲があり、
「滑り台」という意味とともに、「しっちゃかめっちゃか」の意味があるそうです。
日常生活でまず使わない言葉だと思っていましたが、
十数年前、同僚が「もうしっちゃかめっちゃかだわ」と言っているのを聞き、
「普通に使う人がおるんや」とかなり衝撃を受けた覚えがあります。

話題性で人を呼びまくっている本作、あらすじは今さらですけれど。

完璧な容姿で芸能界の頂点に君臨するファッションモデル、りりこ。
素性を明らかにしていないことから、その謎がさらに人気に呼ぶ。
しかし、実は彼女には全身整形が施されていた。
もとのパーツがほとんどないほどの整形で、免疫抑制剤の服用が欠かせない。
事実を知っているのは彼女がママと慕う事務所の社長と、
メイクを担当するオカマのキンちゃんこと錦二だけ。

整形の後遺症がりりこの身体を蝕み、部分的な皮膚の変色がはじまった頃、
都内で整形手術を受けた女性が次々と自殺。
美容クリニックの違法な医療行為を調査中の検事、麻田は、
りりこも自殺者と同じクリニックで施術を受けているとにらみ、
証言を得るべく彼女のもとを訪れる機会をはかる。

移り変わりの激しい芸能界。
りりこがすべての雑誌の表紙を飾った日々も束の間、
同じ事務所の後輩で、整形など受けていないこずえに取って代わられる。
次第に追い詰められたりりこは……。

とってもイタイです。
沢尻エリカはどこまでが演技なのかわからず、
ひょっとして素(ス)もこれなのかと思ってしまうので、余計にイタイ。

原色がちりばめられ、大音量で流れる不協和音。
“第九”と“美しく青きドナウ”にも不穏を感じ、
普通なら不穏に思えそうな戸川純で落ち着かされる始末。
女子高生のキンキン声には頭が痛くなってしまいました。

沢尻エリカのハダカを見たというネタだけならば良し。
それ以外は、映像としてオシャレなイメージはあるものの、
深みがないので心に訴えかけては来ず。
表情から心中を察するなどという部分がほとんどなくて、
結局、検事役の大森南朋に全部しゃべらせています。

若さは美しさである。けれども美しさは若さではない。
この台詞を大森南朋が鈴木杏に向かって言ったので、
『軽蔑』(2011)で沢尻エリカとは対照的なハダカを披露した彼女を思い出し、
なんだか気の毒になってしまいました。

よかった点を挙げるならば、マジメに静かに話す大森南朋や、いつものノリの寺島進
ドMな付き人を演じる寺島しのぶが可笑しかったところ。
私のツボはキンちゃん役の新井浩文。彼の大躍進は嬉しいかぎり。
『愛と誠』の生徒会長、斎藤工のカメオ出演にもニタッ。メガネはなくとも、あの唇は特徴的。
江口のりことMEGUMIの出演はエンドロールを見るまで気づかず、悔しい思い。

『絶対の愛』(2006)と併せてみると、整形の恐ろしさ倍増。

『海猿』にしときゃよかったなぁと、独り言。イタイよぉ。

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