夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ラブストーリー』

2004年07月30日 | 映画(ら行)
『ラブストーリー』(英題:The Classic)
監督:クァク・ジェヨン
出演:ソン・イェジン,チョ・スンウ,チョ・インソン,イ・ギウ他

高校生の頃、ある先輩がこんなことを言いました。
「恋愛ってな、五分五分じゃないとあかんねん。
 相手とつきおうたってるって気持ちと、
 相手につきおうてもろてるって気持ちが五分じゃないと。
 そのどちらかの気持ちがちょっとでも強かったら、
 絶対うまいこといかへんねん」。
目からウロコでした。

つきあってもらってるっていう気持ちが強いとき、
自分が健気(けなげ)に感じたりもするけれど、
「健気」と「卑屈」って紙一重。
つきあってやってるっていう気持ちが強いとき、それはとても傲慢な自分。
このどちらの気持ちが強くても、そんなときの私は自分が嫌い。
自分が嫌いなときの恋はうまくいかない。

そんな切ない思いを呼び戻す、
純愛もの大好きな韓国で昨年大ヒットしたのがこの作品。
ベタな邦題がついてるけど、原題は“The Classic”。

演劇部の先輩サンミンに恋心を寄せる女子大生ジヘ。
ある日、自宅の部屋で古ぼけた木箱を見つける。
中には母ジュヒの35年前の日記と、手紙の数々。
開いてみると、そこには母の初恋の思い出が綴られていた。

ストーリーはこんなふうにいたってシンプル。
2003年のジヘの恋と、1968年のジュヒの恋を同時に描き、
母娘であるジュヒとジヘの二役をソン・イェジンが演じます。

秀逸なのは母ジュヒの恋。
議員の娘であるジュヒには親が決めた婚約者がいますが、
やがてジュナという青年と恋に落ちます。
今どき流行らない身分違いの恋が泣けてくる。

虹、ホタル、幽霊屋敷、渡し舟、フォークダンス、雨。
気恥ずかしくなるようなアイテムが効果的に使われていて、
ハンカチ握りしめて泣きながら、恋の行く末を見守ってしまうのでした。
でも泣きのシーンばかりじゃなく、笑える描写満載なのもいいところ。
さすが『猟奇的な彼女』(2001)の監督です。

目からウロコだった高校生のとき。
その先輩の言葉は、
それ以降の私の人との接し方すべてに影響したと言っても過言ではないかも。
やったってるんやっていう気持ちと、させてもらってるんやっていう気持ち。
この気持ちが五分五分じゃなきゃうまくいかないことって恋愛に限らない。

まだ18かそこらでそんなことを言った先輩って、すごいなぁと思ったけど、
あれって誰かの受け売りだったのかな。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ミスティック・リバー』

2004年07月28日 | 映画(ま行)
『ミスティック・リバー』(原題:Mystic River)
監督:クリント・イーストウッド
出演:ショーン・ペン,ティム・ロビンス,ケヴィン・ベーコン,
   ローレンス・フィッシュバーン,マーシャ・ゲイ・ハーデン他

ボストンのブルーカラー地区、イーストバッキンガム。
ジミー、ショーン、デイブは11歳。
遊び仲間の3人がいつものように路上で遊んでいると、不審な車が近づいてくる。
警官を装った男ふたりは、3人のいたずらをとがめ、母親に言いつけてやるという。
そして、いちばんおとなしそうなデイブを連れ去る。

デイブは丸4日間、戻ってこなかった。
男たちに監禁され、性的暴行を受けていたのだ。
誰も助けに来てくれない。命からがら逃げだしたデイブ。
それ以降、3人で遊ぶことはなかった。

25年後、いまも同じ町で暮らす3人。

リーダー格だったジミーは小さな店を営む。
死別した前妻との間の娘ケイティは19歳。
2番目の妻アナベスと、さらに娘がふたり。
幸せな家庭を築いている。

刑事になったショーンは、妻と別居中。
生まれたはずの娘の名前すら教えてもらっていない。
何か言いたげに頻繁に無言電話をかけてくる妻に一方的に話しかけている。

デイブはアナベスの従姉セレステと結婚。
彼の過去を誰もが知る町で、陰鬱さを漂わせながら質素な生活を送っている。
息子とキャッチボールをする毎日。

ある日、ジミーの最愛の娘であるケイティが他殺体で発見される。
捜査に当たることになったのはショーン。
そして、容疑者として浮かんだのはデイブだった。

映画館で観ておきたかったと心底思う作品が
年に数本あるけれど、これもその1本。
130分を超える長編ですが、長さをまったく感じさせず。

新しい人生を送っているはずの3人が
こんな悲惨な事件で呼び寄せられ、ひた隠しにしてきた傷が痛みだす。
彼らの口から何度もくりかえされる、
「あのとき自分が車に乗っていたら」という言葉が重い。

途中で犯人の見当がついてしまうけど、それでもぐいぐい話に引き込まれます。
これは犯人を探すミステリーではないでしょう。
後味が悪いって?
いいんです、それも。

人の気持ちは、他人がすべてを理解することは決してできないもの。
人間の愚かさを突きつけられる逸品。
クリント・イーストウッドってすごい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二足のわらじは履けるのか?(その2)

2004年07月25日 | 映画(番外編:映画とこの人)
ドワイト・ヨーカムは1986年にデビューしたカントリー歌手で、
以来、不動の人気を誇り続けています。

私が知ったきっかけは、ダンナがアメリカに出張したとき。
ダンナはたいして英語ができるわけじゃなく、
テレビ番組多しといえども、聴いてわかるのは天気予報と音楽とスポーツぐらい。
山のないオハイオ州に滞在していたため、天気予報は百発百中で見る意味なし。
必然的に音楽を聴くことが増えたようです。
そこで気に入ったのがドワイト・ヨーカム。

帰国後すぐに「CD買っといて」と言われました。
ジャケットに映る彼はなかなか美形。
白いテンガロンハットがトレードマークで、
それがまためちゃめちゃ格好いい。

そんなある日、私がいつものように映画を観ていると、
キャストに彼の名がクレジットされているじゃないですか。
これはダンナに言わなきゃと思いました。
そのときの映画は『スリング・ブレイド』(1996)。
知的障害を持つ主人公と、
父親のいない少年との心の交流を描くこの作品で、
やがて主人公に殺害される、どうしようもない飲んだくれを演じたのがヨーカム。
しかし、画面に映った彼を見て、私は目が点になりました。
めっちゃハゲとるやんけ~!
ほんでテンガロンハットをかぶっとったんかい~!
実は見事なハゲだったヨーカムを見て、ダンナは心底ショックを受けていました。

次に観たのは『ニュートン・ボーイズ』(1998)。
1920年代に銀行や列車強盗で名を馳せた4人兄弟の実録ドラマ。
ヨーカムは、兄弟と組む、賢いけれど気弱な人物を。

ジョディ・フォスター主演の『パニック・ルーム』(2002)では
屋敷に侵入する3人組のひとりをヨーカムが。

もっとも新しいところでは、
ハリソン・フォードとジョシュ・ハートネットの老若刑事コンビが
ショービズ界で起きた事件の捜査に走り回る『ハリウッド的殺人事件』(2003)。
ちょっと見ない間にさらにハゲあがって、
前よりいくぶん太った様子のヨーカムは、黒幕を操る怪しい男役。
オープニングロールで主要キャストがクレジットされ、
最後に「and Dwight Yoakam」と出たときは嬉しくて「きゃ~」。
これって、日本のドラマとかで、「木村拓哉、堤真一、……」と来て、
最後に「京唄子」が出てきたみたいな衝撃。

とにかく、素晴らしい役者さんなのです。
ダンナはいまだにハゲたヨーカムは見たくない模様。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二足のわらじは履けるのか?(その1)

2004年07月23日 | 映画(番外編:映画とこの人)
歌手が本業で、俳優業に手を出す人はアメリカにもわんさか。
有名どころでは、ホイットニー・ヒューストンの『ボディガード』(1992)、
マライア・キャリーの『グリッター きらめきの向こうに』(2001) 、
ブリトニー・スピアーズの『ノット・ア・ガール』(2002)など。
しかし、これらのいずれもその年のラジー賞(ワースト映画賞)の
主演女優賞部門にノミネートされています。

売れっ子女性歌手が「やめときゃよかった女優業」なのに対し、
男性は確かな演技力を持つ人が多いように思います。
たとえばジョン・ボン・ジョヴィ。
『ムーンライト&ヴァレンチノ』(1995) の怪しげなペンキ屋も良かったし、
『ノー・ルッキング・バック』(1999)の誠実なカタブツ男も○。
『U-571』(2000)では潜水艦Uボートに乗り込む大尉を。
いずれも俳優業一筋の人に引けを取りません。
下品だと思っていた顔つき(スンマセン)も役によって変わるし、色気を感じます。

そして、ひそかにスゴイと思っているのがカントリーの大御所、ドワイト・ヨーカム。
カントリーというと、大半の日本人は
あの「カントリーロード♪テイクミーホーム♪」を思い浮かべるのでは。
でも、実はカントリーとポップスってどこがちゃうの?っていうぐらい、
カントリーはポップなのです。

トリーシャ・イヤーウッド、シャナイア・トウェイン、
フェイス・ヒル、リアン・ライムス。
彼女たちはアメリカでは大ヒットを飛ばし続けているカントリーの女性歌手。
ラジオをよくお聴きの方なら、FMではしょっちゅうお聴きになっていることでしょう。

『華氏911』(2004)のマイケル・ムーア監督が、オスカーの授賞式で
「ブッシュよ、恥を知れ。ディキシー・チックスをナメんなよ」みたいなコメントをしましたが、
このディキシー・チックスもカントリーのグループです。

『コン・エアー』(1997)のエンディングで流れる名バラードは、
トリーシャ・イヤーウッドの“How Do I Live”。
この曲の作曲者はダイアン・ウォーレン。
エアロスミスやボーイズIIメン、シカゴなどにも曲を提供してます。

同曲を歌ってイヤーウッド以上にヒットさせたのがリアン・ライムス。
作曲家志望の女性がハリウッドでスターダムにのしあがるまでを描いた『コヨーテ・アグリー』(2000)では、
ヒロインが作曲したという設定の主題歌を歌っています。

こんな彼女たちにも崇められる存在なのがドワイト・ヨーカム。
続きます

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しあわせなお酒が飲めるしあわせ

2004年07月20日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
私のお酒はひたすら陽気で、ただでさえよく喋るのに、
お酒が入ると拍車がかかります。
翌日、思い出すと恥ずかしくなることもしばしば。
こんな私につきあってくれるうちのダンナと、
しあわせな食事の場を提供してくださるお店のみなさま、
いつもいつもありがとうございます。m(_ _)m

で、私がこんなにしあわせにお酒を頂いているというのに、
アルコール依存症を扱った作品というのは
当然だけど、その大半がものすごく暗い。

ニコラス・ケイジがオスカーで主演男優賞を受賞した『リービング・ラスベガス』(1995)。
アル中のせいで失業した脚本家が、
死ぬまで飲み続ける決意をしてラスベガスへ向かう。
しかし、そこでひとりの娼婦と出会い、同棲を始める。
酒をやめろとは言わない約束、だけど死んでほしくない。
悲恋も悲恋で、やるせない気持ちに。
原作者自身もアル中で、映画化決定後に自殺。

メグ・ライアンがアル中患者を熱演した『男が女を愛する時』(1994)。
パイロットの夫は留守がち。妻は酒に溺れてゆく。
彼女が主役でアル中を克服しないはずもなく、
それはお約束の展開なのですが、克服して以降の物語のほうがおもしろい。
アル中を克服したからって、夫婦がもとどおりになるわけじゃなく。

『28DAYS』(2000)は、比較的カラリとアル中を描きます。
酒を飲むと何をしでかすかわからないサンドラ・ブロック演じるヒロインが、
姉の結婚式をぶち壊したうえに交通事故を起こす。
更正施設で過ごすことになった彼女の28日間。
これはあまりに悲壮感がなさすぎか。
アル中映画でこんなんでもええのか?とも。
飲み過ぎが招く症状、ブラックアウト(記憶を失う)などを知ることはできます。

イギリス作品の『マイ・ネーム・イズ・ジョー』(1998)は、
アル中で失業中の男性がなんとか立ち直ろうとする。
断酒会の仲間とサッカーチームを結成したりして、さすがスコットランド。
説教くさくなくて、でも、一生懸命生きる姿が描かれていて、
アル中映画ではこれがいちばん好きかも。
主演のピーター・ミュランは『マグダレンの祈り』(2002)の監督でもあり、
邦画の『この世の外へ クラブ進駐軍』(2004)には軍曹役で出演。
しかし、軍曹役よりもアル中男が似合ってる。

お酒は楽しく飲みましょう。
今日もご機嫌。(^O^)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする