夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『フロスト×ニクソン』

2009年08月31日 | 映画(は行)
『フロスト×ニクソン』(原題:Frost/Nixon)
監督:ロン・ハワード
出演:フランク・ランジェラ,マイケル・シーン,ケヴィン・ベーコン,
   レベッカ・ホール,マシュー・マクファディン他

選挙が終わったところなので、こんな映画で。
開票速報そっちのけで見入ってしまうほど面白いです。
と言っても、実際に開票速報そっちのけで生観戦したのは
甲子園の阪神vs巨人ですけれど。

リチャード・ニクソンといえば、
第二次世界大戦後の史上最低支持率を記録し、
1974年に任期途中で辞任した唯一の米国大統領。
辞任の原因となったウォーター事件について、
3年間ひたすら沈黙を守り続けるニクソンに目を付けたのが、
英国の人気TV司会者デビッド・フロスト。

全米進出の機会を図っていたフロストは、
信頼のおけるプロデューサーのバートに、
ニクソンへの単独インタビューを相談。
資金が集まらなければ自腹を切るのも覚悟で
高額なギャラを提示して出演交渉に挑む。

ニクソンのブレーンは、フロストをチョロい相手だと値踏みする。
ウォーターゲート事件の真相をいくら追及しようとしても、
バラエティ番組の司会者にニクソンの本音を引き出せるわけがない。
ニクソンのイメージ挽回に利用できるだろうと判断し、
計4回に渡るインタビューを承諾する。

さて、フロストは番組の買い取り先を探すが、
米国のどのネットワークも鼻で笑う。
今までどんな相手にも口を割らなかったニクソン。
フロストにそのニクソンの相手は絶対に務まらない。
失敗が見えている番組は買えないと。

そこで、フロストとバートは自主制作に踏み切る。
インタビューの切り口を考え抜くために、
ノンフィクション作家のレストンとジャーナリストのゼルニックを引き入れ、
全財産をかけたフロストの企画が始動する。

自分は罪を犯した、国民に申し訳ないことをした。
国中が注目するのは、ニクソンのその言葉です。
番組の成功は、それを引き出せるかどうかにかかっています。

番組の企画段階のフロストは自信満々に見えますが、
収録が始まると、たぬき親父に押されまくりで焦燥の色がありあり。
両者のブレーンの動きも興味深く、
非常にスリリングなトークバトルを見ることができます。
当時の映像が見られるなら見たいですねぇ。

靴のエピソードが秀逸。
残念ながらこの部分はフィクションだそうですが、
もしもニクソンがあの靴を履くぞと言える人だったら、
状況は変わっていたのかなと思ったりして。

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『バンコック・デンジャラス』

2009年08月28日 | 映画(は行)
『バンコック・デンジャラス』(原題:Bangkok Dangerous)
監督:オキサイド・パン,ダニー・パン
出演:ニコラス・ケイジ,シャクリット・ヤムナーム,チャーリー・ヤン他

前述の大林監督作品(これ)でほとほと疲れたので、
頭カラッポで観られる娯楽映画をついつい選択。

香港で生まれ育ち、タイに移り住んだパン兄弟によるセルフリメイク。
オリジナルの『レイン』(2000)は未見ですので、
いずれ観てみようと思います。

一匹狼の殺し屋、ジョー。暗殺成功率は実に100%。
彼が自分に課した掟は4つ。
「質問するな、堅気の人間と関わるな、跡を残すな、引き際を知れ」。
暗殺を遂行するために使う便利屋の質問にはいっさい答えない。
素性を知られることがないよう、人との関わりを持たない。
情報は頭の中に叩き込み、メモすらその場で燃やす。
殺しに迷いが生じた場合は手を引く。

プラハでの仕事を片付けたジョーは、
これを最後にしようと、タイのバンコクへと向かう。
ここで請け負う仕事は4件。
終われば、大金を手に引退するつもりだ。

現地で便利屋にふさわしい人材を探していると、
観光客にバッタモンを売りつけようとしている、
いかにもチャランポランな若い男、コンを見かける。
ある程度の英語が話せて金にうるさいコンは、便利屋にうってつけ。
早速、日当の交渉をして雇うことに。

1件目の仕事で軽い怪我を負ったジョーは、
近所の薬局の店員で、耳の不自由なフォンに一目惚れ。
堅気の人間とは関わらないはずが、彼女を食事に誘ってしまう。
どんどん彼女に惹かれていくジョー。

一方、チャランポランでありながら、金が欲しいがために、
悪態をつきながらもジョーの言いつけをきっちり守ろうとするコンは、
ジョーが凄腕の殺し屋と知ると、弟子入りを志願する。
最初は相手にしなかったジョーだが、いつしかコンに情が移る。

ちょっとした気持ちの変化から破られた掟。
そこから計算が狂い始めるのだが……。

レビューなどを見ていると酷評が多いですが、私は嫌いになれません。
守るものがない人は、情に動かされることがなく、強い。
だけど、愛する人や可愛い弟分が現れて、ちがう強さを見せつけてくれます。
予告編どおりの「衝撃のラストに心を撃たれる」とまでは行きませんが、
それでもあのラストは、もともと「男の友情もの」に弱い私は涙目に。

ほ~っと思ったのはタイの迷信。
象の鼻は上を向いてないと縁起が悪いとか。
なるほど、象さんの置物も絵も上向きばっかりですな。

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『その日のまえに』

2009年08月25日 | 映画(さ行)
『その日のまえに』
監督:大林宣彦
出演:南原清隆,永作博美,筧利夫,今井雅之,勝野雅奈恵,
   原田夏希,柴田理恵,風間杜夫,宝生舞,寺島咲他

そろそろレンタル新作落ちする頃。

正直に言って、私は大林監督の作品が苦手です。
本作もどうも乗り気になれず、避けていました。
だけど、もしかしたら克服できるかもしれないと思い、
意を決して借りました。やっぱり苦手でした。(T_T)

そして、あまりに苦手すぎて、書かずにいられなくなりました。
もしかしたら、今年が終わる頃、
いちばん印象に残っている作品になるかもしれません。

原作は、ベストセラー作家、重松清の同名連作短編小説。
同じく重松清の小説が原作の『疾走』(2005)は好きだったのですが、
これは大好きなSABU監督の作品ですから、当然と言うべきか。
前置きが長くてすみません。

人気イラストレーターの日野原健大。
売れない頃から彼を支えてきた妻のとし子と2人の息子に囲まれ、
幸せな日々を送っている。

しかし、ある日、とし子が余命わずかとの宣告を受ける。
とし子のたっての希望で、新婚当時に暮らしていた海辺の町を訪れることに。
駅前はすっかり様変わりしていたが、商店街を通り抜け、
かつて住んでいたアパートへ向かううち、懐かしさがこみ上げてくる。

物語は、この海辺の町の昔と今を織り交ぜて描かれます。
健大ととし子がすれちがう町の人びと。
面識のなかった彼らがいま出会い、繋がってゆく群像劇です。

群像劇、大好きなのに。
どうしてこんなにも苦手なのか、誰かに教えてほしいぐらい。
何だか作り物感が強くて、入り込めない?
でも、映画なんて、どれも作り物なわけで。
三谷幸喜は好きで、大林宣彦は苦手だなんて、
ホントに大林監督ファンに怒られそう。ごめんなさい。
観始めてから辛くて辛くて、なんとか意地で最後まで。
とし子が死を迎えるシーンだけは、控えめで好感が持てました。

私の周りになぜか多い、大林監督の男性ファン。
でも、その気持ちはわからなくもないんです。
青空、夕焼け、海の匂い、駅のホーム、商店街。まさに郷愁。
誰もが素直で温かい。これを好きなほうが健全な気が。

こんなに苦手だった本作ですが、原作にとても興味を惹かれました。
重松清を一気に4冊買ってしまったので、これから読みます。
それと、宮沢賢治の詩から成るクラムボンの歌。
「あめゆじゅ とてちて けんじゃ」が頭から離れないんです。
助けて~。

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愛すべきアニメ、『ウサビッチ』。

2009年08月21日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
『ウサビッチ』。
ご存じの方は、今さら何言うとんじゃっちゅう感じかと思いますが、
弟から教えてもらって以来、ハマっている短編アニメです。

2006年にMTVにてシーズン1が始まり、シーズン3も放映中。
シーズン1~3まで、それぞれ13話で成り立ち、
先月、シーズン3のDVDが発売されました。
現在、シーズン3の途中まではYouTubeなどでも視聴可能です。

原作・脚本・監督は1970年代生まれの日本人なのに、
なぜか舞台は1961年のソビエト連邦時代のロシア。

シーズン1は、刑務所の一室にて。
囚人服を着たウサギが2人。
1人は、明るくて気の良い常識人、プーチン。
常識人がなぜ収監されているのかという疑問を抱きますが、
厳しい社会主義体制のもと、二日酔いのために、
1日仕事を欠勤してしまったからという設定。
もう1人は、寡黙で非情なマフィアの元ボス、キレネンコ。
対照的な2人が同室で過ごす日常。

ここに、トイレに棲息していたカエル、レニングラード、
刑務所作業中に現れたオカマのヒヨコ、コマネチが加わります。
看守のカンシュコフなどの嫌がらせに遭い、
プーチンはドキドキはらはらするも、
静かにぶち切れるキレネンコが毎回圧勝。

シーズン1の最終話、明日の釈放を心待ちにするプーチン。
ところが、シューズコレクターのキレネンコが、
どうしても欲しいスニーカーの発売日が明日であることに気づいて脱獄。
プーチンも道連れにされます。
もちろん、レニングラードとコマネチも一緒。

シーズン2は、脱獄した2人が警官に追いかけられながら、
ショッピングモールへ向かうまでの道中。
またしてもドキドキはらはらしながら、
図らずも鋭いドライビングテクニックを見せるプーチン。
笑いの渦に放り込まれます。

シーズン3は、ようやくたどり着いたショッピングモール。
しかし、目の前にそびえる13階建てのデパートはマフィアの巣窟で、
大金を持ってスニーカーを買いに来たキレネンコは命を狙われます。
またもや巻き添えを喰らうプーチン。

こんなドタバタ、シチュエーションコメディです。
たまに聞こえる台詞は本物のロシア語(たぶん)。
ロシア語監修者もちゃんとクレジットされています。

音楽が耳について離れません。
ふと気づきましたが、雨の日に車を運転中、ワイパーを動かすと、
その音がプーチンが踊るコサックダンスの曲に似ていたりして。

1シーズン、約20分。
サクッと観られますので、未見の方はぜひ。

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『ラースと、その彼女』

2009年08月17日 | 映画(ら行)
『ラースと、その彼女』(原題:Lars and the Real Girl)
監督:クレイグ・ギレスピー
出演:ライアン・ゴズリング,エミリー・モーティマー,ポール・シュナイダー,
   ケリ・ガーナー,パトリシア・クラークソン他

「僕の彼女です」と言って真顔で紹介されたのが
リアルドール(=ダッチワイフ)だったとしたら?
怪しげな設定ですが、エロいシーンは無し。
優しさのいっぱい詰まったドラマです。

小さな田舎町で暮らすラースは、控えめで純朴な青年。
町の誰もから愛されているが、極端にシャイで人づきあいが苦手。
同じ敷地内に住むラースの兄夫婦は、
独り者のラースを心配してたびたび食事に招待するが、いつも避けられる。
会社では新入りの可愛い女性マーゴがラースに好意を持っているようだが、
彼はマーゴとろくに話そうとしない。

ある日、ラースが兄夫婦に彼女を紹介したいと言う。
大喜びの兄夫婦のもとへラースが連れてきたのは、
ビアンカという名前の等身大のリアルドール。
呆然とする兄夫婦に、彼女は車椅子で各地を回る宣教師だと説明するラース。
独身男性の自分と一つ屋根の下というわけにはいかないから、
しばらく彼女を泊めてほしいと。

兄夫婦が信頼できる女医ダグマーに相談すると、
「ビアンカが現れたのには必ず理由がある。
彼と話を合わせるように」とのアドバイス。
さて、事のなりゆきはいかに。

小さな町ならではの展開がとてもいいです。
兄夫婦がまずどうしたかと言えば、町の住人に包み隠さず話し、
全員にラースの妄想につきあうように依頼します。
正気の沙汰ではないと怒る老人もいますが、
猫に服を着せる人もいれば、UFOに夢中になる人もいる、
ラースの場合はその対象が人形だというだけ、
何がいけないのと反論する婦人もいて、結局みんながつきあうことに。
ビアンカを人として扱う姿が笑いを誘うと同時に胸を打ちます。

また、偶然ビアンカの存在を知ったマーゴは、
片想いの相手が奇行に走っているにもかかわらず、
会社の人をも巻き込み、懸命にラースと話を合わせます。
そんな彼女のテディベアにラースが蘇生を施すシーンは涙ポロリ。
とにかく女性陣の肝の座りっぷりはお見事。

ビアンカが現れた理由ははっきりとは語られません。
しかし、ラースが母親の死に責任を感じていることが読み取れます。
その「うっすらわかる」加減がこれまたいい。

ゆっくりと、時間をかければ心がほぐれる。
本当は、こんな真夏より冬にオススメ。
温もりがほしいときに。

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