夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』

2016年08月31日 | 映画(か行)
『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(原題:Les Heritiers)
監督:マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール
出演:アリアンヌ・アスカリッド,アハメッド・ドゥラメ他

平日晩の同窓会前にテアトル梅田で2本ハシゴの2本目。
『ストリート・オーケストラ』の後に。

ハシゴの1本目はブラジルの音楽教師と生徒たちの話でした。
2本目の本作はフランスの歴史教師と生徒たちの話。
国は異なれども教師と生徒たちの関係は同じ。
こちらも1本目同様、生徒たちはものすごい落ちこぼれで、やはり実話が基。

パリ郊外、貧困層が暮らす公立高校レオン・ブルム。
教師歴20年、ベテランの女性教師アンヌ・ゲゲンが担任となったのは、
さまざまな人種が集められた落ちこぼれクラス。
「教えることが大好き。退屈な授業をするつもりはない」と言い切るアンヌだが、
生徒たちにはまるでやる気が見られない。

そこでアンヌが生徒たちに提案したのは、全国歴史コンクールへの参加。
テーマは「子どもたちと若者たち、ナチス強制収容所での日々」。
勉強嫌いの自分たちがコンクールに参加するなんて無茶だと生徒たちは反発。
しかもアウシュヴィッツ、そんな重いテーマだなんて絶対に無理。

参加を強制せず、希望者だけということにしたら、
放課後に集合したのは優等生の男女1人ずつのみ。
がっかりしつつもとりあえず始めようとしたとき、大勢の生徒が姿を見せる。
ちょっと面白そうだからやってみようかと好奇心を持ったのだ。

こうしてアンヌと生徒たちは調査を開始。
頼れるベテラン司書の協力も得て、まずは資料に当たるが、
人種も宗教も異なる生徒たちは、ことあるごとに衝突。
落ちこぼれクラスにコンクールへ参加させるなど恥さらしだと校長は吐き捨てる。

ところが、ある日を境に生徒たちの様子が変化する。
アンヌが連れてきた老人レオン・ズィゲルの話を聞いてからだ。
レオンは15歳で強制収容所に入れられ、生き延びた者のうちのひとり。
収容所での強烈な体験談を聞いた生徒たちから諍いが消えて……。

実話は強し。
良い作品であることはまちがいありませんが、不思議に思う点はいろいろ。

たとえば、虐殺と戦争の殺戮はちがうとアンナが断言するくだり。
アンヌは虐殺は民族の絶滅を狙ったもので、戦争における殺戮とは異質のものとし、
このくだりはまるで戦争では人殺しも仕方ないと言っているように聞こえます。
別のものとして捉える視点はありだとしても、納得はできません。

また、学校自体に宗教に対する差別があり、
イスラム教徒のスカーフ着用や十字架のペンダント着用は禁止されています。
しかし卒業式後に証書を取りにきた生徒とその親がスカーフ着用で登校したところ、
スカーフを取らなければ絶対に卒業証書は渡さないと追い返すのです。
宗教の話について私は無知ゆえ軽々しいことは言えませんが、
臨機応変とか融通を利かすという態度は学校には望めないのだなと思いました。

教師も学校もその言葉と態度に絶対の自信を持っているように見え、
フランスの学校ってこんななの?と素朴な疑問を抱きました。はい。

レオン・ズィゲルはご本人が演じていらっしゃいました。
本作公開後にお亡くなりになったそうで、ご冥福をお祈りいたします。

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『ストリート・オーケストラ』

2016年08月30日 | 映画(さ行)
『ストリート・オーケストラ』(原題:Tudo Que Aprendemos Juntos)
監督:セルジオ・マシャード
出演:ラザロ・ハーモス,サンドラ・コルベローニ,カイケ・ジェズース,
   エウジオ・ヴィエイラ,フェルナンダ・フレイタス他

平日の晩、日曜日とは別だけどメンバーはほぼ同じの同窓会(笑)。
今月は何かと予定ありで映画をあまり観られなかったから、
あと数本は観ておきたいと午後休を取りました。
19:00集合の同窓会前にテアトル梅田で2本ハシゴ。

監督は、『セントラル・ステーション』(1998)で助監督を務めたセルジオ・マシャード。
1990年代に実際にあった話を基にした作品で、
「下手をすると善人ばかりの教育映画的な美談に終わってしまう」と、
監督をまかされたときはビビっていたと彼は語っています。

ブラジル・サンパウロのスラム街。
かつては神童と呼ばれたヴァイオリニストのラエルチは、
国が誇るサンパウロ交響楽団の最終選考に残るが、
緊張のあまり手が震えて譜面をめくることすらできずに終わる。
失意から四重奏を組むメンバーに八つ当たり。
職に就けなくては家賃も払えず、困り果てる。

そんなとき、スラム街の学校で音楽教師を募集していることを知る。
弦楽器の演奏を教えるのが課せられた仕事だが、
いままでの教師で続いた者はおらず、皆すぐに辞めたらしい。
生徒たちは楽器の持ち方も座り方も知らず、楽譜は当然読めない。
集中力のかけらもない、喧嘩してばかりの生徒たちにどう教えろというのか。

前任者同様、ラエルチも音(ね)を上げかけるが、
校長から報酬の増額と屋内(それまでは屋外だった)の教室の使用許可を言い渡され、
ついつい続行することにしてしまうのだが……。

貧しく危険な街に暮らす少年少女たちは、毎日を生き延びることに精一杯。
金を稼ぐためにカード詐欺の片棒を担いだり、
アル中の父親の面倒を見たり、家族の屋台を手伝ったり。
そんな子どもたちも音楽に興味がないわけではありません。
彼らの中で断トツの才能を持つ優等生少年サムエルが札付きの不良VRと親友で、
ふたりがヴァイオリンとウクレレでアレンジして弾くクラシックがめちゃくちゃ楽しい。

荒んだ気持ちが生徒たちと接するうちに解きほどかれ、
少しずつ教師と生徒たちの間に信頼関係が生まれる。
こんなにいきなり上達はせんやろというツッコミはさておき、
生徒たちをなんとか守ろうとする女校長にもエールを送りたくなります。

もっと感動的なラストシーンにできたでしょうに、わりとあっさり。
ハリウッド作品とのちがいに苦笑、しかしここを盛り上げて終われば、
監督が懸念したとおり、教育映画的な美談に終わっていたと思います。

ブラジル作品には脳天を貫かれたような衝撃を受けることが多いですが、
本作はそれとはちょっと異なる、適度な衝撃と穏やかさを持ちながらも、
スラムの暮らしについて考えさせられる作品です。

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『ゴーストバスターズ』

2016年08月28日 | 映画(か行)
『ゴーストバスターズ』(原題:Ghostbusters)
監督:ポール・フェイグ
出演:メリッサ・マッカーシー,クリステン・ウィグ,ケイト・マッキノン,レスリー・ジョーンズ,
   チャールズ・ダンス,マイケル・ケネス・ウィリアムズ,クリス・ヘムズワース他

夕方からの同窓会前に2本ハシゴの2本目。
高校野球決勝戦とかぶった日に『青空エール』を観て泣いたあと、
大阪ステーションシティシネマへ移動。

ノースゲートビル11階にあるこの劇場、エレベーターは3基あり、
左端の1基は車椅子やベビーカーの客優先となっています。
空いていれば一般客ももちろん乗ることができ、休日はエレベーターガールが常駐。
このところ、コンビニ等あちこちで日本人以外のスタッフを見かけますが、
ついにはエレベーターガールまで中国人女性。
これがまた可愛いうえに、日本語・中国語・英語堪能。グローバルだわ。

1984年の世界的大ヒット作『ゴーストバスターズ』リブート作品。
時代を反映してか、主人公は女性チーム。
個性豊かな女優陣で、楽しいのなんのって。
デブ女性の存在価値を見せつけてくれるようなメリッサ・マッカーシー
『オデッセイ』ではキレっきれのNASA広報統括責任者役だったクリステン・ウィグ。
“サタデー・ナイト・ライブ”で活躍中、カミングアウト済みのケイト・マッキノン。
同じく“サタデー・ナイト・ライブ”の黒人女性枠オーディションを受け、
役者としてではなく脚本家として採用されたというレスリー・ジョーンズ。
こんな“ゴーストバスターズ”の面々のなかで黒一点はクリス・ヘムズワース

さて、ニューヨーク。
名門大学で教鞭を執る物理学の堅物教授エリンには、秘密にしておきたい過去がある。
それは若かりし頃に執筆した心霊現象に関する本の存在。
親友だったアビーと共同で書いた力作だが、
幽霊を信じているということを公言したら、職を失うに決まっている。
アビーとは音信を断ち、自分の経歴からその本は抹消したはずなのに、
見知らぬ紳士が幽霊退治をしてほしいと言ってエリンを訪ねてくる。
どうやらエリンに無断でアビーが販売しているらしい。

アビーは変人エンジニアのジリアンと組み、いまも心霊現象の研究を続けていた。
苦情を言いに行ったつもりが、逆に散々な言われようのうえに、時すでに遅し。
嫌な予感は的中して、エリンは大学を追われることに。
ちょうどその頃、街では心霊現象が頻発。
エリンも腹を括ってアビーらと共に研究所を立ち上げると調査を開始する。

力仕事と電話番のための面接に応募してきたケヴィンは凄いボンクラ。
しかし見た目はいいから観賞用にということで採用。
幽霊を見たと連絡してきた地下鉄職員パティが、
ニューヨークの街を知り尽くしていることからチームに加わり、
本格的な幽霊退治に乗り出すのだが……。

いちばん笑ったのはヘヴィメタの会場。
「オジー最高!」とかいう前振りはありましたが、まさか本人が登場するとは思わず。
一瞬だけ顔を見せたオジー・オズボーンに大笑い。
けど、ここであんなに笑ったのは、この日の客で私だけかも。(^^;

1984年のオリジナル版のキャストがあちこちにカメオ出演。
ビル・マーレイはゴーストバスターズを詐欺師扱いする科学者の権威。
ダン・エイクロイドはタクシーの運転手。
アーニー・ハドソンはパティの叔父さん役。
電話番役だったアニー・ポッツはホテルのフロント係。
シガニー・ウィーヴァーも最後の最後に姿を見せてくれます。
一昨年他界したハロルド・ライミスへはエンドロールの最後に献辞が。

映画ネタも多く、特にパトリック・スウェイジのネタには大ウケ。
『ゴースト』(1990)と『ロードハウス/孤独の街』(1989)と『ハートブルー』(1991)が
こんがらがって話に登場したり、
アンディ・ガルシア演じるニューヨーク市長に対して
「『ジョーズ』(1975)の市長みたいにならないで」という台詞が飛んだり、
『食べて、祈って、恋をして』(2010)に例えた台詞なども。

いろいろ仕込まれたネタがわかれば10倍楽しいけれど、
知らなくてもじゅうぶんに楽しめるはず。
しかし、格好いい役のみならず、こんなバカ男役もできるクリス・ヘムズワース。
エンドロールまでワラかしてくれちゃいます。
ますますヘムズワース兄弟のなかでは彼だけに需要が集中することでしょう。

オリジナル版ももう1回、観直そうっと。

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『青空エール』

2016年08月26日 | 映画(あ行)
『青空エール』
監督:三木孝浩
出演:土屋太鳳,竹内涼真,葉山奨之,堀井新太,小島藤子,
   松井愛莉,平祐奈,山田裕貴,志田未来,上野樹里他

8月21日に決勝戦を迎えた第98回全国高校野球選手権
時期的には夏の高校野球に合わせた公開だったとはいえ、
南北海道代表の北海高校が決勝まで残るなんて、いったい誰が予想していたでしょう。
その決勝戦の日、夕方からの同窓会前に2本ハシゴ。
1本目に選んだ本作をTOHOシネマズ梅田にて。

河原和音の大ヒット少女コミックが原作なのだそうです。
私にとって、甲子園が映し出される作品はほとんど反則(笑)。
甲子園球場と青空を見ただけで泣いてしまう。
そこへ来てこれはさらに吹奏楽の話まで混じっているとなれば、
「音楽×スポーツ×映画」で、最初キュンキュン&ボロ泣き。

うつむいてばかりいる内気な小野つばさ(土屋太鳳)は、
吹奏楽の名門・白翔(しらと)高校に入学。
野球の強豪チームでもある白翔を球場で応援するのが夢。

入学式の日、同級生で野球部の捕手・山田大介(竹内涼真)と言葉を交わし、
大介は甲子園へ行くこと、つばさはスタンドで応援することを約束。
おそるおそる吹奏楽部を覗きに行ったつばさは、
顧問を務める教師・杉村容子(上野樹里)の厳しい指導による、
甘さのかけらもない吹奏楽部の雰囲気にひるんだものの、
大介との約束を胸に入部を果たし、トランペットを希望する。

まるっきり初心者のつばさに対して冷ややかな態度を取るもの多数。
上級生の森優花(志田未来)は根気よくつばさにつきあってくれるが、
新入生ながらすでに正メンバーの座を獲得している水島亜希(葉山奨之)は、
つばさに不快感をあらわにし、辞めてほしいとまで言う。

それでもつばさはグラウンドで汗を流す大介を見ては奮起し、
大介は大介でつばさのトランペットの音を聞いては励まされる。
こうして互いの夢へ向かって懸命に練習に打ち込むのだが……。

いやもう爽やか。
大介役の竹内涼真くん、どこかで見たことがると思ったら、
『仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武MOVIE大戦フルスロットル』(2014)でした。
もはやライダーではない仮面ライダー役だった子ですね(笑)。
大介の先輩役の山田裕貴くんは“HiGH&LOW”の鬼邪高番長ですな。
ちょっとずつ知った顔がいるのもなんか楽しい。

脇役の高校生たち、たとえば大介の親友でお調子者の投手・城戸保志(堀井新太)や、
つばさと同じ中学出身で最初に友だちになる脇田陽万里(松井愛莉)など、
ビジュアル的にもカワイイ子ばっかり。そら見ていて楽しいでしょう。
こういう話に必ず出てくるイジワル女子部員や、
大介に想いを寄せるマネージャーとかもいて、王道中の王道。
目新しいことなんかひとつもないのに泣かされてしまうのは何故(笑)。

いいよなぁ、青春。

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『ロング・トレイル!』

2016年08月24日 | 映画(ら行)
『ロング・トレイル!』(原題:A Walk in the Woods)
監督:ケン・クワピス
出演:ロバート・レッドフォード,ニック・ノルティ,エマ・トンプソン,
   クリステン・シャール,メアリー・スティーンバージェン他

全館停電の日に梅田で3本ハシゴの3本目。
TOHOシネマズ梅田で『ジャングル・ブック』『ペット』を観たあと、
まだお盆休み中の人で溢れるうめだ阪急でちょっとだけ買い物。
グランフロント大阪で同窓会会場を下見して、シネ・リーブル梅田へ移動。
相変わらずあの地下道遠いよ、暑いよ。

アイオワ州デイモン出身のビル・ブライソン。
私は名前すら存じ上げなかったのですが、人気ノンフィクション作家とのこと。
今年65歳になる彼は、1970年代に大学を中退してヨーロッパを旅行。
いつのまにかイギリスに住み着いて、現地の看護師と結婚。
アメリカに戻って大学の学位を得たあとは、ふたたびイギリスに20年滞在。
紀行作家およびジャーナリストとしてユーモア溢れる著作で人気を博し、
有名紙の編集などにも携わったのちに報道分野から引退。
1995年にニューハンプシャー州ハノーバーへ戻った頃のお話らしいです。

妻子や孫とともにイギリスからアメリカへ戻ってきたビルは、セミリタイア状態。
穏やかな毎日だといえば聞こえはいいが、なんだか物足りない。
妻から積極的に人と関わるように言われるが、それは嫌。
知人の葬儀に参列してお悔やみを言っただけでもドッと疲れてしまう。

その葬儀から帰宅後、散歩に出かけたビルは、家の近くを通る“アパラチアン・トレイル”に気づく。
アパラチアン・トレイルは北米有数の自然歩道で、全長約3500km。
順調に進んだとしても半年はかかる道程だが、踏破してみたい。
長らく歩いていないというのに突然そんなことを言い出す夫に妻は困惑。
途中で怪我をしたり命を落としたりする事故もよく起きているからだ。
しかし反対したところで夫が言うことを聞くはずもない。
折衷案として、単独では駄目、同行者を確保できたら行ってもいいと妻は言う。

思いつく友人知人すべてに連絡を取ってみたが、みんな呆れている様子。
同行者は誰もいないと思われた頃、40年音信不通だった悪友スティーヴン・カッツから電話が。
今回の件を又聞きしたらしいスティーヴンは、ぜひ同行したいと申し出る。
長く飲酒でトラブルを抱えるスティーヴンのことを妻はよく思っておらず、
ビルにとっても良き相棒とは言いがたいが、背に腹は代えられない。

スティーヴンが到着する日、夫婦で迎えに行ってみて呆然。
赤ら顔にでっぷりと出た腹、そのうえ足に古傷があるスティーヴン。
先行き不安ながら、老境に入ったオッサンふたりはロングトレイルへと踏み出すのだが……。

どこかの記事で紹介されたのか、満席でした。
主人公のオッサンたちと似た年の頃合いの客多数。
身につまされて笑ってしまう箇所満載です。

美しき青年の風貌は何処へ、もはや皺だらけのロバート・レッドフォード
『ニュースの真相』の彼もよかったけれど、こっちのほうが好きかな。
ニック・ノルティの出演作は興行成績が上がらないと言われていますが、やはりいい役者。
演技とは思えない赤ら顔に、倒れやしないかと心配。

こんな老後を送れたら幸せかもしれません。
踏破するだけがすべてじゃない。
一緒に歩く人がいてくれたら。

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