夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『サンセット・サンライズ』

2025年01月31日 | 映画(さ行)
『サンセット・サンライズ』
監督:岸善幸
出演:菅田将暉,井上真央,竹原ピストル,三宅健,山本浩司,好井まさお,藤間爽子,茅島みずき,白川和子,
   ビートきよし,半海一晃,宮崎吐夢,少路勇介,松尾貴史,池脇千鶴,小日向文世,中村雅俊他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて、20:45からのレイトショー。
マジで驚いたのですが、このときに続き、早くも今年2回目の“おひとりさま”
前回はキムタクですよ、今回は菅田将暉ですよ!? なんで客が私ひとりなの。
 
楡周平の同名小説を『前科者』(2021)や『正欲』(2023)の岸善幸監督が映画化。
脚本はクドカン、宮藤官九郎です。面白くないわけがない。
 
東京の大企業“シンバル”の社員・西尾晋作(菅田将暉)は大の海釣り好き。
新型コロナウイルスの流行をきっかけにリモートワークが導入されたのをきっかけに、海沿いの町への移住を考える。
ネットで物色していると、三陸の宇田濱(架空の町で、ロケ地は宮城県気仙沼市)に破格の物件を発見。
 
大家は同町役場の職員・関野百香(井上真央)。訳あって4LDKの一軒家をほぼ新築のまま置いていた。
本人は父親で漁師の章男(中村雅俊)と近所の実家で暮らしているが、
同町の空き家が増え続けて30軒に達したことから、過疎化を懸念する役場が対策課を設置し、
百香がその担当に任命されたため、担当者が空き家を所有していてはまずかろうと自宅を登録したのだった。
 
登録後すぐに連絡してきたのが晋作だったというわけだが、自宅を賃貸に出すことに決心がつかない百香。
内見希望日にやはり断ろうと自宅に向かったところ、鍵をかけていなかったせいですでに晋作が上がり込んでいるではないか。
 
ただでさえ小さな村のこと。噂はすぐに広まるだろう。
コロナであらゆる施設が閉鎖されたりイベントが中止されたりしているさなか、
空き家対策のためとはいえ、東京から来た人間を入居させたとなると非難を浴びるにちがいない。
百香は晋作に2週間この家から決して出ないようにと言い残し、その場を去る。
 
とはいうものの、海を目の前にしてじっとしていられない晋作は、
サングラスにマスクにキャップといういでたちで釣りに出かける。
百香の家に夜中も電気が灯っている、怪しい男がスーパーに出入りしているとやはりすぐに噂になって……。
 
東日本大震災で津波に襲われた町。
震災直後はいろんな人が復興を手伝いに来てくれたけれど、今はそんな人も減っている。
晋作にとっては過疎化も空き家も、そして震災だってどうでもいい。
海釣りが好きで、この町に憧れて、住みたいと思ってやってきただけ。この町に生まれたかったとすら思う。
 
この町の人たちもこの町が大好きで、よそ者にわかってたまるかと思いつつも、
よそ者と話すときはすぐに自分たちの町を卑下してしまう。
その通りに彼らの町を見下す都会人がいるのも事実。
 
会話の中に双方のいろんな思いが感じられて面白く、温かい気持ちになりました。
上にも下にも見ることなく、でも気遣いつつ話すのは難しい。
だからこそ、自分がいちばん。自分がいちばんいいようにすればいいんだとそれぞれに考えた結果、
最後に3人が選択してたどり着いた結果は最高だと思いました。
 
前述の『室町無頼』と本作と、どちらをこの日の〆に持ってくるか悩んだけれど、
こっちを後に観ることにしてよかった。幸せな帰り道。
……なのにたまに思い出してしまう池脇千鶴(百香の同僚役)のもの凄いオバハン化。怖すぎる。(^^;

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『室町無頼』

2025年01月31日 | 映画(ま行)
『室町無頼』
監督:入江悠
出演:大泉洋,長尾謙杜,松本若菜,遠藤雄弥,前野朋哉,阿見201,般若,武田梨奈,水澤紳吾,岩永丞威,吉本実憂,
   ドンペイ,川床明日香,稲荷卓央,芹澤興人,中村蒼,矢島健一,三宅弘城,柄本明,北村一輝,堤真一他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
 
原作の垣根涼介には大藪春彦賞受賞作の『ワイルド・ソウル』のイメージしかなかったので、
へ〜、この人、時代小説も書いていたんだとこのたび知って驚く。
ウィキを読むと、作家デビューしたら10年後に時代小説を書くと決めていたとあります。
サラリーマンとして働くかたわらの作家業だったから、時代小説を書くため資料集めや言葉遣いを学ぶ時間が当初は足りず、
作家として専業で食べて行けるようになったら書こうと考えていたのだと。
 
監督は『SR サイタマノラッパー』(2009)で話題になってから15年以上経ち、
今ではあの頃が懐かしくなるほどメジャーな作品を撮りつづける入江悠
しかし、娯楽大作ばかりかと思いきや、『あんのこと』(2023)みたいな作品もお撮りになるから面白い。
 
今から約560年前、室町時代中期が舞台。
歴史の記録にはたった1行というのか1箇所だけ、「大将」として名前が登場する人物が主人公。
 
大飢饉と疫病のせいで民衆が次々と死んでゆくなか、素浪人・蓮田兵衛(大泉洋)は野垂れ死しかけていた若者・才蔵(長尾謙杜)を拾う。
もともと才蔵は武家に育ったが、父親が亡くなってからは食うに困って高利貸しに手を貸していた。
それに耐えられなくなった才蔵が暴れまわっていたところを洛中警護の任に就く骨皮道賢(堤真一)に捕らえられた。
そのような役を幕府から任されていながら、悪党の頭目でもある道賢と兵衛は悪友。
道賢の手下に斬られそうになっていた才蔵を兵衛が買ったというわけだ。
 
武家育ちの才蔵に武術の才能ありと見た兵衛は、自分の師匠である棒術の達人・唐埼の老人(柄本明)に才蔵を託す。
兵衛に一生ついていくと宣言したばかりなのに、突如として正体不明の老人のもとへ放り込まれた才蔵だったが、
逃げ出さずに修行に励むと、1年後には世間にその名が轟くほどの兵法者となる。
 
兵衛と才蔵は再び合流し、悪政に苦しむ民衆たちと共に一揆を企てて……。
 
物の見事に人が死んでゆくわりには音楽が柔らかめゆえ、悲壮感が抑えられています。
敵対する立場でありながらお互いを尊重する兵衛と道賢には俠気を感じるし、多少なりともグッと来るけれど、
はたして大泉洋がピッタリの役だったかを考えると、ちょっと違うような気がしてしまう。
時代劇ではなくて現代の、シリアスすぎずにちょっと笑える作品の彼のほうが私は好きだなぁ。
 
原作は兵衛ではなくて才蔵が主人公に描かれる物語なのですね。
日本版“ベスト・キッド”にするほうがよかったってことはないですか。
それだとパクリだと言われるか。でも面白そうなんですけど。

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『敵』

2025年01月30日 | 映画(た行)
『敵』
監督:吉田大八
出演:長塚京三,瀧内公美,河合優実,黒沢あすか,中島歩,カトウシンスケ,高畑遊,
   二瓶鮫一,高橋洋,唯野未歩子,戸田昌宏,松永大輔,松尾諭,松尾貴史他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
1998年に出版された筒井康隆の同名小説を全編モノクロで映画化したのは吉田大八監督。
結構好きな監督です。彼が映画化に選ぶ作品がわりと好きというのか。
 
77歳になる元大学教授の渡辺儀助(長塚京三)はフランス文学の権威。
20年前に妻の信子(黒沢あすか)に先立たれたが、古い日本家屋に住みつづけ、規則正しい生活を送っている。
それなりの会社に就職して出世した教え子たちの多くが今も彼を慕い、
雑誌にエッセイを連載する話を持ってきてくれたり、遊びにきてくれたり。
劇団を主宰する教え子(松尾諭)は積極的に片付けを手伝ってくれて、庭の井戸掘りにまで精を出す。
 
そんな教え子の中でも鷹司靖子(瀧内公美)には若干の下心がある。
靖子のほうもそれを察知していると見え、なまめかしい仕草を見せられるとついついよからぬことを考える。
また、友人(松尾貴史)に誘われて行くようになったバーには、
オーナーの姪でフランス文学を学んでいる大学生だという菅井歩美(河合優実)がいて、なんだか色っぽい。
 
預貯金があと何年持つかを冷静に計算し、終末に備える儀助だったが、最近頻繁に届く迷惑メールが気になる。
URLをクリックせずにゴミ箱に捨ててはいるものの、「敵がやってくる」という文言が頭から離れない。
ある日、好奇心に負けてついにクリックしてしまうと……。
 
不思議な感覚で面白い作品でした。
品行方正、誰からも尊敬される老人のはずが、女性に対してはそれなりに破廉恥な感情を持っています。
隠しているつもりがきっちり見抜かれていて貶められる、騙される。
 
途中からは現実なのか彼の妄想なのかが観ているこちらにもわからなくなる。
認知症の兆候としか思えませんが、時折本当にそのことが起こっていたりもする。境目がわからない恐怖。
 
まともな間の彼が作る日々の料理がとても美味しそうで。
白米を炊き、網で魚を焼く。朝食はハムエッグのこともあります。コーヒーは豆からきちんと挽く。
蕎麦を湯がいて刻んだ葱と共に。鶏肉と太い葱を買ってきて焼き鳥串を作る。レバーまであります。
白菜のキムチをどっさり買って韓国冷麺に添えたら体調を崩して病院に行くはめに。
医者からは、若いときと同じように激辛なものを食べちゃ駄目ですよとたしなめられる。
 
平穏な生活って何でしょう。
彼の最期が幸せだったかどうかは私たちにはわからない。
こんな恐ろしい夢を見る前に死にたいと思うのでした。

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『#彼女が死んだ』

2025年01月29日 | 映画(か行)
『#彼女が死んだ』(英題:Following)
監督:キム・セフィ
出演:ピョン・ヨハン,シン・ヘソン,イ・エル,パク・イェニ,ユン・ビョンヒ,パク・ミョンフン他
 
前述の『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』の次に、同じくキノシネマ心斎橋にて。
よその劇場ではなかなかかからない韓国作品を上映してくれるのは、前身のシネマート心斎橋と同じで嬉しい。
新調された座席は少し後傾していて以前よりも観やすくなっています。
 
監督は本作が長編デビューとなるキム・セフィ。
主演のピョン・ヨハンは『太陽は動かない』(2020)にも出演していた俳優だけど、
TVドラマで主に活躍している人らしく、私の頭の中には残念ながら記憶なし。
 
韓国には不動産公認仲介士という国家資格があるのですね。
「韓国には」と書きましたが、不動産業について何も知らない私は、類似資格が日本にもあるのかどうか知りません。
ただ、聞いたことのない資格の名前だったので、韓国特有のものなのかなと思っただけです。
とにかく、この資格がなければ不動産取引の仲介ができないらしい。
 
本作を観るかぎりでどんなことをする資格なのかを推察すると、
たとえば自分が所有している物件を誰かに貸したいとき、この不動産公認仲介士なる者を通して貸します。
↑これだけが理解に至ったことですが、鑑賞後にネットで調べたら、この仲介手数料がかなり高額で、
公認仲介士の資格を取って数件仲介すれば、大企業に勤務する人と同程度の年収が稼げるそうな。
 
さて、本作の主人公ク・ジョンテ(ピョン・ヨハン)はそんな不動産公認仲介士。
いま若者たちに人気のこの資格について指南する彼のホームページも大人気。
 
そんな彼の決して人に言えない楽しみは、仲介した部屋の大家から預かった鍵を使って住人の留守中に忍び込むこと。
私生活を覗き見した代わりに、ネジの緩んだ箇所を締め直したり水道の詰まりを直したりして退室する。
また、部屋の中を見回してどう考えても不要であろうものをひとつ頂戴してコレクションにしている。
 
おかげで仲介物件の住人のことはたいてい知っているジョンテだったが、まだ何の情報も得ていない気になる女性が近所にいる。
彼女はインフルエンサーのハン・ソラらしく、彼女の私生活が知りたくてたまらない。
どうにか部屋に忍び込む方法がないかと考えあぐねていたところ、なんと彼女のほうからジョンテの事務所にやってくる。
 
ソラが言うには、仕事の都合で町を離れることになったから、部屋を賃貸に出したいと。
大家の了解は得ているのでこの場でジョンテに鍵を渡して後は任せると。
躍りたいほど嬉しい気持ちを隠して鍵を預かったジョンテは、その日からソラの留守を狙って数度侵入。
彼女の私生活に触れて満足感を味わう。
 
ある日、いつものように覗き見のためにソラの部屋に入ると、ソファに横たわったソラが惨殺されていた。
すぐに警察に通報すべきだが、そうすれば自分の不法侵入がバレてしまう。
慌ててその場を去ったジョンテは、賃貸物件を探している途中のカップルに直ちに連絡。
内見に案内するふりをしてそのカップルを先に部屋に入らせ、ソラの遺体を発見させようとするが、
血まみれだったソラの遺体が綺麗さっぱりなくなっているではないか。
 
同じ頃、ソラの親友だというやはりインフルエンサーのホルギが警察へ出向き、ソラと連絡が取れなくなっていることを告げる。
担当した刑事のオ・ヨンジュがソラの部屋を訪れてみると、ソファの下にわずかな血痕が。
事件としての捜査が始まり、ソラの部屋を仲介するジョンテのもとへもヨンジュがやってきて……。
 
以下ネタバレです。
 
とても面白かったですが、気持ちのよい話ではありません。
『ターゲット 出品者は殺人鬼』(2023)でつけ狙われるヒロインを演じたシン・ヘソンが、
本作でもストーキングされる側と見せかけてその実、身も凍りそうな殺人鬼
 
インフルエンサーとしてもてはやされたいがために、食べてもいない「映えるもの」を食べているように見せかけ、
行ってもいないところに行っているように、持ってもいないものを持っているように撮ってSNSに挙げる。
犬や猫の保護に努めているふりをして募金を促しているけれど、見せる役目が終わった動物は無残に殺すという冷酷さ。
自分の悪行をジョンテに見られたと思い込むソラは、彼を罠にはめることを思いつくわけです。
 
ソラのおこないはもちろんおぞましいけれど、覗き見の趣味があるジョンテだって褒められたものではありません。
応援したくなるのはイ・エル(美人!)演じる女刑事のヨンジュぐらいですかねぇ。
彼女は志願して刑事部に配属されたのに、女だからと仕事を振ってもらえない。
逮捕のお膳立てまではさせられても、手柄は全部男どもに持っていかれます。
行方不明のインフルエンサー探しもたいしたことのない話だろうと思っていたら、これがこんな事件で。
濡れ衣を着せられるところだったジョンテがお礼を言いに来たとき、彼に放つヨンジュの言葉が刺さります。
 
自分は被害者ではないということを肝に命じよ。

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『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』

2025年01月28日 | 映画(あ行)
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』(原題:The Apprentice)
監督:アリ・アッバシ
出演:セバスチャン・スタン,ジェレミー・ストロング,マーティン・ドノヴァン,マリア・バカローヴァ,
   キャサリン・マクナリー,チャーリー・キャリック,マーク・レンドール,ベン・サリヴァン他
 
 
ドナルド・トランプ、大嫌いです。
嫌いだからこそ、トランプの弁護団が公開を阻止しようとしたという本作が気になります。
アメリカでの配給に苦戦しながらもなんとか公開にこぎつけ、トランプは怒りあらわ。
大統領選に影響が及ぶことも懸念されたようですが、それでも当選しちゃうんですもねぇ。
 
脚本を書いたのは、トランプを長年に渡って取材した記者ガブリエル・シャーマン。
脚本ができあがったからといって、政府を敵に回すことになる作品だもの、及び腰になる人もいて当然。
『新聞記者』(2019)を観たときに追記したようなことが日本でもありました。
名だたる監督のもとへも送られたそうですが、ビジネス上のリスクありとして皆お断りになったそうです。
 
で、白羽の矢が立ったのかどうか知らんけど、受けて立ったのはアリ・アッバシ監督。
彼の『マザーズ』(2016)は妊婦には絶対お薦めできないホラーだったし、
『ボーダー 二つの世界』(2018)は不気味なこと極まりないスリラーでした。
本作はホラーでもスリラーでもないはずなのに、話そのものがかなり怖い。
ちなみに“アプレンティス”はトランプが司会を務めたリアリティ番組のタイトルです。
 
不動産業を営むトランプ家に次男として生まれたドナルド。
長男フレッド・ジュニアは父親フレッドの仕事を継ぐ気がなく、TWAのパイロットの職に就いた。
パイロットという職業を見下す父親は、一族の恥さらしだとフレッド・ジュニアを非難する。
一方のドナルドは父親の会社の副社長の肩書きを持つものの、
任されている仕事といえば自社が所有するアパートメントを回り、家賃の督促をするだけ。
 
あるとき、ドナルドの父親が政府から訴えられる。
黒人の入居者を認めない等、不正を働いたというもので、父親は窮地に追い込まれる。
そんな折ではあるが、一応は父親の名は通っているから、名士が集うクラブに入店を許可されたドナルド。
最年少のメンバーとなったことに鼻高々で入店。
 
すると、彼を見つけた著名な弁護士ロイ・コーンが声をかけてくる。
ロイはかつて赤狩りの先鋒に立ち、ローゼンバーグ事件でスパイ容疑をかけられた夫妻を死刑台に送った元検察官
ドナルドのことを気に入ったと見えて、縋りつかれるとこの案件を引き受けてくれる。
 
ロイの教えは、「攻撃、攻撃、攻撃」「絶対に非を認めるな」「常に勝利を主張せよ」。
父親に楯突けない気弱な青年だったトランプは教えを忠実に守り、やがて大成功を収めるのだが……。
 
3度結婚している彼の最初の奥さんで、チェコ出身のモデル、イヴァナとの馴れ初めも出てきます。
彼女に豊胸手術を受けさせておいて、作り物の胸にゾッとすると言い放ち、浮気を繰り返す。
お金への執着は最初からあったけれど、ちょっと見栄っ張りのボンボンぐらいのイメージだったのが、
一旦富を手にするや、それを増やすことに飽くなき執念を燃やしつづけ、
落ちぶれた兄や言うことを聞いてくれようとしない父親はじゃまでしかない。
あんなに面倒を見てくれたロイのことも、利用し尽くした後はポイっと。
 
ドナルド役のセバスチャン・スタンとロイ役のジェレミー・ストロングの演技が凄いんです。
特に後者が凄すぎて。この人、『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』(2013)で犯人役を演じた人なんですね。
 
自身が太って行くことや髪の毛が薄くなって行くことも気にしていて、
脂肪除去と頭皮除去の手術のシーンがエグすぎて見たくなかった。
 
映画ですからね、かなり脚色の部分はあるでしょうし、丸ごと信じたりはしません。
真実何割かだったとしても、やっぱり好きにはなれないよなぁ。
 
アメリカでは本作の宣伝をおおっぴらずにすることができなかったのは当然だけど、
それでも上映禁止としなかったのは、懐の深さを見せるほうが得だと判断したからでしょうかね。

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