夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『LOVEHOTELS ラヴホテルズ』

2007年08月29日 | 映画(ら行)
『LOVEHOTELS ラヴホテルズ』
監督:村松亮太郎
出演:原田佳奈,田村圭生,中泉英雄,片山けい,平敷慶吾,
   三浦敦子,嶋田達樹,サエコ,高橋一生他

昨秋公開、レンタル新作落ち。

「ラブホテル」は、日本固有の文化と言われています。
SEXの場としてのみ利用されることを前提とした宿泊施設は、
海外では極めて珍しい存在なのだそうです。
そういえば、洋画にモーテルはしょっちゅう登場しますが、
そこにしけ込むカップルもいれば、ひとりで長期滞在する人もいて、
利用者のほぼ全員がSEXを目的としている施設は見たことがありません。

本作はそんなラブホテルを舞台にしたオムニバス。
主に関東方面でチェーン展開する「HOTEL 555」グループが全面協力。
実在のホテルの中に、監督のイメージのままの一室を完成させ、
ロケがおこなわれたそうです。

第1話、“SWEET OPTIMISM”。
去年のクリスマス、
スズコはラブホへピザの配達のアルバイトをしていた。
今年は惨めな思いをしたくないと、
ふたりの男からの誘いを断れずに受けてしまう。
同じホテルの別々の部屋に男を待たせ、
彼らの間を行ったり来たりしている。

第2話、“BLUE”。
サクラとトオル、美咲は学生時代の同級生。
トオルと美咲は結婚、まだ幼い息子がいる。
昔からトオルのことが好きだったサクラは
想いを抑えきれず、トオルと不倫関係に。

第3話、“SKIN”。
サチとタクは幼なじみでセフレ。
離れてはまた目の前に現れるタクとの関係を
サチはどうしても断ち切れない。
ある日、好きな女性ができたとサチに打ち明けるタク。
タクとは体だけの関係だと割り切っていながら、激しく動揺するサチ。

第4話、“ANTI SEX”。
田舎町で唯一のラブホの経営者が急死。
ひとり娘の女子高生、愛が継ぐことに。
家業を毛嫌いしていた愛は、現場を目の当たりにしてさらに引くが、
純愛を語る従業員の春樹のことが気になり始める。

すべて女性の視点で描かれています。
タイトルがタイトルなうえに、R-15に指定されていて、
DVDのジャケット裏は「恥ずかしくって借りられない」風ですが、
そこそこエロいシーンがあるのは第3話のみ。

私のお薦めはコメディタッチの第4話で、監督が別人かと思うほど。
ダルビッシュ有とできちゃった婚のサエコが主人公を好演。
ラブホの内幕もいろいろわかって楽しめます。
爽やかに締めてくれて感謝。

大切なのは、その純粋な気持ち。

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『善き人のためのソナタ』

2007年08月23日 | 映画(や行)
『善き人のためのソナタ』(原題:Das Leben der Anderen)
監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:ウルリッヒ・ミューエ,マルティナ・ゲデック,セバスチャン・コッホ他

まちがいなく、今年No.1。
ついこの間まで、今年のマイ・ベストだった
『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)も吹っ飛びました。
おそらく一生、私の心に残るであろう作品です。

1984年、東西冷戦下のドイツ。
東ドイツではシュタージ(秘密警察・諜報機関である国家保安省)が
反体制派の監視を大々的におこない、
政治的危険分子と見るや、証拠を集めてすぐさま処罰。

芸術家たちも仕事を取りあげられることを恐れ、
当たり障りのない活動をするしかないのが実情。
自らの意志を貫き通した場合は、政府から圧力をかけられ続けて
自殺に追い込まれる者も多い。

シュタージのヴィースラー大尉は模範的職員。
国家に忠誠の限りを尽くし、真面目で冷酷。
反体制派の疑いのある者を連行すると、
仲間の名前を白状するまで一睡もさせない尋問手段を取り、
次々と成果を上げる。

ある日、彼が命じられたのは、
反体制派の疑惑が持たれる劇作家ドライマンの監視。
ドライマンと、その恋人で女優のクリスタが住むアパートに
隠しカメラと盗聴器を仕掛けたヴィースラーは
2人を徹底的に監視し始めるのだが……。

キャッチコピーは、
「この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない」。

終始無表情で、温かみを全く感じさせないヴィースラーが、
自殺した作家仲間への追悼の意味を込めて
ドライマンが奏でるそのピアノ曲を、盗聴器を通して聴いたとき、
ひと粒の涙を流します。
以降も無表情であることに変わりはありませんが、
その曲が、ヴィースラーの心に明らかな変化をもたらしたことがわかります。

東西ドイツを描いた映画としては
『グッバイ、レーニン!』(2003)、
『ベルリン、僕らの革命』(2004)等々ありますが、
映画の中の「ベルリンの壁崩壊」が伝えられたシーンで、
こんなにもグッと来たのは本作が初めてでした。

派手さはまるでない、静謐な作品です。
だけど、心が打ち震えました。
人間の根元的な善の部分を信じたい、そう思わせてくれます。
このラストシーンは本当に素晴らしい。

まだ30代前半だという監督に脱帽。
東ドイツ出身、まだ50代半ばで、
先月他界してしまった主演のウルリッヒ・ミューエ。
心からご冥福をお祈りいたします。

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続・ちょっと涼しい話でも。

2007年08月20日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
20年近い博物館勤務の間、
背筋がゾーッとするような思いをしたことは
残念ながら(?)ありません。

博物館には、展示資料以外に、
20万点以上の標本資料が保管されています。
搬入された標本資料を開梱、破損状態などをチェック、
燻蒸してから収蔵庫へ。
標本資料には、収蔵庫内で通し番号を付けてゆきます。

だだっ広い収蔵庫でひとりで作業するときは、確かにちょっとビビります。
だけど、私には霊感が皆無で、何にも見えないし、何も感じません。
ま、こういうのって、霊感のない人のほうがビビるようなので、
絶対にひとりでは収蔵庫に入りたくないと言う人もいるのですが、
私はたぶん、収蔵庫で昼寝できますね。
何か出てくるなら、前々述の『ナイトミュージアム』のように
標本資料とお友だちになりたいぐらいです。

霊感のある人と収蔵庫に一緒に入ったときに、
棚が端からダダーッと、さざ波のように揺れて行くのを見た人がいます。
収蔵庫の扉の取っ手が、まるで誰かが開けようとしているかのように
ガチャガチャ回ったと言って、恐怖のあまり、
収蔵庫から飛んで帰って来た人もいます。
標本資料である揺りかご付近で、赤ちゃんの泣き声を聞いた人も。
鎧武者の前で写真を撮ると、心霊写真ができあがるそうです。

これらは私が聞いた話ばかり。
私が実際に関わった話としては、私の霊出現疑惑があります(笑)。

収蔵庫は土足厳禁で、入室するさいは上靴に履きかえます。
私は歩き方に問題があるのか、それとも上靴のせいなのか、
その靴で歩くと、やたらペタペタ音がして、
抜き足差し足忍び足で歩いても、
私が収蔵庫内にいることがいつもバレバレでした。

私が休暇を取った翌日のこと。
「昨日、○○さん(=私)はお休みだったのに、
○○さんの足音が聞こえたんです」と後輩。
「どこで?」と尋ねたら、ある収蔵庫でとのこと。

そう言えば、休む前日、
ボロボロになった上靴を、もうそろそろ替え時だろうと
私はその収蔵庫内のゴミ箱に捨てました。
もしかして、私の上靴だけが歩き回っていた?
あんなペタペタと音を立てて、と思ったら笑えました。
え、笑えませんか。

今まで、何よりも怖い思いをしたのは、
収蔵庫にてひとりで作業中に、
ふと振り向いたら、そこに上司が立っていたことです。
私とちがって、足音を立てない人で有名なんですけど。
お願い、いきなり背後に来るのはやめて~。
心臓が止まるかと思ったがな。

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ちょっと涼しい話でも。

2007年08月16日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
映画ネタからちょっと離れますが、暑さしのぎに。

大学卒業後、某博物館に勤めてあと数年で20年が経ちます。
前述の『ナイトミュージアム』では、
舞台である自然史博物館の展示品たちが動き出しました。
そのアイデアはめちゃくちゃ楽しくて心が躍ります。
ホンマにそんなことがあったら怖いやろ!と思いますが、
博物館の収蔵品は、人びとが現地で実際に使用していたものを
わざわざ選んで集めたものがほとんどなのですから、
そこに霊が取り憑いていたとしても不思議ではありません。

ホラー映画は苦手ですけど、
こんな環境での仕事はなぜか平気です。むしろ好きです。
ホラーの中でも、血の飛び交うスプラッタ系は苦手で、
心理的にゾクゾクするものは結構好きなせいかもしれません。

ん?これはこの環境の仕事が平気だという理由にはなりませんね。
平気なのは、幽霊の存在を基本的には信じていないからなのかも。
幽霊とは、人の心が生み出すもので、
何の関係もない人の前に化けて出ることはないと思っています。
仮に幽霊が存在するとすれば、
日本の幽霊は恨みのある人の前に現れる、
外国の幽霊はその場所に住み着いて現れるとも勝手に思っていて、
どちらも関係ない人を傷つけることはないと信じています。

こんなふうに思い込んでいるのは、父の影響でしょうか。
昔からこの世に幽霊はいないと断言していた父は、
いるなら是が非でも見てみたいと、
若い頃は「出る」と評判の場所へ、ひとりでよく出かけたそうです。

父が遭遇したものの中で、最も怖かったのは
怨念に取り憑かれた人間の姿でした。
ある晩、真っ暗な寺のお堂に泊まった父は、
夜中の境内に人の気配を感じ、
窓の隙間から目を凝らして外を見たそうな。

まさに草木も眠る丑三つ時。
白装束を着た女性が大木に藁人形を打ち付けている姿が。
さすがの父もあまりの怖さに背筋がゾーッ。
「見た」と話せば、自分も呪われるような気がして、
何年もの間、誰にも話すことができなかったそうです。

「いちばん怖いのは人間だ」。
父はそう話していました。
確かに、いちばん怖いのは人間。
映画でも、一見普通の人が狂ってゆくさまは
凍りついてしまうほど恐ろしいです。
『シャイニング』(1980)もそうでした。
この作品は真冬のホテルが舞台ですが、猛暑にうってつけですね。

博物館の怪談話について書こうと思っていましたが、
次回に続く。

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『ナイトミュージアム』

2007年08月09日 | 映画(な行)
『ナイトミュージアム』(原題:Night at the Museum)
監督:ショーン・レヴィ
出演:ベン・スティラー,カーラ・グギーノ,ディック・ヴァン・ダイク,
   ミッキー・ルーニー,ビル・コッブス,ロビン・ウィリアムズ他

この人が出ているだけで観たくなる。
その私的二大俳優がベン・スティラーとオーウェン・ウィルソンです。
このふたりについては常々「私のツボ」と申しあげているとおり、
顔を見た瞬間、笑ってしまうんです。大好きっ。
スケベ鼻のオーウェン・ウィルソンはクレジットなし。
あれだけ出突っ張りなのにギャラなしの友情出演とでも?

ニューヨーク在住のラリーはバツイチ。
別れた妻と暮らす息子のニッキーを心から愛しているが、
転職と引っ越しをくり返すラリーに、ニッキーはがっかりしっぱなし。
今では元妻の再婚相手に敬意の念を抱いている様子。

息子の信頼を取り戻したいラリーは、
紹介できる仕事はないと言う職業相談所の職員に泣きつき、
誰も続いた試しがないらしい仕事を引き受ける。

就職先は自然史博物館。
来館者数が減り続ける一方のこの博物館では、
老いた夜間警備員3名を解雇し、若い警備員1名を雇うことに決める。
そこへ応募したのがラリー。

マニュアルを受け取ったラリーは直ちに勤務に就く。
ところが、誰も続かないのが当たり前、
なんと閉館後、展示品のすべてが息づき、動き出して……。

犬のごとく、一緒に遊んでほしがるティラノサウルスの骨格標本。
ラリーをボケ呼ばわりし、ガムをせがむモアイ像。
火を起こすことに懸命なネアンデルタール人。
人をやたらと八つ裂きにしたがるアッティラ将軍。
ミニチュアのローマ皇帝に、西部開拓時代のカウボーイ。
争いを続ける南北戦争の兵士たち。
館内を馬で走り回るルーズベルト大統領の蝋人形。
これを楽しまずしてなんとしましょう。

ひと晩で音を上げかけたラリーは、息子の顔を見て、
もうひと晩だけ頑張ってみることにします。
ルーズベルト大統領(の蝋人形)から、今が偉人になるときだと言われ、
みんなを統率するにはまずはみんなを知ることだと、
歴史の勉強を始めるラリー。
観ているこっちも歴史の勉強になります。

表面的な知識だけでなく、
歴史に登場する人物の心まで理解し、
命を持った展示品の彼らに対応するラリーがめちゃ素敵。
抱きしめることの素晴らしさ。

私の勤め先の博物館でも、
展示品やら収蔵品がぞろぞろ動き出したら、
来館者数は一気にUP、まちがいなし。

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