夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『きっと、星のせいじゃない。』

2015年03月30日 | 映画(か行)
『きっと、星のせいじゃない。』(原題:The Fault in Our Stars)
監督:ジョシュ・ブーン
出演:シェイリーン・ウッドリー,アンセル・エルゴート,ローラ・ダーン,
   ナット・ウルフ,サム・トラメル,ウィレム・デフォー他

観てから10日経ってしまったのですが……。
久々に定価で映画を観た翌週、またまた木曜日に1本観て帰るチャンスに恵まれ、
今度はちょうど109シネマズデーと重なって、1,100円で観られる日。
『ストロボ・エッジ』とどちらを観るか迷ったけれど、
109シネマズ箕面では翌日に終映となってしまう本作を選択。

原作はベストセラーのヤングアダルト小説『さよならを待つふたりのために』。
予告編を観るかぎり、難病もので「がんばってるアピール」が強そうな。
さらには主人公が恋する相手がまったく私のタイプではない。
それゆえ公開からずっと避けてきましたが、想定外に泣きました。(^^;

17歳のヘイゼルは、13歳のときに甲状腺癌を患っていることがわかり、
それが原因でたびたび肺水腫を起こし、まさに体に爆弾を抱えている状態。
酸素ボンベが手放せず、入退院を繰り返していては学校にかよえず、友だちもいない。
娘を心配する両親は、癌患者の集会“サポートグループ”への参加を勧める。
そんな集会には行きたくないが、両親のため。仕方がない。

渋々参加した集会は予想どおり楽しくもなんともなかったが、
ある日、骨肉腫で片足を切断した高校バスケットボールの元スター選手、オーガスタスと出会う。
彼は友人に誘われて参加しただけで、ヘイゼル同様、集会には何の興味もないらしい。
意気投合するヘイゼルとオーガスタス。

ふたりはお互いの愛読書を交換。
ヘイゼルは愛読書の『大いなる痛み』という本をオーガスタスに差し出す。
読み終わったオーガスタスは、物語が唐突に終わる結末が気になって仕方ないと言う。
主人公やその周りの人びとはそれからどうなったのかはヘイゼルも知りたかったこと。
オーガスタスが著者のピーターにメールを送ってみると、驚いたことに返事が。
アムステルダム在住のピーターから会いにくるように言われ、
ヘイゼルとオーガスタスは大喜びするのだが……。

もろネタバレ。

鑑賞前、癌患者は主人公のヘイゼルだけだと思っていたら、
オーガスタスもそうで、彼のほうが先に死んでしまうという展開。
湿っぽさ全開でも不思議はないわけですが、そうじゃない。
オーガスタスを集会に誘ったアイザックは眼の癌で、
アイザックを振った元カノの自宅へ腹いせに行くシーンは笑いました。
ヘイゼルとオーガスタスとアイザック、
3人だけど眼は4つ、脚は5本、肺は2個半だぞ、覚悟しろと。

大好きな本の著者に会いに行ったのに、ピーターは最悪の男。
余命わずかな10代のふたりを前にして、良いことをひとつも言いません。
それでも、ウィレム・デフォー演じるピーターの、
「無限大」にも大小があるのだという言葉がヘイゼルの心をとらえます。

集中治療室で意識がまだらなときに聞いてしまった、
母親の「もう母親なんてやめたい」という叫び。
「私が死んだら、母親をやめられるでしょ」と言うヘイゼルに対し、
「私はあなたが死んでもずっとあなたの母親」と涙ぐむ母親に、ヘイゼルは「それが心配なの!」。
母親をやめたいと言いつつ、自分の死後も母親をやめられないことを
娘はずっと心配していたのです。

ちょっとダラダラ気味ではありましたが、
難病もののわりには「ムリッ!」という感想にはなりませんでした。
これでオーガスタスがタイプだったら言うことなしだったんだけど。
登場人物が好みのタイプかタイプでないかはかなり大事(笑)。

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『イントゥ・ザ・ウッズ』

2015年03月28日 | 映画(あ行)
『イントゥ・ザ・ウッズ』(原題:Into the Woods)
監督:ロブ・マーシャル
出演:メリル・ストリープ,ジョニー・デップ,エミリー・ブラント,ジェームズ・コーデン,
   アナ・ケンドリック,クリス・パイン,トレイシー・ウルマン,リラ・クロフォード,
   ダニエル・ハットルストーン,マッケンジー・マウジー,ビリー・マグヌッセン他

TOHOシネマズなんばで3本ハシゴの3本目。
前述の『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』とどちらを先に観るか迷い、
こっちのほうが楽しい気分で帰れそうだからこっちを最後にしたけれど、
予告編から想像していたほどはそんな気分になれなくて、ちょっと残念。

子どもが欲しくてたまらないのに、ずっと恵まれないままのパン屋の夫婦。
ある日、隣家に住む魔女から、子どもを授からない理由を聞かされる。
それはパン屋の夫の父親が、魔女の家の庭から物を盗んだせいで呪いをかけられたから。
呪いを解きたければ、森の中から以下の4つを見つけて持ち帰れと魔女が告げる。

1.ミルクのように真っ白な牛
2.血のように赤いずきん
3.トウモロコシのように黄色い髪
4.金色に輝く靴

3日以内に持ち帰れなければ、生涯子どもは授かれないと。
パン屋の夫婦は大慌てで森の中へ駆け込むのだが……。

グリムなどの童話のキャラクター総出演。
真っ白な牛は“ジャックと豆の木”のジャック。
赤いずきんは“赤ずきん”の赤ずきん。
黄色い髪は“ラプンツェル”のラプンツェル。
金色の靴は“シンデレラ”のシンデレラ。
魔女が要求しているのは、そんなキャラクターたちの所有物。
みんなワケありで森の中に紛れ込み、パン屋夫婦と遭遇します。

設定は非常におもしろく、ワクワクするものでしたが、なんだか拍子抜け。
子ども向けかと言うとそんなことはありません。
それぞれの身内で呆気なく死ぬ人多数だし、
赤ずきんちゃんはオオカミ役でわずかに出演のジョニー・デップの皮を剥ぐし。

役者陣も私は好きな人多し。
特に嬉しかったのは、パン屋の妻役のエミリー・ブラントとシンデレラ役のアナ・ケンドリック
『はじまりのうた』でヒロインの気の好い男友だちを演じていたジェームズ・コーデンもパン屋の夫役でいい感じ。
シンデレラの王子役のクリス・パインはやはりタイプではないけれど、
こういう役も案外できるのねと見とれました。

設定よし、役者よし、ならば何がイマイチだったの。
テンポかなぁ。歌をしつこく感じて寝そうになったこと何度か。

森に入れば大人の事情が蠢めきます。
全員にとって最善策を考えているようでありながら、
実は自分中心に考えているところは非常に興味深い。
そういう意味では、やはりおもしろい作品なのかも。
でもほら、ディズニーですから。ディズニーっぽくないんだもん。(--;

そうそう、この日ハシゴした3本、すべて字幕は松浦美奈さんでした。

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『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』

2015年03月26日 | 映画(あ行)
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(原題:The Imitation Game)
監督:モルテン・ティルドゥム
出演:ベネディクト・カンバーバッチ,キーラ・ナイトレイ,マシュー・グード,ロリー・キニア,
   アレン・リーチ,マシュー・ビアード,チャールズ・ダンス,マーク・ストロング他

TOHOシネマズなんばで3本ハシゴの2本目。

第87回アカデミー賞の主演男優賞は、本作のベネディクト・カンバーバッチ
『博士と彼女のセオリー』のエディ・レッドメインの間で競われ、
後者に軍配が上がったわけですが、作品としては本作のほうが私は断然好きでした。
監督はノルウェーの俊英だそうで、北欧映画界はやはり侮りがたし。

1939年、第二次世界大戦中。
ドイツ軍が使用する暗号機“エニグマ”は史上最強の暗号機と言われ、
どの国も解読を試みているが、どうにもこうにもならない。
天文学的な組み合わせパターンを有するエニグマを解読しなければ、
この戦争に勝利することはできないと、
イギリス軍はMI6の下、エニグマ解読のためにさまざまな分野から精鋭を集める。

27歳のアラン・チューリングもそのうちの一人。
彼は天才数学者で、その才能はニュートンやアインシュタインに並ぶとも言われていた。
しかし、明らかに変人で、上官となったデニストン中佐は彼を毛嫌い。
また、一匹狼で仲間への気遣いのかけらもない彼に、
エニグマ解読チームのリーダーに就任したヒュー・アレグザンダーも呆れ顔。

チームにまったく協力せず、勝手に解読マシンなるものを作りはじめたアランを
デニストンは解雇しようとするが、アランはウィンストン・チャーチルに直訴。
アランの考えに耳を傾けたチャーチルにより、アランがリーダーの位置に就く。

新たなリーダーとなったアランは、使えないメンバー2人を即クビに。
代わりにクロスワードパズルによる求人広告を出して試験、
トップの成績を叩きだした女性ジョーンを採用する。

孤立を深めていたアランだったが、ジョーンの助言により、
次第にチームメイトとの溝が埋まってゆく。
エニグマ解読まであと一歩のところまで迫り……。

鑑賞後、余韻に浸って歩いていたのに、後ろにいたカップルが、
「久々に何の笑いも感動もない映画やったな」。
え~、そうですか!?めちゃめちゃ見応えありましたけど。

ALS患者を演じたエディ・レッドメインは確かに凄かったけれど、
変人と呼ばれ、ゲイであることにも苦悶するベネディクト・カンバーバッチの演技は素晴らしい。
どちらにも共通しているのは、「普通ではない」ということ。

現在のコンピュータの基となったのが、アランがつくったマシン。
同性愛が違法だった時代、無理やりホルモンを投与されて、
わずか51歳で命を絶ってしまったアラン。
ようやく名誉が回復され、あの世で微笑んでくれているでしょうか。

あなたが普通でなかったからこそ、この世界は素晴らしい。

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『ブルックリンの恋人たち』

2015年03月24日 | 映画(は行)
『ブルックリンの恋人たち』(原題:Song One)
監督:ケイト・バーカー=フロイランド
出演:アン・ハサウェイ,ジョニー・フリン,ベン・ローゼンフィールド,メアリー・スティーンバージェン他

先週月曜日、「来年度に繰越不可分の有休を消化するために取った休み」最終。
これで繰越できない分は全部使いきってスッキリ。

朝から車でミナミへ向かい、TOHOシネマズなんばで3本ハシゴの予定。
春場所の真っ最中で、難波の横断歩道をお相撲さん数人が闊歩。
そういえば、20年以上前、茨木のうどん屋で力士をよく見かけましたが、
あのうどん屋さんはまだ健在なのでしょうか。

人類学博士号の取得を目指すフラニー・エリスは、モロッコに拠点を置いて研究を続けている。
ある日、母親のカレンから電話があり、弟のヘンリーが事故に遭ったと聞かされる。

フラニーとヘンリーは長らく疎遠。
ヘンリーが大学を辞めてミュージシャンになると言うものだから、フラニーが猛反対したのだ。
本当に大学を辞めたヘンリーはこつこつと音楽活動を続け、
フラニーにも聴いてほしいとよく連絡を寄越していた。
しかし、フラニーはことごとくそれを無視して今日に至る。

ニューヨークへ帰郷したフラニーが病室を訪れると、ヘンリーは昏睡状態。
いつ目覚めるのか、目覚める日が来るのかどうかもわからない。
ヘンリーの部屋で彼が憧れるミュージシャン、
ジェイムズ・フォレスターのライブチケットを見つけたフラニーは、
弟に代わってライブへと足を運ぶ。

ライブ終了後、ジェイムズに声をかけるフラニー。
あなたの大ファンである弟が入院中ですと。
すると翌日、ツアー中にもかかわらず、ジェイムズが病室を訪れ、
意識のないヘンリーのために歌ってくれる。

フラニーはヘンリーの好きなものを知ろうと、弟の日記帳をめくり、
そこに記された場所を巡る。ダイナー、楽器店、ライブハウス、etc.。
ヘンリーに聴かせたくて、あらゆる場所の音を集めるフラニーとそれにつきあうジェイムズ。
いつしかふたりは惹かれ合うようになるのだが……。

これもまた音楽の映画
似た雰囲気の『はじまりのうた』と比較すると、音楽としてはそちらのほうが好みでした。
だから、本作の音楽を聴いてもそこはあまり印象に残らず。
けれど、朝昼晩とさまざまな表情を見せる街の様子、それに伴う音が心地いい。

監督はこれが長編デビュー作だそうです。
リチャード・リンクレイター監督の『恋人までの距離』(1995)とも似た雰囲気で、
それゆえこんな邦題になったのではと思いますが、いろいろと二番煎じの感が否めません。
なんだか惜しいのですが、それでも夜明けの冷たい空気と人の温もりを感じさせる映像は素敵で、
駄目出しする気にはなれなかったりして。
フラニー役のアン・ハサウェイ、カレン役のメアリー・スティーンバージェン
作品の格を上げているのかも。
これからオリジナリティが出てくることに期待します。

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『くちびるに歌を』

2015年03月22日 | 映画(か行)
『くちびるに歌を』
監督:三木孝浩
出演:新垣結衣,木村文乃,桐谷健太,恒松祐里,下田翔大,
   木村多江,小木茂光,角替和枝,井川比佐志他

TOHOシネマズ西宮にて2本ハシゴの2本目。

前述の『風に立つライオン』の第二の舞台だった長崎・五島列島。
期せずして本作もそこが舞台でした。
全国学校音楽コンクールの課題曲、アンジェラ・アキの『手紙~拝啓 十五の君へ~』をモチーフに、
乙一中田永一名義で書き下ろした小説が原作。
公開日が『幕が上がる』と同日で、三木孝浩監督曰く「部活映画対決」。
さて、軍配はどちらに。

長崎県の離島にある中五島中学校に着任した柏木ユリ(新垣結衣)。
ユリは東京で活躍するプロのピアニストだが、訳あってピアノを休止中。
地元の音楽教師で幼なじみの松山ハルコ(木村文乃)が産休に入るとのこと、
彼女の代替教師をゴリ押しされ、ピアノは弾かないという約束で渋々引き受けたのだ。

ハルコが務めていた合唱部の顧問もユリが引き受けることになり、
美人の新任音楽教師を目当てに、男子生徒が何人も入部を希望。
オトコは信用できないと、部長の仲村ナズナ(恒松祐里)は猛反対。
「男子がいると県大会を突破できない」と憤るナズナに、
「男子がいなくても、あなたたちは全国に出られるレベルになんてない」とユリは冷たい。

一方、引っ込み思案な桑原サトル(下田翔大)もユリに惹かれた一人だが、
自閉症の兄・アキオ(渡辺大知)を毎日迎えに行かねばならず、
とても部活には参加できそうにない。
しかし、ちょっと顔を出してみると、同級生からボーイソプラノを褒められる。
帰宅しておそるおそる母親(木村多江)に相談すると、意外にも聞き入れてもらえる。

ユリは合唱部の練習をただ見ているだけ。
不満を募らせるナズナたちにユリが出した宿題は、コンクールの課題曲にちなんで、
15年後の自分に手紙を書くようにというもので……。

『幕が上がる』はももクロ主演で、なかばミーハー的気分で観に行き、
あまり期待していなかったらおもしろかった。
こっちはそこそこ期待もあったのに、それ以上に良かったからこちらのほうが上か。

『幕が上がる』が演劇のみにほぼ絞り込んでのに対し、
こちらはそれぞれの人物像が細やかで濃い。
ナズナは母親を亡くし、ろくでなしの父親(眞島秀和)は出て行って、
祖父母(井川比佐志角替和枝)に育てられています。
サトルの手紙に書かれている「僕が生まれてきた意味」には涙ぼろぼろ。
また、ユリがピアノを弾かない理由に温かな友情をからめ、
ありきたりではあるけれど、三木監督はあれもこれも上手く盛り込んでいます。
ちなみにユリの恋人役として電話の声だけで登場するのは鈴木亮平

終盤の「みんなで」は私がいちばんダメな(=泣かされる)やつ。
涙腺が刺激されてオイオイ泣いてしまうじゃあないですか(笑)。
幸薄そうな木村多江の笑顔がとても素敵で印象に残りました。

歌は人を幸せにする。

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