夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『転々』

2008年04月28日 | 映画(た行)
『転々』
監督:三木聡
出演:オダギリジョー,三浦友和,小泉今日子,吉高由里子,岸部一徳他

深夜TVドラマ『時効警察』の監督・主演コンビによる、
藤田宜永原作の同名小説を基にした映画。
「同名小説の映画化」ではなく、あくまで「基にした映画」で、
原作とは微妙に異なる味わいになっているようです。

大学8年生の文哉は、3歳のときに両親に捨てられ、
育ての親とも訳あって今は疎遠。
身寄りもなければやる気もない。
最近感情をあらわにしたことすらない彼に
あるのはいつのまにか膨れ上がった借金84万円のみ。

ある日、自室でぼんやりとしている彼のもとへ
借金取りの福原が殴り込みにやってくる。
3日以内に返すようにと言い残して去る。

返済期限の前日、途方に暮れる文哉の前に
再び現れた福原は、借金をチャラにしてやるという。
東京散歩につきあえば、100万円くれてやると。
1日で終わるか、1カ月かかるかわからない散歩だが、
それで借金が消えるなら、怪しくても話に乗らない手はない。
こうして福原と文哉の東京散歩が始まる。

ゆる~いです。めちゃくちゃ和みます。
文哉を演じるオダギリジョーもいいけれど、
福原を演じる三浦友和がほんとに味のあるオッサン。

福原がいったいどこを目指して散歩し始めるのか、
終盤に明かされるのかと思いきや、序盤でいきなり告白が。
かっとなって妻を殺してしまい、
霞ヶ関の警視庁へ自首しに行くのです。

道中、数々の想い出の場所へ。
「おまえの想い出の場所は?」と問われて
なかなか思いつかない文哉。
ファーストキスの相手を探し出してみれば、
相手に予想だにしていなかったことを言われて凹みまくったりして。

監督は『亀は意外と速く泳ぐ』(2005)の人で、
本作もやはり小ネタてんこ盛り。
ランチ帰りのOLはなぜ財布をあのように持つのか。
たき火に当たる工事現場のおっちゃんの手はなぜアソコなのか。
針金ハンガーを頭にかぶると自然と首が回るとか、
町で岸部一徳を見かけると幸せになれるとか。
こういうネタがことごとく私のツボにハマり、始終クスクス笑いでした。

小ネタはさておき、それぞれの過去が書き込まれているわけではないのに、
その表情を見ているうちに、
「みんな、いろんな過去を背負って生きてるんだよ」、
それを誰かに優しく見守られている気分になります。

幸せは、来ていることに気づかないほど
じんわりとやってくる。

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『隠された記憶』

2008年04月23日 | 映画(か行)
『隠された記憶』(原題:Caché)
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ダニエル・オートゥイユ,ジュリエット・ビノシュ,
   モーリス・ベニシュー,レスター・マクドンスキ他

2005年のフランス/オーストリア/ドイツ/イタリア作品。

気になりつつも今まで観なかったのは、監督のせいです。
『ファニーゲーム』(1997)といい、『ピアニスト』(2001)といい、
この監督は人を不愉快にさせる天才ではないかと思うほど。
鑑賞中、なんとも言えない不快感と不安感に襲われ続けます。

だけど、おもしろい。
不愉快にさせられておもしろいというのも変ですけど、
人間の心に潜む嫌な部分を見せつけられているかのようで、
ラース・フォン・トリアー監督の作品を観たときと同じ感覚を抱かされます。

ジョルジュはTV局の人気キャスター。
妻のアン、息子のピエロとともに
何ひとつ不自由のない暮らしを送っている。

ある日、自宅へ差出人不明のビデオテープが届く。
再生してみると、彼の家が隠し撮りされた映像。
しかし、これといって何が映っているわけでもない。
ただ、ジョルジュの家を正面から延々撮りつづけているだけ。

その日以来、同様のビデオテープが何度か届く。
テープの包み紙に描かれた不気味な絵を見て、
ジョルジュは幼少時代のことを思い出し、
犯人として唯一心当たりのある人物のもとを訪れるのだが……。

いや~、おもしろい。
冒頭、映し出される、あまりにも動きのない画面に、
うちのDVDプレーヤーが壊れているのかと思ったほどです。
それが、送り届けられたビデオテープの再生画像だったわけですが、
脅迫に使われそうな何かが映っているテープよりも、
家を正面から見据えただけのテープのほうがよっぽど怖いですね。
送り主の意図がまったくわかりませんから。

ジョルジュが犯人だとにらんだ人物は、
彼の生家で使用人として働いていた、アラブ人の息子マジッド。
幼い頃、ちょっとした意地悪からついた嘘のせいで、
40年後の今、マジッドが復讐しに来たと思い込みます。

謎解き映画だと思って観ると、すかを食らわされるハメに。
監督自身、「犯人はどうでもいい」と話しています。
それよりも、「疚しさ(やましさ)」ってこんなものだと、めちゃ納得。
「疚しさ」があると、人ってこうなる。

犯人はどうでもいいとは言え、
本作を観た人とは自分なりの解釈を話してみたいものです。
んー、こんな不条理系、大好き。

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最近のマイブーム、弓削智久くん。

2008年04月19日 | 映画(番外編:映画とこの人)
弓削智久くん。
私は聞いたこともない俳優だったので、
気になりだしてから調べてみたら、モデル出身。
雑誌ではカリスマ読者モデルだったそうな。

その後、俳優としてもデビュー。
『仮面ライダー龍騎』では、
仮面ライダーゾルダのボディガード役だったようです。
そんな新しい仮面ライダー、知らんっちゅうねん(藤岡弘の頃じゃないと)。

私が最初に彼を見たのは、ついこの間。
『サクゴエ』(2007)という映画にて。
単にタイトルに惹かれました。
ここ数年の邦画で好きな3本を聞かれたら、
迷わず挙げたい『イヌゴエ』(2005)のパクリかいなと思って。
これも挙げたい『運命じゃない人』(2004)の主演俳優が
『サクゴエ』のダブル主演のうちの1人でした。
そのダブル主演の片割れが弓削くん、しかも脚本も弓削くん。

ちょっとオダギリジョーっぽいです。
小汚いんだけれど、知性を感じる。
というのは、私のイメージに過ぎませんが。

『サクゴエ』はこんなストーリー。

冴えないサラリーマンの森田は、ぼったくりバーに入店してしまい、
べらぼうな飲み代を請求されます。
ヤミ金融業者と契約させられるはめになり、
ヤクザが会社まで取り立てにやってきて、
森田はついに会社に辞表を提出。
しかし、森田が辞めることを誰も気にも留めない様子。

田舎の母親に宛てた遺書をしたためた森田は、
飛び降り自殺をしようと、とあるビルの屋上へ。
なかなか飛び降りられずにいると、背後でせせら笑う声が。

どうやら屋上で生活しているらしい、トミーと名乗るその男は、
「死ぬ前に、一日だけ俺につきあってよ」と言います。
富士山に登ろうというトミーに、なんとなくOKしてしまった森田は、
翌日、レンタカーでトミーを迎えに行く約束をします。

ところが、その帰り道、
森田は、トミーが指名手配中の殺人犯であることを知ります。
恐れつつも約束どおりトミーを迎えに行くと、
ビビる森田の気持ちを察したトミーが、
富士山へ向かう車中で自分の過去を語り始めて……。

かなりハードボイルド。
こんな脚本を書いちゃうなんて、ただ者ではありませぬ。
気骨を感じさせてくれる一本です。

前述の『恋文日和』の第1話、“あたしをしらないキミへ”では、保志役。
あんな愛想なしの近寄りがたい不良系が、あんな手紙を書くと知ったら、
そりゃ女の子はイチコロよ。

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『恋文日和』

2008年04月16日 | 映画(か行)
『恋文日和』
監督:大森美香,須賀大観,永田琴恵,高成麻畝子
出演:村川絵梨,弓削智久,小松彩夏,田中圭,
   玉山鉄二,塚本高史,當山奈央,中越典子,大倉孝二他

ジョージ朝倉の同名人気コミックを映画化した2004年の作品。
TVドラマの脚本・制作・演出などにも手腕を発揮する4人が、
ラブレターをテーマに綴ったオムニバス。
家で観るにはうってつけ。

第1話、“あたしをしらないキミへ”。
立ち入り禁止の校舎の屋上で、
文子は風に舞って飛んできた1通の手紙を拾う。
差出人は同級生の保志で、宛名は美人上級生。
不良じみた外見からは想像できないほど
純情さに溢れるその手紙に感動した文子は、
匿名で書いた手紙を保志の下駄箱に入れる。
すると、後日、保志からの返信が屋上のドアに貼りつけられていた。
文子と、文子が相手だとは知らない保志の文通が始まる。

第2話、“雪に咲く花”。
雪深い新潟の町に住む高校生の陽司は、
「あたし、たぶん消えちゃうけど、覚えていて。
あなたにだけは、わずかな断片でもいいから、覚えていてほしい」、
そう書かれた匿名の手紙を受け取る。
差出人は、複雑な噂の絶えない美少女、千雪だと確信し、
「何があってもはやまってはいけない」と手紙を書く。

第3話、“イカルスの恋人たち”。
相容れなかった兄の康一が病死して、
弟である健二はいい気味だとさえ思っている。
葬儀を終え、遺品を物色していると、デジカムを発見。
その箱の底から、康一が健二に宛てた手紙が出てくる。
「これはおまえにやる。その代わり、このビデオテープを恋人に渡してくれ。
これは彼女宛のラブレターなので、おまえが見てはいけない」。
仕方なく風俗に勤める玉音のもとを訪ねることに。

第4話、“便せん日和”。
便せん専門店「てがみや表参道店」で働く美子は、
主任の一成に密かに想いを寄せている。
しかし、一成は毎週来店する女性客に首ったけ。
そんな一成をけしかけるばかりで、
美子の机の引き出しには、一成に宛てた出せないラブレターがたまってゆく。

「てがみや」のシーンから始まって、
1話が終わるごとに「てがみや」の出来事を挟み、
そして最後にまた「てがみや」に。
4つの話に繋がりはありませんが、
「てがみや」の美子の台詞は共通しているような気がします。
「気持ちなんか、目に見えないんだから、伝えなきゃ」。

だけど、手紙って、書くよりも出すほうが難しい。

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『11:14』

2008年04月12日 | 映画(さ行)
『11:14』(原題:11:14)
監督:グレッグ・マルクス
出演:ヒラリー・スワンク,パトリック・スウェイジ,レイチェル・リー・クック,
   ヘンリー・トーマス,コリン・ハンクス,ベン・フォスター他

2003年の日本未公開作品。
WOWOWで放映されるさいには『惨劇の11時14分』の副題付き。
ジャンルはまったく異なりますが、
『机のなかみ』(2006)などと同様の手法。
やっぱりハズレなしなんです、この手法って。

ある日の午後11時14分の前後、数十分間に、
各人に起こった出来事。

ジャックは酒を飲みながら、田舎道を車で飛ばしている。
午後11時14分、フロント部分に強い衝撃を受ける。
車外に出てみると、顔がめちゃくちゃに潰れた死体が。
偶然そこを通りかかったノーマは、
ジャックが鹿を撥ねたのだと思い、親切心から警察を呼ぶ。
ノーマが去ったあと、パトカーが到着する。

母親のバンを無断で拝借したティミーは、
友人のマーク、エディとともにドライブ。
悪のりしたエディが車の窓から放尿し、
怒ったティミーはエディに気を取られて、
歩行中の女性を轢き殺してしまう。
呆然としていると、突然現れた男性が発砲。
3人は慌てて逃走する。

フランクは犬の散歩に出かける。
娘シェリーの異性関係を懸念していたフランクは、
シェリーの名前入りのプレートを墓地で拾う。
その先には、墓石で顔を潰された、娘の交際相手の死体が。
娘が犯人だと確信したフランクは、
娘の一生を台無しにしてなるものかと、隠蔽工作を図る。

コンビニに勤務するバジーのもとを
男友だちのダフィが訪れる。
「恋人が妊娠して、費用を工面しなければならない。
強盗に見せかけて、店の売り上げを渡してほしい」というダフィ。
クビになりたくないバジーは、強盗を真実に見せるため、
自分の腕を撃てとダフィに言う。

これらの登場人物をめぐる出来事を、
15~20分程度に分けて描きます。
ひとつ観るごとに、ひとりずつが繋がってゆき、
おぉぉぉ、そういうことやったんかという驚かされ、
最後には全員の行動がピタッとはまります。面白い。

ただし、グロいシーンも結構あります。
想像するだけで痛すぎるのが、
窓に挟まれて、ちぎれてしまったアソコ。
もう生きていても意味がないと泣きわめくエディのため、
マークはちぎれたアソコ探しに現場に戻ります。

そう、唯一、謎が残されたままなのは、
そのアソコがどうなったのか。くっつくの?

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