『グリーン・ナイト』(原題:The Green Knight)
監督:デヴィッド・ロウリー
出演:デヴ・パテル,アリシア・ヴィカンダー,ジョエル・エドガートン,サリタ・チョウドリー,
ショーン・ハリス,ケイト・ディッキー,バリー・キオガン,ラルフ・アイネソン他
イオンシネマ茨木にて、前述の『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』とハシゴ。
デビュー当時から鬼才と呼ばれているデヴィッド・ロウリー監督はまだ41歳。
すでに結構いろんなタイプの作品をお撮りになっています。
本作は作者不詳の中世の英雄奇譚『サー・ガウェインと緑の騎士』を映画化したもの。
主演は『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)から15年近く経ち、
着実にキャリアを築き上げながら良い役者になっているデヴ・パテル。
アーサー王の甥でありながら自堕落な日々を送るガウェイン。
そこに現れたのは、異形の緑の騎士。
ゲームを提案する緑の騎士に対して円卓の騎士たちは押し黙るが、ガウェインはこの挑発に乗ることに。
ゲーム前に緑の騎士が挙げた条件は、以下のとおり。
ガウェインが緑の騎士の首を切り落とすことに成功した場合、
来年のクリスマス、ガウェインは緑の騎士の居場所を探し出さなければならない。
そして、自らの首を緑の騎士に差し出さなければならない。
しばし不安げな顔を見せるガウェインに王は言う、「ただの遊び事」だと。
王から受け取った剣で緑の騎士の首を即座に切り落としたガウェインは、英雄視される。
しかし翌年のクリスマス、緑の騎士との約束を果たすために旅に出なければならなくなり……。
変な物語です。
だって、ゲームの前から来年は自分が首を切り落とされる運命だってわかっているのですよ。
強くはあるもののただの呑んだくれに見えるガウェインがなぜわざわざ旅に出るのか。
彼の母親はアーサー王の妹だけど、なんだか魔女みたい。でもすごく温かく優しい。
ボンクラ息子に試練を与えようとしているのか。
王妃もガウェインに「今はあなたに語るべき話がないだけ」と言い、
この旅を終えればガウェインに語り継げる話ができるということらしい。
旅先では悪そうな三人衆に身ぐるみ剥がれ、人の言葉を話すキツネと出会い、
無人の民家だと思ったところで休んでいると首を探してほしいという女性が現れる。
倒れたところを助けてくれたお屋敷の夫婦も不気味だし、眼に包帯を巻いた老女も謎。
謎だらけではあるのですが、映像がとにかく美しい。
自分の首を切られに行く馬鹿がおるかと思いつつ、その世界に魅せられて、
彼の行動の不可解さはどうでもよくなってしまいます。
エンディングではなぜか心が温まるという、不思議な映像体験でした。
異形の緑の騎士の笑顔に癒されるとは。
ダークで奇天烈で冷たそうでありながらぬくもりもあるファンタジー。