夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ドリームホーム 99%を操る男たち』

2016年02月29日 | 映画(た行)
『ドリームホーム 99%を操る男たち』(原題:99 Homes)
監督:ラミン・バーラニ
出演:アンドリュー・ガーフィールド,マイケル・シャノン,ティム・ギニー,
   ノア・ロマックス,ローラ・ダーン,クランシー・ブラウン他

前述の『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』とハシゴ。
同じくテアトル梅田にて。
期せずして不動産の話が連チャンになりました。

シングルファザーのデニスは、母リンと小学生の息子コナーの3人暮らし。
建設全般に関する腕を持つ職人だが、不況のせいで仕事が少ない。
せっかくありついた建設現場の仕事も、建設そのものが中止になることもあり、
その場合はそれまでの数週間がただ働きとなってしまう。

生家を手放したくはないが、ローンを払えずに滞納。
銀行から立ち退きを迫られ、猶予を求めて裁判所に駆け込むも事態は変わらず。
立ち退き期限となった日、保安官を伴った不動産ブローカーが現れる。

そのブローカー、リックの態度には情けなどかけらも見えない。
事務的に差し押さえ物件であることを勧告すると、
デニスたちをすぐさま家から追い出しにかかる。
庭に放り出された家具を車に積み込むには限りがあり、
仕方なく最低限の荷物を持って近くのモーテルへ。

モーテルは家を失った人のたまり場。
誰もが数日で出て行くつもりでやってくるが、何年と滞在することになるという。
職探しに出ようとしたとき、大事な仕事道具がなくなっていることに気づく。
リックの部下がくすねたにちがいないと思ったデニスは、
返却を求めてリックの会社へ怒鳴り込む。

リックはデニスにどんな技術を持っているのかと問い、
今から行く現場へついてこないかと言う。
即金で数千ドル払うという言葉に引かれ、デニスは現場へ。
デニスを使える奴だと判断したリックは、この仕事のノウハウを伝授する。

一度は殺したいほど憎いと思ったリックに仕え、どんどん金を稼ぎはじめたデニス。
生家を取り戻すことをあきらめられず、モラル無視の仕事に手を染めるのだが……。

監督は『チェイス・ザ・ドリーム』(2012)がわりと良かったのラミン・バーラニ
デニスには見るからに人の好さそうなアンドリュー・ガーフィールド
リックにはいつも変人か悪人役のマイケル・シャノン
母親のリン役にはすっかりおばあちゃんと化したローラ・ダーン

どう見ても悪人のリックですが、これはもう誰が善人で悪人なんだかわかりません。
誰の行動が正しいかも私にはわからない。

確かにリックの仕事の仕方はモラルに反しています。
けれど、リックの台詞、「いったいどこのどいつが、自分で売った家から
買い主を追い出したいなんて思うのか」に胸を衝かれました。
リックだって、最初からこんな憎らしい人間だったわけではない。
良い家を、望む客に売る。夢に溢れるブローカーだったはず。
ところが、バブル期に金銭感覚が麻痺した客が、
まるで身の丈に合っていない家をほしがり、贅沢なパティオをつくる。
銀行から多額の金を借りてまで。そしてそのパティオは一度も使われたことがない。

ローンが払えない。でも家を手放したくない。
電気代を節約したいから、空き家となった隣家から電気を盗む。
抵抗実らず追い出された場合には、家を酷い状態にして退出するなど、
モラルの点ではどっちもどっちじゃないのと言いたくなります。

最後にデニスが取った行動。
正しい行動ではあるのでしょうが、彼はその後どうなるのかを考えると、
むなしさだけが残ります。

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『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』

2016年02月28日 | 映画(な行)
『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』(原題:5 Flights Up)
監督:リチャード・ロンクレイン
出演:モーガン・フリーマン,ダイアン・キートン,シンシア・ニクソン,
   キャリー・プレストン,クレア・ヴァン・ダー・ブーム,コーリー・ジャクソン他

梅田で4本ハシゴした翌日も梅田へ。この日は控えめに2本。
テアトル梅田へ行きました。

モーガン・フリーマンダイアン・キートンの共演ならば鉄板。
原作はジル・シメントの全米ベストセラー小説『眺めのいい部屋売ります』だそうです。

ブルックリンを一望する眺めのいい部屋に暮らして40年、
いつまでも仲むつまじい夫婦、アレックスとルース。
この部屋に一生暮らせると思っていたが、階段の昇り降りが年々つらくなる。
エレベーターがないこのアパートでは、5階にたどり着く頃には息も絶え絶え。
特に最近足腰の弱ってきた夫アレックスを心配した妻ルースは、
不動産業に従事する姪リリーの進言もあり、売却を考えることに。

エレベーターのあるアパートに引っ越すこと前提で、
リリーが設定した売却目標額は110万ドル。
購入希望者のための内覧会を明日に控え、準備を整えなければならない。

そんな折り、マンハッタンとブルックリンを結ぶ橋でテロ騒ぎ。
市長が外出すら禁じたらしく、明日の内覧会は叶うのか。
しかも愛犬ドロシーの具合がおかしい。
ただちに病院へ連れて行くと、椎間板ヘルニアで手術が必要だという。

慌ただしいなか、なんとか予定どおりにおこなわれた内覧会。
しかし、ひやかしだけだとおぼしき客や、無礼な客だらけ。
もともと売却に乗り気でなかったアレックスはますますその気を失い……。

どうということはない物語なのですが、
やはり主演がこのふたりということもあって、抜群の安定感。
DVDでもいいやと思っていましたけれども、
窓越しに開ける景色は大きなスクリーンで観るとより素敵に。
家を売却するときの仕組みも面白い。

13年前に家を購入したときのことを思い出します。
マンション、一戸建て、土地、新築中古問わず何十もの物件を案内してもらい、
ここでいいかなぁと思ったものもいくつかありました。
家を買うときって、お金の感覚がいつもと変わってしまうもので、
何千万という額を見ていると、百万や二百万が小さな額に思え、
それぐらいだったら頑張ればなんとかなるような気になってしまいます。
だけど、百万ってたいした額。頑張ってもなんともならんてば。
そう自分たちに言い聞かせ、希望額は決して引き上げないようにしました。

結果、やっぱりこの希望額でこの辺りに買うのは無理だとあきらめかけたとき、
今の家と巡り会いました。夫婦そろって、初めて一目で気に入った家。
実は希望額より数百万高かったのですが、そうとは知らず。
いい不動産屋の営業マンとも巡り会えたおかげで、
「ご希望の額で先方と交渉してみます」と言っていただき。

わが家からの眺望も最高です。
ずっと住めるといいなぁ。

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『スティーブ・ジョブズ』

2016年02月26日 | 映画(さ行)
『スティーブ・ジョブズ』(原題:Steve Jobs)
監督:ダニー・ボイル
出演:マイケル・ファスベンダー,ケイト・ウィンスレット,セス・ローゲン,
   ジェフ・ダニエルズ,キャサリン・ウォーターストン,ジョン・オーティス他

『X-ミッション』『クーパー家の晩餐会』『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』と来たこの日、
福島で食事前のラスト1本は本作で。

同名の別作品『スティーブ・ジョブズ』(2013)を観たのが2年少し前。
こんな短期間に複数の人が撮るのですから、スティーブ・ジョブズはやはり凄い人。
Macユーザーならばなおさら気になります。

これもTOHOシネマズ梅田の本館で観ましたが、あの悲惨なシアター5
予約を試みたときにはすでに後方中央は席が埋まっており、
端っこ好きの私が珍しく(やむを得ず)最前列中央の席にて。

1984年、Macintoshプレゼンテーションの開始40分前に始まり、
1988年、NeXTcubeプレゼンテーション開始直前、
そして1998年、iMacプレゼンテーション開始直前が描かれています。

いずれもスティーブ・ジョブズ氏の人生において、
大きな転換点となった新作のプレゼンテーション。
その舞台裏の様子に焦点を絞るという、なかなかに面白いスタイル。

舞台裏に登場する主な人物は、スティーブ・ジョブズ(マイケル・ファスベンダー)のほか、
広報担当のやり手女史ジョアンナ(ケイト・ウィンスレット)、
Apple Inc.の共同設立者、スティーブ・ウォズニアック(セス・ローゲン)、
Macintosh開発チームの主要メンバー、アンディ・ハーツフェルド(マイケル・スタールバーグ)、
Apple Computerの社長、ジョン・スカリー(ジェフ・ダニエルズ)、
ジョブズとの間に生まれた娘の認知を求めるクリスアン・ブレナン(キャサリン・ウォーターストン)、
そしてその娘のリサ。

スティーブ・ジョブズについて予備知識のない人は、
アシュトン・カッチャーがジョブズ役を務めた2013年版と併せて観ると、
話がわかりやすいと思います。

Facebookの創設者マーク・ザッカーバーグを描いた『ソーシャル・ネットワーク』(2010)同様、
天才と称される人はその人格を非難されることが多く、
実際にいけすかない奴も多いのでしょう。
だけど、プレゼンの席で感謝してもいない人に謝辞を述べろと言われて
なんでやねんと内心は思っている人も多いのではと思ったり。

謝辞といえば、エンドロールでリドリー・スコットに“Thanks”となっていました。
何をしてあげたの?
そのほか、ジョブズがアラン・チューリングのポスターを飾っていたのも興味を惹かれました。

人格と才能は共存するのか。面白い問いかけです。

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『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』

2016年02月25日 | 映画(さ行)
『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』(原題:Sherlock:The Abominable Bride)
監督:ダグラス・マッキノン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ,マーティン・フリーマン,ユーナ・スタッブス,
   ルパート・グレイヴス,マーク・ゲイティス,アンドリュー・スコット他

大阪ステーションシティシネマで『クーパー家の晩餐会』を観終わり、
ふたたびTOHOシネマズ梅田、今度は別館ではなく本館で。
映画のハシゴに重きを置くと、まともに食事する時間がないから、
この日の私が家で摂った朝食以外に食べたものといえば、
レッドブル(桜味を試しましたがもう要らん)、豆乳、トマトジュースのみ。
どうせ晩はまたいっぱい飲んでいっぱい食べるからいいのです。

さて、イギリスBBC製作のTVドラマシリーズ“SHERLOCK”。
カンバーバッチの名前を広く知らしめるきっかけとなりましたが、私は未見。
もしも1話観てハマってしまったら、映画と本につぎ込む時間を削らねばなりません。
それが恐ろしくてなかなか手を出せないTVドラマ。

本作はそもそもは劇場用ではなく、TVドラマの特別編。
シリーズが日本でも人気を博したことから、劇場公開しちゃえということになったらしい。
マニア向けと称して小ネタの披露に始まり、
これまでの“SHERLOCK”の映像が駆け足で紹介されます。
しかしもともとがTVドラマの延長だから、初めて観る人には向きません。
ベネディクト・カンバーバッチマーティン・フリーマンも大好きだけど、
それだけで観るにはいくぶんツライ作品です。

1895年、冬のロンドン。
シャーロック・ホームズのもとへレストレード警部が持ち込んだのは世にも奇妙な事件。
エミリア・リコレッティという、その日結婚式を挙げたばかりの花嫁が、
夫トーマスの目の前で銃で頭を撃ち抜いて自殺。
ところがその夜、トーマスの前に死んだはずのエミリアが現れ、トーマスを射殺したのだ。

死体安置所のエミリアは間違いなくエミリア本人。
トーマスを殺したのはエミリアの幽霊なのか。
犯人が幽霊であるわけがない、絶対に人間の犯行だとホームズは言うが、
その後も同様の事件が相次ぎ、人々は大騒ぎ。

そんな折り、様子がおかしい夫を助けてほしいという依頼が舞い込む。
どうやらリコレッティ事件と関係があるようだと踏んだホームズは、
ワトソンを連れて依頼人の屋敷へと乗り込むのだが……。

ドラッグをやっているホームズの実体験シーンなのか、夢の中なのか、
話があっちこっちに飛ぶので、初心者にはついて行くのが大変。
肝心の謎解きの部分も昔に読んだことがあるからなのかどうか、
先が予想できてしまって心躍るというふうには行きません。
それよりも口裂け女ばりの花嫁の姿が怖くて怖くて。
個人的には『残穢 住んではいけない部屋』よりも背筋凍る映像だったかも(笑)。

本編終了後には俳優へのインタビュー映像付き。
TVドラマシリーズファンにはいいかと思いますが、
特に面白いインタビューというわけでもなく、
私は早く帰らせてほしくなっちゃいました。

イマイチだったから、逆にTVドラマのほうを観たくなり。
もしかして、私、術中にハマってる!?

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『クーパー家の晩餐会』

2016年02月24日 | 映画(か行)
『クーパー家の晩餐会』(原題:Love the Coopers)
監督:ジェシー・ネルソン
出演:ダイアン・キートン,ジョン・グッドマン,アラン・アーキン,エド・ヘルムズ,
   ジェイク・レイシー,アンソニー・マッキー,アマンダ・セイフライド,
   ジューン・スキッブ,マリサ・トメイ,オリヴィア・ワイルド他
声の出演:スティーヴ・マーティン

前述の『X-ミッション』をTOHOシネマズ梅田別館アネックスで観たあと、
そぼ降る雨を回避して、地下経由で大阪ステーションシティシネマへ。
毎度過密なスケジュールで映画のハシゴをしていると、
どこを通って劇場間を移動すればよいのか詳しくなります。(^o^)

今ごろクリスマスの話って、もう少し前倒しにできんかったんかいなと思いますが、
錚々たる顔ぶれに惹かれて観に行きました。ちょっと錚々すぎました。(^^;

クリスマス・イブの夜は、家族が一堂に会して晩餐会を開くのがクーパー家の習わし。
それぞれに問題を抱える家族たちが現地へと向かい、共に過ごすまでが描かれます。

まずはサム(ジョン・グッドマン)とシャーロット(ダイアン・キートン)。
40年連れ添った夫婦で、子どもと孫に恵まれたが、熟年離婚の危機に直面中。
サムの長年の夢だったアフリカ旅行にシャーロットがついていこうとしないから。
シャーロットはどうしても子離れできずにいるのだ。

シャーロットの妹エマ(マリサ・トメイ)は独り者。
幼いころから姉に劣等感を抱きつづけ、そんな姉に高価な贈り物をしたくなくて、
思わず百貨店で万引きしてしまう。
彼女を警察へ連行することになったウィリアムズ巡査(アンソニー・マッキー)は
ゲイであることを母親にカミングアウトできずに悩んでいる。

サムとシャーロットの長男ハンク(エド・ヘルムズ)は妻と別居、
多感な時期の息子2人を育てている途中だというのに、このたび失業。
金がないから息子に希望のクリスマスプレゼントも買ってやれない。

シャーロットの父バッキー(アラン・アーキン)は、とあるカフェの常連。
日に一度、多いときには二度そこへ寄ることもある。
というのもウェイトレスのルビー(アマンダ・セイフライド)と会うのが楽しみだから。
ルビーのほうもバッキーと会うのを楽しみにしているが、今日でこの店を辞める予定。
もっと早くバッキーに知らせるはずが当日になってしまい、
すねたバッキーと喧嘩別れになってしまいそう。

サムとシャーロットの長女エレノア(オリヴィア・ワイルド)は不倫中。
娘に幸せな結婚を望む母と会いたくないが、晩餐会に欠席するわけにはいかない。
早めについた空港で時間を潰しているときに、軍人ジョー(ジェイク・レイシー)と出会う。
どうか一晩だけ恋人のふりをして晩餐会に一緒に出席してほしいと頼む。

家族同士でも秘密や弱みに気づかれたくなくて、誰もがあたふた。
そんな様子を見つめる愛らしい犬のラグスの声をスティーヴ・マーティンが担当。

悪くはないのですが、あまりに出入りが多すぎて、ひとつずつが心に響きません。
女性陣がやかましすぎるのも難点。まぁ女ってこんなものでしょうけれど。

それでも時折しんみりして、いいなぁこんなカップルと思えたのはジョーとエレノア。
ジョー役のジェイク・レイシーに見覚えはなかったはずが、
調べてみたら『キャロル』のひとりよがりな兄ちゃんでした。
役柄が替わればこんなにも思いやりのある素敵な男性に見えるのですね。

バッキーとルビーも素敵です。
普段の私なら、こんな老齢で若いネエちゃんとどうにかなろうなんてと、
ジジイの妄想を非難するところですが、
アラン・アーキンが演じると、そうなるどころかむしろ微笑ましい。新発見。

会話をお楽しみください。そうとうかしましいけど。

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