夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

今年観た映画50音順〈わ行〉

2014年12月31日 | 映画(わ行)
《わ》
『我が家のおバカで愛しいアニキ』(原題:Our Idiot Brother)
2011年のアメリカ作品で、劇場未公開。
私の「結構気になる俳優」、ポール・ラッドの主演作。
バカ正直な天然男ネッドは、親しい警官から大麻を分けてほしいと懇願され、
あまりに辛そうな相手の顔を見て大麻を差し出したところ、ブタ箱へ。
出所して恋人のジャネットのところへ帰ると、すでに彼女には新しい恋人が。
住むところを失ったネッドを、妹のリズ、ミランダ、ナタリーが交代で引き取ることに。
しかし、予想どおり、兄はトラブルメーカーで……。
サンダンス映画祭でお披露目されたさいには、観客と批評家の両方から絶賛を浴び、
ハーヴェイ・ワインスタインが全米配給権と世界のセールス権を獲得したそうな。
クエンティン・タランティーノも自身の年間ベスト10に選出しています。
そこまで優れた作品なのかと聞かれるといささか疑問ですが(笑)、
根っからの善人で正直にしか生きられないネッドはどうにも憎めず、
彼を慕う甥っ子とゲームをするシーンはしんみりしました。
たとえバカでも正直であればいいじゃないか、そんなふうに思える1本です。

《を》《ん》
なし!
去年は初めて「ん」で始まる作品をご紹介できましたが、今年は無理。
《を》も《ん》も私が生きている間にはもうないのでは。

12月19日までに劇場で観た映画が194本、その後、昨日までに14本観て、
劇場鑑賞本数は208本となりました。
一昨年が146本、去年が163本、毎年これ以上は無理だと思っていたのに、
ダンナの出張がほとんどなかった今年、これだけ観られたのは不思議。
振り返ってみると、1ヶ月フリーパスポートをつくって以降、
「観ようと思ったら観られたのに観なかった」のはおそらく1本だけ。
仕事帰りに2本ハシゴできたのに、2本とも観たら日付が変わるので止めてしまった『マチェーテ・キルズ』。
これはまだDVDでも観ていないのでした。やっぱり劇場で観ときゃよかった。

DVDで観た本数は170本で、合計378本。
生まれて初めて劇場鑑賞本数がDVD鑑賞本数を超えました。
ちなみに『収容病棟』は前後編別に料金を取られていますが、1本と数えています。
これは生涯初、劇場で客同士の喧嘩を見た思い出深い作品です(笑)。

まだ今日は半日以上残されているので、DVDをあと何本か観られないこともないですが、
昨日読みはじめた『ゴーン・ガール』下巻、
年内に156冊目のこの本を読み終えてしまいたいので、映画は378本で終了ということで。

今年もおつきあいをありがとうございました。
どうぞ良い年をお迎えください。

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今年観た映画50音順〈ら行〉

2014年12月30日 | 映画(ら行)
《ら》
『ラストミッション』(原題:3 Days to Kill)
原案と脚本を手がけたのはリュック・ベッソン、主演はケヴィン・コスナー
ベテランCIAエージェントのイーサンは、悪性の嚢胞に冒されて余命数カ月を宣告される。
仕事ゆえこれまで家族との時間を持つことができず、
妻のクリスティンと思春期の一人娘ゾーイから愛想を尽かされて長らく別居中。
せめて残された時間を家族と過ごしたいと、妻子のいるパリへ向かう。
ところが凄腕の女エージェントであるヴィヴィが彼の前に現れ、
イーサンの病に効き目があるとおぼしき試験薬をエサに、新たな仕事を持ちかけてくる。
それは、超大物テロリスト、ウルフを殺害せよというもの。
ウルフの居場所を見つけるため、まずはその側近アルビノを追うのだが……。
ずいぶんくたびれた感のあるケヴィン・コスナーですが、まだまだ大丈夫そう。
仕事に取りかかりながら娘の信頼を得るべく奮闘する様子がそれなりに楽しい。
ゾーイ役のヘイリー・スタインフェルドは『トゥルー・グリット』(2010)の子役。
どこか親しみを感じる容貌の彼女、大人になったものだなぁと感慨深く。

《り》
『リーガル・マインド 裏切りの法廷』(原題:The Trials of Cate McCall)
敏腕弁護士ながら、日々のストレスによってアルコール依存症となったケイト。
それゆえキャリアばかりか愛娘の養育権も失ってしまう。
老齢の先輩弁護士ブリッジスの支えで更生を目指すケイトに舞い込んだ依頼は、
友人の喉を切り裂いたとされる殺人犯の女性レイシーの弁護。
圧倒的に不利な状況だったが、必死に無実を訴えるレイシーと面会を重ねるうち、冤罪を確信。
ケイトは事件の真相究明に乗り出すのだが……。
無実を勝ち取ってみたら、実は証言はすべてレイシーの嘘、レイシーが犯人。
過去に無実の男性に濡れ衣を着せてしまった経験のあるケイトの葛藤は興味深く、
法廷劇はそれなりにスリリング。
主演は相変わらず綺麗なケイト・ベッキンセール、彼女がお好きな方はどうぞ。
が、私が何よりも気になったのはブリッジス役のニック・ノルティの赤ら顔。
これは酒焼けなんでしょうかね。血圧高そうで、倒れるんじゃないかと心配。

《る》
『ルノワール 陽だまりの裸婦』(原題:Renoir)
2012年のフランス作品。
印象派の巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワールの晩年を映画化。
1915年、フランス南部、風光明媚な保養地コート・ダジュール。
70代半ばに差しかかっていたルノワールは、病に冒されて絵筆を持つこともままならない。
そのうえ最愛の妻に先立たれて失意の内にいる。
そんな彼の目の前に突然現れた若い娘アンドレは、
生前の彼の妻から夫のモデルを引き受けるように言われていたと主張する。
弾けるような彼女の美しさに創作意欲をかき立てられたルノワールは、
筆を手に取ると裸婦像を描きはじめるのだが……。
アンドレと恋に落ちるルノワールの次男ジャンが有名な映画監督とはつゆ知らず。
ジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォー
ロバート・アルトマンなど錚々たる映画監督に影響を与えた人なのですね。
映画は美しいけれど退屈で、ジャンのほうに興味を惹かれました。

《れ》
『レイク・モンスター 超巨大UMA出現!』(原題:Legendary: Tomb of the Dragon)
イギリス/中国作品で、劇場未公開。
生物学者のトラヴィスは、カムチャッカ半島での調査中に巨大なクマに襲われ、
逃げきれなかった最年少クルーのスコットが死んでしまう。
訴訟を余儀なくされてヤケ気味のトラヴィスを訪ねたのが弁護士のダグ。
てっきり訴訟の件だと思いきや、意外にもダグが持ってきたのは仕事の話で、
中国で発見された未確認生物を調べてほしいとのことだった。
トラヴィスがかつての仲間であるケイティとブランドンに声をかけると、
ふたりは意気を取り戻したトラヴィスの姿に喜び、一緒に現地へ。
しかしそこには未確認生物ハンターのハーカーもいた。
どんな生物であろうと生かして研究に役立てたいトラヴィスたちに対し、
危険な生物はただちに殺したいハーカーとは相容れず……。
トラヴィス役にスコット・アドキンス、ハーカー役にドルフ・ラングレンという、
新旧アクションスターを配置。
徹底したB級作品で、こんなところでドルフは何をしとるねんという感じですが、
こんな作品で主役を張らされたスコットも本意ではないはず。(^^;

《ろ》
『ロボット・キッカーズ』(原題:Robokicks)
初体験です、マレーシアのアニメーション作品。
イワン、サボック、ズールの3人はサッカーが得意な仲良し小学生男子。
サボックはこのところ“キングダム・ヒル”というゲームにも夢中だが、
ゲームの中ではとんでもないことが起きていた。
メディカ王が治めるキングダム・ヒルで、乗っ取りを狙うヴァイラスが暴れ、
王と王妃は拉致されてしまったのだ。
なんとか逃げたアマンダ姫は、救世主“プウィラ・スリア(太陽の英雄)”を探すうちに、
ゲームの中から抜け出して、イワンたちのもとへたどり着く。
イワンたちはアマンダのことを幼い頃に会ったきりの従妹シティと勘違い。
やがてヴァイラスがアマンダを追ってこちらの世界へ。
事情を知ったイワンたちは、半信半疑ながらもキングダム・ヒルを救おうと立ち上がるのだが……。
絵はわりと好み、ストーリーもなかなかに洗練されていて楽しい。
何より面白いのはマレーシアならではの衣装や髪型。
少年たちはどこの国とも代わり映えしない格好ですが、女性や老人には民族衣装の人も。
それから、敵に浴びせるのがドリアン攻撃だったりして笑えます。
“アイス・エイジ”や“リロ&スティッチ”のパクリかと思われるキャラもご愛敬。
マレー語のアニメを観るのは初めてだったので、楽しかったです。

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今年観た映画50音順〈や行〉

2014年12月29日 | 映画(や行)
《や》
『闇の帝王DON ベルリン強奪作戦』(原題:Don 2)
2011年のインド作品。
インドのスーパースター、シャー・ルク・カーンが闇社会の帝王を演じる、
『DON 過去を消された男』(2006)の続編。
アジア全域の麻薬ビジネスを牛耳るドンは、無敵の知力と腕力を持つ。
ドンが今回狙うのは、ドイツ中央銀行の地下金庫に保管されるユーロ紙幣の原板。
彼の進出を恐れるヨーロッパの犯罪組織は、敵味方なく一旦手を組み、
ドンを抹殺しようと躍起に。あちこちでドン暗殺を企てる。
一方、インターポールの女性捜査官ロマもドン逮捕に執念を燃やし……。
148分は無駄に長い気がしますが、ボリウッドだもの、歌と踊りは大事(笑)。
ロマ役はプリヤンカー・チョープラ、
『バルフィ!人生に唄えば』で知的障害を持つヒロインを演じた元ミス・ワールド。
同一人物とは思えず、ボリウッド女優の凄さをここでも感じます。
彼女の上司役、これもまた見たことのある人だと思ったら、
『マダム・マロリーと魔法のスパイス』のパパでした。楽し~!

《ゆ》
『雪の女王』(英題:The Snow Queen)
2012年のロシアのアニメーション作品。
日本では未公開でしたが、DVD化は『アナと雪の女王』の大ヒットのおかげ?
氷の心を持つ雪の女王は、その存在を危うくする魔法の鏡の製作者一家を襲う。
両親は冷たい風に吹き飛ばされて死亡。
姉のゲルダとまだ赤ん坊のカイは生き残るが、離ればなれとなってお互いの生死も知らぬまま。
ところがある日、孤児院で再会。自分たちが姉弟であることがわかる。
あの鏡の製作者の息子を生かしてはおけぬと、
雪の女王は奴隷扱いしているトロールにカイをさらってくるように命令。
しかし、本当に魔力を持っていたのはカイではなくゲルダのほう。
ゲルダとカイを騙して雪の女王のもとへ連れて行くつもりだったトロールは、
ふたりと過ごすうちにこんなことは間違っていると思うようになり……。
派手さはありませんが、丁寧につくられています。
1957年版の同名ロシアアニメも観てみたい。

《よ》
『ヨコハマ物語』
グリーンキーパーとして勤めあげた良典(奥田瑛二)が定年退職を迎えた日、
帰宅すると妻(市毛良枝)が亡くなっていた。
四十九日の墓参時に、墓地で七海(北乃きい)と出会う。
七海はアマチュアバンドのマネージャーだが、
自分が育てたバンドのボーカルが引き抜かれ、今は住む場所にも食べるものにも困る生活。
良典が一軒家で一人暮らしをしていると知り、なかば強引に居座る。
その後、七海は良典に何の相談もなく、路頭に迷っていた母子を連れ込むわ、
まだ部屋が余っているからとシェアハウスの話を決めてくるわで……。
ちょっぴり不幸な人たちが、同じ家で生活をともにして癒やされます。
特に高学歴ながら仕事ができないOL、麻子役の菜葉菜が個性的でおもしろい。
多分にクサイ印象はありますが、万人受けする作品ではないかと。

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今年観た映画50音順〈ま行〉

2014年12月28日 | 映画(ま行)
《ま》
『マイ・マザー』(原題:J'ai tué ma Mère)
もはや目が離せなくなった『わたしはロランス』グザヴィエ・ドラン監督。
2009年、彼が19歳のときのデビュー作で、昨年11月に公開、今年DVD化。
監督本人主演、自らの半自伝的な物語だそうです。
ユベールはカナダ・ケベック州で生まれ育った17歳、母親と二人暮らし。
ゲイの彼は、2カ月前から同じ高校にかようアントナンとつきあいはじめ、関係良好。
家に男を連れ込んでいるアントナンの母親も、ふたりの交際に理解を示している。
しかし、ユベールの母親にはそんな話は決してできない。
ユベールが許しがたいのは母親の存在で、着るもののセンスもインテリアのセンスも皆無、
食べ方にも品がなく、毎日毎日小言ばかり。
かつては母親のことが大好きだったはずなのに、今は話せばイライラする。
どうやって自分の気持ちに折り合いをつけてゆけばいいのか。
罵り合う母と息子の姿に不快感を煽られても不思議はないのですが、なぜかそうは感じず。
英題は“I Killed My Mother”で、意味をしみじみ考えさせられます。
やっぱり天才だと思います、この監督。

《み》
『南の島の大統領 沈みゆくモルディブ』(原題:The Island President)
2011年のアメリカ作品。昨秋、大阪はナナゲイで上映、気になっていました。
インド洋に浮かぶ1,200の島から成る小国モルディブ。
このまま地球温暖化が進むと、国ごと海に沈んでしまうかもしれない。
そんなモルディブで2008年に大統領に就任したモハメド・ナシードの任期1年目に密着。
彼が国消滅の危機と闘う話だと思っていたら、
彼の就任まで30年間、モルディブはガユーム大統領の独裁政権にあったと知ってビックリ。
美しいリゾート地だというぐらいの認識しかなくてすみませんでした。
本作を観て応援したい気持ちでいっぱいになったけれど、ナシードは2012年に辞任、
現在はまたガユームの親族が大統領だと聞き、悲惨な気分になりました。

《む》
『ムービー43』(原題:Movie 43)
ピーター・ファレリーの企画によるアメリカ作品。
脚本家のチャーリー(デニス・クエイド)が、映画会社社員のグリフィン(グレッグ・キニア)のオフィスを訪問。
自分の脚本を買えと言うが、酷い内容のものばかり。
グリフィンが断るとチャーリーは銃を持ち出し、脅すという手段に出て……。
チャーリー脚本の案として披露されるオムニバス作品は、お下劣きわまりなく、
よくもこんな話に超メジャー級の俳優ばかりが出演したとひたすら感心。
ケイト・ウィンスレットのデート相手のヒュー・ジャックマンののどぼとけがまるでタマ袋だったり、
クロエ・グレース・モレッツがボーイフレンド宅で初潮を迎えてドタバタしたり、
ハル・ベリーとスティーヴン・マーチャントがブラインドデート、
月並みな会話はつまらないと「真実と挑戦ゲーム」で無茶をしたり。
こんな豪華キャストなのにひっそり公開して大コケしたのも納得。
みんなたまにはこんなおバカに走りたくなるのかも!?

《め》
『名探偵ゴッド・アイ』(原題:盲探)
ジョニー・トー監督による香港作品。
盲目のジョンストンは、卓越した推理力を持つ名探偵で、数々の難事件を解決してきた。
しかし、その性格は問題があると言わざるを得ず、自己チューこのうえない。
そんなジョンストンに、女刑事のホーが少女失踪事件の捜査を依頼。
ホーは、かつて自分の友人で、突然姿を消してしまった少女がどうなったのか調べたいと言うのだ。
肉親の遺産を相続して金には不自由していないホーは、このために休暇を取り、
ジョンストンの助手として捜査を始めるのだが……。
コミカルなアンディ・ラウの演技に目が釘付け、
サミー・チェンとのコンビも楽しく、130分の長さは感じません。満足度高し。

《も》
『燃える仏像人間』
ナナゲイで上映していたさいに気になって仕方がなかった作品。
京都在住の新人クリエイターだという宇治茶氏の長編デビュー作だそうで。
実写シーンもある摩訶不思議なテイストの人形劇風アニメ。
寺のひとり娘・紅子が帰宅すると両親が惨殺されていた。
両親の古い知人だという別の寺の住職・円汁が紅子を預かると申し出てくれるが、
実はこの円汁こそが両親を殺した犯人で……。
仏像と人間を融合させて、より優れた生命体になり、世界を征服しようとしている円汁。
人間と千手観音が融合したらどんなことになるか想像してみてください。
それが映像で表現される気味悪さ。しかも動きは人形劇。
確かにユニークではありますが、私はもうこれ1本でじゅうぶんなのでした。

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今年観た映画50音順〈は行〉

2014年12月27日 | 映画(は行)
《は》
『ハンナ・アーレント』(原題:Hannah Arendt)
2012年のドイツ/ルクセンブルク/フランス作品。
ホロコーストを生き延びたユダヤ人哲学者のハンナ・アーレントは、
1960年代初頭、ナチスの重要戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判を傍聴し、
その手記をニューヨーカー誌に掲載することに。
極悪非道な人間を想像していたのに、実際に目にしたアイヒマンは凡庸な小役人。
ハンナがそのようにアイヒマンを評し、
また、ユダヤ人自治組織の指導者がアイヒマンに協力していたことにも言及したところ、
ユダヤ人社会から激しいバッシングに晒される。
彼女が受けたバッシングの様子と、それでも彼女が訴えつづけた信念。
“思考の風”がもたらすのは知識ではなく、善悪を区別する能力であり、
美醜を見分ける力なのだということ。
考えることが人間を強くするのだという彼女の信念に心が動かされました。

《ひ》
『非金属の夜』
昨年6月に公開された2012年の作品。
渋谷でボーッとしていたナツは、ミヅキという同年代の女性から声をかけられる。
放っておいてほしいと言ったのに、どうせ行くところないんでしょうと、
ミヅキはナツを強引に引っ張って、行きつけの店数軒に連れてゆく。
空が白みはじめた頃、つきあってくれたことにミヅキは礼を言い、ナツと別れる。
その直後、ミヅキが自殺したことを偶然知ったナツは、
ミヅキについて知りたいと思い、昨晩訪れた店を回ってみるが、誰も何も知らない。
その途中、公衆トイレに寄った折りに、拳銃を見つけて……。
ナツ役はKAT-TUNの田中聖の従姉妹で、塚本愛梨という大型新人モデルなのだそうな。
その他、ナツに殺してくれと頼む青年役に劇団EXILEの秋山真太郎。
モノクロの冷たい雰囲気が希薄な人間関係を示しているかのようですが、
ものすごく嘘っぽくてそらぞらしくて、「で?」と言いたくなります。
同じ渋谷を舞台にした作品では、『渋谷』(2009)のほうが何倍も良し。

《ふ》
『フィルス』(原題:Filth)
イギリス作品。
腹黒刑事ブルースは、同僚や友人を陥れる裏工作に余念がない。
人種差別主義者かつセックス&アルコール&ドラッグ中毒のろくでなし。
担当することになった日本人留学生殺人事件で手柄を挙げれば、
同僚たちを出し抜いて昇進できるにちがいないと意気込むのだが……。
しばしば映し出される、ブルースを昂揚させる妻の姿。
しかしこれ、実は妻に逃げられたブルースの妄想で、
妻の気持ちに近づきたいブルースは、女装して徘徊していました。
最後は錯乱状態にある女装のブルースが犯人と対決、事件は解決するものの、
ブルースに精神疾患があることがバレて昇進は見送りに。
首を括るシーンで終わるという、とんでもない後味の悪さ。
だけど、正気ではいられない男の様子がよくわかり、おもしろい1本でした。

《へ》
『変身 Metamorphosis』
市民投稿型ニュースサイト“8bitNews”を主宰する、
元NHKのアナウンサーでジャーナリストの堀潤が監督・編集・撮影・脚本・ナレーションすべてを担当。
2011年の福島第一原発事故、1979年のスリーマイル島原発事故、
1959年のサンタスサーナ原子炉実験場事故を取材して、
半世紀の間に起きたメルトダウン事故の真相に迫るドキュメンタリー作品。
福島では、多重下請ピンハネ構造の事実を調査すべく、
一般の投稿者だった林哲哉氏がそれまでの会社を辞めてまで現場に乗り込み、
作業員として採用されるさいの驚愕の実態を伝えています。
原発監視団体“スリーマイルアイランド・アラート(TMIA)”のスタッフが、
「どんな事故であろうと、忘れ去られる。忘れ去られても、終わることはない。
忘れ去られるから、せめて事故が起きた日のことは覚えておかなくては」と話していたのが印象に残りました。

《ほ》
『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』(英題:White Tiger)
地味ながら非常に見応えのある2012年のロシア作品。
第85回アカデミー賞外国語映画賞ロシア代表作品です。
第二次世界大戦末期、砲撃を受けたソ連軍の戦車内で発見された黒焦げの戦車兵。
体の9割以上に火傷を負い、記憶を喪失していながら、驚くべき快復を見せたその男を、
みんなが“イワン・ナイジョノフ(=「発見されし者」の意)と呼ぶように。
記憶は失っても戦車手としての腕前は変わらず、素晴らしいのひと言。
ドイツ軍の重量戦車で神出鬼没の“ホワイトタイガー”を仕留めるべく、
フェドトフ少佐はイワンを車長に抜擢するのだが……。
ホワイトタイガーの出没の仕方はまるで幽霊で、ホラー並みに怖い。
戦車と話ができるようになったイワンの姿もちょっとしたファンタジーです。
だけど、戦争とはこういうものなのかもしれません。
戦場にいた者は、いつまでもその姿に取り憑かれ、
自分で敵を焼き払わないかぎり、20年後、50年後、100年経とうがまた目の前に現れる。
戦車オタクもそうでない人も一見の価値ありの優れた戦争映画だと思います。
『フューリー』と併せてぜひどうぞ。

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