夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『メッセージ』

2017年05月31日 | 映画(ま行)
『メッセージ』(原題:Arrival)
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:エイミー・アダムス,ジェレミー・レナー,フォレスト・ウィテカー,
   マイケル・スタールバーグ,マーク・オブライエン,ツィ・マー他

前述の『ピーチガール』を観て後悔、
でも1シーン泣けたからまぁええかと気を取り直し、
この日の本命を同じくTOHOシネマズ伊丹にて。

『灼熱の魂』(2010)でその余韻に圧倒され、
以降、私は必ず劇場で観るようにしているドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。
原作は人気SF作家テッド・チャンの短編集に収録された作品。
第89回アカデミー賞では8部門でノミネートされたものの、
受賞は音響編集賞のみにとどまりました。

ある日、世界の12カ所に巨大な楕円形の物体が飛来する。
敵か味方か、地球に飛来した目的は何なのか。
アメリカをはじめ、中国、ロシア、日本など、
12カ所は情報を共有して対処することに決定するが、
異星人の発する言語を理解できなければ話を進められない。

最愛の娘ハンナを亡くした言語学者ルイーズのもとへ、
米軍の大佐ウェバーが協力要請に訪れる。
同じく依頼を受けた数学者イアンとともに、ルイーズは物体内部へ。
7本足の異星人と接触すると、彼らの言語の解読に没頭するのだが……。

シンプルなSF作品として観るべきではないと思われます。
そこに込められた監督からのメッセージ。
移民や難民が溢れ、異文化間の理解が求められるなか、
異星人と意思の疎通を図ることだって異文化理解。

異星人が人間に伝えたかったこと。
それを知ったルイーズが心に決めたこと。

もしも自分の、他人の、地球の未来がわかっていたらどうするか。
それでも輝いた一瞬は本物だから、迷わずその人生を。

これまた余談。
謎の物体の見た目が栗山米菓のお煎餅“ばかうけ”に酷似しているとの話に、
監督が「ご推察の通り、物体のデザインは“ばかうけ”に影響を受けたものです」と
コメントしたというのがいいですね。茶目っ気があります(笑)。

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『ピーチガール』

2017年05月29日 | 映画(は行)
『ピーチガール』
監督:神徳幸治
出演:山本美月,伊野尾慧,真剣佑,永野芽郁,本仮屋ユイカ,
   水上剣星,菊田大輔,升毅,菊池桃子他

ちょっと前、やたら升毅がバラエティ番組に出ているなと思ったら、
本作の番宣だったのですね。なるほど。

TOHOシネマズ伊丹で2本ハシゴの1本目。
本命は2本目で、その前に何でもいいから観ようと思い、時間の合った本作を選択。
鑑賞時間中の大半をイライラして過ごし、観たことを後悔(笑)。
せめて男性陣が私の好みのタイプならよかったけれど、
もし私がいま高校生だったとしてもタイプじゃないんだもの。
今後は、何でもいいときでもタイプが出ているのを選ぶことにしよう。

原作は上田美和の同名少女漫画。
台湾でもTVドラマ化されるほどの人気なのだそうな。

女子高生の安達もも(山本美月)。
ギャルっぽい外見ゆえ「遊んでいる」と思われているが、本当はその真逆。
中学生のときから“とーじ”こと東寺ヶ森一矢(真剣佑)に一途に想いを寄せている。

そんなももだから、学園一のモテ男子でチャラ男の、“カイリ”こと岡安浬(伊野尾慧)になど
まるで興味がなかったのに、しばしばカイリから熱い視線を送られる。
そのせいでカイリの取り巻きから敵視されて酷い目に。
さらにはカイリから突然キスされて、学校中の噂になってしまう。

ももの様子をくまなく見つめ続けているのは、
純真無垢な外見ながらその正体は腹黒の柏木沙絵(永野芽郁)。
ももが幸せになることを許せない沙絵は、
もものほしがるものならモノでも人でも何でも横取りしてきた。
ももがとーじのことを好きだと知った沙絵は罠を仕掛けるのだが……。

原作がどうだかは知りませんが、沙絵が腹黒過ぎ。
馬鹿正直でお人好しのももにもイライラして、途中で退場したくなったほど。
そのうえ伊野尾くんも真剣くんもタイプじゃないでしょ。
私はいったいどこを楽しめばいいのよ。

とさんざんなことを書いているけれど、1カ所泣いたんです。
ラスト近くのケーキのシーン。わりとボロ泣き(笑)。
いきなり踊り出した『PとJK』よりはマシか。

そうそう、そして1カ所ものすごく笑いました。
日焼けを気にしてクリームを塗りすぎ、白い顔になったももを見て沙絵がひと言。
佐清(スケキヨ)になってるよ」。
ここで笑ったのはまちがいなく私だけ。
原作になかったものを監督が入れたとも思えず、原作者はいったいいくつなの(笑)。

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『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

2017年05月27日 | 映画(ま行)
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(原題:Manchester by the Sea)
監督:ケネス・ロナーガン
出演:ケイシー・アフレック,ミシェル・ウィリアムズ,カイル・チャンドラー,
   グレッチェン・モル,ルーカス・ヘッジズ,ベン・オブライエン他

なんばパークスシネマで3本ハシゴの3本目。
『スプリット』『夜に生きる』と来て、〆に本作を。
この順で観て良かったと満足感いっぱいのハシゴでした。

前述の『夜に生きる』の監督・脚本・主演はベン・アフレック
その弟のケイシー・アフレックが主演。
兄ちゃんよりもカワイイ顔でモテそうなのに、活躍ぶりははるか下。
というイメージがありましたが、これはイイ。
第89回アカデミー賞では主演男優賞を受賞。大納得です。

アメリカ、ボストンの郊外。
アパートの便利屋リーは、その腕は認められているものの、
愛想がなさすぎて居住者としばしばトラブルを起こす。

そんなある日、兄ジョーが危篤との報せを受け、
故郷の港町マンチェスター・バイ・ザ・シーへとリーは車を走らせる。
すでにジョーは息を引き取ったあと。
ジョーの友人ジョージらの助けを借り、葬儀の段取りをすることに。

問題はジョーの一人息子で16歳のパトリック。
ジョーの遺言を聞きに弁護士を訪ねると、
パトリックの後見人としてジョーはリーを指名していると言う。
ジョーから事前に相談はなかったから、突然の話に戸惑うリー。
とりあえず葬儀を終えるまで町にとどまり、今後のことを考えるのだが……。

もともとは、ケネス・ロナーガン監督とマット・デイモンが共同で企画に乗りだし、
マット・デイモンが主演するという案があったようです。
しかし結局マットはプロデュースに回り、主演はケイシーに。
マットのほうが客を呼べる俳優かもしれませんが、いかにもすぎる。
これはケイシー主演にしたことが大正解。

冒頭は幼き日のパトリックと父親のジョー、
それにパトリックの叔父に当たるリーが船ではしゃぐ姿。
そのリーに暗い表情などかけらもなく、
いったいいつからリーはこんな無愛想な奴になったのか、
どんな事情があるのだろうと観客は考えます。

これをもしマットが演じていたならば、観客はもっと感情移入しやすいはず。
ケイシーは徹底して無表情で、その時点では感情移入できません。
それゆえ、過去のできごとがあきらかになり、
ケイシーの心の内が察せられるようになるとジワ~ン。

人生には、乗り越えようと思っても決して乗り越えられないこともある。
時がいくらかは癒やしてくれたとしても、忘れるなんて絶対にできないこと。
これもまた、「気持ちの整理をつける」までの過程。

「救われた」という台詞に涙が溢れました。
『追憶』の面々に言いたい。あからさまに嗚咽なんてしなくたって、
役者は哀しみも切なさも表現できるのですよと。

今月はまだ残っているけれど、たぶん今月観た映画の中でピカイチ。
すごく良かった&好きでした。

ところで余談。このタイトルの“マンチェスター・バイ・ザ・シー”って、
これごとごと町の名前だということ、ご存じでした?
私は「海のそばのマンチェスター」っちゅうタイトルなのだと思っていました。
無知な自分が恥ずかしい。すみません。(--;

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『夜に生きる』

2017年05月25日 | 映画(や行)
『夜に生きる』(原題:Live By Night)
監督:ベン・アフレック
出演:ベン・アフレック,エル・ファニング,クリス・メッシーナ,
   シエナ・ミラー,ゾーイ・サルダナ,クリス・クーパー他

なんばパークスシネマで3本ハシゴの2本目。
前述の『スプリット』はポイントで無料鑑賞、
本作は1,000円で観られるクーポン券を利用して鑑賞。

原作は人気ミステリー作家デニス・ルヘインの三部作のうちのひとつ。
ベン・アフレックが自ら脚本を書いてメガホンを取りました。
プロデューサーには本人とレオナルド・ディカプリオも名を連ねています。

1910年代、禁酒法時代のボストン。
警察幹部の息子として生まれたジョー・コフリンは、厳格な父親に反発。
不良仲間のディオンと組んで強盗を働いては金を稼ぐ日々。
ある日、アイルランド系ギャングが仕切る賭博場を襲撃したジョーは、
その場にいた女エマ・グールドと恋に落ちる。

エマはギャングのボス、アルバート・ホワイトの情婦。
密会を重ねていたのがバレ、二人が殺される寸前、
ジョーの父親がパトカーで現場に乗りつけ、アルバートはエマを連れて退散。
その前の銀行強盗の犯人としてジョーは逮捕されて刑務所へ。

エマはまちがいなく殺されただろう。
父親の尽力でたった3年で出所を果たしたジョーは、アルバートへの復讐を心に誓い、
アルバートと敵対するイタリアンマフィアのボス、マソ・ペスカトーレの傘下へ。
フロリダ州タンパへと乗り込むと、アルバートを潰しにかかるのだが……。

ラム酒をめぐってギャング同士が凄絶な闘いを繰り広げていた時代。
アルバートが牛耳っていたタンパを、ジョーは知恵を働かせて奪います。
ドンパチもまぁいいけれど、裏のかきかたが小気味よい。
しかも最初はただのチンピラで女たらしにしか見えなかったジョーが
意外に優しい心の持ち主でもあり、それがアダになると思いきや……てな感じ。

とはいうものの悪事は悪事。
人の恨みを多く買った人間が幸せいっぱいのまま終われるわけもなく、
ラストはちょっぴり切ない。

原作も読んでみたいと思いました。

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『スプリット』

2017年05月23日 | 映画(さ行)
『スプリット』(原題:Sprit)
監督:M・ナイト・シャマラン
出演:ジェームズ・マカヴォイ,アニャ・テイラー=ジョイ,ベティ・バックリー,
   ジェシカ・スーラ,ヘイリー・ルー・リチャードソン他

なんばパークスシネマからポイントの有効期限が間近ですとのDMが。
そんなにご無沙汰しているつもりはなかったけれど、
そっか、前回『スウィート17モンスター』はポイントで無料鑑賞したのでした。
有料鑑賞しなければ、ポイントの有効期限は延長されないのです。
これですよこれ、「なんばパークスシネマ地獄」(笑)。
TOHOシネマズではかかっていない作品もあったのでレッツラゴー。←古っ!
まずは本作をポイントで無料鑑賞。

ババァが怖すぎてワラけた『ヴィジット』(2015)の次はどんな手で?

女子高生のケイシー、クレア、マルシアは、友だちの誕生パーティーに出席。
人を避けているふしのあるケイシーは誰ともしゃべろうとせず、
クレアとマルシアがお情けで声をかけただけ。
車で迎えにきたクレアの父親は、ケイシーのことも放っておけず、
家まで送るからと3人とも同乗させる。

先に娘たちを車に乗せ、トランクに荷物を積もうとしていた父親は
突然見知らぬ男に襲われ、その男が運転席に乗り込んでくる。
眠らされた娘たちが目覚めると、そこは鍵のかかった薄暗い密室。

誘拐犯の男はデニスという名前と思いきや、
パトリシアという女性になりきっていることも。
かと思えばヘドウィグという男児のときもある。
顔は同じなのに、話し方やしぐさ、性格そのものまでコロコロ変わる。

実は彼は23の人格を持つ解離性同一性障害(多重人格)者で、
精神科医のフレッチャー女医のもとへかよっている。
フレッチャーを訪問するときは、バリーという男になる。
この病の唯一の理解者ともいうべきフレッチャーは、
バリーの様子がどこかおかしいことを感じ取って心配するが、
何が起こっているのかを突き止めることはできない。

密室でクレアとマルシアがパニックに陥る一方、
ケイシーだけは冷静に事態を分析しようとする。
3人が力を合わせたところで、デニスを倒すことはできないと、
ケイシーはまずはヘドヴィクを懐柔する作戦に出るのだが……。

まずまずの面白さですが、何もそこまで変身せんでも(笑)。
わりと普通の青年役が多かったジェームズ・マカヴォイのイメージが変わります。
笑ってしまうほどの変身で、そこまでされると怖くはないんだなぁ。

ケイシー役のアニャ・テイラー=ジョイが○。
陰を湛えた知的な感じで、キャピキャピしているところも見てみたくなる。
犯人と彼女の対峙シーンは良かったです。

これ、言っちゃっていいのかどうか不明ですが、
エンドロール後にノークレジットでブルース・ウィリス登場。
同監督の『アンブレイカブル』(2000)のときの格好と名前で。
監督の次作に出演するそうで、宣伝も兼ねた楽しい演出でした。

で、23も人格を持たせる必要はどこに?
名前すら一度も呼んでもらえない人格がほとんどなんですけど。

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