夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『愚行録』

2017年02月28日 | 映画(か行)
『愚行録』
監督:石川慶
出演:妻夫木聡,満島ひかり,小出恵介,臼田あさ美,市川由衣,
   松本若菜,中村倫也,眞島秀和,濱田マリ,平田満他

ダンナが2日間のみ国内出張。
2日目は空港まで車で迎えに行くから映画は観られないけれど、
1日目はダンナの実家へ寄ってから2本ハシゴすることに。
1本目は109シネマズ大阪エキスポシティにて。

原作は貫井徳郎の同名小説。好きな作家なので結構読んでいます。
ここ最近はつまらぬオチに拍子抜けする作品もありますが、
『追憶のかけら』、『乱反射』、『灰色の虹』など好きでした。
どれも重量級の内容で、物理的にも重い(笑)。上記3作は600~700頁。
しかも暗い。元気なときでなければ読むのが辛いほどです。

本作の原作も例に漏れず暗い。その内容は以下のとおり。

閑静な住宅街で起きた田向家という一家の惨殺事件
犯人の手がかりはつかめないまま一年が経過。
主人公は被害者夫妻と関わりのあった人々にインタビュー。
それに応じたのは、ご近所さん、夫人のママ友、夫の同僚、
夫妻の大学時代の同級生や恋人たちでした。

映画版も大筋では同じですが、原作の「仕掛け」のようなものはありません。
原作ではインタビューの間に謎の女性の独白が設けられたり、
冒頭に掲載される育児放棄で逮捕された女性と主人公の関係が伏せられたままだったり、
そんな仕掛けが映画版にはないので、むしろ単刀直入、わかりやすい。

ということで、映画版のあらすじを。

ある日起きた一家惨殺事件。
被害者は大手デベロッパーのエリート社員・田向浩樹(小出恵介)と
その妻・夏原(=旧姓)友季恵(松本若菜)、そして一人娘。
解決の糸口が見つからないまま、一年が経過しようとしている。

週刊誌の記者・田中武志(妻夫木聡)は、この事件の再調査をしたいと編集長に申し出る。
いま売れるのは芸能ネタ。一年も前の殺人事件の記事など誰も見向きもしない。
同僚は呆れた顔をするが、編集長は武志の申し出を了承する。

というのも、武志の妹・光子(満島ひかり)が育児放棄で逮捕されたばかり。
シングルマザーの光子は、三歳になる自分の娘にろくに食事を与えず、
娘は脳にまで異常を来して入院中。助かる見込みは低いらしい。
武志の気を紛らわすためにも集中できる仕事を与えてやらねば。
編集長のそんな計らいで、武志は事件の再調査を開始する。

武志は田向夫妻を知る人々に取材を申し込む。
武志がまず会ったのは、友季恵の大学時代の友人・宮村淳子(臼田あさ美)。
その後、浩樹の同僚だった渡辺正人(眞島秀和)、
淳子の元恋人でのちに友季恵に乗り換えた尾形孝之(中村倫也)、
浩樹の交際相手のうちの一人だった稲村恵美(市川由衣)らに話を聞く。
やがて浩樹と友季恵それぞれの意外な実像が浮かび上がってくる。

一方で武志は収監されている光子に面会。
弁護士の橘美紗子(濱田マリ)から武志と光子の境遇について尋ねられる。
もしも光子自身が虐待等を受けていたのなら、今回の件も合点が行く。
情状酌量の余地ありと認めてもらうためにも精神鑑定を受けるべきだと。
光子は精神科医の杉田茂夫(平田満)のもとへと送られるのだが……。

育児放棄で逮捕された光子と武志が兄妹であること。
独白の主が光子であることがはっきりと描かれている点が
原作と映画では大きく異なります。

しかしどちらが良いとか悪いとかいうことはなく、どちらもどん底の暗さ。
生まれついての不幸を背負い続ける兄妹には光が射すことはありません。
ふたりのことがわかるのはふたりだけ。

タイトルのとおり、そこにあるのは愚行だらけ。
人間の愚かさを突きつけられます。

普通、エンドロールの最後は監督の名前で〆られるもの。
キャストの次にひっそりと監督の名前が表示される作品はこれが初めてかも。
それも含めて、とことん暗いけれど印象に残る作品です。

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『キセキ あの日のソビト』

2017年02月26日 | 映画(か行)
『キセキ あの日のソビト』
監督:兼重淳
出演:松坂桃李,菅田将暉,忽那汐里,平祐奈,横浜流星,成田凌,
   杉野遥亮,早織,奥野瑛太,野間口徹,麻生祐未,小林薫他

大阪ステーションシティシネマにて、前述の『天使のいる図書館』とハシゴ。

素顔を隠して活動を続ける人気4人組アーティスト“GReeeeN”。
そのデビュー秘話を映画化したという青春もの。
GReeeeNの曲は通り一遍知っている程度なので、覆面アーティストだとは知らず。
しかも本作を観たあとに調べてみたら、主人公兄弟は高槻出身。
同じ北摂出身なんだと、ものすごく親近感が湧きました。遅い?(笑)

兄弟のジン(松坂桃李)とヒデ(菅田将暉)。
父親の誠一(小林薫)は市立病院に勤める厳格な医師で、
息子たちにも自分同様医者になることを求めている。

しかし、兄のジンはメタルバンド“ハイスピード”のボーカルとして活動。
誠一にどれだけ殴られようとも音楽をやめるつもりはない。
一方、弟のヒデは医大を目指して受験勉強に励む。

ある日、ジンのもとへメジャーデビューの話が舞い込む。
それでも認めようとしない父親と激しく対立、ジンはついに家を飛び出すが、
プロデューサーの売野(野間口徹)から売れる曲を書けと言われ、悶々。

ヒデは医大の受験に失敗して浪人、予備校通い。
成績は一向に上がらず、模試では軒並みD・E判定。
歯科医狙いに転向すると宣言すると、誠一は致し方ないが良しという反応。

一浪の末に晴れて歯科大生となったヒデは、
同級生のナビ(横浜流星)、クニ(成田凌)、ソウ(杉野遥亮)とともにバンドを組み、
自ら曲もつくりはじめる。
アレンジを頼まれたジンは、ヒデの才能を確信。
売野にヒデのバンドを売り込むと、ジン自身は裏方に回ることに徹する。

いよいよヒデたちのデビューが現実味を帯びてくるが、
誠一がそんなことを許すはずもない。
歯科大に通う身であることも考慮して、素顔を伏せたままデビューさせたいと
ジンは売野に掛け合うのだが……。

とにかく全然知らないことばかりだったので、とても興味深く観ました。
ジンとヒデの母親役には麻生祐未
ヒデとつきあうようになるレコード店のアルバイトに忽那汐里
ハイスピードのメンバーに奥野瑛太
重い心臓病を患う、誠一の患者役に平祐奈

人の命を救うことは医者にしかできないと思っている父親。
父親にジンが放つ言葉は「俺は心の医者になってやる」。
なれるよ、絶対。音楽ってすごいんだから。

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『天使のいる図書館』

2017年02月25日 | 映画(た行)
『天使のいる図書館』
監督:ウエダアツシ
出演:小芝風花,横浜流星,森永悠希,内場勝則,森本レオ,香川京子他

奈良県のご当地ムービー、しかも図書館が舞台と聞いていそいそと。
大阪ステーションシティシネマにて。

奈良県の中西部に位置する葛城地域。
大和高田市、御所市、香芝市、葛城市、広陵町でつくる葛城地域観光協議会は、
昨年4月25日に「葛城地域観光振興シネマプロジェクト」を発足。
地元の魅力を映画で伝えるべく、撮影はすべて葛城地域で。
奈良県では2月11日から先行して上映開始、
18日からは関東、東海、北陸、関西地区にて順次公開と相成りました。

広陵町立図書館の司書を務める吉井さくら(小芝風花)。
数字に強く、歴史の知識も並外れ、さまざまな資格を持つが、
他人とコミュニケーションを取ることが大の苦手で、
就職先を消去法で選んだ結果、司書になった。

ところが、図書館は思いのほか他人と関わらねばならない。
来館者から本についていろいろ聞かれ、
そのたびに知識だけに頼った返答をするものだから、みんなドン引き。
たとえば「泣ける本を教えてほしい」と言われたさくらは、
死刑や拷問の歴史が綴られた本を推薦。
さくら曰く、「泣けるかどうかは主観によるもの。痛みによる客観的涙は共通」。

そんなさくらを周囲は変人扱い。
上司の上嶋弘美(飯島順子)や同僚の森本舞子(吉川莉早)は
レファレンス窓口にさくらを置くのは危険だとすら考える。

ある日、開館時から本を借りるでも読むでもなくたたずむ老婦人にさくらは気づく。
彼女は昔この辺りに住んでいたという芦高礼子(香川京子)。
さくらが思いきって声をかけてみると、彼女は古ぼけた写真を差し出す。
そこには若かりし頃の礼子と誰か男性が写っていた。
葛城地区のことならすべて頭に入っているさくらは、
ただちにその写真の場所がどこかを言い当ててみせ、礼子をその場所へと案内する。
以来、礼子が一枚また一枚と差し出す写真の場所へさくらは同行。

一方、礼子が現れたのと同時期に周辺をうろつきはじめた青年(横浜流星)がいた。
村上春樹の『海辺のカフカ』に出てきそうな青年だからと、
彼のことをひそかに「カフカ」と呼ぶ図書館の職員たち。
そのカフカにどうもストーキングされているようだとさくらは思い込み……。

葛城地域の景観が美しく、人と人との交流も温かいドラマです。

図書館に勤め、本は好きだというさくら。
しかし主観によって書かれた本など意味がないと信じる彼女は、
小説はまったく読みません。
彼女が好きな本は、地図と辞書、図鑑なのですから。
そんなさくらがどう変わってゆくか。

惜しむらくは関西弁(笑)。
さくらの父親役の内場勝則が完璧な関西弁なのは当たり前。
母親役の小牧芽美も京都府の出身で問題なし。
ただ、大女優の貫禄がある飯島順子の関西弁がキショイ。
しゃべれないならば標準語で通してくれるほうがいいなぁ。
同じく図書館の職員を演じる森本レオのように。

ちょっとしたミステリーでもあり、その謎は爽やかに解けます。
切なさも含んだ優しいご当地ムービー。
奈良の方はぜひどうぞ。

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『マリアンヌ』

2017年02月23日 | 映画(ま行)
『マリアンヌ』(原題:Allied)
監督:ロバート・ゼメキス
出演:ブラッド・ピット,マリオン・コティヤール,ジャレッド・ハリス,サイモン・マクバーニー,
   リジー・キャプラン,マシュー・グード,アントン・レッサー,アウグスト・ディール他

TOHOシネマズ伊丹で2本ハシゴの2本目。
『君と100回目の恋』に若干うんざりしてエンドロールの途中で退出。
時間がかぶっていた本作の予告編終了まぎわのスクリーンへ。

監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)の大ヒットで
メジャー監督の仲間入りを果たしたロバート・ゼメキス。
あれを超えるヒット作を打ち出すのはむずかしいなか、
『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)でさらに名を上げました。
以降は製作にまわることが多かったようですが、
ここ数年は『フライト』(2012)、『ザ・ウォーク』(2015)などの監督作が。

最近のブラッド・ピット、小汚かったですよね。
『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)で
世の中にこんなに美しい男性がいるなんてと衝撃を受けて
から25年。
個人的には「ちょっと小汚くなったイケメン」ぐらいがタイプですが、
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)のブラピは汚すぎ。
オイシイ役のわりに、中年太り丸出しで髭ボーボー。
これがブラピだと気づかない人がいても不思議はないくらいでした。

本作のブラピは、25年前ほどとはもちろん言わないし、
もしそうだったらそれはそれで気持ち悪いけれど、美しい。
CGでどこか手直ししたのかしらんとすら思います。
アンジェリーナ・ジョリーとの離婚前、
ブラピの浮気相手ではと噂されたマリオン・コティヤールと超お似合い。
マリオン、めちゃくちゃ綺麗です。

第二次世界大戦中の1942年、フランス領モロッコ
イギリスの特殊作戦執行部に所属するカナダ人諜報員マックスは、
極秘任務を遂行するためにカサブランカの町に降り立つ。
偽装妻として彼と行動を共にするのは、フランス軍の女性諜報員マリアンヌ。
ふたりはラブラブの夫婦を装い、任務完遂のために準備を進める。

ふたりが挑む極秘任務は、ドイツ大使の暗殺。
たったふたりでパーティーに乗り込み、暗殺をはかるのだから、
成功する確率よりも失敗する確率のほうがはるかに高い。
失敗すればふたりとも生きてはいられないだろう。
そんな過酷な任務に向かううち、ふたりは惹かれ合うように。

しかし、見事に任務を成功させたふたりはロンドンで結婚。
空襲下、マリアンヌは可愛い娘アナを出産。
戦争中にもかかわらず幸せな日々を送っていたが、
マリアンヌにドイツ軍の二重スパイの容疑がかかっていると上層部から言われ……。

『恋するベーカリー』(2009)を観たとき、
画面いっぱいに広がるアレック・ボールドウィンのお尻が汚すぎて絶句しましたが、
ブラピのお尻は綺麗でした。画面いっぱいには映らないけど(笑)。

主演のふたりが美しく、ストーリーも飽きません。
彼女は本当に二重スパイなのか、ドキドキ。
ラストのブラピが涙をこらえるシーンはまるで少年のよう。
『君と100回目の恋』では1ミリも泣けなかった私、これはブラピにホロリ。

戦時中の出産の凄まじさに、看護師の方々の職業魂を見ました。
どんな状況下であれ、この世に生まれる命を守る。
これがいちばん胸を打たれたシーンかも。

やっぱりブラピは綺麗なほうがいいなぁ。

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『君と100回目の恋』

2017年02月22日 | 映画(か行)
『君と100回目の恋』
監督:月川翔
出演:miwa,坂口健太郎,竜星涼,真野恵里菜,泉澤祐希,
   太田莉菜,大石吾朗,堀内敬子,田辺誠一他

ダンナの出張中、土曜日は3本ハシゴ、
日曜日は1本のみだけど昼から晩までダラダラ飲みつづけ、
月曜日は宴会でところどころ記憶がなくなるほど飲み、
火曜日は眠いなぁと思いつつ終業後にTOHOシネマズ伊丹で2本ハシゴ。
水曜日は義父の誕生日で仕事帰りに美味しいかぶら寿司を届け、
そのまま帰るか映画を観に行くか悩んでやっぱり映画を観ることに。
結局水曜日もTOHOシネマズ伊丹で2本ハシゴしたのでした。

最近なんでこうもタイムループものばかりなのか。
これは主要キャスト以外前知識なく観に行ったものだから、
途中で「えっ、またタイムループ!?」とびっくり。

監督は『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016)の月川翔。
シンガーソングライターのmiwaちゃん坂口健太郎くんの共演。
胸キュンキュンしてもよさそうだけど、う~ん、ビミョー。
なんぼ死なせたくないからって100回も戻るなよ。(^^;

大学生の日向葵海(miwa)と長谷川陸(坂口健太郎)は幼なじみ。
一緒にバンドを組み、葵海はボーカル、陸はギター。
同じ大学にかよう松田直哉(竜星涼)がベース、中村鉄太(泉澤祐希)がドラム。
葵海と親しい相良里奈(真野恵里菜)がライブのチラシや看板を担当。

陸のことが大好きなのに、いまさら告白できない葵海は、
近く留学することが決まっている。
このままでいいのかと里奈に聞かれても、どうしていいのかわからない。
今は葵海の誕生日の7月31日におこなわれるライブに精一杯臨むだけ。

もうじきライブ本番という日に直哉からコクられた葵海は、
つれない陸といるよりも、直哉でもいいかもと里奈の前で口走る。
ところが里奈がずっと直哉に想いを寄せていたと知り、
もやもやした気持ちのまま臨んだライブは散々な結果に。
落ち込んでライブ会場をあとにした葵海は事故に遭ってしまう。

自分は死んだと思いきや、目覚めると大学の教室。
1週間前と同じ光景が広がり、葵海は呆然。
戸惑う葵海に陸が打ち明けたのは、陸が時間を巻き戻せるということ。
葵海が死んでしまうという運命を変えるため、
陸は何度も時間を巻き戻していて……。

葵海の母親役に堀内敬子。彼女の福々しい顔にはいつも癒やされます。
時間の巻き戻し方を甥の陸に教えるカフェ経営者に田辺誠一
彼が経営するカフェハセガワがとても素敵で、
もしも近所にこんな店があったらまちがいなくかようでしょう。

何度時間を巻き戻しても、「死ぬ」という運命だけは変えられない。
それを悟ったら、今を悔いなく生きるしかない。
王道のラブストーリーで、出ている男子みんなカワイイけれど、
こんなにお涙頂戴に走られると、私はちっとも泣けません。

miwaちゃんの歌も歌声も嫌いじゃないですが、
こういう恋愛もののヒロインとしてはなんだかわざとらしさが鼻につきます。
やっかみと言われればそれまでだけど、
彼女の演じる姿は同性からは疎まれそう。
同じ列に座っていた中学生女子は号泣していましたけどね(笑)。
……ということは、ターゲットがアラフィフじゃないんだわ。って当たり前!?(^^;

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