夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

もうちょっとだけ、ヘヴィメタ。

2008年07月28日 | 映画(番外編:映画と音楽)
なにしろ私は、つい最近まで、
メロイックサインの存在すら知りませんでした。

ついでなので、メロイックサインって何?という方へ。
指でキツネの形を作って、中指と薬指を折り込み、
その上に親指を乗せると、それがメロイックサイン。
メタルのコンサートではバンドメンバーも聴衆もこのサイン。

『ダーウィン・アワード』
(2006)では
「巨大メロイックサイン♪」と叫ぶシーンもありましたが、
字幕では「悪魔サイン」と記されています。
ほかに訳しようがないのでしょうが、
「メタルしようぜ」ぐらいの意味?

なぜメロイックサインがメタルの常識となったのか、
前々述の『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』では、
その起源などにも触れられています。

で、メタルの知識がもう少しあれば、
もっと楽しめただろうなぁという作品を観直したくなり、
『リトル・ニッキー』(2000)を再見。
メタルを全然知らなかった当時でも十分楽しめたけれど、
やはり今のほうが笑えるシーンいっぱい。

こんなストーリー。

地獄を仕切る魔王には3人の息子がいる。
長男と次男が悪魔にふさわしい極悪人なのに比べ、
三男のニッキーはメタル好きの心優しき悪魔。
現在メタルのマイベスト盤を製作中。

自分の父親を魔王の座から追い出して、
その後継者の地位を狙う長男と次男は、
地上で悪さをすることを思いつく。

ある日、長男と次男は地獄の火をくぐり抜けて脱出。
火が消えた状態では、魔王の力が衰えてしまう。
2人を連れ戻さなければ、やがて魔王は消える運命。
父親の命を救うため、ニッキーは意を決して地上へ。
期限はちょうど1週間。

まず、ニッキーの部屋はメタルのポスターだらけ。
地上でニッキーが火を噴くのを偶然見て、
悪魔にちがいないとニッキーのファンになる2人組は
アイアン・メイデンとモトリー・クルーのTシャツ姿。
パンテラのTシャツ着用のときもありました。
レコードを逆回しすると悪魔のメッセージが聞こえるという噂に、
オジー・オズボーンのレコードを逆回ししてみる2人。
ところが、ニッキー曰く、悪魔的メッセージが聞こえるのは、
オジーじゃなくて、シカゴのレコード。
メタル=悪魔ではない。

特典がまたおもしろいので必見。
重要な役で出演するオジーが、コウモリを食べるシーンがありますが、
それが彼自身のパロディだったことも特典を見て理解。

メタル、楽し。

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『ヘヴィ・メタル ラウダー・ザン・ライフ』

2008年07月22日 | 映画(は行)
『ヘヴィ・メタル ラウダー・ザン・ライフ』(原題:HEAVY METAL - Louder Than Life)
監督:ディック・カラザース

もういっちょ、ヘヴィメタル。
かなりハマってしまったかもしれません、メタルに。

本作もメタルのドキュメンタリーです。
監督であるディック・カラザースは、
『レッド・ツェッペリンDVD』で世界的大ヒットを飛ばした人だそうな。
と言われても、レッド・ツェッペリンって、
私は『天国への階段』しか知らんし。
レッド・ツェッペリンがメタルの話のそこここに登場するのでたまげました。
あれって、ハードロックやったんや!って。すみません、超初心者で。

前述の『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』は、
徹底的にファン目線で作られたドキュメンタリーでした。
なにしろ、監督のサム・ダンは、大学でメタルを専攻したかったのに、
「メタル研究科」なんて当然ないので、
それならばいちばん近そうな(どこがやねん(^^;)
「人類学」を専攻しちゃったというメタラーですから。

それに対して、本作は、もう少し離れたところから見ています。
しかし、どちらもメタル好きでなければ撮れないことにはかわらず、
温度差があるというふうでもありません。
ちがう種類の熱さとでも言いましょうか。

1960~1970年代に始まったメタルの基となる流れ。
最近立て続けに観たメタル関係の映像で、
必ず出て来る話が、メタルを生んだのは誰か。
そこにいつも挙げられる、素晴らしき面々。
ジミー・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリン、
ブラック・サバス、ディープ・パープル。

1980年代はまさに私の青春時代ですから、
音楽も聴き倒しました。
MTVなどでこれがメタルと知らずに聴いていた曲も多く、
本作でかかる数々の曲に、懐かしさでいっぱいになりました。
あ、「懐かしい」なんて言うところが、メタル・ファンじゃないですね。
「昔、好きだった」はメタル・ファンにはあり得ませんから(笑)。

1990年代に入ると、私にとって「懐かしい」曲もなく、
まったくわからない世界になってしまうのですが、
1960年代からこの世界にいる人が、古びた感じもなく、
やはり活躍し続けているメタルって、すごいです。
やんちゃな小僧だった人が、そのままやんちゃな親父になって
演奏し続ける、歌い続けるなんて。

ファン目線の『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』と、
ミュージシャン本人たちの話がいっぱい詰まった本作。
2本併せて観るのがお薦めです。

誰か私に教えて、メタル!

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『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』

2008年07月16日 | 映画(ま行)
『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』(原題:Metal: A Headbanger's Journey)
監督:サム・ダン,スコット・マクフェイデン,ジェシカ・ジェイ・ワイズ

なぜ、世間でヘヴィメタルは嫌われるのか。
メタルをこよなく愛するカナダ人監督が、
そんな疑問を解き明かすべく、
メタルのルーツをたどった2005年のドキュメンタリー。

さて、私はメタルについて全然知りません。
阪神のウィリアムス投手のテーマ曲がAC/DCだということぐらいしか。
だけど、映画には頻繁にメタルが登場します。
曲はもちろんのこと、本人も登場したりして。
『ダーウィン・アワード』(2006)にメタリカ。
『リトル・ニッキー』(2000)にはオジー・オズボーン。
どれも「普通」の扱いではありません。
いったいメタルってどんな世界なのか、知りたくなるじゃないですか。

監督のサム・ダンがメタルの聖地を旅して、
バンドのメンバーやファン、研究者に突撃インタビュー。
ほかの音楽ジャンルのファンと決定的にちがうのは、
メタル・ファンは「メタル」が好きだということ。
たとえばポップス・ファンは、それぞれにお気に入りの歌手がいて、
その歌手のアルバムを買ったり、コンサートに行ったりする。
でも、メタル・ファンは、どんなバンドの名前が挙がろうと、
いくらでも語れる場合が圧倒的に多い。

ドイツ北部の町、ヴァッケンで開催されるメタル・フェスティバルに
何万人というファンが集う様子は壮観。
それは、想像された反社会的イメージとはかけ離れています。
彼らは瞳をキラキラさせて、まるで夢見る子どものよう。

私自身は、高校1年のとき、
レインボーの“Difficult to Cure”というアルバムを購入しました。
メタルのレコードを買ったのは後にも先にもこれっきり。
しかし、このアルバムは聴き倒したので、
今でもラジオなどで“I Surrender”がかかるとワクワクします。

だけど、こういう私は、メタル・ファンに言わせると、ファンでも何でもない。
メタル・ファンに「昔、好きだった」というのはあり得ません。
生涯、メタルを愛し続けるから。めちゃ一途。

本作と無関係ですが、某掲示板のメタル・ファンのコメント、
「ヘッドバンギングしている(頭を振っている)ときに
好きなシャンプーの香りがすると集中できない」には笑いました。
みんなロン毛だから、シャンプーにも気を遣う!?

肝心の「なぜ嫌われるのか」に対する答えは不明。
来月、続編とも言うべき『グローバル・メタル』が公開されます。

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『神様からひと言』

2008年07月11日 | 映画(か行)
『神様からひと言』
監督:古厩智之
出演:伊藤淳史,陣内孝則,原沙知絵,田山涼成,嶋田久作,
   小倉一郎,脇知弘,野村宏伸,犬塚弘他

2006年にWOWOWで放映されたTV映画。
原作は荻原浩の同名小説です。
今まさにタイムリーな話題。

大手広告代理店を辞め、
中堅食品会社「珠川食品」に中途入社した佐倉。
経歴を買われて、新製品のパッケージデザインを任され、
自信を持って役員会議でのプレゼンに臨む。

しかし、古参の役員の言い分がすべてであるこの会社では、
佐倉の話になど誰も耳を貸そうとせず、一蹴される。
納得が行かない佐倉は言葉を返すが、
その態度が許されず、会議室はえらい騒ぎに。
翌日、佐倉はリストラ要員収容所と陰で呼ばれている、
「お客様相談室」への異動を言い渡される。

それは「会社」というにはほど遠い一軒家で、
玄関先には、ぱっち姿の爺さんが店番をする漬物屋。
相談室のメンバーは、保身に走る室長の本間をはじめとし、
元社長秘書でワケありの宍戸。
ストレスで首が曲がらず、声も出せない体育会系の神保。
健康オタクの山内、フィギュアオタクの羽沢。
やる気はゼロでも、謝罪させたら天下一品の篠崎。

クレーム処理が仕事だというのに、
電話が鳴っても誰も取ろうとしない。
電話を取っては謝り続けるはめになった佐倉だったが……。

クレーム処理という言葉に興味を惹かれて借りました。
ヤクザが難癖をつけてきたり、
博打で生活に困っている男が謝罪金狙いでやってきたり、
ヒマなお婆ちゃんが息子と話すつもりで電話してきたり、
多少の脚色はあったとしても、そう嘘ではなさそうです。

話が進むにつれて、会社の乗っ取りや偽装問題なども出てきて、
まさに「今」の映画。
謝罪会見の模様は、こんな経営者がいればと思わなくもありません。
謝るときは胸に手を当てて。
この人のためになら謝れると思う人を思い浮かべて。
ただ、こんなふうに謝れる人は、
最初からこんなこと、しないんですよね。

人気のラーメン店とのコラボレーション企画の話では、
頑固な店主を豊原功補が好演。その言い分もなるほど。
また、恋人が自分の元を去った理由がわからない佐倉に
啓示を与えるホームレスに扮するセイン・カミュもハマっています。
ピザのアスパラの話は実に興味深いです。

会社なんて「おでん鍋」。
グツグツ煮込まれて、どれだけ煮詰まらずにやっていけるか。

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『潜水服は蝶の夢を見る』

2008年07月08日 | 映画(さ行)
『潜水服は蝶の夢を見る』(原題:Le Scaphandre et le Papillon)
監督:ジュリアン・シュナーベル
出演:マチュー・アマルリック,エマニュエル・セニエ,
   マリ=ジョゼ・クローズ,アンヌ・コンシニ,パトリック・シェネ他

42歳というバリバリの働き盛りに脳梗塞で倒れ、
全身の自由を失ったファッション雑誌『ELLE』の元編集長、
ジャン=ドミニク・ボビーの自伝に基づく作品。
唯一動く左目を20万回瞬かせることによって
書き取り手に文字を伝え、自伝を書き上げたジャン=ドミニク。
本作は、彼が左目で見た世界がスクリーンに映し出されるので、
観る者も彼自身になったかのようです。

病室で目覚めたジャン=ドミニク。
ぼやけていた視界がだんだんとはっきりと見えてくる。
医師が覗き込み、話しかける。
どうやら自分は3週間前に倒れ、意識不明だったらしい。

名前を言えと言われたから、名前を告げたのに、
子ども3人の名前も言ってみせたのに、
医師には自分の声が聞こえていないようだ。

医師は言う。これは非常に難しいケースで、
意識はしっかりとあるのに、身体が動かせず、話せない。
“ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)”だと。
そう、それはまるで、重い潜水服を着せられた状態。

炎症を起こしかけている右目は糸で縫いふさがれ、
動くのは左目だけ。瞬きだけならなんとか。
問いかけに“Yes”なら1回、“No”なら2回、瞬きをすることに。

“Yes”と“No”以外にも意思の疎通を図る手段を考えようと、
言語療法士のアンリエットと理学療法士のマリーがやってくる。
ふたりともたいした美人だ。
こんな美人を前にして、手も出せないなんて。

やがて、アンリエットが提案したのは、
頻出度順に並べ替えたアルファベット表を彼女が読み上げ、
ジャン=ドミニクが言いたいアルファベットに来たときに
瞬きで合図するという方法。
自分を憐れむことをやめたジャン=ドミニクは、
瞬きだけで自伝を書く決意をする。

じわじわと心に染み入る佳作。
彼の入院以降、さまざまな立場の人が面会に訪れます。
面会者には聞こえていないジャン=ドミニクの声が、
私たちには心のつぶやきとして聞こえます。
そこにはユーモアとやるせなさが入り混じって、
ときには笑わされ、ときにはたまらない気分にさせられます。

過去に思いを巡らせながら、蝶になる日を夢みた彼は、
自伝出版後すぐ、亡くなったそうです。

決して消えないものが、ふたつある。
その記憶と想像力。

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