夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『銀河ヒッチハイク・ガイド』〈TV版〉

2005年10月30日 | 映画(か行)
『銀河ヒッチハイク・ガイド』(原題:The Hitchhiker's Guide to the Galaxy)
監督:アラン・J・W・ベル
出演:サイモン・ジョーンズ,デヴィッド・ディクソン他

1978年、イギリスのBBC放送局で
ラジオドラマ用に書かれた脚本を小説化したら大ヒット。
それがダグラス・アダムスの同名小説です。
これは1981年に同じくBBCが製作したテレビ版。
このたびリメイクされて、関西では現在公開中。
リメイクのおかげで、文庫本も復刊、
レンタルビデオ店にはTV版が並んでいます。

普通の地球人、アーサー・デント。
朝、ガウンを羽織ったままぼんやりしていると、いきなり家が大きく揺れる。
なんと、道路建設予定地に当たっているアーサーの家を
いまからブルドーザーが取り壊すという。

憤るアーサーが業者と交渉のさなか、
親友フォードが無理矢理アーサーを連れ出しにやってくる。
その数分後、上空に現れた宇宙船からこんなアナウンスが。
「宇宙のバイパス建設工事のため、
その建設予定地である地球はまもなく消滅する」。

地球消滅の寸前に、フォードは宇宙船をヒッチハイク。
無事、ふたりは生き残る。
ワケがわからずにいるアーサーに、
フォードは実は自分は宇宙人だと告白する。
銀河ガイドブック用の地球の項を執筆するために
調査にやってきたベテルギウス人だと。

さて、乗り込んだ宇宙船には反友好的な宇宙人ボスが。
おどろおどろしい自作の詩を強制的に聴かされたあと、
またもやふたりは宇宙空間に放り出されるはめに。

そして今度も間一髪のところで別の宇宙船に拾われる。
それは最新のシステムを搭載した船で、
銀河帝国大統領のビーブルブロックスが
セクシーな助手トリリアンとともに財宝の眠る惑星マグラシアに向かうため、
政府から盗み出したものだった。
一行はマグラシアにたどり着くのだが……。

宇宙を漂うクジラや植木鉢、いつも愚痴っぽい口をきくロボットのマーヴィン、
キャラクターがみんな憎めません。
宇宙の果てのレストランも娯楽性ばっちり。

原作者はモンティ・パイソンのスタッフだったそうで、
モンティ・パイソンを好きな人なら必ず気に入ります。

そういえば、学生の頃、下山の途中に疲れて、
山奥に水を汲みに来ていた軽トラをヒッチハイクしたなぁ。
荷台に乗せてもらいました。
いまは物騒でそんなことできないかも。
いや、それ以前の問題で、若くないと乗せてもらえない!?

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『コーヒー&シガレッツ』

2005年10月26日 | 映画(か行)
『コーヒー&シガレッツ』(原題:Coffee and Cigarettes)
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:イギー・ポップ,トム・ウェイツ他

コーヒーとタバコにまつわる11本の珠玉の短編集。
『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)で
きっと日本にもファンの多いジム・ジャームッシュ監督が
「こんな組み合わせだったら楽しいな」と思った役者たちに出演交渉。
18年に渡って撮りためたという本作は、ひたすら幸せ。

1話目は『変な出会い』。
『ライフ・イズ・ビューティフル』(1998)の監督・主演のロベルト・ベニーニが、
初対面の相手と弾まない会話。
なんとか場をもたせてくれるのがコーヒーとタバコ。

こんな風に、いろんな立場の2人が喫茶店で交わす、
どうでもいい会話を隣で聞くような数分間、11編。
すべて、役者が実名のまま登場します。

『カリフォルニアのどこかで』では、
ロックの大御所、イギー・ポップとトム・ウェイツが共演。
「禁煙したから大っぴらにタバコを吸える」と
わけのわからない論理でタバコをおいしそうに吸い、音楽と医学について語ります。
DVD特典の監督インタビューによれば、
脚本を読んだトム・ウェイツが実に不機嫌な顔で
「これのどこがおもしろいんだ」と撮影現場に登場したそうですが、
その不機嫌さがまんま表れた本作は逸品。

前述の『ライフ・アクアティック』に出演していた
ビル・マーレイやケイト・ブランシェットも登場。
マーレイのメイド姿、ブランシェットの1人2役、最高。
ブランシェットのオーダーはちょっとかっこいい。
「エスプレッソを大きめのカップで。温めたミルクを添えて」。

最終話の『シャンパン』は、老いた警備員の休憩時間中の会話。
コーヒーをシャンパンに見立てて乾杯。
ほかのどの話にもコーヒーカップで乾杯するシーンがあり、
乾杯すれば不穏な空気もどこへやら。

映画をそこそこ観る人でなければ意味不明な会話も。
たとえば、『いとこ同士?』。
1人の携帯が鳴り、電話の相手に向かって「スパイク?」と話しかけます。
これを聞いていたもう1人が、後で「今のはスパイク・リー?」と尋ねます。
それに対し、「ちがうよ。スパイク・ジョーンズだ」。
スパイク・リーは『マルコムX』(1992)の監督。
スパイク・ジョーンズは『マルコヴィッチの穴』(1999)の監督。
元ネタをご存じなら楽しさ倍増です。

観ればまちがいなく、コーヒーが飲みたくなります。
コーヒーを飲んでも十分寝られる私は
立派なコーヒー中毒?

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『ライフ・アクアティック』

2005年10月21日 | 映画(ら行)
『ライフ・アクアティック』(原題:The Life Aquatic with Steve Zissou)
監督:ウェス・アンダーソン
出演:ビル・マーレイ,オーウェン・ウィルソン,ケイト・ブランシェット,
   アンジェリカ・ヒューストン,ウィレム・デフォー他

画面に映っているのを見ただけで笑ってしまう俳優が
私のなかには何人かいます。
オーウェン・ウィルソンもそのうちのひとり。
アメフトの試合中に負傷して変形したという鼻が特徴で、
たぶんこの鼻だからこそ引く手あまた。
彼の鼻の話はさておき。

スティーヴ・ズィスーは著名な海洋探検家、
兼ドキュメンタリー映画監督。
自らの航海を綴った新作映画を発表するが大コケ。
もはや誰も彼に期待していない。
しかし、なんとかもうひと花咲かせようと、
スティーヴは「チーム・ズィスー」の仲間たちを率いて、
伝説のジャガーザメを追うことに。

そこへ現れたのがスティーヴの息子を名乗るネッド。
亡くなった母から、父親はスティーヴだと聞かされていたと言う。
スティーヴはネッドを仲間に引き入れる。
さらには落ち目のスティーヴを取材することになった、
妊娠中の女性記者も船に乗り込んできて船はワヤクチャに。

こんな胡散臭い話を大真面目に演じています。
笑える人と笑えない人、真っ二つに分かれそう。

私がハマったシーンを挙げてみますと、
まずは『プラトーン』(1986)の名優、ウィレム・デフォー。
あんなにいかつい顔でありながらちょっとカマっぽく、
実はスティーヴに想いを寄せている様子。
ネッドにライバル心を燃やす姿が愛敬たっぷり。

スティーヴはネッドに名前を尋ねたあと、
「キングスレーのほうがいいな。キングスレーにしよう」。
勝手に人の名前を変えるなっちゅうの。

ケイト・ブランシェットは『ロード・オブ・ザ・リング』で
エルフ族のガラドリエル王女を演じた多才な女優ですが、
こんなコメディ映画は初めて。幅広し。

電気クラゲの大群が出没したと騒いだり、
海賊を追ってアジトでドンパチをやらかしたり。
まるでいい年したオッチャンたちの鬼ごっこ。
その真面目な戦いぶりに笑わされます。

架空の海洋生物のアニメーションは、
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)の監督、
ヘンリー・セリックのクリエイト。これは必見。
ポルトガル語で歌われるデヴィッド・ボウイの曲は
ボザノヴァ調にアレンジされて粋です。

では試しに「オーウェン・ウィルソン 鼻」で検索してみてください。
きっといっぱい引っかかってきます。

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『ラスト・マップ 真実を探して』

2005年10月18日 | 映画(ら行)
『ラスト・マップ 真実を探して』(原題:Around the Bend)
監督:ジョーダン・ロバーツ
出演:ジョシュ・ルーカス,クリストファー・ウォーケン,マイケル・ケイン他

日本では劇場未公開の2004年の作品。
おじいちゃんからひ孫まで、4世代に渡る男たちが登場するロードムービー。
こんな遺言、あったら楽し。

ジェイソンは妻と別居中。
幼い息子のザック、祖父のヘンリーとともに暮らす。
ある日、音信不通だった父のターナーが突然帰ってくる。
30年ぶりの再会をヘンリーは手放しで喜ぶが、
見捨てられたと思っているジェイソンは、父に憎しみしか抱けない。

家族の絆を信じるヘンリーは、ジェイソンとターナーが和解するよう策を練る。
ヘンリーがザックを連れて向かった先は
彼が愛してやまないケンタッキー・フライドチキン。
店内で何枚もの遺言のメモを書きあげると、1枚ずつ袋に入れてゆくヘンリー。
1つめの袋を開ければ中には2つめの袋とメモが、
その袋を開ければ3つめの袋とメモが、
こうして次々と袋とメモが出てくる仕組みだ。

すべてのメモを袋に入れた直後、ヘンリーは息を引き取る。
連絡を受けたジェイソンとターナーは、慌ててケンタッキーに駆けつける。

翌朝、弁護士が遺言を読みあげる。
それによれば、遺言の入った袋は必ず1つずつ、
指定された地域のケンタッキー・フライドチキンで鶏を食ってから開けるべし。

「そんな馬鹿げた遺言は無効」と主張するジェイソンに対し、
弁護士は「ケンタッキーの店員たちが立派な証人」と言い放つ。
ターナーもヘンリーの言葉に従うべきだと譲らない。

仕方なく、次なるケンタッキー・フライドチキンを目指して
車を走らせるターナーとジェイソン親子。
同伴のザックは旅行気分で終始ご機嫌。
さて3人の行方は如何に。

ヘンリー役のマイケル・ケインと
ターナー役のクリストファー・ウォーケンはさすが。
ジョシュ・ルーカスは若手有望株。
子役のジョナ・ボボはめちゃめちゃかわいい。

脇の人物たちも実に愛敬があります。
住み込みの北欧出身の美人介護士は、毎晩ひとりで血みどろのスプラッタ映画を鑑賞。
「ホラーが好きなの?」という問いに
「自分の国にはホラーがないから」と答える彼女。
なるほど、デンマークで『キングダム』(1994)が大人気だったことに納得。

こんな遺言があったら、どのチェーン店がいいですか?
私は断然、“HOOTERS(フーターズ)”(こちらこちら、ご覧ください)。

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蜘蛛を観察する。

2005年10月14日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
先週、ベランダに蜘蛛が出現しました。
体長3cm近く、最近見たなかではいちばん大きな蜘蛛です。
窓越しに観察すると、この蜘蛛が黄色と黒の縞模様。
そう、思いっきりタイガースカラーなんです。
手足が長くて(どれが手でどれが足なのかは知りませんが)
ほっそりしていて、なかなか美しい。

調べてみたら、ナガコガネグモでした。
人間には無害なようですし、
日本シリーズ前にわが家に現れたのも何かの兆しかと、
とりあえずはベランダの片隅をお貸しすることにしました。

さて、蜘蛛に関する映画は結構あります。
昆虫もホラーも苦手なわりには、
巨大なんたらが出てくるパニックものというのは
怖いというよりは可笑しいので大好きです。
『ジャイアント・スパイダー 大襲来』(1975)や『巨大クモ軍団の襲撃』(1977)、
『スパイダーズ 宇宙から来た巨大グモ』(2000)などなど、B級だらけ。
どれもこれも「巨大な蜘蛛が襲ってくる」と
説明ができてしまうところがスゴイでしょ。

『スパイダーマン』(2002)はA級とさせていただくとして、
有名な役者を配し、お金も注ぎ込んだにもかかわらず
立派なB級に仕上がったのが『スパイダーパニック!』(2002)。
『GODZILLA ゴジラ』(1998)や『インデペンデンス・デイ』(1996)の監督、
ローランド・エメリッヒがプロデュースしていますので、
超お金のかかったB級作品になるのは当然。
低予算の蜘蛛映画と同じく、巨大化した蜘蛛が人間を襲います。
パニックものではありますが、コメディタッチで描かれていて、
愛すべき作品になっています。

変わった蜘蛛映画としては『スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする』(2002)。
パトリック・マグラアの同名小説の映画化です。
監督のデヴィッド・クローネンバーグといえば
『ザ・フライ』(1986)で研究途中に蝿と融合してしまった男、
『戦慄の絆』(1988)では産婦人科医であるシャム双生児、
『クラッシュ』(1996)では交通事故で負った傷痕に欲情する人びと、
『イグジステンズ』(1999)では人間の背中に端末を接続するゲームの話と、
もっぱらグロテスクなシーンを好む人。
が、本作に限ってはそんなシーンは登場しません。
統合失調症の青年が他の精神を患う者たちとともに暮らします。
蜘蛛の巣に表現される、忌まわしい記憶の断片。

巣を張るのが上手な蜘蛛と下手な蜘蛛がいますが、
ウチの蜘蛛の巣は芸術的です。

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