夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『コーダ あいのうた』

2022年01月31日 | 映画(か行)
『コーダ あいのうた』(原題:Coda)
監督:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ,エウヘニオ・デルベス,トロイ・コッツァー,フェルディア・ウォルシュ=ピーロ,
   ダニエル・デュラント,エイミー・フォーサイス,マーリー・マトリン,ケヴィン・チャップマン他
 
TOHOシネマズ西宮にて4本ハシゴの2本目。
 
大好きだったフランス作品『エール!』(2014)をアメリカでリメイク。
本作を観るまで、聴覚障害者の両親を持つ子どものことを“coda”と呼ぶとは知りませんでした。
 
アメリカ・マサチューセッツ州の海辺の町に暮らす高校生ルビー。
両親も兄も耳が聞こえず、家族の中で健聴者は彼女のみ。
おかげでルビーは幼い頃から家族のサポート役として毎日を生きている。
家業の漁業はもちろんのこと、家族には何から何までルビーのサポートが必要なのだ。
 
高校の新学期、片想い中の相手マイルズが合唱部に入ろうとしているのを知り、
ルビーも合唱部への入部を希望する。
ルビーは歌うことが大好きで、船でも家でも歌声を響かせてきたが、家族は音楽とは無縁。
人前では歌ったことがなくて、せっかく入部した合唱部から一度は逃走してしまう。
 
それでもやはり歌いたいと顔を出したルビーは、
名門音楽大学バークリー出身の顧問ベルナドに歌への思いを打ち明ける。
ルビーの歌を聴いたベルナドは彼女に類稀なる才能を見いだし、
バークリーを目指すよう熱心に勧めるのだが……。
 
主人公の女子高生の両親と兄を実際に聴覚障害者の俳優が演じています。
母親役のマーリー・マトリンは『愛は静けさの中で』(1986)で一躍有名になりましたが、
映画ではその後ほぼお見かけした記憶がないので、私の中では一発屋のイメージでした。
あちこちのTVドラマシリーズに出演されていたとは知らず、すみません。
 
両親に終盤までイライラさせられます。
子どもが生まれるとき、健聴者だとわかるとガッカリするものなんですか。
耳が聞こえることで、この子とはわかりあえないかもしれないと思う。
子どもが五体満足でありますようにとか、そう望むのが当然かと思っていたので、
がっかりしたという言葉は衝撃的です。
 
娘がどれほど音楽が好きで、歌いたいと思っていても、その歌は家族には聞こえない。
だから、両親にとって音楽は無意味だし、無意味なことをするぐらいなら、
自分たちのために家に残ってサポートをし続けてほしいと思う。
音楽への道を進みたいけれど、家族を見捨てることはできないとあきらめるルビーに、
兄だけは「自分を犠牲にするな。やりたいことをやれ」と怒ります。
 
聴覚障害者たちの中にいれば安心だと、ルビーに頼りっきりで、
健聴者と積極的につきあってこなかった両親。
ルビーが歌うとき、すべての音が消し去られ、客の反応から娘の歌を知る父親の顔が印象的です。
ルビー役のエミリア・ジョーンズの歌声は本当に素晴らしい。
 
どこの国でリメイクしてもよさそうな話です。
とはいうものの、日本ではリメイクしてほしくないかな(笑)。
 
オススメです。

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『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』

2022年01月30日 | 映画(た行)
『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』(原題:Clifford the Big Red Dog)
監督:ウォルト・ベッカー
出演:ダービー・キャンプ,ジャック・ホワイトホール,シエンナ・ギロリー,
   トニー・ヘイル,アイザック・ワン,ジョン・クリーズ他
声の出演:花澤香奈,金丸淳一,日髙のり子,諏訪部順一,三森すずこ,緒方賢一他
 
毎年恒例の全館停電の日、車で西宮ガーデンズへと向かいました。
車を入庫して阪急電車に乗り、塚口でひとりランチ。
何しろランチ後に4本映画を観る予定なので、車に乗るのは10時間以上後。
グラスワインもしっかりいただいて、TOHOシネマズ西宮へと舞い戻りました。
 
4本ハシゴの1本目は本作。
洋画は字幕で観る派なのに、これは日本全国たぶん吹替版しか上映していない。
こんな思いっきり子ども向けなやつしか観るものないよと思って観たら、
なかなかどうして、結構笑えてジワ~ンと心が温かくなる良作でした。
 
原作はノーマン・ブリッドウェルのロングセラー絵本らしい。
おおっ、なるほど。本作に登場する謎のおじいさんの名前は原作者にちなんでいるのか。
 
12歳の少女エミリーは、ニューヨークのアパートで母親のマギーと二人暮らし。
学校で一部の女子のいじめのターゲットにされ、
相手にしないようにはしているが、つらい日々を送っている。
唯一彼女に声をかけてくれるのは、チビの男子生徒オーウェン。
 
ある日、マギーが出張で家を数日間空けることに。
シッターを頼むならあの人だけはやめてとエミリーが再三言ったにもかかわらず、
ほかに頼める人がいなかったらしく、やってきたのはマギーの弟=叔父ケイシー。
 
ケイシーは悪い人ではないが、稼ぎがなくて今は自分のトラックで寝起き。
とにかくそそっかしいから、過去にもエミリーが迷惑を被ったこと多数。
寝食できる場所を確保できたケイシーが喜んでいる様子も腹が立つ。
 
あてにならない叔父にうんざりしつつも一緒に出かけた“アニマルレスキュー”のテントで、
謎の老人ブリッドウェルから赤い子犬を奨められたエミリーは、その可愛らしさに目を奪われる。
しかし、ペット禁止のアパートに犬を連れ帰れば、管理人にもマギーにも激怒されるはず。
ケイシーから絶対に駄目だと言われてがっかりするエミリーだったが、
帰宅すると彼女のリュックサックの中には誰が入れたか、あの子犬が入っていた。
 
子犬にクリフォードと名付け、ひと晩だけの約束で部屋に匿ったところ、
翌朝、クリフォードはとんでもない大きさに成長していて……。
 
とんでもない大きさがどの程度かというと、背の高さは部屋の天井すれすれ。
トラックの荷台にもなんとかおさまるぐらいですが、とにかくデカい。
とりあえず動物病院に連れて行くことにしたけれど、人の目について仕方がありません。
一気にクリフォードともどもエミリーは人気者になっちゃいます。
 
これを悪用しようというバイオテクノロジー企業の社長が現れて、わかりやすい構図に。
悪役って、本当にどうしてこうも憎たらしい顔をしているのでしょう(笑)。
街の人たちみんながエミリーとクリフォードの味方になり、悪者は潰される。
それまでに右往左往する姿がとても可笑しいです。
 
何がうれしかったって、ブリッドウェル役がジョン・クリーズだということでしょう。
モンティ・パイソンよ、永遠に。

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『ライダーズ・オブ・ジャスティス』

2022年01月29日 | 映画(ら行)
『ライダーズ・オブ・ジャスティス』(原題:Retfærdighedens Ryttere)
監督:アナス・トマス・イェンセン
出演:マッツ・ミケルセン,ニコライ・リー・コス,アンドレア・ヘイク・ゲーゼベウ,ラーシュ・ブリグマン,
   ニコラス・ブロ,グスタフ・リンド,アルバト・ルズベク・リンハート,ローランド・ムーラー他
 
桂文珍独演会のチケットをいただき、この間の日曜日、神戸国際会館ホールへ行きました。
公演は14時からで、その前に、一緒に行く友人と地下2階のマザームーンカフェでランチ。
さらにその前に、3月半ばで閉館してしまう神戸国際松竹に敬意を表して行く。
 
神戸国際松竹について改めて調べてみたら、開業は1956(昭和31)年。
1995(平成7)年には阪神・淡路大震災に遭って休館。
4年後の1999(平成11)年に現在の場所にてリニューアルオープン。
この劇場がなくなってしまうのはとても寂しい気がします。
 
さて、このたび神戸国際松竹で鑑賞することにしたのはデンマーク/スウェーデン/フィンランド作品。
大好きなんです、マッツ・ミケルセン
『アナザーラウンド』(2020)では酔っぱらい、『残された者 北の極地』(2018)では不時着した飛行機のパイロット。
ハリウッド映画でも活躍中ですが、やっぱり彼には本国の作品が似合う。
 
アフガニスタンに駐留していた軍人マークスのもとへ、妻エマが亡くなったとの知らせが入る。
エマは一人娘マチルデと出かけたさい、列車事故に巻き込まれた模様。
マチルデは無事だったものの、母親を喪った哀しみが大きすぎて塞ぎ込んでしまう。
これまで娘のことは妻任せだったから、マチルデにどう接してよいかわからない。
 
そんなマークスをある日ふたりの男が訪ねてくる。
彼らのうちのひとりは数学者のオットーで、マークスの妻子と同じ電車に乗り合わせていたばかりか、
エマに席を譲ったのだと言う。そのせいでエマは亡くなり、自分は助かったのだと責任も感じていた。
 
オットーは「これは事故ではない」と言う。
列車には数日後に開かれる裁判で被告に不利な証言をする予定の男が乗車しており、
彼を抹殺するための計画的な犯行だと言うのだ。
男は強迫性障害を持ち、必ず同じ時間の同じ車両、同じ席に座っていたらしい。
 
なぜそんなことまでわかるのかというマークスに、オットーは同行者のレナートを紹介。
レナートは社会生活には大いに問題のある天才的ハッカー
さらにはレナートの上を行くハッカー、エメンタールも話に乗り、
裁判の被告であるギャング組織“ライダーズ・オブ・ジャスティス”の犯行だとマークスらは断定。
復讐を誓うのだったが……。
 
邦題は英語タイトルと同じです。
「正義のライダーたち」とはマークスたちのほうのことだと思っていたら、敵のことでしたか。
バイクに乗り合わせて悪事を働く集団なんですけど。
 
大切な人が亡くなったという事実となかなか向き合えずにいるとき、人はどうなるか。
マークスの場合は現役の軍人でしたから、腕に覚えがある。
カッとなるとすぐに手が出てしまって、殺すことにすら躊躇がありません。
マチルデの恋人シリウスのことも殴りつけ、余計に娘から嫌われます。
 
一方、マークスの復讐に力を貸すオットーとレナートとエメンタールは、
いずれも腕力とは無縁。人殺しなんて「ひぃぃぃぃ」な男たち。
しかも皆、会社には属さず、家族もおらず、居場所なし。
でもすっごい頭脳の持ち主ばかりで、このドタバタ感が楽しい。
 
ちょっと「えっ」と驚く展開だから、ええんかいなこれでと思わなくもない。
こっちのほうがずーーーーーーっと良い。
 
バカみたいなクリスマスセーターを着て集まるエンディングにほっこり。
このメンバーで違う事件に挑む続編なんかもできそうですけど、
ハリウッド映画じゃあるまいし、そんなものはないでしょうね。観たいのに~。

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『真夜中乙女戦争』

2022年01月28日 | 映画(ま行)
『真夜中乙女戦争』
監督:二宮健
出演:永瀬廉,池田エライザ,柄本佑,篠原悠伸,安藤彰則,
   山口まゆ,佐野晶哉,成河,渡辺真起子他
 
公開初日、仕事帰りに109シネマズ大阪エキスポシティにて。
 
原作はFによる同名ベストセラー小説なのだそうです。Fって誰~。知らんけど。
 
それはそうとここ数年、柄本佑の立ち位置がどうも気になっています。
なんかカッコイイ役が多くないですか。
確かに昔よりうんと洗練された印象はありますが、イケメン扱いが多すぎる。(^^;
 
“私”(永瀬廉)は東京で一人暮らしを始めた大学生。
学費の工面が大変だから必ず奨学金を取るようにと母からしょっちゅう電話がかかる。
金を稼ぐために睡眠時間を削って深夜から朝までバイトも。
 
眠い目をこすりながら大学へ来ているというのに、授業がまったく面白くない。
たまりかねて授業後に教授(渡辺真起子)をつかまえ文句を言えば、
その様子が知らない間にSNSで投稿されて私はすっかり有名人に。
 
謎のサークル“かくれんぼ同好会”に入部を希望することにした私は、
面接を担当した“先輩”(池田エライザ)に惹かれる。
新入生歓迎パーティーで壁の花になっている私にが話しかけてくれた先輩にもうぞっこん。
ようやく毎日が楽しくなってきたと思った頃、私の前に現れたのは“黒服”(柄本佑)で……。
 
柄本佑演じる黒服は、永瀬廉演じる私の大学の学生ではありません。
でも訳あって大富豪、かつ世の中に不満を感じているらしい。
黒服と私はたちまち意気投合、廃墟の中に築かれた黒服の住居で過ごすようになります。
次第に同様に社会で浮いている人間たちが集まって、
「真夜中乙女戦争」と名付けた東京破壊計画を練るのでした。
 
うーむ。
簡単に言うと、居場所のなかった人たちが集まって全員テロリストになっちゃった。
片想いの相手だけは救いたかったけど、それもできませんでした。東京ほぼ全滅。
……って話にしか思えなくて、私の感想は「へー、そうですか」のみ。
池田エライザの歌うシーンなんて、これ要らないとすら思いました。
彼女、わりといいなと思っていたのですけれど、本作では白々しさを感じます。
あ、こういうのをあざとかわいいというのかな。いや、あざといって。
 
上映終了後、後ろを歩いていた若い女性ふたりの会話が聞こえてきました。
「なんか、見てはいけないものを見せられてしまった感じ」。
これって、本作自体のことを指しているのか、柄本佑と永瀬くんのキスシーンを指しているのか不明です。(^^;
 
ちなみに本作でいちばん驚いたのは、深夜のバイト先の光景。
マイクロバスに乗り込んで向かう花卉の倉庫で、花を出荷するためにてんてこ舞い。
それがものすごくブラック。
人々の心を和ませるはずの花が出荷現場ではこうなのかと震え上がりました。

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『家をめぐる3つの物語』

2022年01月27日 | 映画(あ行)
『家をめぐる3つの物語』(原題:The House)
監督:エマ・ドゥ・スワーフ,マーク・ジェイムス・ロエルズ,
   ニキ・リンドロス・ヴォン・バー,パロマ・バエザ
声の出演:クローディー・ブレイクリー,マシュー・グード,ミア・ゴス,マーク・ヒープ,
     ジャーヴィス・コッカー,スヴェン・ヴォルテル,イヴォンヌ・ロンバルト,
     スーザン・ウォーコマ,ヘレナ・ボナム=カーター,ポール・ケイ,ウィル・シャープ他
 
1月14日に配信開始となったNetflixオリジナル作品です。
ロンドンのアニメーション制作会社ネクサス・スタジオでNetflix向けに作られたそうな。
なんとも不思議でダークなストップモーションアニメで、好きだったけど、
万人にオススメできそうな作品ではありません。きっとモヤモヤする(笑)。
 
短編3つで構成されていて、同じ家が登場します。
けれどもそのロケーションは異なる。面白い。
 
1つめは“And heard within, a lie is spun”、邦題は「内側で聞こえて紡がれるウソ」。
少女メイベルは両親と乳児の妹イソベルとの4人暮らし。
裕福には程遠い生活ぶりですが、穏やかで幸せな毎日を送っています。
なのにある日、父親の親戚が大勢で押しかけ、この生活を蔑む。
父親はもとは貴族の出らしく、訳あって飛び出してきたのでしょうが、
親戚たちにクソミソに言われてヤケのやんぱち。
ちょうどそのとき、有名な建築家がこの辺りを買い取ったとかで、
一家の新居を建ててタダで住まわせてくれるという申し出があります。
 
2つめは“Then lost is truth that can't be won”、邦題は「敗北の心理にたどり着けない」。
擬人化されたネズミはデベロッパー。ある家を売ろうと策を練っています。
まもなく開催される内覧会のため、洒落た家にリノベーションしたいのですが、
経費削減のために彼自身が作業しなければなりません。
素敵なデザインの家に変身させることができたと思ったのに、
妙な音にキッチンの戸棚を開けてみれば、そこには虫がウヨウヨ。
このままでは困ると、殺虫剤を撒いたり掃除機をかけたり。
なんとか応急処置を施して内覧会に臨みます。
 
3つめは“Listen again and seek the sun”、邦題は「もう一度耳を傾けて太陽を目指して」。
今度は擬人化された雌猫、アパートメントの管理人ローザ。
周囲は洪水ですべて沈み、地上にある建物はこのアパートメントだけ。
居住者は雄猫イライアスと雌猫ジェンのみで、どちらもお金がなくて家賃を滞納。
ローザはなんとか家賃を回収してアパートメントの改修費に当てたい。
しかし壁紙を貼り替えてもこんな湿気ではすぐに剥がれてしまいます。
イライアスとジェンも水道の水が常に濁っていると文句を言います。
 
1つめでは森に囲まれ、2つめでは街路に面し、3つめでは水の上。
最初は人間が住んでいたのに、ネズミになり、猫になり、いろいろと面白い。
しかも、ロケーションが異なればまるで違う家の印象を受けます。 

アニメと言っても子ども向けではなく、難解です。私だってよくわからない。
はたしてどう解釈すればいいのでしょう。
 
タダで豪邸に住めることになったのに、そこに幸せはありません。
変わらないのは子どもたちだけ。
お父さんもお母さんもまるで洗脳されたかのようにおかしくなり、
挙げ句の果てに人間ではなくなってしまう。
 
今度はネズミになったよと思ったら、オシャレなはずの家が昆虫に乗っ取られる。
この2つめの話がいちばん不気味で、虫のダンスも笑うに笑えず。
 
洪水に遭ってこの世はもう終わっているかのようなのに、
家を手放せず、住む人もいないのに改修しようとする猫。
やっと現状と向き合い、家を船にして出航する最後だけは希望があります。
 
理解しがたくとも、この造形物は楽しい。
ストップモーション好きにはお薦めします。

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