夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『アウトレイジ 最終章』

2017年10月31日 | 映画(あ行)
『アウトレイジ 最終章』
監督:北野武
出演:ビートたけし,西田敏行,大森南朋,ピエール瀧,松重豊,大杉漣,塩見三省,白竜,
   名高達男,光石研,原田泰造,池内博之,津田寛治,金田時男,中村育二,岸部一徳他

台風&選挙の日曜日TOHOシネマズ伊丹にて、2本目。

「世界の北野武」が私にはいまいちピンと来ません。
『キッズ・リターン』(1996)は好きだったけれど、
そのほかはなかなか観ているのがツラかったりして、
『アウトレイジ』(2010)、『アウトレイジ ビヨンド』(2012)は観る前からパス。
だから本作もわざわざ観に行く気はありませんでした。

しかし、TOHOシネマズ伊丹で前述の本命『ミックス。』を選択したあと、
残る選択肢としては本作か古澤健監督の『恋と嘘』。
後者を選んだら学習がないような気がして(笑)、こっちを選んでみました。
そうしたら、これまでパスしてきたことを後悔。
なんだ、すごくシンプルでわかりやすいし、思ったほどグロくないやんか。

そんなわけで、前作までの話はまったく知りません。知らなくても大丈夫。
大友なる男が日本で何事かを起こし、弟分の市川とともに今は韓国へ。
大友を可愛がっている超大物フィクサー・張会長のグループに属し、
済州島歓楽街を仕切っているようだということは、観ればすぐにわかりますから。

済州島へ遊びに来た花菱会の幹部・花田(ピエール瀧)。
女をホテルに呼び、傷物にしたうえで、いちゃもんをつけようと責任者を呼びつけたところ、
やってきたのは大友(ビートたけし)と市川(大森南朋)たち。
脅すつもりで呼びつけたのに逆に脅され、翌日カネを用意すると約束させられる。

ところが、大友のことを知らない花田は、約束を反故にしたどころか、
自分の部下のもとへカネを取りにきた大友の部下を殺させる。
その事実がすぐに大友から張会長(金田時男)へと伝えられる。

花田がしでかしたことはすぐに花菱会幹部にも伝わる。
自分が喧嘩を売った相手が大友だと知った花田は大慌て。
若頭・西野(西田敏行)と若頭補佐・中田(塩見三省)の力を借りて
どうにかその場を収めようとするが駄目。

一方、西野のことが気に入らない花菱会会長・野村(大杉漣)は、
この騒ぎに乗じて西野を抹殺してしまおうと考える。
張グループの仕業に見せかけて西野を殺せばいいと、
次期会長の座を中田にちらつかせ、上手く事を運ぶように命じるのだが……。

前作を観た人たちのレビューでは、話がシンプルすぎるという感想があります。
シンプルだからこそ私もついていけたのでしょう。単純に面白い。

シンプルな話の筋と並んで素晴らしいのがキャスト。
キャスティングの妙が言われているとおり、
オープニングロールでしっかり「キャスティング」の表示があり、
そこに注目してくれと言わんばかり。
冒頭のシーンに映る車のナンバーが「8189」、
これは「配役」のお遊びなのではと思ったのですが、私の考えすぎでしょうか。

花菱会会長役の大杉漣、山王会若頭に光石研、警視庁刑事に松重豊
ここに前述の『ミックス。』に出演していた遠藤憲一も加えると、
“バイプレイヤーズ”勢揃いまであと一歩。惜しい!
って、仮に全員揃ってるところを見たから何?って感じですけれども(笑)。

久々に見たような気がする塩見三省が激痩せしていて迫力なく、
関西出身のわりに関西弁のイントネーションが変に聞こえてセリフ棒読みっぽい。
何かご病気でもされたのかなと思ったら、
3年ほど前に脳出血で倒れたのこと、道理で。
ならばこんなふうに復帰されたというのは凄いこと。役者魂に敬意を表します。

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『ミックス。』

2017年10月30日 | 映画(ま行)
『ミックス。』
監督:石川淳一
出演:新垣結衣,瑛太,広末涼子,瀬戸康史,永野芽郁,佐野勇斗,
   森崎博之,蒼井優,田中美佐子,遠藤憲一,小日向文世他

台風に見舞われた日曜日。あっ、昨日じゃなくて先週です。
選挙は期日前投票を済ましているし、やっぱり映画を観ることに。
朝9時前にTOHOシネマズ伊丹へ着いたら、すでにイオンモールにはたくさんの人。
まださほど雨は降っていないとはいえ、モールには台風関係なし。
むしろ台風の日のほうが客が多いような気がします。
そういえば、台風で休校になっていた日にエキスポシティに行ったら、
家族連れだらけでありえないぐらい混んでいた
ことを思い出しました。

人気脚本家・古沢良太のオリジナル脚本。
監督は『エイプリルフールズ』(2015)の石川淳一。
予告編がものすごく楽しかったので期待、そして期待どおりの楽しさ。満足。

OL・富田多満子(新垣結衣)の実家はフラワー卓球クラブ。
かつては天才卓球少女と騒がれたが、母親(真木よう子)のスパルタ指導がトラウマになり、
母親の亡き後はきっぱりと卓球を辞めてしまった。
平々凡々な人生を送るうち、20代も終わりにさしかかっている。

そんな多満子の前に現れたのは、会社の実業団卓球部に招かれてやってきた、
イケメンエース・江島晃彦(瀬戸康史)。多満子が幼いころに憧れていた相手。
向こうが覚えているはずもなく、自分も卓球をしていたとは言い出せない多満子。

ドジな多満子になぜか晃彦は興味を示し、告白されてつきあうように。
幸せを噛みしめていたところへ、卓球部に新入社員・小笠原愛莉(永野芽郁)が入部する。
イケメンと美人の組み合わせに周囲も盛り上がり、多満子は不安に。
やがて不安は的中、晃彦と愛莉の浮気現場を目撃した多満子は、
とっとと会社を辞めると、逃げるように実家へ帰る。

実家では父親(小日向文世)が細々と続けていたクラブを畳もうと検討中。
ふてくされて毎日ボーッとしている多満子に、
古くからクラブに所属している吉岡弥生(広末涼子)が声をかける。
何もすることがないのなら、コーチに来ないかと。

とりあえず顔を出してみると、そこには弥生のほか、
農業を営む落合元信(遠藤憲一)と美佳(田中美佐子)、高校生の佐々木優馬(佐野勇斗)、
それに新入部員の萩原久(瑛太)がいた。
コーチを引き受けた多満子は打倒晃彦・愛莉ペアを目標に掲げるのだが……。

王道のスポ根ものですが、王道の楽しさ。
主役を張るはずの役者が面白い脇役に徹しているのも楽しい。
広末涼子のつくったような笑顔が苦手なのですが、この彼女はすごくいい。
蒼井優は部員いきつけの中華料理屋の中国人ウェイトレス。
卓球の相手に鈴木福くんだとか吉田鋼太郎とかも。
オカマメイクのこれ誰や、たぶん生瀬勝久やな、で、正解。

映画を10本観たら7本程度は泣くはずが、
そういえばこのごろ映画観て泣いてない。これは久しぶりに泣きました。
結衣ちゃんと瑛太のキスシーンも最近観た映画のなかでいちばん素敵だったような。

やっぱりこういうわかりやすいスポ根もの、好きだ!

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『バリー・シール/アメリカをはめた男』

2017年10月29日 | 映画(は行)
『バリー・シール/アメリカをはめた男』(原題:American Made)
監督:ダグ・リーマン
出演:トム・クルーズ,ドーナル・グリーソン,サラ・ライト・オルセン,ジェシー・プレモンス,
   ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ,アレハンドロ・エッダ,マウリシオ・メヒア他

TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴの4本目。
これがこの日の本命で、〆の1本となるように4本目に選んだのでした。
監督は“ジェイソン・ボーン”シリーズや『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)のダグ・リーマン。
実話に基づく。

1970年代後半のアメリカ。
大手民間航空会社TWAにパイロットとして勤めるバリー・シールは、
天才的な操縦テクニックの持ち主だが、それを披露する場はなかなかない。
しかしCIAがその能力を買い、バリーを極秘の偵察任務にスカウトする。

もうじき出産予定の妻ルーシーにも言えず、こっそりとCIAの汚れ仕事。
彼をスカウトしたモンティ・シェイファーの評判はCIA内で上がっても、
バリーの給料その他の待遇にはそれがなかなか反映されない。

数年後、パナマの独裁者マヌエル・ノリエガとCIAの仲介人となっていたバリーに
目をつけた者たちがいた。
それは巨大麻薬組織“メデジン・カルテル”のホルヘ・オチョアやパブロ・エスコバル
彼らはバリーにコカインの密輸を持ちかける。
破格の報酬を提示され、CIAの目を盗んでコカインをルイジアナ州に運びはじめるバリー。

CIAはバリーの密輸を知ったものの、偵察任務をこなせる人材はほかにいない。
知らん顔を決め込まれたバリーは密輸を続行するが、
DEA(麻薬取締局)は黙っていられず、バリーを逮捕しようと躍起になり……。

この日の本命だったのに、期待したほどではなかったんですよねぇ。
アメリカ政府も麻薬王も見事に騙したかのようなキャッチコピーですが、
どうもその「見事さ」がありません。
アメリカをはめたというよりは、言われるがままに仕事をこなしていたら、
勝手にお金が貯まって行っちゃったみたいな感じで。
大金を掴んでも豪遊しまくりというふうでもなく、
彼は飛行機を好きに操縦できて幸せに暮らせればそれでよかったのではという気も。
だからあまり深く考えての行動だとは思えず、「お見事!」という印象はなく。

実在したバリーは始末されて亡くなっているので、
本当のところがどうだったのかもわかりません。
飛行機を操縦したかっただけじゃないの?そう聞いてみたいです。

それにしてもトム・クルーズ、何なのその笑顔。
いつまで経っても爽やかすぎる55歳。

ま、そんなわけで、この日の4本ハシゴでいちばん面白かったのは、
ぶっちぎりで『女神の見えざる手』でした。

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『アトミック・ブロンド』

2017年10月28日 | 映画(あ行)
『アトミック・ブロンド』(原題:Atomic Blonde)
監督:デヴィッド・リーチ
出演:シャーリーズ・セロン,ジェームズ・マカヴォイ,ジョン・グッドマン,
   ティル・シュヴァイガー,エディ・マーサン,トビー・ジョーンズ他

TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴの3本目。
この日のハシゴは無謀に時間がかぶっていることもなく、完璧(笑)。
2本目の『女神の見えざる手』と本作の間は25分空いていたから、
1階まで下りて買い物までできてしまいました。

40歳を過ぎても超美しいシャーリーズ・セロン
もともとモデル上がりだけあって脱ぐことを躊躇しない女優さん。
本作でも豪快にというほどではないけれど、ちゃんと脱いでいます。
それをウリにはしていないのが本作のいいところ。

冷戦末期、ベルリンの壁崩壊が迫る1989年秋。
世界を激震させるほどの極秘情報を所持していたMI6の男性エージェントが、
殺されたうえにその情報を奪われる。犯人はKGBのエージェントらしい。
その奪還と二重スパイの正体を突き止めるという密命を受けた、
MI6の凄腕女性エージェント、ロレーン・ブロートンはベルリンへ。

現地で活動するスパイ、デヴィッド・パーシヴァルと合流するが、
なぜかロレーンの行動は敵側に筒抜け。
デヴィッドにも信頼が置けず、誰が敵か味方かまったくわからない。
次々と襲いかかってくる殺し屋に立ち向かうロレーン。

MI6はイギリス、KGBはソ連。
ここにさらにアメリカのCIA、フランスのDGSEも現れて、各国のスパイ集合。

MI6の上司にトビー・ジョーンズ、CIAのエージェントにジョン・グッドマン
シュタージのスパイにエディ・マーサン
フランスの女性エージェントにソフィア・ブテラ
謎の時計屋役、ティル・シュヴァイガーがしぶくてカッコイイ。
デヴィッド役のジェームズ・マカヴォイこのところイカれた役なのが気になります。

ものすごく期待したほどではなかったのですが、
シャーリーズ・セロンの美貌と姿態と衣装を見ているだけで十分楽しい。
え~っ、こんなオチぃ?と思いきや。(^O^)

選曲もいろいろ楽しいなか、
何が可笑しかったって、ネーナの“ロックバルーンは99”の短調バージョン。
初めて聴きました。こんな悲しげな曲になるなんて。

鑑賞後のお手洗いの中。
二人連れの女性が「あれって、結局○○○やったってことぉ?」
ものすごいネタバレを未見の人がいるかもしれないトイレでしてはいけません。(^^;

続編もあれば観ます。

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『女神の見えざる手』

2017年10月26日 | 映画(ま行)
『女神の見えざる手』(原題:Miss Sloane)
監督:ジョン・マッデン
出演:ジェシカ・チャステイン,マーク・ストロング,ググ・ンバータ=ロー,
   アリソン・ピル,マイケル・スタールバーグ,ジョン・リスゴー他

TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴの2本目。
この日は大阪市内で晩ごはんの予定だったから、
TOHOシネマズ梅田やなんばへ行ってもよかったところ、
わざわざ逆を向いて西宮まで行ったのは、本作を観るためです。

アメリカでは映画の出来に賛否両論。
主演のジェシカ・チャステインの演技力に頼りすぎているという声が大きいそうですが、
役者の演技力に頼ってもええやんか。めちゃめちゃ面白かった。
ものすごく久しぶりにパンフレットを買いましたもん。
昔は片っ端から買っていたパンフレット、置くところもないので最近は自重。
このあいだ買ったのはいつやったかなと思い出してみると、たぶんこれ、その前がこれ
このふたつのあいだはわりと近いけど、以降買っていないはず。

私が思う昨年のワースト『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』(2015)。
そのジョン・マッデン監督だということも忘れて臨みました。
去年のマイ・ワースト監督だということを覚えていたら、何この差は!とさらに興奮したかも。

ロビー活動という言葉は皆さん常識としてご存じでしょうが、
映画鑑賞が趣味でなかったら私は知らなかったかもしれないと思うので、
私みたいな人のために記しておきます。

ロビー活動とは、特定の主張―たとえば銃規制とか禁煙とか―を持つ個人、
あるいは団体が、政府の政策に影響を及ぼすことを目的におこなう私的な政治活動。
ロビー活動をおこなう人たちは「ロビイスト」と呼ばれ、
彼らの活躍というのか暗躍が選挙戦にも大きな影響を及ぼします。

大手ロビー会社の花形ロビイスト、エリザベス・スローン。
手段を選ばぬ戦略で勝利を重ね、その腕を高く評価されている。

ある日、大口クライアントの銃擁護派団体の会長から、
新たな銃規制法案の成立を阻止してほしいと依頼を受ける。
断るという選択肢はないと思われていたが、
エリザベスは会長に辛辣な言葉を浴びせかけた挙げ句、拒否。
各界に強力なコネを持つ会長に無礼を働けばどうなることか。
同席していた社長はエリザベスに依頼を受けるように強いる。

後日、エリザベスに声をかけてきたのは、
彼女の噂を聞きつけた新興ロビー会社のCEOロドルフォ・シュミット。
ロドルフォはエリザベスに銃規制法案成立に向けて闘おうと誘う。
エリザベスは部下数名を引き連れて電撃移籍するのだが……。

ジェシカ・チャステインは、『ツリー・オブ・ライフ』(2011)ではプラピ演じる主人公の妻。
『テイク・シェルター』(2011)ではマイケル・シャノン演じる異常な主人公の妻。
この辺りまでは普通におとなしい妻役のことが多く、印象はさほど強くありません。
変わってきたなと思ったのは、『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(2011)のアーパーギャル役。
その後、『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)ではビンラディン追跡チームの分析官、
『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』(2014)ではギャング一族の娘、
『オデッセイ』(2015)ではクルーのリーダーなどなど、強い女性の象徴のように。

出る釘は打たれる。彼女を潰そうとする企みが次々と。
淡々と冷徹に仕事を進める彼女が凄い。
誰も信じない彼女とエスコートサービスの男性との話にホロリ。
この男性フォード役には、『クーパー家の晩餐会』(2015)で
長女に振り回されていた兄ちゃん、ジェイク・レイシー。イイ感じ。
ついでに、社長役のゲジゲジ眉の爺ちゃんはサム・ウォーターストン。
『エイリアン:コヴェナント』のヒロイン、キャサリン・ウォーターストンのお父様です。

白熱して、スッキリ。
痛ましい銃乱射事件が起きている昨今、私たちも考える一助に。

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