夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『マリリン 7日間の恋』

2012年03月31日 | 映画(ま行)
『マリリン 7日間の恋』(原題:My Week with Marilyn)
監督:サイモン・カーティス
出演:ミシェル・ウィリアムズ,ケネス・ブラナー,エディ・レッドメイン,
   ドミニク・クーパー,ジュリア・オーモンド,ジュディ・デンチ他

どの店舗も常時長蛇の列ができているクリスピー・クリーム・ドーナツ。
大阪ステーションシティシネマに行くときに通るルクア大阪店も同じ。
一度くらい食べてみたいけれど、あの列に並ぶ気力は無し。
だもんで、一生行けないかもと思っていました。

休日の朝イチ、9:10の回を観る予定でステーションシティシネマに向かったら、
なんとクリスピー・クリーム・ドーナツ、がらがら。チャンス到来に目がキラリ。
コーヒーとドーナツ1個のモーニングセット、320円をテイクアウトしたら、
ドーナツの無料券2枚くれるわ、スタバもやっている当日2杯目のコーヒーは100円のレシートくれるわ。
……だけど、次に寄るときはどこもあの行列でしょ。寄れないやん。(;_;)

とりあえず休日に早起きした甲斐はあり、いそいそしながら“マリリン”。

言わずもがなのハリウッドのスーパースター、マリリン・モンロー。
セックスシンボルから演技派への脱皮を図る彼女は、
名優ローレンス・オリヴィエが監督を務める『王子と踊り子』(1957)への出演を決める。
本作は、その撮影の舞台裏を、第3助監督だったコリン・クラークが綴ったもの。

1956年、劇作家アーサー・ミラーと結婚したばかりのマリリン・モンローは、
『王子と踊り子』の撮影のためにロンドンへと降り立つ。
マリリンが信頼をおくポーラ・ストラスバーグを演技指導者として同行させるが、
その演技手法をローレンス・オリヴィエはことごとく否定。
どうしていいやらわからなくなったマリリンは、
気が滅入ると部屋に閉じこもり、決して時間どおりには現場に来ない。

そんなとき、マリリンの様子を見に走らされたのがコリン・クラーク。
名家に生まれたコリンは、親のつてでどこにでも就職できそうなものを、映画の世界への夢を捨てない。
助監督と言えば聞こえはいいが、要するに雑用係である通称サードの役目を喜んで引き受ける。
マリリンはコリンにだけは心を許したように見えて……。

これまで秘密にされてきたコリン・クラークの回顧録が基ということは、
真実かどうかを知るのは彼のみで、単なる妄想かもしれません。
けれど、仮にこれが妄想だとしても、非常にフェア。
なぜなら、本作から感じ取れるのはコリンの想いで、
マリリンが本気だったことを感じさせるシーンはないのです。

純情なコリンは、マリリンに騙されているかもと思ったか思わなかったか。
騙されていると思いたくはなかったでしょうが、
この女性になら騙されてもいいやとどこかで思っていたかもしれません。
また、マリリンにも騙すなんて気はさらさらなく、あれが彼女の素だったのでしょう。

すべてなかったことにと言いながら、
最後にはきっちりお別れに訪れて、忘れないでというマリリン。
ズルイよなぁと思いながら、爽やかな涙に包まれました。

初恋って、やっぱり甘くてつらいもの。

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『僕達急行 A列車で行こう』

2012年03月29日 | 映画(は行)
『僕達急行 A列車で行こう』
監督:森田芳光
出演:松山ケンイチ,瑛太,貫地谷しほり,ピエール瀧,村川絵梨,
   松平千里,笹野高史,伊武雅刀,西岡徳馬,松坂慶子他

先週末より全国のシネコンにて公開中。

前述の『FLY! 平凡なキセキ』では森モータースの社長だった笹野高史が、
本作ではコダマ鉄工所の社長に。
同じような規模の町工場で、同じぐらい片言の日本語の従業員がいたりして、
続けて観ると、どっちがどっちだったかこんがらがります。(^^;

大手不動産デベロッパー、のぞみ地所の社員、小町圭(松山ケンイチ)と、
小さな町工場、コダマ鉄工所の二代目、小玉健太(瑛太)。
こんなふたりがたまたま同じ列車に乗り合わせる。

小町は女性とデート中。
しかし、ひとり楽しげに車窓を眺めながら音楽を聴く小町に、
相手の女性は怒りを募らせ、途中下車してしまう。

小玉はレゲエな外国人従業員たちを伴って小旅行中。
無類の鉄道好きで、金属部品をこよなく愛し、その知識も半端ではない。
今日も車内でモーター音に聞き耳を立て、パーツに目をやる。

お互いのことをなんとなく覚えていたふたりは、後日、偶然再会して意気投合。
小町が引っ越し先を探しているところだと知り、
小玉はとりあえずコダマ鉄工所の寮に入ってはどうかと勧める。
こうして小町は寮へ。小玉と夜な夜なビールにゆで卵で鉄道話。

ある日、小町は九州支社への転勤を命ぜられる。
小町を評価する天然系女社長(松坂慶子)の思惑があってのことだったが、
つきあい始めたばかりのあずさ(貫地谷しほり)は左遷だと断言。
なのに、小町はこの転勤が嬉しくて仕方がない。
なんてったって九州。どこもここも列車だらけなんだから。

さて、九州支社ではどうしてもモノにしたい話があった。
飛ぶ鳥を落とす勢いで業績を伸ばし続ける地元の食品企業ソニックフーズに、
なんとしてでも新工場誘致の話を持ち込みたいのだが、
社長はのぞみ地所の面々と会うことすら拒んでいる。
会ってさえくれればと頭を悩ませる東京本社と九州支社の役員たち。

一方、そんなことはまったく聞いていない小町は、
東京から訪ねてきた小玉とともに休日の列車の旅を満喫。
派手なネエちゃんを連れたオッサン(ピエール瀧)と知り合う。
意外にもこのオッサンがものすごい鉄道オタクで……。

昨年末、まだ61歳だったのに他界してしまった森田芳光監督。
遺作となった本作は、人と人との繋がりっていいなぁとしみじみ思わせてくれるもの。
出会った縁を大事にして、損得抜きでしたことが、いつかみんなに幸せをもたらす。
厳しい状況にあってもへこたれなかったコダマ鉄工所が湧くシーンは、
『空飛ぶタイヤ』を思い出し、一緒に祝いたくなりました。

小町と小玉の真面目さを表すのに良い手だなと思ったのは、
ふたりとも99%(少なくともひとつは聞いたので)、「い抜き」ではないということ。
いまどきいますか、こんなにきっちり「い」を入れてしゃべる若者。(^^;

小町のこんな感じの台詞が印象に残っています。
「女の人の気持ちはわからない。わからないのに悩んでもストレスになるだけ。
だから、わからないもののことはそれ以上考えない」。
と言いつつ、小町も小玉も悩んでいるんですけどね。

『ドラゴン・タトゥーの女』のオープニングにシビれた人、
小町が「列車と音楽のコラボにハマったきっかけ」に大笑いできること請け合います。

こんな温かいオリジナル脚本を自ら書いて撮り上げた森田芳光監督に感謝。
エンドロール後の「ありがとう」に、こちらこそ。合掌。

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『FLY! 平凡なキセキ』

2012年03月27日 | 映画(は行)
『FLY! 平凡なキセキ』
監督:近藤真広
出演:小籔千豊,相武紗季,温水洋一,本仮屋ユイカ,笹野高史,大杉漣他

シネマート心斎橋にて。

吉本興業と朝日放送のコラボ作品で、監督は朝日放送のディレクター。
吉本興業が協賛する沖縄国際映画祭に出品されました。
主演は吉本新喜劇の座長、小籔で、ほかにも池乃めだか、なるみ、
天竺鼠や海原やすよ・ともこなどのお笑いタレントに、関西出身の俳優多数出演。
大ざっぱに言うと、『宇宙人ポール』のコテコテ大阪版でしょか。

大阪市内の町工場、森モータースに勤める満男は、
内気で無口、真面目だけが取り柄の冴えない30代の男。
実家でかしましい両親と妹とともに4人暮らしだが、
ほとんど2階の自室で一人きりで過ごしている。

そんな満男が想いを寄せるのは、森モータースの事務員、ななみ。
彼女は、元暴走族のアタマだった夫を事故で亡くし、
小学校1年生の息子を育てるシングルマザー。
しかし、告白できるわけもなく、社内旅行時のななみの写真を密かに眺めるだけ。

ある日、同僚から草野球に誘われた満男。
応援に駆けつけたななみ親子にいいところを見せたいが、打撃では見逃し三振。
守備では外野フライを追いかけて、草むらでようやくボールを発見。
内野にボールを返そうするが、なぜかボールが空中ではねて戻ってくる。

試合後、ボールの落下地点にあった奇妙な物体のことが気にかかり、
確かめに行ってみると、そこにはなんとも貧相な風体の宇宙人がいて……。

“修学旅行”の自由行動時間中に羽目を外したがために、
地球へ墜落してしまったという宇宙人、シカタさん役に温水さん
シカタさんは、人間の言葉はわかるけど、声を発することはできません。
シカタという名前であるということも、
「団塊の世代みたいな顔をしていながら実は高校生」だということも、
小籔演じる満男はシカタさんの身振り手振りから知ります。

同級生に片想い中のシカタさんの純情にふれた満男は、
まるで自分のことのように感じ、放っておけずに匿います。
宇宙船を修理して必ずシカタさんを故郷へ帰還させると心に誓いますが、
そうはさせじとシカタさんを追う集団が。

たぶん今週限りで終映だからええやろとほとんどネタバレ。
お好み焼き屋の主人を演じる大杉漣を見ていると、
『亀は意外と速く泳ぐ』(2005)のラーメン屋の主人、松重豊を思い出します。
そして、この主人をはじめとして、満男を取り巻くみんなが力を合わせ、
シカタさんを救出するシーンと、「友だちやろ」に泣きました。
『探偵!ナイトスクープ』の番組そのまんまの出演にも笑い、大阪人ならではの作品です。

チャリの後ろに女乗りする温水さんもツボ。
そうそう、淀川河川敷といえば、『晴れたらポップなボクの生活』(2005)にも
温水さんが出演していました。これは宇宙人じゃなくてホームレスでしたけれど。

斉藤和義の『君の顔が好きだ』と『愛に来て』が大好きだった私は、
彼の本作のための書き下ろしエンディングテーマ『満男、走る』も嬉しく。

たいていの電化製品は、叩けば直る。

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『行け!男子高校演劇部』

2012年03月25日 | 映画(あ行)
『行け!男子高校演劇部』
監督:英勉
出演:中村蒼,池松壮亮,冨田佳輔,川原一馬,金子直史,稲葉友,
   佐藤永典,新川優愛,西原亜希,大和田伸也,池田鉄洋他

昨夏に公開されたレンタル新作です。
『ライアーゲーム 再生(REBORN)』で鍵を握る脱落者、嶋役を演じた池田鉄洋が、
初めて脚本を担当した作品ということで興味倍増。

ところで、なんだかどんどん汚くなる中村蒼くん。
『ひゃくはち』(2008)のときなんて、汗臭い高校野球の話だったのに汚くない。
『BECK』(2010)で主人公の親友を演じたときもイケてました。
『キミとボク』(2011)では子猫の“銀王号”と並んで可愛かった。
最近の蒼くん、あの清潔感はどこへ。(^^;

美形俳優のイメージが強かった男優で、
なんだか汚くなって色気が出たなぁと思うのは真田広之。
しかし、蒼くんの場合は21歳とまだ若すぎるせいなのか、
色気が出るところまで達していません。
本作にはその「ちょっとむさ苦しい蒼くん」が合っていました。

オガこと小笠原元気は、親友のカジこと大和田舵とともに高校へ入学。
女子にモテるかどうかを基準にクラブ選びを開始する。
サッカーにバレーに軽音、どれもピンと来ないでいると、
演劇部の新入生勧誘公演“ロミオとジュリエット”が。
ヒロインのジュリエットを演じる上級生に一目惚れしたオガは、
即座に演劇部の入部届に署名する。

ところが、部室で着替えるジュリエット役を見て唖然。
なんと男前な上級生。そうだ、ここは男子校だったのだ。
入部届は無効にならず、新部長に任命されてしまう。

新入生勧誘公演を機に上級生らは引退。
残ったのはオガを含む新入生3名だけ。5名に達しなければ廃部らしい。
廃部になってもいいものを、なんとなく燃えたオガは奔走。
厳格な家庭に育つ優等生のカジをも巻き込んで、
演劇祭に出場する決意を固めるのだが……。

序盤のノリは「ムリかも~」。『高校デビュー』(2010)の再来か。
見ているほうが恥ずかしくなり、イマイチ乗れず。
けれど、カジが書いた演劇祭の出品作『最後の一葉』に白熱。
教科書等で誰もが知るO・ヘンリーのあの短編を、
池田鉄洋はこんなふうに料理してみせます。傑作。
他校のスパルタ演劇部を見て、演劇ってそんなに苦しいものじゃない、
こんなに楽しいんだぜってところを見せてやろうぜという池高演劇部一同。

オガ以外の部員はというと、私の知った顔はカジ役の池松壮亮くんだけでしたが、
存在感が薄すぎるウエダに、ヤンキーのタムラ、
自称イケメンのジョーに、スポーツバカのハシモトと愉快な顔ぶれ。
いつも笑っているかのような顔の堺雅人が、
苦虫を噛みつぶしたような顔でカメオ出演しているのにもウケました。

最初は寒っ!と思っていたのに、終わってみれば、なんでしょ、この爽快感。
男子校演劇部の公演を目の前で見せてもらったかのようです。 

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『SHAME シェイム』

2012年03月21日 | 映画(さ行)
『SHAME シェイム』(原題:Shame)
監督:スティーヴ・マックィーン
出演:マイケル・ファスベンダー,キャリー・マリガン,ジェームズ・バッジ・デール,
   ルーシー・ウォルターズ,ニコール・ベハーリー他

前述の『最高の人生をあなたと』とハシゴ。
あらゆる意味でこちらのほうが印象に残りました。

ニューヨークの高級マンションに暮らす独身男性ブランドン。
そつなく仕事をこなし、会社にとって理想的な社員のうえに、見た目も魅力的。
控えめで柔らかな物腰は好感度抜群。

しかし、そんな彼には誰にも言えない秘密があった。
彼は極度のセックス依存症で、やらずにはいられない。
相手は行きずりだったり金で買ったり、とにかく毎日毎晩。
彼のPCは自宅も会社も猥褻な動画だらけ。
仕事中すらその欲望を抑えられず、トイレに行っては自慰にふける。

それでも、そういう面をひた隠しにさえすれば、
とりあえずは平和な暮らしを送ることができていた。
なのに、避けていた妹シシーが転がり込んできたのをきっかけに、
彼の日常はすべてのバランスが狂いはじめ……。

兄はセックス依存症、妹は自傷癖。
兄妹がこうなった原因は何なのか、それについては明かされません。
この点を含め、明らかにされていない部分については、
観る人が想像してくれればいいという監督の弁。

だから、いろんな可能性を考えさせられます。おもしろい。
全編通して哀切な空気が漂い、音楽も風景も寒々しくありながら力強いです。
何がそんなに悲しいの、何がそんなに苦しいのと、
ずっと問いかけたくなるブランドンの表情が絶品。

ただ、ある女性を前にしたときに勃たないというシーンは合点が行きません。
本気で好きな相手だとこうなると言いたいのかと思わなくもないですが、
ブランドンが彼女にマジで惚れていたと考えるには弱いような。

何かに依存しないと生きていけない人たちの苦しみが突き刺さります。
テーマとしては人に薦めづらいものですが、
どう解釈するかをほかの人と話してみたい作品でもあります。
こんなふうに感じるところはミヒャエル・ハネケ監督の作品と似ているかも。

日本公開に当たり、映倫とずいぶん揉めたようですが、
単に裸で部屋をうろつくようなシーンではぼかしは入っていません。
『17歳の肖像』(2009)、『わたしを離さないで』(2010)のヒロイン、
キャリー・マリガンも脱いでいますが、かなり垂れ乳だったのはショック。(;_;)

ブランドン役のマイケル・ファスベンダーのイク表情は見ていて切なくなるほど。
だけど、イク表情においては、『ラスト、コーション』(2007)のトニー・レオンの右に出る者なし。
というのは、私が勝手に思っていることなのですけれど。
いずれにしても、声を出さずに表情で、あんな切なさを見せる彼らは凄い。

余談ですが、ブランドンがオフィスに持ち込むドリンク缶、
ちらりと見えた感じでは、これもレッドブルではないでしょか。
これ以上ギンギンになってどうする。(^^;

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