夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ブルース・オールマイティ』

2004年04月30日 | 映画(は行)
『ブルース・オールマイティ』(原題:Bruce Almighty)
監督:トム・シャドヤック
出演:ジム・キャリー,ジェニファー・アニストン,モーガン・フリーマン他

ブラッド・ピットは「別れるたびに女のレベルが下がる」と言われました。
その主たる女遍歴はジュリエット・ルイス→グウィネス・パルトロウ→ジェニファー・アニストン。
ブラピの妻というステイタスを獲得しながら、
前者2人より「女のレベル」が落ちると位置づけされた彼女ですが、
顔はいちばんかわいいでしょ?

ニューヨーク州の地方テレビ局。
ブルースはアンカーマン(ニュースキャスター)を夢見ているが、
彼にまわってくるのは「巨大クッキーでギネスに挑戦」みたいなお笑い度の高いレポートばかり。

ある日、ナイアガラの滝でのイベントのレポートを上司から指示される。
出来次第ではアンカーマンに昇進だと匂わされ、意気揚々と現場に臨む。

ところが、取材直前、ライバルがすでに次のアンカーマンに決定したことを知らされる。
怒りのおさまらないブルースは生放送中にキレ、テレビ局をクビになる。

彼を理解してくれるのは同棲中のグレースだけだったが、ブルースは彼女にも八つ当たり。
ヤケになって車を飛ばした先で外灯に激突した彼は、天を仰ぎ、神に向かって暴言を吐く。

翌朝、ブルースのポケベルが鳴る。
壊しても鳴り続けるポケベルに仕方なく応答すると、辺鄙なビルの一室に呼びだされる。
そこで彼を待っていたのは清掃員姿の神だった。
神は言う、「私の仕事に不満があるなら、私の力をすべて授ける。
今から君が私の代わりに仕事をやれ」。

かくして全能の神となった彼。
しかし、自分の夢ばかりを叶えて、他人の祈りは放置したまま。
放置された祈りは、彼の耳に騒音となって現れる。
たまらなくなった彼は、すべての人の祈りを聞き入れることに。
すると株は上昇、宝くじは前代未聞の当選率で、町は大混乱をきたし……。

何もかもが意のままでも、人の意思だけは操ることができません。

「スープをふたつに分けた(そんなシーンがあります)のは手品。
 だが、シングルマザーが仕事をしながら子どもを育てるのは奇跡。
 若者がドラッグから離れて学校に通う、それも奇跡。
 神に頼らずとも、人間には奇跡をおこなう力がある。
 奇跡を願うなら自分でおこなえ」。

説教くさいけど、モーガン・フリーマンが言うと重みがあって思わず涙。
邦画でいうところの山崎努でしょうか。これって人徳?

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『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』

2004年04月28日 | 映画(さ行)
『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』(原題:Jay and Silent Bob Strike Back)
監督:ケヴィン・スミス
出演:ジェイソン・ミューズ,ケヴィン・スミス,シャノン・エリザベス他

昨年公開された2001年の作品。
オタッキーなタイトルのこの作品を楽しむためには、
ケヴィン・スミス監督の前作を数本観てから。

デビュー作は超低予算で撮影された『クラークス』(1994)。
ニュージャージーのコンビニ店員が主人公。
常連客やイカレた客とのやりとりが笑かします。
コンビニの前でドラッグを売る変なふたり組が「ジェイ&サイレント・ボブ」。
そして、サイレント・ボブは監督本人が演じています。
この作品以降、ケヴィン・スミスの作品には
必ずジェイとサイレント・ボブが登場します。

ショッピング・モールが舞台の『モール・ラッツ』(1995)。
レズの女性と男性ふたりの三角関係を描いた『チェイシング・エイミー』(1997)。
天国へ帰りたい堕天使コンビが、キリストの遠縁にあたる女性と戦う『ドグマ』(1999)は
神への冒涜と非難されました。

ジェイとサイレント・ボブは常に脇役。
悩める主人公を助けたり、罵倒したり。
ボブは決して喋らないのですが、物語の終盤でいつもガツンといいことを言う、おいしい役です。
このふたりがはじめて主人公になったのが今回の作品。

いつものごとく、コンビニ前でドラッグを売るふたり。
ある日、彼らをモデルにしたコミック、“ブラントマン&クロニック”が
ハリウッドで映画化されるという噂を聞く。
映画化されれば、自分たちがコミックの登場人物と同じアホだと思われる。
撮影を阻止するためにハリウッドに乗り込むことに。

お金のないふたりはヒッチハイク。
途中、美女4人組に拾ってもらうが、
実は彼女たちは宝石泥棒で、ダイヤモンド取引所での盗みを計画。
捜査の目をくらますため、動物実験をおこなっている隣の研究所にふたりを侵入させ、
オランウータンを解放して騒ぎを起こすおとり作戦を企てていた。
そうとは知らないふたりは、美女の頼みを快諾して……。

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1998)をパロった撮影現場に
ベン・アフレックとマット・デイモン、ガス・ヴァン・サント監督まで登場。
数学教師が射殺される「ハンティング=狩り」の映画になってました。
『アメリカン・パイ』(1999)、『最終絶叫計画』(2000)などのパロディーも。

アホらしいけど愛すべき作品。
好きだなぁ、こういうの。
しかし、こんなん、買うか?普通。←買ってもた。

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神をも畏れぬチャレンジャー

2004年04月23日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
前述の『アマロ神父の罪』のカルロス・カレラ監督以外にも
チャレンジャーはいらっしゃいます。

カトリックの司祭が実は同性愛者で、
男を求めて街をさまよう姿が衝撃的だったイギリスの作品、『司祭』(1990)。
ローマ法王庁から抗議声明まで発表されたこの作品の監督は
アントニア・バードという女性監督。
これは、聖職者の同性愛を描いただけでなく、
告解の秘密厳守という司祭の原則についても問いただす姿勢を見せたため
―女子高生が父親から犯されていると司祭に告白する。
告解の秘密厳守の原則のせいで、司祭は知らぬふりをするしかない。
ある日、母親が現場を目撃、司祭に「なぜ教えてくれなかったのか」と詰め寄る―、
カトリック関係者から激しく非難されました。

『マイ・ネーム・イズ・ジョー』(1998)や『セッション9』(2001)などの主演俳優でもある、
ピーター・ミュランの監督作、『マグダレンの祈り』(2002)は、
実在のアイルランドの修道院が舞台。
堕落した女性を更正させる施設とされる修道院の真実。
虐待におびえる修道女たちを描いて、「事実に反する」としてバチカンから抗議されました。
これはもうじきレンタル開始。

さらには、メル・ギブソン。
彼の主演作だった『サイン』(2002)は、
畑に変な絵文字みたいなものが突然現れて、
オチはなんぞやと思いきや、宇宙人の仕業だったという、
しばし放心してしまう作品でした。
「これは新興宗教の映画か?」とお口あんぐり。

他人が監督した新興宗教映画では飽き足らなかったのか、
メル・ギブソン本人が監督したのが『パッション』(2004)。
キリスト処刑までの最後の12時間の物語です。
反ユダヤ主義ではないかと物議を醸しましたが、
あとで騒ぎになるのを避けるためだったのかどうなのか、
全米では公開前にカトリック関係者を対象に試写がおこなわれたそうです。
ローマ法王も鑑賞して、問題なしとの判断だったとか。
その結果、カトリック関係者が大量の前売り券を購入する現象が起こり、
えらいヒットにつながったようです。
日本ではこのGW公開。

神をも畏れないチャレンジャーたちの作品は、日本以外では皆ヒット。
日本を除けば、宗教ネタは世界で人を集めてます。
おそるべし、神の力。

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『アマロ神父の罪』

2004年04月22日 | 映画(あ行)
『アマロ神父の罪』(原題:El Crimen del Padre Amaro)
監督:カルロス・カレラ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル,アナ・クラウディア・タランコン,
   サンチョ・グラシア,アンヘリカ・タラゴン,ルイサ・ウエルタス他

メキシコの小さな町、アルダマ。
若き神父アマロは司教の秘蔵っ子。
しばらくは見習いのため、その教区の司祭であるベニト神父のもとにとどまることになった。
お手本となるべきはずのベニト神父だが、
裏ではマフィアのマネー・ロンダリングに手を貸し、
町の飲食店を切り盛りする未亡人サンファネラを愛人にしている。

サンファネラの娘、美しいアメリア。
母の店を手伝いながら熱心に教会に通う信者。
ジャーナリストを目指す恋人がいるが、結婚には踏み切れない。
そんな折、アマロ神父に出会った彼女は、
次第に神父に対する思いを募らせてゆく。
恋に落ちたふたりは人目をしのんで会うようになる。

宗教をあつかう監督はチャレンジャーですね。
必ずどこかで抗議運動が起きます。
この作品の公開時もやはり「神への冒涜」だと騒がれ、
映画館の爆破予告まであったそうです。

ベニト神父は最初から悪そうな役まわりが予想できましたが、
アマロ神父のほうは正義感に燃え、
肉欲の罪の意識に苛まれる様子が描かれるのかと思っていました。
ところがどっこい、神父である立場を利用して、密会場所をいとも簡単に用意したり、
バレそうになると「アンタも悪いこと、してるやろ」とベニト神父を脅したり。
教会についての悪い噂をもみ消すために新聞社をも脅迫する。
彼女が妊娠したと聞けば「堕ろせ」のひとこと。
そら「冒涜」やと騒がれますわね。
だからこそ、「やっぱり神父も人間か」と、こちらは観てしまうんですけど。

宗教を題材にした作品を次にいくつかご紹介。

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『北京ヴァイオリン』

2004年04月20日 | 映画(は行)
『北京ヴァイオリン』(原題:和イ尓在一起)
監督:チェン・カイコー
出演:タン・ユン,リウ・ペイチー,チェン・ホン,ワン・チーウェン他

国内で、海外で、どこででも見かける中国人。
そのけたたましさといったら、
たまに「勘弁してくれ~」と言いたくなることもあります。

しかし、中国の映画を観るたびに、その人間の心の大きさに驚き、
中国が好きになります。

中国の田舎町に住む父親と息子のチュン。
母は息子が2歳のときにヴァイオリンを形見に他界。
父は息子にヴァイオリンの才能を見いだし、
ヴァイオリンを続けさせたい一心から毎日必死で稼いでいる。

息子が一流のヴァイオリニストになる日を夢見る父。
北京で開催されるコンクールに出場するため、
全財産を帽子にしのばせ、息子とともに故郷を出る。

お金がモノを言う都会では、いくら優秀でも貧乏人は上位に入賞できない。
案の定、チュンは5位にとどまる。

トイレで偶然「チュンが優勝して当然だった」と話す、
ヴァイオリン教師の言葉を耳にした父親は、
この教師をつかまえ、チュンに指導してくれるよう頼みこむ。
音楽に対する真っ当な耳と心を持っていても
金に釣られることなく自分のやり方をつらぬく教師は学校でははみ出し者。
こんな教師とチュンのレッスンが始まる。

中国版『リトル・ダンサー』(ホンモノは2000年のイギリス作品)と称されたこの作品。
母と子の愛もいいですけど、がんばる父と子の愛にはやっぱり泣かされます。

監督は『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993)のチェン・カイコー。
ハリウッドに進出して撮ったエロエロ・サスペンス、『キリング・ミー・ソフトリー』(2000)では
何を血迷っとんねや!と思いました。
やっぱりこの監督には中国を撮ってもらわんと。

はみ出し者の教師がチュンに最初にかける言葉、
これはヴァイオリンにかぎらず、すべてのことに共通では。

その1「一生懸命やれ」。
その2「やるからには楽しんでやれ。それができないならやめろ」。

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