夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『オリバー・ツイスト』

2006年02月27日 | 映画(あ行)
『オリバー・ツイスト』(原題:Oliver Twist)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:バーニー・クラーク,ベン・キングズレー,ハリー・イーデン他

これもロードショーにて。
言わずと知れたチャールズ・ディケンズの名作ですが、
アメリカでは封切り早々打ち切られ、
日本でも評判は芳しくない様子。
地味だ、地味すぎる。でも嫌いじゃない。

19世紀、産業革命の真っ只中のイギリス。
孤児院で育ったオリバーは9歳になり、
救貧院(=貧民収容施設)に移送される。

丸まると肥った委員たちが贅沢な食事を楽しむのに対し、
子どもたちに与えられるのはわずかな粥。
空腹に耐えかねた子どもたちは「おかわり」の要求役をクジで決める。
その役に当たってしまったオリバーが
おそるおそる「おかわりをください」と言うと、委員たちは激怒。
オリバーを追放処分にする。

報奨金5ポンド付きでオリバーを引き取ったのは町の葬儀屋。
救貧院よりはわずかにマシな程度で、棺に囲まれて眠る日々。
葬儀屋の妻から死亡した母親のことを侮辱され、
暴れまくったオリバーは、翌朝、家出。
都会に行けばなんとかなるだろうと、1週間歩きつづけてロンドンに辿り着く。
空腹と疲労で動けなくなった彼に声をかけたのがドジャー。
彼は鮮やかな盗みのテクニックを見せると、
オリバーを老人フェイギンの家へ連れていく。

フェイギンのもとには孤児たちが集う。
彼らは盗んだ金品をフェイギンに差し出し、
その代わりに寝る場所や食事を提供してもらっているのだ。
オリバーもメンバーに加わることになるが、
まだまだ実行役は仰せつかることができない。

ある日、盗みの現場を本屋の店主に目撃される。
実行役のドジャーらはうまく逃げるが、
見ていただけのオリバーは捕まってしまう。
本屋の店主が濡れ衣だと証言し、無事釈放されるが、
被害者であるブラウンロー氏の前で気絶するオリバー。

富裕なブラウンロー氏はオリバーを手厚く介抱する。
オリバーを家族として招き入れようとするが、
悪事がばれるのを恐れるフェイギンとその仲間のビルは
オリバーを連れ戻そうと画策し……。

巨額を注ぎ込んだというロンドンのセットはさすが。
それ以外はタイトルロールすらホントに地味。
でも、ポランスキーの映画って昔は暗いだけのイメージが、
最近は『戦場のピアニスト』(2002)といい、
暗闇にほんの少し光が射しているように思えます。
これってポランスキーも私も、年をとったから?

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『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』

2006年02月23日 | 映画(あ行)
『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』(原題:Walk the Line)
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ホアキン・フェニックス,リース・ウィザースプーン他

ロードショーにて。
1950年代、ロカビリー黄金時代を築きあげ、
カントリーとロックの両部門で殿堂入りしている伝説の歌手、
ジョニー・キャッシュの生涯。

綿花の小作で生計を立てる貧しい家庭で育つ、
まだ少年の仲良し兄弟、ジャックとキャッシュ。
昼間は畑仕事を手伝い、夜になればジャックは聖書を読み、
音楽好きのキャッシュはラジオに聴き入る。

ある日、作業場で丸鋸を使用中のジャックが事故死する。
ジャック自らは仕事を片づけるために残り、
キャッシュには釣りを楽しんでこいと
優しく送り出してくれた後の出来事だった。
父親はキャッシュを責める。まちがった息子が生き残ったと。
キャッシュはその言葉に深く傷つく。

成人したキャッシュはドイツで兵役に就く。
休憩時間に観たフォルサム刑務所の映画に触発され、
彼は作詞作曲に没頭する。

帰国したキャッシュは意中の女性と結婚。
しかし、訪問販売の仕事はうまくいかない。
町をぶらついていると、レコード会社の録音スタジオが目に入る。
スタジオのプロデューサー、サムのもとを訪ねたキャッシュは
オーディションを受けさせてくれるよう懇願。
バンド仲間とともにゴスペルを演奏する。

サムはキャッシュに何かを感じたものの、
そんな曲は流行らないと一蹴。
トラックに跳ねられ、1分後に死ぬとして、
そのときに聴きたい曲、それが人の心を捉える歌だと言う。
そう聞いたキャッシュは、兵役中の自作の曲を歌い始める。

レコード化されたキャッシュの曲は大ヒット。
全米ツアーでは、幼い頃から憧れだったカントリー音楽の大御所、
カーターファミリーの娘、ジューンとも知り合い、
一緒にステージに立つようになる。
やがて覚醒剤に手を出したキャッシュは……。

父と相容れず、家を出て金を持てばクスリ。
妻には離縁され、子どもたちも去る。
しかし、ひとりの女性が彼を支え、ヤク地獄から脱出。
見事カムバック……映画の世界にはありきたり。

それでも胸を打つのは、人は必ず立ち直れるものだと
信じたいからなのでしょう。
主演ふたりの歌はすべて吹き替えなし、天晴れ。
フォルサム刑務所のライヴは圧巻。
このアルバムはビートルズより売れたそうです。

2003年にジューンが他界、
その4カ月後、キャッシュが死去。
そうありたいと思います。

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楽しき無声映画

2006年02月19日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
ホラーに徐々に慣れようと、最近はドキドキしながらも
興味を惹かれるものは借りるようにしています。
ところが、苦手と言いつつ、白黒のホラー映画は
以前から結構観ていることに気づきました。
特に無声映画は印象深いです。

もっとも衝撃的だったのは『カリガリ博士』(1919)。
ホラーの原点と言われるドイツ映画で、
カリガリ博士が「眠り男」を使って殺人をくり返します。
精神病院の患者が自分の体験を語る形で始まり、
「眠り男」を見世物にしたカーニバルの様子など、
白黒・無声であるがゆえに幻想怪奇な雰囲気が倍増。

『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)もドイツ映画。
オルロック伯爵の屋敷の売却手続きをするために
彼のもとを訪れた不動産会社に勤める若者が
ドラキュラ城と噂されるこの屋敷で体験する奇々怪々な出来事。
荒野にそびえ立つ巨大な屋敷が怖いのなんのって。

無声映画といえば、数年前、東京・鴬谷にある、
「東京キネマ倶楽部」に行きました。
無声映画を弁士(ナレーター)付きで上映してくれる
日本でただひとつの常設の無声映画館です。

ダンスホールのような天井の高いフロアに
ゆったりと配置されたソファとテーブル。
前中央の大きなスクリーンで無声映画を上映、
その片脇に弁士が立ち、熱く語ってくれます。
講談でも聴いているような感じです。

映画を観ながら食事することも可能です。
料理はバイキング形式で、ちょっとお洒落な居酒屋風。
多種のサラダは見た目も綺麗でそこそこイケました。
飲み物はソフトドリンクはもちろんのこと、
カクテルなども多数用意されています。
昼寝しても許されそうな居心地のいい空間で、
無声映画を堪能しました。

東京に行く機会があれば、また寄ってみたいなと思っていたのですが、
残念ながら現在は無声映画の上映を取りやめているようです。
私が出向いたときも客の入りは悪かったですから、
きっと営業が成り立たなかったのでしょう。
今はサルサのレッスンなどを頻繁におこなっている様子。
やはりダンスフロアだったのですね。

ところで、上記の『吸血鬼ノスフェラトゥ』のオルロック伯爵役、
「マックス・シュレックが本当に吸血鬼だった」という仮定のもと、
製作されたのが『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』(2002)。
併せて観ると不気味さが募ってビビります。
ようこんなこと、考えるわ。

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『Be Cool / ビー・クール』

2006年02月15日 | 映画(は行)
『Be Cool/ビー・クール』(原題:Be Cool)
監督:F・ゲイリー・グレイ
出演:ジョン・トラヴォルタ,ユマ・サーマン,ハーヴェイ・カイテル,
   ヴィンス・ヴォーン,ザ・ロック他

ジョン・トラヴォルタといえば飛行機好きで有名。
自家用ジェットどころか、ジャンボジェットまで所有していて、
操縦士の免許も持ってるんですから凄いっすよね。
ハリケーン襲来中のルイジアナへも
自ら操縦して飛んだっちゅうんですから、お見事。

さて、本作は『ゲット・ショーティ』(1995)の続編。
前作を観ていなくても十分楽しめますし、
観てても忘れるほど間が空いてるっちゅうの。

借金の取立て屋で、映画オタクのチリ・パーマーが、
たまたまB級映画のプロデューサーの取立て担当となり、
そのプロデューサーと意気投合して
いつしか自分も映画プロデューサーとして大成功。
……ここまでが前作のストーリー。

ハリウッドにうんざりし始めたチリは
レコード会社を経営する友人のトミーと会う。
トミーが売り出す予定の無名の歌手リンダが
映画に出たがっているというのだ。
ところが話も束の間、突然現れたロシア人マフィアに
トミーは射殺されてしまう。

その夜、チリはリンダが出演するナイトクラブへ。
リンダは確かに歌唱力抜群、将来有望。
チリは未亡人となったトミーの妻イーディとともに
リンダを売り出すことを決めるが、
彼女には悪徳プロデュース会社との契約が残っていた。
マネージャーを務めるラジは、リンダを渡してなるものかと騒ぎ、
その上司ニックはチリ暗殺計画を立てるが……。

ロシア人マフィアが銃をぶっ放せばヅラが浮き、
最初から私の笑いのツボだらけ。
ラジのボディガードでゲイのエリオット役には
大学フットボールのスターからプロレスラーを経て
古代エジプトを舞台にした『スコーピオン・キング』(2002)で
マッチョなヒーローを演じたザ・ロック。
彼が『チアーズ!』(2000)の台詞をマジメに真似てみせる顔と
ラストシーンは抱腹絶倒もの。
こんなにコメディのセンスがある人だったとは。
スティーヴン・タイラーほか、ゲストも実に豪華です。

『パルプ・フィクション』(1994)を思わせるシーンが出てきたり、
『クルージング』(1979)でゲイに扮したアル・パチーノのポスターが
何気なく、でも意味深にニックのオフィスに貼られていたりして、
隅々まで目を皿にして観たい作品。

ナイトクラブはジョニー・デップのお店なんですと!

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『樹の海』

2006年02月11日 | 映画(か行)
『樹の海』
監督:瀧本智行
出演:池内博之,萩原聖人,田村泰二郎,津田寛治,
   塩見三省,井川遥,大杉漣他

ヤキソバパンが気になったものの、
セカチューでは一滴の涙も出ず、
泣けない私のほうがおかしいのか?と思いましたが、これにはジンワリ。

自殺の名所である富士山麓、青木ヶ原樹海。
ここで展開される4つのエピソード。

闇金融業の使いっ走り、チンピラのタツヤが
顧客の今日子から連絡を受ける。
夜逃げした今日子は自殺しようと樹海に入ったが、
足を挫いて動けないとタツヤに電話してきたのだ。

某団体職員の朝倉はヤクザに唆されて5億円の公金を横領。
抜けたいと申し出たとき、袋だたきにされる。
朝倉が死んだと思ったヤクザは、彼を寝袋に詰めて樹海に捨てる。
奇跡的に生きていた朝倉は寝袋から這い出るが、
今まさに首を吊ろうとしている田中と遭遇。
「止めないでください!」と叫ばれて、驚いてその場を立ち去ってしまう。

新橋の居酒屋で面会する探偵の三枝と大企業の会社員、山田。
探偵に呼び出される覚えのない山田に、三枝は1枚の写真を見せる。
そこには山田と並んで写る若い女性が。
誰だったかはまったく思い出せない。
聞けば彼女は樹海で自殺した真佐子で、写真は遺留品だという。

ネクタイで首を吊ろうとしている映子。
一流大学を出て銀行に勤めていた彼女は
不倫相手へのストーカー行為で捕まる。
それ以来、人の目を避けるように暮らし、現在は駅の売店で働いていた。
ある日、その元不倫相手が偶然売店に姿を現し、心のバランスを失う。

それぞれのエピソードに登場する人物が交錯します。
映画というよりお芝居を観ているようで、
「生と死」という重いテーマなのに
深い緑に包まれた映像と音楽が心地よく、心にしみわたります。

萩原聖人演じる朝倉が、宙づり状態の田中の横に腰をおろし、
死人に向かって心中を語るところなど、
たびたび笑ってしまうほど軽妙で、
だから余計に生きることを考えたくなります。

最後の朝倉の台詞は「田中サンの気持ち、
そこまで説明せんでもわかるって」と言いたくなりましたが、
それでもそのシーンにはジワっときました。
大杉漣のネクタイも泣かせます。

池内博之演じるタツヤは巧いけど熱すぎて、
観てるほうにエネルギーが要ります。
なんちゅうのか、桂雀三郎の落語を聴いてるみたい。
息継ぐヒマもなくてたいへんですねん。

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