夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『恋愛適齢期』

2004年11月29日 | 映画(ら行)
『恋愛適齢期』(原題:Something's Gotta Give)
監督:ナンシー・メイヤーズ
出演:ジャック・ニコルソン,ダイアン・キートン,キアヌ・リーヴス,
   フランシス・マクドーマンド,アマンダ・ピート他

58歳のダイアン・キートンが脱いだというので今春話題になった作品。
本作でアカデミー賞にノミネートされた彼女が
肌の露出度ゼロの奇術師もどきの衣裳で授賞式に登場したのが印象的でした。

ジャック・ニコルソン演じるハリー・サンボーン。
20代でレコード会社を設立。その後、いくつもの事業に成功。
女性からはもちろんモテモテ。
63歳の今も独身で、プレイボーイとして名を馳せる。
しかし、興味があるのは30歳以下の女性のみ。

ダイアン・キートン演じるエリカ・バリー。
54歳、バツイチ、売れっ子の劇作家。
海辺の別荘で執筆活動にいそしむ。

ある日、エリカとその妹ゾーイが別荘に滞在中、
そうとは知らないエリカの娘マリンがハリーを連れ込む。
下着姿のハリーに出くわしたエリカは、自分より年上の娘の恋人に愕然とする。

気まずい雰囲気をゾーイがとりなし、
お互い関知せずに、みんなここで週末を過ごせばいいと提案する。

ところが、マリンといちゃつくうちにハリーが心臓発作で倒れる。
入院を嫌がるハリーは、この町で安静にしていると約束するならと
担当医から退院を許可される。
こうして、ハリーは別荘に身を寄せることに。

週が明けてマリンは仕事に戻る。
別荘に残ったのはエリカだけ。
仕方なく、この色ぼけ男の面倒をみることに。

お決まりのハッピーエンドではあるけれど、笑えて、泣けて、しあわせ。
キアヌ・リーヴスは顔の造作がそうなのか、相変わらず無表情。
それでも、年上のエリカに思いを寄せる誠実な医師役は、
『マトリックス』のイメージしかない人には新鮮では。
ゾーイ役のフランシス・マクドーマンドは存在感十分。
整形が当たり前のハリウッドにあって、
彼女は絶対整形しないと断言しています(それについてはこちら)。

キュンときたのはハリーとエリカのチャットのシーン。
“I miss y”まで打ち込んで、送信をためらうハリー。
1字ずつDeleteしていく姿に涙。
『シャイニング』(1980)の背筋ゾーッのタイピングシーンとは
俳優が同じでもこんなにちがう。

初老の恋愛ならではの老眼鏡がとってもいい小道具に。
職場の58歳の人に「脱いでみる?」と聞いたら
「誰も見たないやろ~」と悲壮な顔をしてました。(^^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『Songcatcher 歌追い人』

2004年11月22日 | 映画(さ行)
『Songcatcher 歌追い人』(原題:Songcathcer)
監督:マギー・グリーンウォルド
出演:ジャネット・マクティア,エミー・ロッサム,エイダン・クイン,パット・キャロル他

1900年代初めのアメリカ。
ニューヨークの大学で音楽学を教えるリリー。
彼女の研究は成果を挙げ、主任教授に昇進できるはずだった。
しかし、男尊女卑の根強い時代。彼女の願いは却下される。
唯一頼りにしていた同僚で、不倫相手の教授ウォレスも
まったく当てにならないと気づき、リリーは大学を後にする。

リリーの向かった先は、ノースカロライナ州の山岳地帯アパラチア。
そこではリリーの妹エレノアが教師をしていた。
起伏の激しい山を馬車で越え、やっとのことで妹の家に辿り着くリリー。

エレノアは同僚のハリエット、
孤児のディレイディスとともに暮らす。
リリーを歓迎するためにディレイディスが口ずさんだ歌を聴いて、
リリーは目を輝かせる。
なんとその歌は、学会ではとっくに失われたとされている、
200年以上も前の伝統歌(=バラッド)だったのだ。

どうやらこの地では数々のバラッドが歌い継がれているらしい。
リリーは早速ニューヨークから録音機を取り寄せ、
現地の人々の歌を集めて採譜しようと決意する。

森に囲まれ、岩肌はむき出し、川も流れるこの地では、
大きな録音機を抱えて移動するのは至難の業。
しかも、珍しいよそ者を警戒して、人々は非協力的。
だが、ディレイディスを助手に、リリーはこつこつと歌を追い始める。

この世に実にさまざまな職業があることを映画から知る場合があります。
この作品でも、こんなことを研究してる人がいるんだと興味をひかれました。
本作は実話ではありませんが、1900年初頭の実在の歌追い人、
オリーヴ・キャンベルという女性がモデルとなっています。

無学な野蛮人だと思われていた山岳地帯の人々。
そんな都会人の印象をくつがえす、
素晴らしい音楽に包まれた暮らし。
バンジョーやフィドル、ギターといった楽器が揃いに揃い、
誰しもが何らかの楽器の名手です。
人から人へ伝わる音楽って、こんなにも人の心を打つ。

ディレイディス役のエミー・ロッサムは
今夏のヒット作『デイ・アフター・トゥモロー』
主人公の息子とともに図書館で生きのびる女子高校生役でした。
本作では素晴らしい歌声を披露。
オペラ歌手なんですと、彼女。驚いた。

カントリー・ミュージックが少し好きになりました。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米誌が選ぶ「最もセクシーな男性」は

2004年11月19日 | 映画(番外編:映画とこの人)
17日に米誌『ピープル』が発表した「最もセクシーな男性」に
英国人俳優のジュード・ロウが選ばれました。大納得。
頭がちょっと「Mハゲ」入りつつあるんですけど、そこがまたよかったりします。

最初にジュードをかっこいいと思ったのは『ガタカ』(1997)。
これは隠れたSF映画の名作だと思います。
近未来の社会では遺伝子だけで人生が決まる。
劣性遺伝子を持つ主人公は、宇宙飛行士への夢が捨てきれず、
優性遺伝子を持ちながら事故で下半身不随となったジェロームから
血液や髄液を裏取り引きすることに。
ネタバレですが、最後にジュード演じるジェロームが炎に包まれるシーンは圧巻。

美形だからなのか、ゲイの主人公の愛人役なんかも多いジュード。
クリント・イーストウッド監督の『真夜中のサバナ』(1997)では
ケヴィン・スペイシーの使用人で愛人。
けだるさ漂うサバナの町で、車を洗うジュードは色っぽい。

『オスカー・ワイルド』(1997)はタイトルどおり、
19世紀のイギリスを代表する詩人、オスカー・ワイルドの人生を綴った作品。
ここでもジュードは主人公の愛人役。
若さと美しさでワイルドを翻弄。

『太陽がいっぱい』(1960)のリメイク、『リプリー』(1999)では
主人公に殺される金持ちの放蕩息子役を。
主人公を演じる話もあったようですが、美形すぎて脇役になったそうな。
ちなみに「美形すぎなかった」主人公はマット・デイモン。

ジュードしか見どころがないと思われる、カックン映画の『A.I.』(2001)。
セックス・ロボット役の彼は最高。
作品自体には唖然呆然とした私ですが、彼だけは見られてよかったと思いました。

『コールドマウンテン』(2003)はアンソニー・ミンゲラ監督お得意の壮大なメロドラマ。
南北戦争末期、南軍兵士インマンは負傷して病院へ運び込まれる。
故郷コールドマウンテンには、戦争中の数年間、ひたすら彼の帰りを待つエイダが。
病院から脱走したインマンは、エイダに再び会うため、来る日も来る日も歩き続ける。
ニコール・キッドマンも美しいけれど、ジュード、美しい。

公開インタビュー番組で、
ずっと唇をペロペロ舐めて爪を噛むしぐさをしていたのはいただけません。
あれが色っぽいという人もいるんでしょうけど。

色っぽくて、かつ知性的な印象のジュード・ロウ。
嗚呼、とにかく、これ以上、ハゲないで。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『21グラム』

2004年11月16日 | 映画(た行)
『21グラム』(原題:21 Grams)
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演:ショーン・ペン,ベニチオ・デル・トロ,ナオミ・ワッツ他

「命が消えるその時に、人は21グラムだけ軽くなる。
 誰もが等しく失う重さ。
 それは、私たちがこの世に置いて行く“何か”の重さ。
 あなたが残す21グラムは何ですか? 」

これはロードショー時の宣伝コピー。
21グラムは魂の重さ。
その魂の重さがテーマです。

大学で数学を教えるポールは心臓移植を待っている。
ドナーが現れなければ、余命はあと1ヵ月。
妻メアリーは、夫の死ぬ前に彼との子どもがほしいと願う。
しかし、ポールとメアリーの間にはもはや愛情はない。
いまは妊娠を願うメアリーだが、ポールとの子どもを中絶した過去があった。

前科者のジャックは、心を入れ替えると誓い、いまでは信仰心の厚い男だ。
妻マリアンヌと子どもたち、そして神のために、まじめに働いている。
地元の不良少年を相手に信仰を説き、
どんなことも神のおぼし召しだと信じて疑わない。
クジで当たったトラックすら、神から自分への贈り物だと信じていた。

クリスティーナは優しい夫と愛らしい娘ふたりに囲まれて、
幸せな毎日を送っている。
だが、ある日、家族の帰りを待つ彼女のもとに1本の電話がかかってくる。
夫と娘が車にひき逃げされたというのだ。
娘のうちのひとりは、事故後まだ意識があったにもかかわらず、
犯人に置き去りにされた。

この3組の家族が運命によって引き合わされる。
神の贈り物であるはずのトラックで人をはねてしまったジャック。
ジャックに大切な家族を奪われたクリスティーナ。
クリスティーナの夫の心臓を譲り受けたポール。

手術に成功したポールは、調査会社を使って、
ドナーの遺族であるクリスティーナを突きとめる。
ドラッグに溺れるクリスティーナはポールと出会い、ジャックを殺したいと思う。

この作品には悪人は出てきません。
だから余計に重たい。

3組が別々に描かれるうえに、時間の軸がバラバラ。
ちょっと前に流行った、後戻りする手法どころか、前後むちゃくちゃ。
気を抜くとわけがわからなくなります。
だから余計に引き込まれて、ググッと胸に突き刺さる。

メキシコ人監督の初英語作品。
やはり一見何の関係もない人々が最後に引き合わされる同監督作、『アモーレス・ペロス』(1999)もどうぞ。

それでも人生は続く。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『パリ・ルーヴル美術館の秘密』

2004年11月11日 | 映画(は行)
『パリ・ルーヴル美術館の秘密』(原題:La Ville Louvre)
監督:ニコラ・フィリベール

パリ・ルーヴル美術館の舞台裏に潜入したドキュメンタリー映画。
製作は1990年。
日本では今年初めに公開された作品です。
ビデオ・DVDレンタルは2ヵ月ほど前から。

規模がちがうとはいえ、私も同業者のひとり。
世界最大規模を誇る美術館ってどんなふうに仕事を進めてるんだろうと興味津々。

所蔵点数は約35万点、職員は1,200人のルーヴル美術館は、
館内を見てまわるのに1週間は要ると言われています。
ちなみに、原題は“La Ville Louvre(=ルーヴル町)”。
確かにこれはひとつの町かも。
舞台裏に撮影クルーが入るのはもちろん初めてのことで、
これを許可したのは画期的だと思います。

興味のない人にはおそらく退屈きわまりない映像かも。
興味津々だった私ですら、途中で寝そうになりました。
でも、失礼ながら、私の勤める博物館との共通点も多々あって、かなり楽しめました。

たとえば、「なんや、素手でモノをさわってるやん」とか。
彫像のひしめきあう保管室内で、危うくモノを蹴飛ばしそうになりながら
それらをまたいで歩き回る学芸員。
美術品に触れるさいには細心の注意を払い、
丁重に扱うものと信じている一般の人がいらっしゃるとしたら、
「そんなん、ええの?」と驚くかも。
あ、決していつでもいい加減なわけありません。(^^;

修復作業や大型絵画の運搬・展示作業。
展示品について熱い議論を繰り広げる学芸員たち。
新しく採用された制服の試着に心を躍らせる職員たち。
ローラースケートで館内を移動する郵便スタッフ。
トレーニング室で体を鍛える人の姿や、消防訓練中の人々も見られます。

庭師や医師、調理師まで揃いに揃った美術館。
職員食堂で出される料理は、ちょっとしたものにも手がかけられていそうで、
こんな料理が職場で食べられるのは羨ましいかぎり。
おいしそうなトマトのマリネが映っていました。

うちの博物館なんてワラかしてくれます。
ある日、「カレーフェア実施中!」の看板が。
どんな種類のカレーが並んでるのかなと期待して覗いたら、
「カレーライス、カレーうどん、カレースパゲッティ」。
なんでやねん。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする