夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『僕だけがいない街』

2016年03月31日 | 映画(は行)
『僕だけがいない街』
監督:平川雄一朗
出演:藤原竜也,有村架純,及川光博,鈴木梨央,中川翼,林遣都,
   安藤玉恵,福士誠治,森カンナ,杉本哲太,石田ゆり子他

次年度に繰り越しできない有休があと半日残っていました。
それを使い切るべく、午後休を取った先週の水曜日。
12:00の鐘とともに職場を出てTOHOシネマズ伊丹へ。
意外と道が混んでいて、12:35上映開始の本作にすべりこみセーフ。

三部けいの大人気コミックスの映画化。原作は未読。
アニメ版は現在第11話まで放送されているそうですが、
これを観たときにレンタルが開始となっていたのは
第1話と第2話が収録された1本目だけ。
その1本目のみTSUTAYA DISCASでレンタルして鑑賞済みでした。
アニメ版と映画版では細かいところに違いがあるものの、
最初の2話分に限定すると、ほぼ同じ設定のようです。

時代は2006年。売れない漫画家の藤沼悟(藤原竜也)。
漫画だけでは食べて行けず、ピザ屋でアルバイトしている。

彼は自分に特殊な能力があることに気づいていた。
事件や事故に遭遇すると、その原因が発生する直前の時点に時間が勝手に巻き戻るのだ。
彼が原因を特定してそれを取り除くことに成功すると、時間がまた進み始める。
好きなときに時間を巻き戻せるわけではなく、
自分にとっては迷惑でしかないこの能力を彼は“リバイバル”と名づけていた。

ある日、ピザの配達途中、リバイバルに襲われた悟は、懸命に原因を探す。
その結果、車に轢かれそうになった男児を救うが、
悟自身がはね飛ばされて気を失い、病院へと運ばれる。
病院へ付き添ってくれたのはバイト仲間の片桐愛梨(有村架純)。
愛梨によれば、北海道から悟の母親・佐知子(石田ゆり子)が駆けつけ、
奇跡的に軽傷だった悟の帰りを自宅で待っていると言う。

すっかり観光気分の佐知子と一緒に出かけた悟は、再びリバイバルに遭遇。
原因を排除するため、佐知子にもどこかに違和感がないかと尋ねたところ、
佐知子が何かに気づいたおかげで事件に至らなかった様子。
しかしその後、ひとりで悟の部屋にいた佐知子が何者かに殺される。

すぐに通報すると同時に、部屋から走り去る人影を追うも届かず、
駆けつけた警察に悟が犯人扱いされてしまう。
警察から逃げる途中、リバイバルが起こり、
悟は小学生だった1988(昭和63)年へとタイムスリップ。
頭の中は2006年だが、姿は1988年の小学生の悟(中川翼)。
時は同級生の雛月加代(鈴木梨央)が連続誘拐殺人事件の被害者となる直前。
佐知子が殺された原因はきっとこの時代にある。
加代を守り抜くことが佐知子をも救うことになると、悟は確信するのだが……。

平川雄一朗監督は『ツナグ』(2012)や『想いのこし』(2014)など、ほろり路線はお手のもの。
が、アマノジャクの私は彼の作品にあざとさを感じるときもあって、いつもは泣けません。
だけど、これは泣けました。

母親とその恋人から虐待に遭っている加代。
母親役の安藤玉恵がこれ以上ないくらいに憎らしく、
実際にこんな虐待に遭っている子どもたちがいるのかと思うと耐えられません。
子役たちが本当にけなげで、涙を誘うことは確実。

連続誘拐殺人犯として逮捕されてしまった近所のお兄ちゃん役に林遣都
可愛い子役のイメージだった彼もいつのまにかこんなお兄さんを演じられる人に。
子どもたちを思いやるいい先生に見えたけど……という役には及川光博
……なんていう書き方をするとネタバレですね。すみません。(^^;

しかし、長谷川博己がもはやどんな演技をしようとシリアスに見えないのに対し、
藤原竜也はコミカルな役の後でもシリアスな役を演じてそれにハマる。
このちがいはいったい何ゆえなのでしょう。

言葉にしつづけていれば、いつか本当になる。

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『ロブスター』

2016年03月30日 | 映画(ら行)
『ロブスター』(原題:The Lobster)
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:コリン・ファレル,レイチェル・ワイズ,ジェシカ・バーデン,オリヴィア・コールマン,
   ジョン・C・ライリー,レア・セドゥ,マイケル・スマイリー,ベン・ウィショー他

前述の『リリーのすべて』とハシゴ。
TOHOシネマズ梅田別館アネックスからテアトル梅田へ移動して。

アイルランド/イギリス/ギリシャ/フランス/オランダ/アメリカ作品。
監督はギリシャの奇才、ヨルゴス・ランティモス。
前作の『籠の中の乙女』(2009)の衝撃は今も忘れられません。
ドえらい監督が出てきたもんやなぁとビックリしました。

知らない俳優ばかりだった前作でしたが、評判を呼んだからか、
本作は世界各国の有名俳優だらけ。
コリン・ファレルレイチェル・ワイズジョン・C・ライリー
ベン・ウィショーレア・セドゥ。凄いです。

さて、しかし。本作もやはり衝撃度高し。なぜこんな物語を思いつくのか。
始終ニタニタしながら観ましたが、人には絶対に薦めません。

独身者は人とみなされない世界。
妻から突然別れを告げられたデヴィッドは、予期せず独身となる。
独身者が集められるホテルでは、45日の猶予が与えられ、
期限内にパートナーを見つけなければならない。
もしもそれができなければ、事前に希望した動物へと姿を変えられてしまうのだ。
デヴィッドがホテルに連れてきた犬も、もとはデヴィッドの兄。

こうしてデヴィッドはパートナー探しをはじめるが、なかなか思うようにはいかない。
45日の期限を延長するには、狩りの時間に脱走した独身者を捕らえること。
1人捕獲すれば1日期限を延ばしてもらえるのだ。

デヴィッドがパートナーとして良さそうだと感じたのは、血も涙もない女。
彼女は狩りで怒濤の成果を挙げ、150日以上もの期限延長を受けていたが、
デヴィッドとは相性がいいと思ってくれたらしく、見事カップルに。
カップルになっても、「えせ」でないことを証明せねばならず、
シングルルームからダブルルームへ移ってしばらく生活しなければならない。
その間に彼女に兄(=犬)を殺されたデヴィッドはたまりかねて彼女を殺害、ホテルから脱走する。

森へ逃げ込んだデヴィッドは、隠れ住む独身者の集団と遭遇。
そこでは女性リーダーを中心に強固なコミュニティが築かれていた。
ホテルとは対照的にカップルになることを禁じられているのだが、
皮肉にもデヴィッドは近視の女性と恋に落ちてしまい……。

結婚できなければ生物に変えられてしまうという発想が可笑しい。
登場人物は、主人公にはかろうじてデヴィッドという名前が与えられているものの、
ほかは「滑舌の悪い男」やら「足の悪い男」やら「鼻血を出す女」やら。
こうしたセンスが普通ではなく、私はニタニタ笑いが止まらず。

デヴィッド役のコリン・ファレルはデビュー当時は悪童と呼ばれ、
『タイガーランド』(2000)のときなど凄い肉体を見せてくれていたのに、
こんな腹の出たイケてないオッサン役なのが悲しすぎる。
だけど妙にそれが似合っていて、逆に演技に幅はできたような。

『籠の中の乙女』のラストが強烈だったので、本作もハッピーエンドはありえない。
覚悟して観たけれど、やっぱりブラックでシニカルきわまりないラスト。
でも、見せない部分を上手く使っているので、下品ではないんです。
この監督の作品は次も観てしまうでしょうね。

ちなみにタイトルの「ロブスター」はデヴィッドがなりたいと希望したものですが、
最後まで一度たりともロブスターは登場しません。
人にはお薦めできませんが、快作、いや怪作です。

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『リリーのすべて』

2016年03月29日 | 映画(ら行)
『リリーのすべて』(原題:The Danish Girl)
監督:トム・フーパー
出演:エディ・レッドメイン,アリシア・ヴィカンダー,ベン・ウィショー,
   セバスチャン・コッホ,アンバー・ハード,マティアス・スーナールツ他

梅田で5本ハシゴした翌日は春分の日。
この日は2本だけ観られそうだったので、ふたたび梅田へ。

1本目の本作はTOHOシネマズ梅田別館アネックスにて。
前日とこの日と、すっかり「全部洋式」が普通になりましたが、
大丸心斎橋店と同じ、クルッと回る扉がなんだか嫌い。

世界で初めて性別適合手術を受けたデンマーク人、リリー・エルベの実話が基。
性転換手術というのが普通だと思っていましたが、性別適合手術なのですね。なるほど。
実在のリリー・エルベは1882年生まれ。1904年に結婚。
1930年から1931年にかけて5度の手術を受けるも、
残念ながら拒絶反応を起こして3カ月後に死亡したそうです。

1926年、デンマークのコペンハーゲン
風景画家のアイナー・ヴェイナーは結婚して6年。
実力を認められ、売れる画家になりつつある。

妻のゲルダは肖像画家。力は持っているはずだが、売れる作品が描けない。
夫の活躍を間近で見ていて、ときには羨ましく妬ましい。
しかしふたりはゆるぎない愛で結ばれている。

ある日、モデルを頼んでいた踊り子のウラが遅刻。
焦るゲルダはアイナーにモデルの代役を頼む。
ウラが着るはずだった衣装を身にまとい、靴に足を入れるアイナー。

意外にも楽しそうなアイナーを見て、ゲルダはちょっと遊びたい気分に。
アイナーに女装をさせ、“リリー”として外に連れ出す。
ところがほんの遊びのつもりだったのに、アイナーが本気に。
会場に居合わせた男性ヘンリクとアイナーがキスを交わすシーンに出くわし、
ゲルダは激しく動揺するのだが……。

初めて性別適合手術を受けた人の物語ではありますが、
それよりもむしろ、初めて性別適合手術を受けた人の妻の物語です。

アイナーおよびリリー役のエディ・レッドメインは芸達者な役者ではありますが、
彼の心のうちはこちらにあまり伝わってきません。
観客が感情移入するのはアリシア・ヴィカンダー演じるゲルダのほう。
先日のオスカーで助演女優賞に輝いたことに納得。
好きになって結婚した人が性同一性障害で、自分がそれに気づかせてしまった。
彼にとって彼女がいちばんの理解者で、彼女は彼を見捨てられません。

この手の作品を観ていていつも感じるのは、男性が女装してもやっぱり男性。
タイのオカマとか、はるな愛とか並みに、どこから見ても女性に見えるほど
綺麗な人にはならないんですよねぇ。
なのに自分の姿を見てうっとりするところにすでに違和感があり、
いつも話にのめり込めません。
そういうところは気にすべきではないと思うのですが、
老けメイクを受け入れられないのと同じなのかもしれません。

こういう人がいたという事実は興味深く観ましたが、
私にとってはついていきづらい話で、「ふ~ん」で終了、かなぁ。

あっ、そうそう。踊り子ウラに扮するのはアンバー・ハード。
この人だったのね、去年ジョニー・デップと噂になっていた女優さん。

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『アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー』

2016年03月28日 | 映画(あ行)
『アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー』(原題:Iris)
監督:アルバート・メイズルス

梅田で5本ハシゴの〆は本作。
前述の『エスコバル/楽園の掟』の10分後、テアトル梅田の同じスクリーンにて。

『ビル・カニンガム&ニューヨーク』(2010)、
『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』(2012)などのドキュメンタリーで見かけた、
まんまる巨大な眼鏡が印象的だったおばあさん。
誰にも真似できないと思われるファッションで、
奇天烈といえば奇天烈なのに、なんだか気品がある。
誰かと話すときの切り返しが最高で、頭の回転がものすごく速そう。
面白い人だなぁと思っていたら、ついにこの人を撮った本作登場。

アイリス・アプフェルさんは、94歳の女性。
1950年代からインテリアデザイナーとして活躍、
彼女のファッションセンスは有名デザイナーたちからも一目置かれ、
いまだにあちこちから引っ張りだこ。

彼女のファッションコレクションの展覧会がメトロポリタン美術館で開催された折りには、
宣伝費にあまりかけなかったのに、口コミで客が来るわ来るわ。
驚異的な動員数を記録したそうです。

彼女の日常に密着した本作は、彼女の生き方がカッコイイ。
奇天烈なファッションだと思っていたけれど、
イベントに招待された彼女が若い女性にアドバイスを送ると、
彼女たちの変身ぶりのなんと品よく素敵なこと。

きっと辛いことだってあったはず。
だけど、人生もファッションも楽しまなくちゃという気持ちが伝わってきます。
ご主人との仲睦まじい様子にもほっこりしました。

めちゃめちゃエネルギッシュです。

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『エスコバル/楽園の掟』

2016年03月27日 | 映画(あ行)
『エスコバル/楽園の掟』(原題:Escobar: Paradise Lost)
監督:アンドレア・ディ・ステファノ
出演:ベニチオ・デル・トロ,ジョシュ・ハッチャーソン,クラウディア・トライサック,
   ブラディ・コーベット,カルロス・バルデム,アナ・ジラルド他

TOHOシネマズ梅田本館→別館アネックス→本館と、3本鑑賞。
ここまでは事前にネット予約していましたが、
もしもこの3本で疲れ果てて、もう無理だと思ったら帰るつもりでした。
が、なんとなくまだ大丈夫そう。眠くもないし、腰も痛くないし。
で、テアトル梅田へと向かいました。この日の4本目が本作。

フランス/スペイン/ベルギー/パナマ作品。
監督のアンドレア・ディ・ステファノはイタリア出身。
『夜になるまえに』(2000)や『NINE』(2009)に役者として出演していて、これが初の監督作。
ちらりと写真を見たところ、アントニオ・バンデラスをちょっと薄くしたような男前です。

カナダ人のニックは、兄のディラン一家とともにコロンビアを訪れる。
波をこよなく愛する兄弟で、所有者のいないビーチに家を建てて暮らすつもり。
ニックはサーフィンを満喫、穏やかな日々が続くはずだったが、
ある日、地元のゴロツキが現れて、ショバ代を寄越せと言う。
無視していれば大丈夫だと思うものの、なんとなく不安に。

そんな折り、ニックは現地の美女マリアと出会う。
彼女の叔父パブロ・エスコバルは国会議員を務める大富豪。
慈善活動にも熱心で、マリアはそれを手伝っている。
しかしパブロにはコロンビア最大の麻薬カルテルを仕切るボスという裏の顔があり、
賛成はできないニックがマリアにそのことをにおわすと、
貧困層を助けているだけ、悪いことはしていないとマリアは言いつのる。

ニックとマリアは婚約、マリアは敬愛するパブロにニックを紹介。
ニックが何気なく地元のゴロツキに脅された話をパブロにすると、
それから数日後、ゴロツキたちが拷問のうえ殺されたという噂を聞く。
パブロの冷酷非情な面を知り、ニックの頭の中で警鐘が鳴る。
マリアにもようやくそれが伝わり、ニックとマリア、ディラン一家は
この国から脱出しようとするのだが……。

パブロ・エスコバルは実在の人物。
コロンビア最大の麻薬密売組織“メデジン・カルテル”を創設した麻薬王。
名門サッカークラブの元オーナーでもあったというのですから、
コロンビア、あなおそろし。
おまわりさんもみ~んなパブロの手下、手を回すなんていとも簡単なこと。
気にくわないやつは速攻でズドン。衝撃的です。

正義がまったく通用しない国。こういう人物が今も英雄と崇められる国。
いろんな国のあり方があるでしょうが、日本に生まれてよかったと切に思うのでした。
ニック役のジョシュ・ハッチャーソンが適役だったかどうかは疑問だけど、
パブロ役のベニチオ・デル・トロ、ぴったんこ。非常に面白かったです。

ひとつ、残念だったのは、日本語字幕。
「車を貸りたい」などという誤字になぜなるのか。
普通に「かりたい」を変換すればこんな字になるはずもないのに、
字幕の変換って一字ずつ打ち込むのかしらん。素朴な疑問。

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