監督:三宅喜重
出演:中谷美紀,戸田恵梨香,南果歩,谷村美月,有村架純,
芦田愛菜,小柳友,勝地涼,玉山鉄二,宮本信子他
生まれてからずっと、阪急電車のお世話になっています。
宝塚線、千里線、箕面線の沿線に住み、宝塚線と京都線で通学し、
行きつけの店へは神戸線と今津線を乗り継いで。
だから、私にとっての電車といえば阪急電車で、
それが主役となる小説に映画と来たら、読まずにも観ずにもいられません。
いきなり全国区になったかどうかは怪しいですが、
本作の舞台となっている阪急今津(北)線は、
宝塚~宝塚南口~逆瀬川~小林(おばやし)~仁川~甲東園~門戸厄神~西宮北口を
約15分で結んでいます。
仁川での競馬開催時や、平日の通勤ラッシュ時を除いて、基本は各駅停車。
そんなローカル線に乗り合わせた人の群像劇。
婚約者を後輩に寝取られたOLの翔子。
半同棲中のDV男と別れる決意ができずにいる女子大生のミサ。
息子夫婦との関係に悩む老婦人の時江と、無垢な孫の亜美。
PTAのおばさまたちからの高級ランチの誘いを断れない、主婦の康江。
大学生の美帆は、オシャレな同級生との間に距離を感じ、
同じ大学に通う地方出身の圭一も、周囲になじめないまま。
会社員と交際している女子高生の悦子は、進路に迷っている。
この辺りが主要な面々。
原作で最初と最後に登場する図書館カップルは姿を見せず、
携帯のスピンオフドラマとして別仕立てになっているのはどうなんだか。
大事な「生」の光景も、エンドロールで一瞬写るだけです。
という、残念な事柄もいくつかはありますが、
贔屓目なしに観るのは無理というもの。
率直な感想は、原作を読んだときと同じ、「普通」。
普通と言いつつ、3回ぐらい泣きました。翌朝まぶたが腫れるぐらい。(^^;
ぶおっと泣いてしまったシーンは、
まずは、宮本信子演じる時江が、中谷美紀演じる翔子の話を聴くシーン。
説教はいらん。こんなふうに言ってほしい。聞き上手の王道。
その次は谷村美月演じる美帆が、西宮北口駅の階段で、
勝地涼演じる圭一に声をかけるシーン。
その後もこのカップルは原作同様、私のツボにだだハマリ。
最後は、小林駅での翔子と小学生の女の子との会話。
涙なしでは観られず。
それと、悦子の恋人役を演じる玉山鉄二が◎。
この人の登場でぐっと温かみが増します。
あのいつも綺麗に磨かれた小豆色の電車は
沿線に住む人のちょっとした誇りかも。