夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『悪人』

2010年09月30日 | 映画(あ行)
『悪人』
監督:李相日
出演:妻夫木聡,深津絵里,岡田将生,満島ひかり,光石研,
   松尾スズキ,宮崎美子,樹木希林,柄本明他

前述の『女たちは二度遊ぶ』と同じく、原作は吉田修一。
なんとなく、『告白』(2010)のときのように、
原作を先に読みたくなり、読了してから観に行ってきました。

長崎の寂れた漁村。
幼少の頃、母親に見捨てられ、祖父母に育てられた祐一。
親戚の紹介で土木作業員として働きつつ、
祖父母の面倒をみるだけでなく、
高齢化が進むこの村の人びとの用事を何かと聞いている。

無口でいつも暗い表情の祐一の趣味は車。
ある日、福岡の保険外交員である佳乃と出会い系サイトで知り合い、
長崎から福岡まで、祐一は佳乃に会うために愛車のスカイラインを飛ばす。
ところが、待ち合わせ場所に現れた佳乃は、
かねてから狙っていたイケメン大学生、圭吾と同じ場所で偶然出会い、
祐一を簡単にあしらうと、圭吾の車に乗って去ってしまう。

翌朝、峠で佳乃の遺体が発見され、容疑者として圭吾が指名手配されるが、
携帯の履歴から祐一のもとへも警察がやってくる。
不安を押し隠して一日を過ごす祐一に届いたのは、
やはり出会い系サイトで以前何度かやりとりしたことのある、
佐賀に住む紳士服店員、光代からのメール。
早速会う約束をしたふたりだったが……。

原作者が脚本に関わると、良い点も悪い点もあるのでしょうが、
本作に関してはポイントを上手い具合に押さえていたのではと思います。

ただ、原作ではとても印象深かった台詞、
祐一の「でもさ、どっちも被害者にはなれんたい」がなくて、
お金を母親にせびっていた心境、ラストの光代に対する行為などは、
それがあればよりわかりやすかったかもしれません。
あったほうがよかったかどうかは微妙。

それと、映画でも良かったモロ師岡演じるバスの運転手。
原作には、もともと祖母が苦手にしていた運転手だという記述があり、
そのせいで余計にウルッとさせられました。

圭吾の友だち役だった永山絢斗(=瑛太の弟)は、
原作では描写されている複雑な気持ちをきっちりと。
ちなみに、佳乃役の満島ひかりを見るなら、『プライド』(2008)がオススメ。

年輩客率が高いせいか、終映までトイレが持たない人、多すぎ。(^^;
『おくりびと』(2008)のときもそうでした。

その人の幸せを思うと、自分まで嬉しくなるぐらい大切な人。
いますか。

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『女たちは二度遊ぶ』

2010年09月27日 | 映画(あ行)
『女たちは二度遊ぶ』
監督:行定勲
出演:相武紗季,柏原崇,水川あさみ,高良健吾,
   小雪,小柳友,優香,塚本高史,長谷川京子他

携帯電話専門の動画サイト、BeeTVから配信された作品。
原作は、最近、私がハマリつつある作家、『悪人』の吉田修一。
監督は『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)の行定勲。
ユースケ・サンタマリア演じる執筆に行き詰まった小説家が、
喫茶店で耳にしたほかの客の会話をもとに原稿を書きます。
その客の会話を映像化した5本の短編という構成。

第1話『どしゃぶりの女』。
飲み会で出会って部屋に誘い、ひと晩きりのつもりだった女。
翌朝はどしゃぶりの雨模様で、「雨が上がるまでいれば?」と言う男。
ところが、雨はその日から3日間も降り続く。
灰皿に吸い殻が山盛りになろうとも放置するような、
彼女は恐ろしく何もしない女で……。

第2話『自己破産の女』。
友人と入った店で、酔っぱらいの女にからまれた男。
店を出たところに泥酔状態の彼女が。
友人は止めておけと言うが、放っておくことができず、
サラ金のATMでキャッシング。ホテルへと連れて行く。
翌日から同棲を開始するが、彼女との生活のためにキャッシングを繰り返し…。

第3話『夢の女』。
駅で見かけた女にひと目惚れした男。
跡をつけてみると、彼女はその外見にはふさわしくないボロアパートへ。
見てはいけないものを見てしまった気がする。
数日後、電車内で彼女を見かけ、思わず声をかける。
自分が働く居酒屋のことへ招待するが、
いつになっても彼女は来てくれなくて……。

第4話『平日公休の女』。
友人の家の鍋宴会で出会った女。
デパートの化粧品売場に勤める彼女の休みは木曜日。
水曜日の晩を一緒に過ごすようになるが、男は元カノを忘れることができない。
それを察した彼女と喧嘩になり、男は彼女を振る。
別れてよかったと思えるぐらい酷いことをしてほしいと彼女に言われ……。

第5話『つまらない女』。
第4話までを書き上げ、いよいよネタに困った小説家。
編集担当者がふと「今度はご自分のことを書いてくださいよ」と。
しかし、妻は美人だが本当に退屈な女。
そこで、ネタを作るため、離婚してほしいと頼む小説家。
妻は快くそれを受け容れて……。

1話20分程度。豪華キャストで楽しめます。
キャッチコピーは、「愛されるよりも、忘れられない女になる」。
こんなふうに憶えていてもらえたら、幸せかもしれません。

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『姑獲鳥の夏』

2010年09月24日 | 映画(あ行)
『姑獲鳥の夏』
監督:実相寺昭雄
出演:堤真一,永瀬正敏,阿部寛,宮迫博之,原田知世,田中麗奈他

その著作の半端ではない分厚さにずっと敬遠していた京極夏彦。
ぜひとも読んでみるべしと貸してくれた人がいて、
どうせ真剣に観ているときにかぎって阪神は負けるし、
適当にTV観戦しながら読むことに。

順番に読むように勧められたので、まずは16年前のデビュー作から。
読み始めたら、めちゃめちゃおもしろくて、たちまち読了。
2005年に映画化されたとき、大好きな堤真一主演にもかかわらず、
京極夏彦原作だということで観なかった本作も勢いで観ることに。

ウルトラマンシリーズで名を馳せた監督によるものです。
本作の公開翌年にお亡くなりになってしまいました。合掌。

昭和27年の東京。
小説家の関口は、生活のため、本意ではない原稿の執筆も請け負っている。
そんな彼の耳に舞い込んできた噂が実に奇っ怪なもの。
産婦人科、久遠寺医院の院長の次女、梗子が20か月も身ごもったままで、
しかも梗子の夫、牧朗が1年半前から行方不明だというのだ。

事件の取材を依頼された関口は、自分の範疇ではないと思うものの、
この噂が気になって仕方がない。
関口は、古書店の店主で旧友の京極堂のもとを訪れ、この噂に関する意見を求める。
京極堂は「世の中には不思議なことなんてひとつもない」と言うのだが、
関口に噂を届けたのが、出版社に勤める京極堂の妹、敦子であると知り、
妹のこととなると悪態をつく京極堂は、とりあえずは関口の相談に乗る。

京極堂から、これも旧友で私立探偵の榎木津のところへ行けと言われた関口。
榎木津の事務所を訪ねると、折しもそこへ現れたのは久遠寺医院の長女、涼子。
涼子は、牧朗の失踪について調べてほしいと言う。
榎木津、敦子とともに、関口は久遠寺医院へ向かうのだが……。

公開当時の評判はさっぱりだったようですが、
ウルトラマンシリーズの監督だと思うからなのか、
舞台セットに懐かしさを感じて堪りません。もろ昭和。

ただ、原作に忠実と言えば忠実なのですが、
なにせあの分厚さで、妖怪マニアでもある京極夏彦。
ミステリの要素を含んだ憑物落としの話となると、ややこしいのは当たり前。
原作を読んでいなければあちこちツライだろうと思われます。

原作を読んでからならば、そして、好きな役者が出ているならば、
そこそこ楽しむことができましょう。
ヘタリアが終わって、京極夏彦が心のよりどころ(笑)。

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『牛の鈴音』

2010年09月22日 | 映画(あ行)
『牛の鈴音』(英題:Old Partner)
監督:イ・チュンニョル

先々週レンタル開始。
韓国で異例の大ヒットとなったドキュメンタリーです。
本作がどうして300万人も動員したのか、私にはまったく理解不能なのですが、
これが大ヒットする国は、優しさで満ち溢れているんだろうなぁと思えてなりません。

韓国、慶尚北道奉化郡の山間の農村。
あと数年で80歳を迎える老夫婦には、30年間、共に暮らす牛がいます。
牛の寿命は15年そこそこなのに、この牛はなんと40年も生きています。

爺さんにとっては、牛が何よりも大事。
脚が不自由だというのに、耕作機械は使いません。
牛が食べる草だからと、農薬も撒きません。

そんな爺さんのもとへ60年以上前に嫁いだ婆さんは、苦労させられっ放し。
爺さんと牛の面倒をみながら9人の子どもを育てあげました。
牛が少しでも具合の悪そうな素振りを見せると爺さんは慌てるのに、
婆さんが風邪を引いても薬ひとつ飲ませてもらえません。

本作は、頑固で無口な爺さんと、悪態をつかずにはいられない婆さんの、
絶妙なコンビネーションで進んで行きます。

それにしても、開始直後はどうしようかと思いました。
牛には申し訳ないけれど、直視に耐えられないようなみすぼらしさ。
爺さんと婆さんの住む家も掘っ立て小屋に近く、
このまま78分間、私は観ていることができるのか心配でした。

しかし、ふと、疑問が生じました。
農村の苦しい事情を描いた作品だと真面目に観るべきなのか。
もしやこれは爺さんと婆さんの掛け合いを楽しんで観てもいいのでは。

そう思って、肩の力を抜いたら、
川のせせらぎ、鳥の声、牛の首に付けられた鈴の音、
そして目に映る豊かな緑が、すっと入って来ました。

牛車に夫婦を乗せると、引くこともできない老いた牛。
そのとき、あろうことか爺さんは、婆さんを荷台から降ろしてしまいます。
呆れて怒る婆さんのボキャブラリーが素晴らしい。
次から次へと出て来る憎まれ口に笑わされます。

あんまりな扱われように、牛を売り払おうと声高に言う婆さん。
もう元気に働くことはできそうにない牛を見て、
売り払うことに一度は同意、牛市場へ足を運んだ爺さんでしたが、
やはり手放せず、牛は家に出戻り。やがて牛には死期が訪れます。

厳しい冬を前にして牛が亡くなった日、
婆さんが口にするひと言に参りました。
あんなに悪態をついていた婆さんの言葉だからこそ、ジワッ。

牛に虎の姿を重ね合わせたりして。嗚呼、涙。

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ヘタリア、阪神タイガース。

2010年09月17日 | 映画(番外編:映画とスポーツ)
昨日はかろうじて勝利をおさめたものの。

2カ月ほど前、プロ野球のラジオ中継を聴いていたとき、
「タイガースは200%勝ちます」と言いきる有田修三に
その200%はどこからやねんと突っ込めた頃はよかった。
「倉敷マスカットスタジアムといえば?」とアナウンサーから問われた福本豊
「ぶどう。」と即答するのを聞いてズッコケそうになった頃はよかった。
なんせ、「非優勝チームによるマジック点灯最速記録」を
持っているようなチームですからね。(T_T)

最近の晩の過ごしかた。
プロ野球を観る。終了する。無言でテレビorラジオの電源を切る。
『Axis Powers ヘタリア』を観て、野球の結果は忘れて眠る。
そんな数日間を送っていました。

『Axis powers ヘタリア』はウェブサイトで公開されているコミック作品。
アニメ化されて、DVDではvol.8までが発売済み。
これがおもしろくて、特に今は心の支えになってくれています。(^^;

「ヘタリア」は「ヘタレのイタリア(軍)」から来ています。
登場人物は人間ですが、それぞれの名前が国名となっていて、
その国を表す性格の持ち主。
時代設定は第一次世界大戦~第二次世界大戦の頃で、
枢軸国(=Axis Powers)であったドイツ、イタリア、日本と、
その他数多くの国が登場します。

イタリアは人なつっこく陽気な性格ですが、ヘタレ。
そんなイタリアに頼られるドイツは、いつも厳しく難しい顔。
物静かで真面目な日本は、周囲に振り回されがち。
アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、イギリスなど、連合国の面々も個性豊か。
カナダとバルト三国は私のツボ。
よくもこんなふうに擬人化することを思いついたものだと脱帽です。
各国の名物料理もさりげなく登場。

イタリア、ドイツ、日本の3人がキャンプを張っていると、
中国に命じて奇襲をかけようとするアメリカ。
イタリアが泣いて命乞いをすると、突如現れるイタリアの祖父ローマ。
ローマじいちゃんが歌い出すのはこんな曲。
「この世の地獄とは コックがイギリス人 警官はドイツ人
 技師はフランス人 銀行家がイタリア人 恋人がスイス人」。
この歌声に恐れをなして、アメリカたちはスタコラ退却。
ちなみに、「この世の天国とは」バージョンもあります。

ヘタレ阪神、来年度の年間予約席の継続申込期限は先月末でした。
年々、期限が早くなっているのは商売上手になったから?
いつになろうと、見切りは付けられませんけど。(;_;)

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