夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『24アワー・パーティー・ピープル』

2003年10月30日 | 映画(た行)
『24アワー・パーティー・ピープル』(原題:24 Hour Party People)
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:スティーヴ・クーガン,パディ・コンシダイン,アンディ・サーキス,
   ショーン・ハリス,シャーリー・ヘンダーソン他

1976年。
ほんとは試したくもないのに、
嬉々としたふりをしてハングライダーで飛ばされて、
危うく大ケガをしかけたテレビ・レポーター、トニー・ウィルソン。
視聴者のウケはいいようだけれど、
もっと中味のある仕事がしたいと思っている。

彼はマンチェスターでセックス・ピストルズのライブを見る。
観客わずか42人だった伝説のライブ。
この日から彼はバンドのマネージメントに目覚め、
レコード会社「ファクトリー」を設立。
のちにはクラブ「ハシエンダ」を開店。
1970年代から80年代にかけて起こった
UKロックの「マンチェスター・ムーヴメント」の火付け役となる。

トニーとその妻、「ファクトリー」のパートナー、
そして「ファクトリー」に所属するバンドの面々。
突如として売れっ子になった彼らの生活が一変する。
ドラッグ、金、女とほしいままに手にし、やがて落ちてゆく。

「ファクトリー」から始まった、こんな24時間パーティー状態を、
トニーのレポートふうに、
「当時を振り返ったコメントを挟みながら、
いま起きているふうに進めていく」という感じ。
なんとも説明しがたい、つまりは時間が入れ子になった作品。

ジョイ・ディヴィジョン、ハッピー・マンデーズ、ニュー・オーダーなど、
きっとファンなら涙ものの音楽とエピソードの数々。
ひと味ちがう青春映画とも言えましょう。

ジョイ・ディヴィジョンのボーカリストで、
のちに自殺するイアン・カーティスを演じたショーン・ハリスが
似てるどころかまるで本物との評判です。

マイケル・ウィンターボトムは不思議な監督で、
なんでか引きつけられる作品が多いです。
恋愛ものから戦争ものまでテーマはてんでバラバラ。
暗いけどしたたかで、
これはやっぱりイギリスの天気のせいじゃないかとつねづね思っています。

妙に後を引く作品。
UKロックに詳しくない私ですが、めちゃめちゃ知りたくなりました。

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『デアデビル』

2003年10月29日 | 映画(た行)
『デアデビル』(原題:Daredevil)
監督:マーク・スティーヴン・ジョンソン
出演:ベン・アフレック,ジェニファー・ガーナー,
   マイケル・クラーク・ダンカン,ジョー・パトリアーノ他

12歳のマットはボクサーの父親とふたり暮らし。
裏通りで父親が恐喝しているところを偶然目撃したマットは、
ショックから近所の工場に駆け込み、廃液を浴びて視力を失ってしまう。

その日から、父親とマットは、肉体も精神も磨きあげることを誓う。
マットは失った視力に代わり、その他の感覚が研ぎすまされるようになる。
父親は全身全霊をかけて試合に臨むようになるが、
八百長試合を断って勝った夜、何者かに殺されてしまう。

年月が流れ、マットはマンハッタンの弁護士に。
これは彼の昼の顔。
夜はコスチュームに身を包み、
法を逃れた犯罪者に死の裁きを与えるデアデビル。

ある日、マットはエレクトラという美しい女性に出会う。
彼女は海運王の娘だった。
恋に落ちるふたりだが、街を牛耳る闇の王キングピンが
エレクトラの父を暗殺しようと計画中。
やがて、キングピンが雇った殺し屋ブルズアイがやってくる。

1960年代のアメリカン・コミックのヒーロー、デアデビル。
アメコミのヒーローはみんな陰がありますね。
不幸な過去を持ち、復讐心に燃えながらも
心のなかで善悪の葛藤がある。

オリジナルを読んだことがないので、
原作とどれほど近いものなのかわかりませんが、
この作品がおもしろいなと思ったのは、拍手喝采を浴びるシーンがないこと。
普通、一般市民を救うヒーローなら、
悪者を退治したあとに大喝采という場面があってもよさそうですが、
それがまったくないのです。
デアデビルに目を向けるのは警察や記者ばかり。
さて、あなたなら拍手を送りますか。

いちばん笑わせてくれたのはブルズアイ役のコリン・ファレル。
スキンヘッドで、額にはダーツの的。
完全にイッちゃってて、大ハマリ役。
『タイガーランド』(2000)で彼にハマったのに、
その後はブルース・ウィリスと共演した『ジャスティス』(2001)も、
トム・クルーズと一緒だった『マイノリティ・リポート』(2002)も、
コリン・ファレルは物足りなかった。
だけど、ブルズアイには大満足。
もうじき公開の『フォーン・ブース』で主演です。

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『ベッカムに恋して』

2003年10月28日 | 映画(は行)
『ベッカムに恋して』(原題:Bend It Like Beckham)
監督:グリンダ・チャーダ
出演:パーミンダ・ナーグラ,キーラ・ナイトレイ,ジョナサン・リース・マイヤーズ他

インド系イギリス人でケニア生まれの女性監督の作品。

ロンドン郊外に住むインド系の高校生ジェス。
両親と姉の4人暮らし。
サッカーをこよなく愛し、公園で男友だちとボールを蹴る日々。

しかし、両親はそんなジェスを叱ってばかり。
姉の婚約を控え、ジェスにも女らしくしろと言う。
女がサッカーなんかできても仕方ない、
それよりチャパティをうまく焼けと。

誰も理解してくれない気持ちを、
ジェスは毎日ベッカムの特大ポスターに向かって
ぼやきつづけている。

ある日、いつものように公園でサッカーをしていると、
地元の女子チームのメンバー、ジュールズが通りかかる。
ジェスに可能性を見い出したジュールズは同じチームに勧誘する。

練習にやってきたジェスはベッカムのシャツ姿。
コーチは唖然とするが、
ファイトあふれるジェスのプレーを見てすぐさま気に入る。

両親に言い出せないまま練習に参加するジェス。
地元のリーグ戦を勝ち進んでゆくが、
決勝戦の日が姉の結婚式と重なってしまい……。

なぜか日本でだけヒットしなかったというこの映画。
『少林サッカー』(2001)や『ミーン・マシーン』(2001)と比べて
サッカーのシーンはおそらくいちばんフツー。
サッカー以外においても素直に楽しめます。

英国におけるインド系の家庭の様子も興味深く。
インド人はインド人以外との恋愛は御法度で、
身内が白人といちゃついていただけで破談になることも。
試合中に「パキスタン人」と言われたことに腹を立て、相手に殴りかかって退場に。
その民族にとってのタブーって、映画ではじめて知り得ることが多いです。

女子サッカーに理解がないのは何もインド系家庭だけでなく、
ジュールズの母親も批判的。
女らしい格好をさせるのに必死で、「寄せて上げるブラ」を持ってきたり、
女同士でいるとレズになると思い込んだり、
ジュールズの母親は天然ボケ入ってて○。

結婚式のシーンとサッカーのシーンが
同時進行で映し出されますが、どちらも躍動感いっぱい。
これはどちらかといえば、結婚式のほうに軍配。

最後のシーンでベッカム夫妻(の後ろ姿)が。
エンドクレジットで謝辞が述べられていたので、あれはホンモノなんかな。

原題は“Bend It Like Beckham”。
「ベッカムのようなクロスを」です。

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んじゃ、スティーヴン・キング。

2003年10月27日 | 映画(番外編:映画とこの人)
『キャリー』が出たついでに
「スティーヴン・キング原作の映画」で行っときましょう。

怖くてもなんでも観てしまうのが『シャイニング』(1980)。
コロラドの山中の大きなリゾート・ホテル。
雪深いこの地では冬季はホテルも閉鎖される。
そのあいだの管理人を引き受けたのは、売れない作家ジャック。
外界と完璧に閉ざされたこのホテルへ、
ジャックとその妻ウェンディ、息子ダニーの3人が移り住む。
以前の管理人は家族を惨殺したうえ自殺したらしい。
やがてジャックも精神に異常をきたし……。

『世にも怪奇な物語』(1967)のゴムまり少女を思わせる、
双子の少女が突然廊下に現れるシーンにはヒョエ~っ。
第六感を持つダニーが憑かれたように叫ぶ、
「REDRUM」という言葉の意味がわかったときもゾワ~っ。
でも、何が怖いって、ジャックが打ったタイプの原稿。
ジャックのいないすきに妻がタイプライターに近寄ってみると、
何枚にもわたる紙にはただひたすら
“All Work and No play Makes Jack A Dull Boy(=よく学び、よく遊べ)”のくりかえし。
マジで寒~くなりました。

実はスティーヴン・キングはこの映画が大嫌い。
自分の原作をぶちこわされたと思っているようです。
だから、これは原作から離れた、まさしくキューブリックの作品。
腹の虫のおさまらないキングは
1997年にみずからの指揮でテレビ版『シャイニング』を製作しましたが、
評判はイマイチでした。

キャシー・ベイツがホンマに怖かった『ミザリー』(1990)や
車が意志を持つ『クリスティーン』(1984)などなど、
怖くても観てしまったものがキング作品には多いですが、
『ニードフル・シングス』(1993)もそのうちの1本。

田舎に越してきた老人が店を開く。
客のほしいものは何でも用意してくれる代わりに、
指名した町の人に「ちょっとしたイタズラ」を仕掛けることが条件。
些細なイタズラのはずが積もり積もって、町のなかはえらいことに。
欲が生み出す泥沼状態が壮絶です。

これは役者が豪華なわりにショボい作品だったりしますが、
私が観たのが一昨年のテロの日。
テレビでこの映画を観ていたら、突然画面に世界貿易センタービルが映し出され、
映画の後半部分はお預けとなりました。
そんなわけで、不気味さが倍増してしまった、思い出深い作品です。

月並みながら、やっぱりキング原作では
『ショーシャンクの空に』(1994)がいちばんなのですけど。

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ブライアン・デ・パルマ

2003年10月24日 | 映画(番外編:映画とこの人)
ホラー特集のリクエストをいただきました。
しかし、私はホラーが大の苦手で、特集を組めるほどの数を観ていません。
で、ここは『キャリー』(1976)のブライアン・デ・パルマ監督について。

『キャリー』はデ・パルマを一躍有名にした作品で、
原作はスティーヴン・キング。
家ではイカレた母親から、学校では悪ガキからいじめられ、
救いようのない毎日を送る少女キャリー。
そんな彼女が初潮を機に、特殊な能力に目覚める。

有名なラストシーン、ビックラこいた人が多いのでは。
この手のオチを流行らせたのも彼ですね。

デ・パルマの作品のなかには、ヒッチコックを思わせるシーンもよく現れます。
キャリーの通う高校はベイツ高校。
これは『サイコ』(1960)のモーテルの名前から頂戴したものです。

ついでに、キャリーを演じたシシー・スペイセクは1949年生まれ。
27歳であの女子高生を演じていたということです。
母親役だったパイパー・ローリーとは、『グラスハープ』(1995)で姉妹役で共演しています。

デ・パルマの作品でイチ押しは『ミッドナイトクロス』(1981)。
ジョン・トラヴォルタ演じる主人公は映画の音響効果係。
夜の郊外で音を拾っていると、偶然交通事故を目撃する。
しかし、雑誌に掲載されたその事故の連続写真と
自分の録音した効果音を合わせてみると、それが殺人事件であったことがわかって……。

悲哀に満ちた後味は決していいとは言えませんが、
デ・パルマの最高傑作だと思います。
これもまた、『サイコ』を思わせる女性のシャワーシーンから始まります。

デ・パルマのほかの有名どころを挙げてみると、
ケヴィン・コスナー、ロバート・デ・ニーロ、ショーン・コネリーなど、
すごいキャストで魅せてくれた『アンタッチャブル』(1987)。
説明するまでもない『ミッション:インポッシブル』(1996)。
タイトルのまんま、火星で行方不明になった仲間を捜しに行く『ミッション・トゥ・マーズ』(2000)。

たまにものすごい駄作を撮って叩かれますが、
この監督のそういうところが大好きです。
自分の好きなものを好きなように撮っちゃうところが。
その点、たとえばスピルバーグは素晴らしい監督だとは思いますが、
賛辞を受けたいがために撮ったのかと思ってしまうようなものも。
世間に何を言われようが「俺は俺」の監督には惹かれます。

最新作はダイヤ強奪をめぐる悪女のお話、『ファム・ファタール』です。

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