夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『孤高のメス』

2010年06月28日 | 映画(か行)
『孤高のメス』
監督:成島出
出演:堤真一,夏川結衣,吉沢悠,中越典子,松重豊,
   成宮寛貴,平田満,余貴美子,柄本明他

今月初め、封切り日に観るかどうか迷った末、『告白』(2010)を選択。
心残りだったので、こちらも観に行って来ました。
何しろ堤さん好きなものですから。それについてはこちらを。

母親である看護師の浪子が急死し、息子の弘平は葬儀のために帰郷する。
かつて弘平がかよった保育園の保母で、浪子とも親しかった武井は、
浪子が看護師という職業に誇りを持っていたと言うが、
弘平には母親が貧乏くじばかり引いている気がして仕方なかった。

そんな思いのまま、母親の部屋を片付け始めた弘平は、
浪子の日記を見つけてページを繰る。

1989年。片田舎にある、さざなみ市民病院。
浪子は毎日が憂鬱で仕方がない。
出世のための保身しか考えていない医師が複数存在し、
救える患者も見殺しにして、言い訳ばかりを考えている。
自分が医師に手渡すメスが患者を傷つけるだけなのだ。

そこへ、米国帰りの外科医・当麻が赴任する。
手術道具をぞんざいに扱う浪子に、通りかかった当麻がいきなり説教し、
浪子の当麻に対する第一印象は最悪。

ところが、当麻の手術に立ち会った浪子は、
彼の正確な技術と真摯な態度に圧倒される。
目の前の患者を救いたいだけ。そう言い切る当麻と接するうち、
浪子の心に変化が生まれる。

ある日、市長の大川が、末期の肝硬変で搬送されて来る。
彼を救う唯一の手段は、日本の法律ではまだ認められていない脳死肝移植で……。

弘平が読む浪子の日記が、こんなふうに映し出されて行きます。

最初は、手術シーンを直視することができませんでした。
血がドバッ、内臓もろ写しで、めちゃ苦手。
しかし、浪子(夏川結衣)のナレーションで、
当麻(堤真一)による手術がいかに素晴らしいかが語られるので、
それに釣られて観てみたら、あれ、平気。

これは医療版スポ根ものと言ってもいいかもしれません。
熱血漢がいて、それをよく思わないイヤミな連中(生瀬勝久)がいて、
でも、熱血漢に賛同する人たちが一丸となり、
また、彼らに責任を押しつけようとしない上の立場の人もいる。
観終わると、とても清々しい気持ちになれます。
泣き笑いさせられた映画はほかに記憶にありません。

『告白』が命を絶つ映画なら、これは命を繋ぐ映画。
都はるみに惚れました。(^^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『すべては海になる』

2010年06月24日 | 映画(さ行)
『すべては海になる』
監督:山田あかね
出演:佐藤江梨子,柳楽優弥,要潤,吉高由里子,白井晃他

先週は、特に借りたい新作がなくて、
TSUTAYA DISCASの予約リストに一応載せてはあったものの、
まぁ、来ても来なくてもいいやという程度に思っていました。
そうしたら、意外と良かった作品です。

夏樹は、書店に勤務する27歳。
心が荒んでいた高校時代、絶え間なく男とつきあっていた。
雑誌の悩み相談室に投書したら、「本を読みなさい」との回答。
以来、片っ端から本を読み、無類の本好きに。
書店では「愛のわからないひとへ」というコーナーを任され、
自作のポップ付きでお薦め本を並べている。

ある日、そのコーナーの本を鞄に滑り込ませる女性を目撃。
夏樹は彼女を捕まえるが、鞄を開けると何もなかった。

店長に連れられ、夏樹は女性の家へ謝罪に訪れる。
おどおどした表情の女性は黙り込み、
その夫で、大学で文学を教えているという男性が
暗に慰謝料を求めて怒鳴り散らす。
不登校らしき娘はヒステリックにわめき、
店長と夏樹は居たたまれずに立ち去る。

後日、女性の息子だという高校生が来店する。
彼は光治と名乗り、母親は万引の常習犯だ、僕が家族を立て直す、
だからもう謝罪には来てくれなくていいと言う。
夏樹は光治に携帯の連絡先を教え、
ふたりはメールを交わすようになるのだが……。

暗いだけの話を想像していました。ところが、そうでもない。

原作者本人が監督しているので、あれもこれも盛り込みたかったのか、
詰め込みすぎの印象は否めません。
登場人物もそんなにおらんでも……と思わなくもないのですが、
一人一人がとてもいい味を出しています。

たとえば、書店の同僚たち。
文学にうるさいおばちゃん。恐ろしく漢字を読めない若者。
キャバクラのバイトと掛け持ちの美女。純愛好きの兄ちゃん。
結構頼れる店長役の松重豊も◎。

書店の客で、すごい存在感で笑わせてくれるのが吉高由里子。
また、大手出版社に勤務する営業マンに要潤。
軽くて適当、でも実は……な男がピッタリ。
売れっ子作家役の村上淳、その著書(劇中劇)の主人公に安藤サクラ。
見た目と中身はちがうのよ。人間、奥が深いもの。

ラストは静かに心が洗い流されるかのようです。

学生の頃、ずっと書店でバイトをしていました。
そんな理由もあり、書店の雰囲気が懐かしく、
最初からのみ込まれました。
今でも、本屋で過ごす時間は至福のときです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ホームレス・ワールドカップ』

2010年06月21日 | 映画(は行)

『ホームレス・ワールドカップ』(原題:Kicking It)
監督:スーザン・コッホ,ジェフ・ワーナー
ナビゲーション:コリン・ファレル

先月公開されたばかりだというのに、早くもDVD化。
製作されたのは2008年で、ワールドカップに合わせて公開、
慌ててDVDもというところでしょうか。
現在はレンタルのみ、後日セルDVDが出るようです。

さて、こんなワールドカップがあることをご存じでしたか。
世界のホームレス人口、推定10億人。
家がなくても、仕事がなくても、あきらめるな。
1つのボールが不可能も可能にする。サッカーで人生は変わる。
そんな思いから2001年に発案された、ホームレスによるミニサッカーの国際大会。

本作は、2006年にケープタウンで開催された、
まさに南アフリカ大会の模様を収めたドキュメンタリーです。
ダブリン出身の悪ガキ俳優、コリン・ファレルがナビゲーターとして登場。

ナイキやUEFA(欧州サッカー連盟)が公式スポンサーとなり、
世界の名だたるチームが積極的に支援。
老若男女問わず、2万人のホームレスがトレーニングに参加。
各国から8人、合計500人の選手が出場しました。

アイルランドのダブリンではヘロイン、ケニアのナイロビではエイズ、
アフガニスタンのカブールでは内戦、ロシアでは移民の不法滞在と、
国、都市によって抱える問題はさまざま。
また、ホームレスになったきっかけもいろいろです。
ヤク中やアル中ゆえにホームレスになった人、
薬にも酒にも手を出していないけれど住むところを奪われてしまった人。

アイルランド代表のダミアンは、能力の高いゴールキーパーですが、
ヤク中の治療のためにメタドンを処方されていて、
今度はメタドンがなければ不安でたまらない。
スペイン代表のヘスースは、還暦を超えています。
レアル・マドリードに所属していたこともあるのに、アル中で、強盗歴も有り。
そんな経歴の人もいるかと思えば、
サッカーのピッチすら作れない土地で、懸命にボールを蹴る人も。

出場選手に用意される宿舎は粗末なものでも、彼らにとっては天国。
清潔なシーツが敷かれたベッドで眠り、
食事を取れることにこのうえない幸せを感じています。

出場できるのは一生に一度だけ。
目標は人生を変えること。
1年後、自分の毎日がどうなっているか、それが大事。

彼らのその後はさまざまで、
明るい未来と言えることばかりではないのが現実。
こんなワールドカップもあるということ、
知っておいてもいいんじゃないかと思います。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ファッションが教えてくれること』

2010年06月17日 | 映画(は行)
『ファッションが教えてくれること』(原題:The September Issue)
監督:R・J・カトラー
出演:アナ・ウィンター,グレイス・コディントン他

米国人女性の10人に1人が読むと言われている、
ファッション雑誌『ヴォーグ』。
その編集長に密着取材したドキュメンタリーです。

『プラダを着た悪魔』(2006)でメリル・ストリープが演じた鬼編集長の
モデルと噂されているのがこの人。

アナ・ウィンター、ロンドン生まれ、御年60歳。
そもそもファッションには興味があったようですが、
やみくもにその世界に飛び込んだわけではなく、
まずは高校を中退して、高級百貨店『ハロッズ』で勉強。

20歳そこそこでファッション業界へ。
その才覚を見せつけて、さまざまな雑誌の編集を手がけます。
35歳を過ぎた頃、英国版『ヴォーグ』の編集長に。
数年後にはニューヨークで米国版『ヴォーグ』の編集長となり、
以来、ずーっとこの座に君臨し続けている女性です。

ファッション業界に圧倒的な影響力を持ち、
ファッションショーではランウェイ(モデルが歩く道)よりも
彼女に注目が集まることもしばしばなのだそうです。
トレードマークのボブカットに大きめのサングラス、
そういえば見たことがあるような。

笑顔もどこか冷たくて、「氷の女王」の異名を取るのはともかく、
「ドレスを着たダース・ベイダー」と言うのはどうなんだか。(^o^;
でも、本作を観ると、それもわからなくはありません。

原題は“The September Issue”。
『ヴォーグ』の9月号は、一年で最も重要と言われる号。
ファッション特大号で、年を追うごとに分厚くなり、
本作で取り上げられた2007年9月号はまるで電話帳。

ファッション雑誌の表紙に、女優などのセレブを起用するようになったのも彼女。
ファッションに対する感覚は、天性のものがあるようで、
未来を予見する力も備えているとしか思えない彼女の言葉は絶対です。
どんなにお金をかけた撮影も、彼女が気に入らなければあっさりボツ。

彼女とは旧知の仲のファッション・ディレクター、
グレイス・コディントンがとてもいい感じです。
モデルとして売れていた時分に事故で顔を負傷。
何度も整形手術をした後、編集者として経験を積み、
今はアナに言い返せるただ一人の人物。
彼女のボヤキが緊張を和らげます。

大御所&新進デザイナーの登場で豪華に。
ファッションに興味のある人はより楽しいかと思いますが、
疎いねんと言う人もぜひ。私がそうですから。(^^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ぬくぬく』

2010年06月14日 | 映画(な行)
『ぬくぬく』
監督:富永まい
出演:温水洋一,紫苑(猫)

劇場公開映画ではなく、オリジナルDVD。
原作は秋本尚美の同名コミックです。
TSUTATA DISCASでリクエストをしてみましたが、入荷を待てずに購入。

で、購入してしまったのは、
うちで飼っていた猫にそっくりのキジトラ猫が登場するからです。
「うちの猫」については、こちらをご覧ください。

主人公の中年男性「山田さん」の穏やかな日常。
それを乱すものはただ一つ、いや、ただ一匹、キジトラの雌猫「しま」。
ストーリーとして記すべきものはなにもなし、
一人と一匹の同居生活がゆるゆると。

「山田さんとぬくぬく生活」「ぬくぬくな午後の過ごし方」
「山田さんを悩ますぬくぬくと自由」「ぬくぬく猫語教室」
「発熱とぬくぬくの効用」「山田さんのぬくぬくへの冒険」の6編と、
特典映像の「しまの気まぐれオフショット」から成っています。

とにかくひたすら可愛くて、観ている間ずーっと、私はヘニャヘニャ状態。
猫好き、特にキジトラ猫好きの人は、骨抜きにされること、請け合い。

洗濯物を畳めば、ふかふかのタオルの上に前脚を折って座る。
お風呂に入れば、磨りガラスの向こうで「ミャー」。
発熱でうなされる山田さんを心配して見に来たのかと思えば、
お腹がすいたと訴えているに過ぎず。
「遊んでよ」と言いに来ておいて、こっちがその気になると、
とっても冷たい素振りを見せるのです。

どんな顔も態度も、猫を愛する人ならば、
「ある、ある」と笑ってしまうシーンばかり。

寝込んでいる山田さんの胸の上に「しま」が居座り、
山田さんが「し、しま、重い」と呟くシーンでは、
その昔の弟の話を思い出しました。
夜中、息苦しく感じて目が覚め、これが金縛りというものかと思ったら、
うちの猫が弟の布団の上、ちょうど胸の上に座っていたこと。

特典映像には、カメラに囲まれた「しま」が
平然とふるまう様子が収められています。
温水さんをはじめとする生粋の猫好きの中では、
「しま」もリラックスできたのかな。

そうそう、猫って、猫嫌いな人には寄って行かないけれど、
猫嫌いな人の家には悪さしに行きませんか。
必死の形相で「しっ、しっ!」などと追い払う人の家に限って、
ふふんと侵入しては嘲笑うかのように立ち去る。
さらに怒りを見せる人の顔を見ると、
失礼ながら、私は可笑しくて仕方ありません。

うちの猫が懐かしくなりました。マジでうり二つ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする