
昨日は、岩波ホールで上映中の映画「ワレサ 連帯の男」を、夫と一緒に観てきました。
この映画は「地下水道」や「灰とダイヤモンド」などで有名なアンジェイ・ワイダ監督が『生涯に監督した映画の中で最も長い時間をかけて作った映画』で、テーマは勿論『「東欧民主化」の口火となった「連帯」の戦いを、初代委員長レフ・ワレサと家族の日々を通して描く』というものです。(アンジェイ・ワイダ監督が語る「ワレサ 連帯の男」より)
1970年~80年、ポーランドを始めとする東ヨーロッパはソ連邦の傘下にあり、暮らしは貧しく社会は検閲や思想統制に束縛される息苦しい状況に置かれていました。1970年終わりには食料品の価格が政府政策で一斉に高騰し、追い詰められた人々の中から激しい抗議行動が起きましたが、それに対し、政府は武力鎮圧で応え、大勢の犠牲者を出しました。その時レーニン造船所で電気工として働いていたワレサも検挙され、公安局に協力する誓約書に署名させられます。
この食料暴動事件を皮切りに、人々の中から自由を求める大きなうねりが起こり、ワレサは公安の度重なる恫喝を跳ね除けて、持ち前の政治的感性を発揮。レーニン造船所のストライキ~ゼネストを指導し、やがてポーランドの独立自主管理労組「連帯」の闘いを成功へと導きます。
ワレサは後にノーベル平和賞を受賞し、やがてポーランドの大統領にまで登りつめますが、映画はワシントンの米国議会で演説して、『私たち民衆は』と語ったところで終ります。民衆のヒーローもやがて民衆から疎まれる存在になる、、、という政治の冷徹さのニュアンスを残しつつ、ワレサの成し遂げた東欧民主化へのワイダ監督の賞賛の念がそこには感じられました。
当時ソ連を中心とする共産主義国家の権力機構が持っていた人を統治・抑圧する冷酷な意志と力、抑圧に対する人々の怒りや自由を求める熱く激しいエネルギーは圧倒的で、見ていて息苦しくなり激しい疲れを感じました。一方、ワレサが家庭で見せる夫であり父である顔は、どことなくユーモラスで人間臭く、ワレサの妻ダヌタの可愛らしく聡明な姿と共に、ホッとしたり共感したりさせられました。

水曜日の午後、映画館の入りは7割程度、東欧民主化とソ連邦崩壊をリアルタイムに目撃した私達世代の男性・女性がほとんどでした。(三女)
